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不祥事とは、次の二点だ。
・ アマチュアボクシング協会の会長
・ 東京医大の女子受験生の差別
ご存じの通りだろうが、いちおう示すと、次の通り。
《 日本ボクシング連盟が告発された内容は? 渦中の山根会長は姿見せず 》
国内のアマチュアボクシングを統括する団体「日本ボクシング連盟」に対し、役員や元選手ら333人が7月27日、日本スポーツ振興センター(JSC)や日本オリンピック委員会(JOC)などに告発状を提出した。
告発内容は、試合用グローブなどをめぐる不透明な独占販売、パワハラ、2016年岩手国体での不正審判疑惑など12項目。日本ボクシング連盟の終身会長・山根明氏への権力集中を告発するものにもなっている。
その中では、JSCがリオ五輪代表の成松大介選手に交付した助成金240万円の不正流用が指摘されている。日本ボクシング連盟の山根明・終身会長が、他の2人の選手と3等分するよう指示したとしている。
助成金は国費から捻出され、その原資は税金だ。第三者への譲渡など目的外の使用は認められていない。
2016年の岩手国体では、2度のカウントをとられた選手が勝利。告発状では、不正審判の疑惑があったと指摘された。
さらに告発状では、山根会長がスイートルームへの宿泊や豪華な食事などを要求し各都道府県連盟にとって過大な負担になっているとしている。
( → huffingtonpost )
《 東京医科大 女子受験生減点し合格者数抑制 》
文科省を巡る汚職事件で、前理事長が起訴された東京医科大学が、入学試験で女子受験生の点数を減点し、合格者数を抑えていたことがわかった。
複数の関係者によると、東京医科大学は遅くとも2010年頃からマークシート方式の一次試験で、女子受験生の点数を減点し、女子の合格者の割合を3割前後になるように調整していたという。
大学の元幹部は取材に対し、「女性医師は出産などで、仕事をやめるケースが多く、3割を超えるとまずいという意識があった」と説明し、「コンピューターでシミュレーションを行い、得点に0.9や0.8などの係数をかけて、減点していた」と話している。
( → 日テレNEWS24 )
これに対して、「該当の関係者や大学を処分せよ」という意見が強い。なるほど、それはごもっとも。しかし、よく考えたら、それでは済まない。なぜなら、この事例は「氷山の一角」にすぎないらしいからだ。つまり、似た問題は、あちこちにある。
(1) スポーツ
たとえば、スポーツでは、相撲協会でも似た問題(暴力などの不祥事)が起こっている。日大のアメフトもそうだ。(いまだに理事長の反省がなくて未解決。)
さらに、ラグビー協会でも次の話がある。
《 (ニッポンの宿題)根強いスポーツ「ムラ」 池田純さん: 》
相撲界での暴力事件、日本大学アメリカンフットボール部の悪質タックル問題、そして日本ボクシング連盟の助成金不正……。スポーツ界で常識を疑うような不祥事が相次いでいます。スポーツ「ムラ」ともいうべき体質を変えるにはどうしたらよいのでしょうか。
プロ野球DeNA前球団社長・池田純さん
「「球団経営は赤字でもいい」「現場に口を出すな」という「常識」にとらわれず、ファンサービスを選手に求めたり、オリジナルビールを開発したりし、24億円の赤字球団を黒字化しました。
ラグビーでは、日本ラグビー協会から「変えなくてはならないから」と頼まれて特任理事になり、様々な改革を提案しました。いざそれらを実行し話題になると、内部から否定が続き、がくぜんとしました。内部でのあつれきと衝突を避けるために、今年3月で辞任しました」
( → 朝日新聞 )
改革してくれと頼まれて就任したが、いざ改革をしようとしたら、協会の内部から反発が続出して、頓挫したわけだ。ここでは、組織そのものが腐っていることになる。
ならば、組織そのものを抜本改革する必要がある。
(2) 医大
医大も同様だ。女性差別は、東京医大に限ったことではなく、他の私立大でも多く見られるそうだ。
《 女子38%「困った」 東京医大、減点は「暗黙の了解」》
東京医大に限らず、女子が医学部に合格しづらいという点は以前から指摘されてきた。女性医師らで作る「日本女性医療者連合」(東京)の対馬ルリ子理事は、一律減点の発覚を受けて「やっぱりね、という思いです」と話した。
文科省の学校基本調査によると2016年春の医学部医学科の志願者のうち、入学した割合は男子が 6.85%に対し、女子は 5.91%と1ポイント近く低い。他の学部では男女差がほとんどないか、女子の方が高くなっており、医学科だけが傾向が異なる。
対馬理事は数年前、医学部専門の予備校関係者から「偏差値だと女子は3、4ぐらい高い」と聞いたこともある。「大学入学時に何らかのコントロールが働いていると感じる」と語る。
ある私立医大幹部は「私の大学でも男女比の調整は行われている」と明かす。
( → 朝日新聞 )
というわけで、東京医大だけでなく、大学(ないし医大)の全般にわたる構造的な問題がある、とわかる。東京医大だけを処分すれば解決する、というわけではないのだ。
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では、どうするべきか?
