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政府は医療の個人番号を導入することを決めた。医療版マイナンバーというべきもの。
《 医療版マイナンバー導入へ 2020年度から本格運用 》
厚生労働省は26日、マイナンバーの医療版とも呼ばれる「医療等ID」を導入することを決めた。個人の健診結果や診療録(カルテ)などの生涯にわたる医療情報が、病院が変わっても確認できるようになる。
IDは新たに発行するのではなく、20年度中に個人単位化する公的医療保険の被保険者番号を活用する。現状の番号は原則として世帯ごとに管理され、転職や引っ越しなどで健康保険の加入先が変わると、情報が引き継がれなかった。
( → 朝日新聞 )
このこと自体はいいのだが、安全管理を気にするあまり、利用に制限がかかるようだ。話は次のように続く。
一方で、本人が関与せずに被保険者番号が流通・利用されるような情報漏洩(ろうえい)のリスクも抱えることになる。そうならないように、厚労省は番号を取り扱う医療機関などを対象としたガイドラインをつくるなど対策を強化する。データの活用には、利用目的が明確で安全管理措置が講じられているなど、一定の基準を求める。
この方式だと、医療機関はデータにアクセスできるが、薬局はアクセスできないのだろう。ま、それはそれで仕方ない。薬局がカルテの内容を知るべきではない。(やりすぎだ。)
とはいえ、薬局は、処方箋の状況だけは知るべきだろう。つまり、同じ医療番号を使って、「薬局同士で患者の薬剤データを共有する」ということだ。
これはつまり、「お薬手帳を電子化して共有する」ということだ。
これが実現することが好ましい。しかるに、現実にはできていないし、将来的にもできていない。だから、「実現させよ」と本項で提案したい。(この機会に。)
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実を言うと、「処方箋の電子化」ということならば、すでに述べたことがある。ずっと前に。
→ 薬局が多すぎる: Open ブログ
「泉の波立ち」時代から、何度も述べているわけだ。
それにしても、現在のお薬手帳は、紙のノートを使っているが、これは時代錯誤的だ。さっさと電子化すべきだろう。
《 加筆 》
コメント欄で教わったが、お薬手帳の電子化は、民間レベルではすでに実現しているそうだ。部分的な連携も実現している。詳しくは下記。
→ 電子お薬手帳(電子おくすり手帳)|harmo(ハルモ)|医療機関・薬局の方へ
これを全面的に展開すればいいわけだ。ただ、1事業者のシステムに統一していいのかどうかは、また別問題。かといって、複数事業者のシステムが併存するのも問題だ。できれば公的に統一してもらいたいが。
……と思ったのだが、さらに調べたら、「JAHIS電子版お薬手帳データフォーマット」というのがあるそうだ。もっと詳しい情報については、読者がご自分でお調べください。
[ 付記 ]
以下は、細かな話。(読まなくてもよい。)
お薬手帳と医療個人番号は、共用してもいいか? いいだろう。
ただし、システムは別個とする。カルテの情報と、処方箋の情報は、別仕立てだ。(薬局がアクセスできるのは、後者だけだ。)
パスワードはどうするか? もちろん、患者本人が管理する。一方、患者のパスワードを知らなくても、医者は薬局は自分のアカウントから自分のパスワードで、患者のデータにアクセスできる。
ここで問題だ。患者のパスワードは、二つのシステムで共用可能とするか? 「イエス」と答えたい。というか、共通のパスワードを使うことを原則とするべきだ。いちいち別個にする必要はない。
……と思ったのだが、訂正します。パスワードをどうするかは、各人が自分で決めればいい。それだけのこと。
[ 参考 ]
以下は、細かな話。(読まなくてもよい。)
参考で、古い記事を引用しよう。(2015年)
「薬歴を未記載にしたまま、記載したことにして、その金を請求していた」という問題があった。
一部の調剤薬局チェーンで、患者の薬歴が未記入のまま放置されていたことが朝日新聞の報道で明らかになった。
国の負託を受けた保険調剤薬局が、患者や健康保険に対して「薬剤服用歴管理指導料」を請求する一方、料金徴収に必要な算定要件である薬歴(薬剤服用歴)をつけていなかったというのだ。
薬剤服用歴管理指導料は、(1)〜(5)をすべて行った場合が、処方せん1回につき410円。本コラムで再三取り上げているように、(3)のおくすり手帳への記載をしなかった場合は340円。患者は、年齢や所得に応じて、このうちの1〜3割を自己負担する。
( → diamond online 2015年2月26日 )
これが問題になったのが、2015年2月ごろ。そして、さらに 24日に、次の報道があった。
2014年中に全国の調剤薬局1220カ所で81万件を超える未記載があったことが判明した。全調剤薬局の約2%に上る。業界団体が自主点検したもの。
( → 朝日新聞 2015年6月24日 )
政府は、過剰に取った金を返金させるということだが、罰則はなし。ずいぶんと甘い話だ。
そんなに番号ばかり割り当ててもまともに運用されるか疑問です。マイナンバーが賢く運用され、行政の生産性に対する効果が検証されてからでも遅くないように思います。
薬局でも情報シェアしてもらえてるなぁ
調べたら、一部で、お薬手帳の電子化と連携は実現しているようですね。
http://www.harmo.biz/medical/