2018年08月06日

◆ 砂防ダムは無効だ

 砂防ダムに守られていると思っていた住民が大量に死亡した。砂防ダムは無効だと思った方がいい。

 ──

 砂防ダムができたので、これで安心だと思って、避難しないでのんびりしていたら、大量の土砂崩れが起こって、砂防ダムもろとも、大勢の住民が死んでしまった……という事例があった。広島県坂町の例。
 西日本豪雨で大きな被害が出た広島県坂町の小屋浦地区。海の近くまで山が迫り、天地(てんち)川沿いを中心に約 800世帯が住む。
 今回の豪雨で、天地川の河口から 1300メートル上流の砂防ダムが崩壊し、土石流が集落を襲った。支流域も含め、地区全体で 15人が死亡、1人が行方不明になった。
 の地区では1907(明治40)年7月にも大雨で土石流が発生し、甚大な被害が出たことがあった。町史などによると、その3〜4年後の10年と11年、2基の石碑が建立された。
 西山シマ子さん(87)は公園を散歩する時、石碑に手を合わせてきた。犠牲になった祖父母らの名前が刻まれているからだ。小さい頃から「この辺は100年に一度、大事(おおごと)がある」と聞いてきた。砂防ダムの完成は 1950年。住民も材料の石を搬入する作業に加わり、「これで 100年は持つ」と歓迎したという。
( → 水害、石碑の訴え届かず 明治に44人死亡の小屋浦地区:朝日新聞

 石碑と言い伝えがあって、危険だということは兼ねて知られていた。にもかかわらず、「砂防ダムができたから安全だ」と思い込んでいた。それで安心して、避難しないでいたら、大量の土砂崩れが起こって、砂防ダムもろとも住居を埋め尽くした。
 
 ──

 砂防ダムの下流側にいる住民が土砂崩れで死んでしまった……という例は、何度も起こる。なぜか? 土砂崩れの量は予測が付かないからだ。換言すれば、予想以上の規模の、大型の土砂崩れが起こることはしばしばある。これは、洪水とは決定的に異なる点だ。
 洪水ならば、水の量はおおよそ予想が付く。大型台風のときはこのくらいで、特別な豪雨の場合にはその2〜3倍ぐらい、というふうに。また、物理的な制限もある。ある地区の川に入り込む水の量は、それより上流で流れた水の量という限界があるから、無限に水量が増えることはないのだ。(上流側における限界。)
 一方、土砂崩れの場合は違う。砂防ダムで一定量の防止効果があるとしても、山の量はその百倍以上であるから、ほとんど無限と言ってもいい。砂防ダムをちょっと増やしたぐらいでは、とうてい済まないのだ。

 要するに、山の量に比べると、砂防ダムはあまりにも小さい。だから、砂防ダムなんてものはハナから無効だと思った方がいい。こんなものに期待する方がおかしいのだ。
 なのに、人々は「砂防ダムは治水ダムと同程度の効果があって、自分たちを守ってくれる」と信じる。あまりにも無知で勝手な妄想であるというしかない。
 はっきり言っておこう。砂防ダムはほとんど無効である。それが意味をもつのは、「無駄な公共事業をやって、税金を食い物にして、土建業者が儲ける」ということだけだ。要するに、税金の私物化だ。そのくらいしか意味がない。
 そして、そんな無駄な砂防ダムを信じて、いざというときに逃げずにいれば、命を失うしかないのだ。



 [ 参考 ]
 日テレの動画ニュース。
  → 砂防ダム、異例の大規模決壊 広島・坂町|日テレNEWS24

 そのスクリーンショット。( Google マップに加工したもの)


sabo-dam2.jpg


ntv-map.jpg


 現地の Google マップのスクリーンショット。

sabo-dam.jpg


 現地の Google マップ。(左に 90度、回転すべし。)







 【 関連動画 】






 【 関連サイト 】

 → 西日本豪雨:消えた砂防ダム 大破した家屋に岩石や流木 - 毎日新聞
 → 坂町小屋浦「砂防ダム」全壊、強度不足で決壊か



 [ 補足 ]
 以上の話を書き終えたあとで、新たな新聞記事が出た。広島の土砂崩れについての検証記事。一挙に大規模に土砂崩れがアッって、土石流が襲い、20棟が全半壊、5人が死亡。
  → (時時刻刻)土石流、届かなかった警鐘 広島の団地 西日本豪雨:朝日新聞
 こういう大規模な土砂崩れでは、砂防ダムなどは、あっても意味がない。……そう思っていたら、記事の最後でも同趣旨の結論が出ていた。
 広島工業大の森脇武夫教授(地盤工学)は「大量の土砂を砂防ダムで止めようとするこれまでの考え方でいいのか。危険な場所に都市を拡大しない方法はないのか。一歩踏み出して考える必要がある」と話す。 