もちろん、構造的な問題なのだから、構造そのものにメスを入れるべきだ。この先は、個別に論じよう。
(1) スポーツ
スポーツでは、各種の協会が腐っているようだ。ならば、協会そのものの人事に手を付けるのがいい。
今回のアマチュアボクシング協会の会長は、終身会長である。年齢は 78歳。
こういうのには「定年制の導入」が解決案となる。そこで、こう提案しよう。
「アマチュアスポーツの組織には、定年制を導入する。当面は 70歳ぐらい。今後は段階的に、65歳まで引き下げる」
これを守っている組織だけに、補助金を出す。守らない組織には、補助金を出さない。これで、問題はほぼ解決するだろう。あとは、例外的な組織を処罰するだけでいい。
逆に言えば、現状で一部組織だけを処罰しても、他の組織における問題は解決されずに残る。それでは駄目だ。
なお、日大の田中英壽 理事長は 71歳。反省する態度だけを見せて、理事長に居座っている。
→ アメフット:日大理事長、大学の公式HPで謝罪へ - 毎日新聞
こちらも、(大学組織について)「 70歳の定年制導入」で、大幅に改善するだろう。そもそも「 70歳の定年制」があれば、「独裁的な支配体制」はもともと成立しなかったはずだ。( どうせやめるとわかっているので。)
(2) 医大
医大についてはどうか? 「女子の差別」というのが、東京医大のほかにも蔓延しているようだ。とはいえ、一挙に調査するのは大変だ。(大学当局が隠蔽しようとする。)
そこで、こう提案しよう。
「自主申告ならば処分しない、ということを条件に、自主申告を促す」
これによって、他の大学の自主申告を促す。
一方、東京医大は、自主申告ではなく、他の面から発覚したので、処分の対象となる。見せしめの意味もあって、重く処分するべきだろう。
当面は、「理事や大学教授に、65歳の定年制を義務づける」というのが好ましい。つまり、高齢の理事や大学教授がみんなクビになるわけだ。今は 65歳に達していない人々も、65歳になるとクビになる。
こういう状況が明らかになれば、戦々恐々として、他の大学の理事たちはいっせいに自主申告に走るだろう。かくて、他の大学での女子差別が発覚する。
これで問題は解決するだろう。ともあれ、不祥事に対しては、「処罰よりも制度改革」というのが、本項の基本方針だ。
[ 付記1 ]
「補助金の削減」という案もあるが、お薦めしない。これでは、悪いことをした理事は処罰されず、受験生が損をするからだ。受験生としては、不正をされた上に、損をするわけで、踏んだり蹴ったりだ。こういうのは「被害者を処罰する」ということになるので、妥当ではない。被害者よりも加害者を処罰するべきだ。それが、本項の案だ。
「加害者を処罰する」という意味では、「理事の退職金の削減」というのも有効である。これも併用するといいだろう。
[ 付記2 ]
実は、東京医大の女子差別については、大学の側も、一方的に責められない事情がある。
「現在の過密な大学病院や大病院では、女医は半人分の仕事しかしないので、疎んじられている」
という事情があるからだ。その分、まわりの男性医師に負担がかかるので、医療崩壊の引き金になりかねない。
→ 女医さんがやってきた(はてな匿名ダイアリー)
実は、この問題は、解決が可能である。女医さんを二人導入すればいいからだ。給料半分で二人を働かせれば問題ない。
ところがなぜか、この職場では、そうなっていない。
女医さん、時間あたりで外来件数を比較すると、俺の1/3くらいしか働いてない。
それでいて時給換算すると俺より高い額をもらっている(なんで知ってるかというと雇用通知書を机の上に置いてたからだ)。
時間あたりで 1/3くらいしか働いてないのに、時給は高い。……こういういびつな状況なのが問題であるわけだ。
能率の低い女医さん(産休明けなどで不慣れである場合)には、給料を低くしてもいいだろう。その分、二人を雇用すればいい。それで問題は片付く。
