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朝日新聞で、「新宿のゴールデン街が明朗会計になった」という記事が掲載された。
→ ゴールデン街が「透明化」 外国人客チャージ無料の店も:朝日新聞 2018-08-17
普通の酒場は、テーブルのチャージ料や、お通しの代金など、勝手に請求することが多い。だが、新宿のゴールデン街では、外国人向けにこれらの不明朗な料金を無料化して、その結果、売上げが大幅に増加した……という話だ。売上げが4倍増の店もあるそうだが、その店ではほとんどの客が外国人観光客になってしまったそうだ。
なるほど。ゴールデン街は、外国人観光客向けのガイドブックにも大きく取り上げられるほどだし、外国人にはとても評判がいいので、こういうこともあるのだろう、とは思った。
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しかし、である。私がここで思い出したのは、「歌舞伎町のボッタクリ」だ。前にも論じたことがある。
→ ぼったくり都市 (2014年12月28日)
→ 歌舞伎町の ゴジラと ぼったくり (2015年05月02日)
→ ぼったくり いろいろ (2015年07月03日)
1番目の項目では、歌舞伎町のボッタクリ被害を紹介している。
2番目の項目では、同様に示して、東京五輪での被害を懸念している。
3番目の項目では、取り締まりが強化されて、ボッタクリ被害が解消しつつある、と示している。
さて。3番目の記事を書いた時点では、「解決しつつある」と感じていた。そして、今回の朝日の記事を見た。そこで、「どうやら問題はすっかり解消したのか」と思った。
では、本当に問題は解決したのだろうか?
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そこで、調べてみた。
まず、ゴールデン街というのは、歌舞伎町の一部であるから、ゴールデン街と指定する必要はなく、「歌舞伎町」と指定するだけでいい。そこで検索してみると、この1年間に限っても、まだまだ被害は続いているようだ。
→ 歌舞伎町 ぼったくり - Google 検索
さらに、外国人の被害を調べてみる。
→ 歌舞伎町 ぼったくり 外国人 - Google 検索
すると、次の記事が見つかる。
《 新宿歌舞伎町のぼったくり・客引きはその後どうなった? 》
2015年6月の一斉摘発によって、こういった新宿歌舞伎町の高額なぼったくりキャバクラはほぼ壊滅したといわれています。
実際、現在の歌舞伎町は、一見すると客引きが減っています。
しかし、人や店舗が多く集まるところには、どうしても一定数の悪質なお店が混ざってしまうもので、新宿歌舞伎町には悪質店や客引きが根強く存在しています。
最近私が歌舞伎町で目撃した・聞いた客引きのやり口をご紹介します。
……
以前から「ヘイ、ブラザー」などと声をかけてくるアフリカ系外国人の客引きは存在していましたが、歌舞伎町を訪れる外国人観光客の増加につられてか、ブラザーたちは今でも元気にやっています。
( → Navigate 2018年6月28日 )
つまり、一時期は壊滅させたのだが、その後にまたしても、ボッタクリが出現してきたわけだ。治療しても何度もぶり返す病気みたいなものだ。
で、現状の外国人の被害については、うまく記事を見出せなかったが、かつての被害については、次の記事を見出した。(2014.11.28.の記事)
《 外国人からぼったくる店舗が増えているらしい 》
去年と比べて増加している外国人観光客へのぼったくり
調べて行くと去年までは月数件前後だった外国人観光客からの110番通報が今年の7月からは1ヶ月15件ほどと上昇傾向にあるのだとか。その内容はほとんどが高額請求(ぼったくり)によるものでひどいものでは55万円払わされてしまった観光客もいたとか。新宿警察署からのソースで歌舞伎町で外国人を相手にしたぼったくりトラブルが増えていることは間違いないようです。
( → 水商売・キャバクラ・スナック専門タブレットPOSレジ管理システム 2014.11.28. )
上記は 2014年の記事だから、取締りの前の記事だ。ひどい状況のころだ。
その後、2016年6月8日 の日付で、次の記事もある。中国人が被害に遭っているようだ。
《 新宿歌舞伎町でぼったくり被害の中国人観光客が急増、グラス傾けただけで指名料 》
2016年6月6日、新華社は、中国人観光客に人気が高い日本だが、東京都の繁華街・新宿歌舞伎町で外国人観光客を狙った悪質な行為が横行していると報じた。 外国人を狙った詐欺行為が増え始めたのは2015年夏ごろからで、とりわけアジアやアフリカから来た観光客がターゲットになっている。言葉が不自由なことにつけ込む手口で次々に高額の料金を上乗せして支払わせる。
( → レコードチャイナ 2016年6月8日 )
では、今もこういう被害が小規模ながらも続いているのだろうか? さらに調べてみると、そうではないようだ。
・ 被害の届け出が激減している。
・ その理由は、件数の減少ではなく、被害額の減少。
つまり、高額の請求がなくなったので、警察沙汰になるようなことは少なくなった、ということらしい。(2018-03-28 の記事。)
→ 歌舞伎町「ぼったくり被害」はなぜ激減したのか?/ 減ったのは「高額な」ぼったくり
こうなった理由は、警察の方針転換があったらしい。以前は「民事不介入」と言って、ボッタクリを放置していたのに、2015年以降は、警察で取り調べをすることにしたそうだ。
→ 歌舞伎町「ぼったくり被害」はなぜ激減したのか?/ 警視庁の方針転換というシンプルな理由
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以上をまとめれば、こうだ。
・ 歌舞伎町には、ひどいボッタクリがあった。
・ 2015年に警察が取り締まるようになって、激減した。
・ しかしその後もボッタクリは存続している。
・ ただし高額で大被害をもたらすほどではない。
なお、いまだにボッタクリ被害が出ていることの間接的な証拠もある。警告のアナウンスが流れていることだ。
歌舞伎町の客引きというと、靖国通りと花道通りの間に集中していたわけですが、最近はアルタ前や花園神社近くにも、歌舞伎町へ誘導する客引きがいます。
注意を喚起するアナウンスが流れ、巡回パトロールも行われている歌舞伎町から少し位置をズラしたわけですね。
歌舞伎町近辺ならアナウンスもありますし、皆さん警戒されているのでしょうが、少し離れると油断してしまうのかもしれませんね。
( → 新宿歌舞伎町のぼったくり・客引きはその後どうなった? | Navigate 2018年6月28日 )
歌舞伎町を歩いていると、ボッタクリ注意の放送が流されることがある。以前は新宿警察署が作ったボッタクリ(客引き)に対する注意喚起の放送 が流されていたが、なぜか「皇帝ウインドブラストX」と名乗る人物がボッタクリの注意喚起を放送しているのだ。以下は、その放送内容である。
( → 歌舞伎町で流れてる「ボッタクリ店撲滅」の放送内容すごすぎwwwww 2018.04.28 )
こういうアナウンスが堂々と流れているのだから、ボッタクリはまったく根絶されていないことがわかる。
あと、アナウンスするのなら、英語や中国語でもアナウンスするべきだと思うんだが、そういうことはなされていないようだ。
かわりに YouTube で話題になっているそうだ。例によって、YouTuber による動画。
外国人が新宿歌舞伎町での注意事項を伝える動画が話題に!