 砂防ダムの無意味さは、専門家も気づきつつあるようだ。
 しかし、である。この専門家も、「これでいいのか」と疑問文で語るだけで、「これでは駄目だ」と断言はしない。「砂防ダムをやめよ」とは言わず、「考える必要がある」と言葉を濁す。
 現状の駄目さに気づいていても、それをはっきりと指摘できないわけだ。猫の首に鈴を付けることができないわけだ。あるいは、「王様は裸だ」と明言できないわけだ。
 だから私がここではっきりと明言するわけだ。「砂防ダムは無効だ」と。

 ※ この専門家の話は、下記記事にもある。参考記事。
    → 緩やかな傾斜で土石流、専門家も想定外 広島:朝日新聞デジタル
   ( 内容は、「まさ土は崩れやすく、緩い傾斜でも危険だ」)
 


 【 追記 】
 本日(6日)のテレ朝「報道ステーション」でも、この砂防ダム(治山ダム)のことが報道されていた。
 現地の人に聞いていたが、今年の2月にこの砂防ダムができて、人々はすっかり安心していたそうだ。それで避難もしないで、のほほんとして自宅に留まっていたそうだ。そこを急激に土石流が襲った。安心しながら見ていた人は、土石流が来ても、なすすべもなく立ちすくむことしかできなかったそうだ。で、その人はたまたま運良く土石流からはずれたので生き残ったが、土石流の直撃を受けた人は死んでしまった。
 結局、砂防ダムはあってもなくても結果はほとんど変わらなかった。というか、あった分、避難が遅れたので、あったせいでかえって被害が増えた面も多いようだ。(被災者自身がそう感じているという口調だった。)

 広島では、人的被害の出た場所は限られていたが、砂防ダム(治山ダム)の総数は 2200基もあったそうだ。これにかかる莫大な経費を考えると、「砂防ダムは一つも建設しないで、被害者に被害の補償をするだけ」という方が、ずっと賢明だとわかる。
  ・ 危険だから、安心せず、すぐに避難する。人命は助かる。
  ・ 家屋は土砂に埋もれるが、被害の補償を受けられる。

 こうして、人的にも財産的にも、住民の被害は最小化される。
 一方、砂防ダムを建設するというのは、莫大な費用を掛ける割には、死者を増やすということぐらいの効果しかない。
( ※ 小規模な土砂崩れには対応できるが、ある程度以上には、効果があるどころか逆効果となる。)

 報道の最後には、土砂の量のデータも出ていた。(広島全体では)土石流の土砂の量はドラム缶 2000万本に相当する。数をわかりやすくするため、このドラム缶を立てて並べると、東京からアメリカのフロリダにまで達するそうだ。それほどにも多大な量の土砂が、今回の西日本豪雨で、広島の各地を襲ったわけだ。
 こういう莫大な自然に対して、高さ3メートルぐらいの砂防ダムで対決しようというのだから、傲慢というか、身の程知らずというか、呆れるしかない。
 番組では、専門家が反省の言葉を述べていた。「砂防ダムは、もともとはもっと小さいものにするはずだったが、私がそれでは足りないと提言したので、いくらか大きめのものに改良された。これで十分だと思ったが、実際には予想をはるかに上回る土砂が来たので、大被害が生じた。反省する」というふうに。
 何を言っているんだか。土砂崩れの量など、予想できるはずがない、ということを理解するべきだ。気象ならば、降水量には一定の限界があるが、土砂崩れには、通常の砂防ダムの限界をはるかに超える量の土砂崩れも起こりうるのだ。最大では山全体が崩れることすらあるのだ。これは決して大げさではない。九州の熊本の土砂崩れの写真を見るといい。まさしく「山全体が崩れた」という感じになっている。
  → 黒川第一発電所の土砂崩れ (画像一覧)
 この土砂崩れについては、前に言及した。
  → 黒川第1発電所と土砂崩れ: Open ブログ

 ついでだが、阿蘇大橋の土砂崩れというのもあった。
  → 阿蘇大橋の土砂崩れ (画像一覧)
 この土砂崩れについても、前に言及した。
  → 阿蘇大橋の衝撃

 ともあれ、土砂崩れというのは、かくも大規模になり得る。なのに、高さ3メートルぐらいの砂防ダム(治山ダム)で対処しようというのだから、おこがましいとしか思えない。というか、頭の発想が根本的に狂っているというしかない。
 だから私が明言するのだ。「砂防ダムは無効だ」と。……このことを理解しない限り、今後も次々と、土砂崩れによる死者が大量に発生するだろう。

posted by 管理人 at 20:00| Comment(3) |  地震・自然災害1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 本日(6日)のテレ朝「報道ステーション」の内容の紹介など。

 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2018年08月06日 22:45
大賛成!
短期視点で、仕事のための仕事をされると、
こういう結果になります。
おっしゃる通り、
ソフトパワーを充実するにほか、策はありません!
Posted by yomoyama at 2018年08月07日 16:10
忘れていること
日々、砂防ダムは埋まり続けてるってこと
全て埋まれば、ただの崖にすぎない
効果を維持するための浚渫費用もばかにならない
Posted by 老人 at 2018年08月08日 04:17
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