これは、労働体制の問題ですね。これもまた、組織の問題。組織を正常にすれば、問題は解消する。
※ 実は根源には、大病院の勤務医のブラック体制がある。ここを何とかするのが先決だとも言える。
これを抜本的に解決するには、医師の総数を増やすことが必要だ。医学部定員の増大など。ところがこれに反対しているのが、日本医師会(日医)だ。医師の敵は医師だ、という矛盾。(正確には、勤務医の敵は開業医だ、となる。)
→ 出典
※ 参考記事もある。
→ 私が医療崩壊のトリガーになる未来
→ 東京医大の女子減点問題について、いち小児科医が思うこと
[ 余談 ]
※ 特に読む必要はありません。
都立高校では、男女別定員があるせいで、優秀な女子が入学できない。女子が差別されている……という指摘があった。
→ 東京医大だけではない。女子中学生も入試で不当に落とされているー都立高校の入試の話(千田有紀)
これには、次の反論もある。
たとえば西や日比谷は男子132、女子122(一般枠)。子供のうちは男子の数の方が女子よりも多いことを考えると、機会と能力との兼ね合いで、この程度の男女比の設定がどこまで不当と言えるかは難しいところな気も。
( → pollyannaのコメント / はてなブックマーク )
これはこれで、ごもっとも、という感じだ。
( ※ これを書いた人は、東大卒の女性なので、女性差別をしているわけじゃない。)
さらに、次の指摘もあった。
騙され過ぎ。 日比谷のようなトップ校では寧ろ男子の方が合格最低点が高い http://mommapapa.hatenablog.com/entry/2017nyushi-review 旧知の通り、男女の能力分布が異なるだけ。
( → kgkaazのコメント / はてなブックマーク )
これも、ごもっとも。元の記事では、「男女別定員制の緩和により合格するのは、ほとんどが女子である」という記述があるが、それは誤認であるわけだ。中位層の高校ではそうだろうが、トップクラスの高校では逆になる(男子の方が優秀である)ことが多いわけだ。
( ※ 蛇足だが、男子の方が優秀だというのは、男子が個別で優秀だというより、集団を見ると優秀な人が多いという意味だ。男子でなく女子でも同様。)
一方で、次のこともありそうだ。
「特別優秀な男子はエリート校に入る。筑駒・開成・麻布など。その残りの男子が都立に行く。ならば、男子エリートを除いた残りでは、女子の方が優秀で当然だ」
つまり、高校受験をする人全体では男子の方が優秀だとしても、一番上の優秀な人を除いた部分(都立の受験者)では、女子が優秀で当然なのだ。
だから、都立の受験者という集団を見る限りでは、「女性の方が優秀な人が多い」という現象が起こるのだから、「女性の方が合格者が多い」というふうになって当然なのだ。
ここで、男女別の定員を出生率の割合で配分することは、不公平に当たるだろう。( ※ 筑駒・開成・麻布などに入った人の分が勘案されていないからだ。)
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以上、いろいろと要素がある。話はちょっと入り組んでいるので、簡単には一刀両断の結論を出さないでおく。議論の根拠となるような情報を示しておくにとどめる。
→ https://togetter.com/li/1252839
日大と聖マリアンナ大(ともに医学部)が怪しい。
他に、データ非公開の大学もある。
あと、防衛医科大学校も。
会長就任→そこそこの実績→長期支配→独裁(終身支配)
という流れは社会の至る組織に見られ強固です。定年制導入で有形無形の権限を放棄させる、関係を断つ位でないと名誉顧問とか相談役といった責任を問われない形で院制が敷かれてしまうような。
定年制は実質的にクビを意味することが多い。
> 名誉顧問とか相談役
それも定年制の対象です。たとえ無給であろうと。