歌舞伎町では客引きに安易について行くと、ボッタクリバーや昏睡強盗の被害に遭う可能性があることを伝える動画に、海外から沢山のコメントが寄せられていました。
( → 海外反応! I LOVE JAPAN : 外国人「新宿の歌舞伎町ってそんなに危険な街なの?」 海外の反応。 2018-04-11 )
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まとめ。
朝日新聞は「新宿ゴールデン街は外国人向けに透明化した会計で繁盛している」と書いたが、実は、以前からあったボッタクリがまだ残っている。高額の被害はなくなったし、件数も激減したようだが、それでもまだまだボッタクリが残っている。とても健全な繁華街とは言えがたい。朝日の記事は不正確だ。もっとボッタクリの危険性を告知するべきだ。
[ 付記1 ]
東京五輪に向けて、もっとボッタクリを取り締まるべきだ。特に、客引きが問題だ。客引きばかりがボッタクリ被害をもたらすからだ。
( ※ 自発的にボッタクリ店に入ろうとするような客はいない。たいていは奥まった場所にあって、胡散臭い感じがいっぱいだ。外国人が自発的に入るような場所ではない。)
では、客引きを取り締まるには、どうすればいいか? 実は、客引きは条例で禁止されている。
→ 客引き(キャッチ)は違法!キャバクラ、ホスト、ガールズバーも!!
→ 客引き禁止条例:東京にまたショウモナイ条例ができた(木曽崇)
2番目の記事によると、文京区の独自の条例というものは不要で、すでに他の法律や条例で、客引きは禁止されているそうだ。
1. 風営法:
風俗営業者に対して、客引きおよび、立ちふさがり、つきまといなどを禁ずる(法第22条)
2. 迷惑防止条例:
性風俗等の客引き、一般商業者の強引な客引きおよび執拗な付きまとい、性風俗等のスカウト行為
3. ぼったくり防止条例
性風俗店等に対する料金明示義務、不当な勧誘および料金の取立て禁止
こういう法的手段があるのだから、警察は堂々と客引きを取り締まればいいのだ。なのに、そうしないで放置しているのだから、困ったことだ。
東京五輪対策なら、打ち水なんかをするよりは、ボッタクリの取締りをしてもらいたいものだ。そのための手段はすでにあるのだから。
( ※ 警察の生活安全課あたりが客引きを逮捕すればいいのだ。なのに、新宿署は何をやっているんだ。ここを咎めるべきだな。あと、警視総監にも文句を言った方がいい。さらには、その上にいる東京都知事にも。)
[ 付記2 ]
なお、私の提案を言うと、こうだ。
「客引きを禁じるには、高額の罰金刑が好ましい。たとえば、罰金 30万円」
罰金の収入を得るから、その収入によって警察官の増員ができる。警察官を増やして、どんどん摘発して、どんどん罰金収入を得ればいい。これなら、「摘発の人員が不足する」という問題を解消できる。(人員を増やせば増やすほど、収入が増えるからだ。)
なお、一般化が困難であるなら、「歌舞伎町限定」の法制度(条例)にしてもいい。この領域内でのみ、特に高額の罰金を科すわけだ。
[ 付記3 ]
新宿区では「客引き防止条例」というものが制定されたが、これは実効性があまりないということだ。
新宿区の客引き防止条例が改正されました。今回の改正のポイントは【1】客引き行為を用いた営業の禁止、【2】公表、【3】過料の3点です。
5万円以下の過料に処せられます。
《 弁護士の意見 》
今回の改正で導入された過料の制裁(19条)については、実効性を期待できません。なぜなら、過料に至るまでに指導(10条)、警告(11条)、勧告(12条)というプロセスを経なければならず、迂遠だからです。また、客引きで獲得した客からぼったくりをすることで1回ごとに数十万円の儲けがあることに比べて、最大5万円の過料は微々たるものであり、威嚇になりません。
( → 新宿区の客引き防止条例が改正 | 内藤新宿法律事務所 2017年8月11日 )
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客引き取り締まりがどこまで功を奏するかわかりませんが、もっと世界的に悪名が高まらないと本腰を入れないのかも。