2018年07月25日

◆ 自動運転車と自動ブレーキ

 自動運転車では自動ブレーキが作動しないことがある。嘘みたいだが、ホントの話。

 ──

 自動運転車では、運転が自動化される。アクセルもハンドルも自動化される。「ならば、ブレーキも自動化されるはずだ」と誰もが思うだろう。ところが、違う。アクセルもハンドルも自動化されるのだが、ブレーキだけは自動ブレーキが働かないことがある。嘘みたいだが、ホントの話だ。

 以下では、ウーバーと日産の例を示す。

 ウーバー


 ウーバーでは先日、自動運転車による死亡事故があった。これは「自動運転車が未熟だからだ」と報道されることが多い。しかし、違う。ここでは、自動運転者が未熟だったのではなく、自動ブレーキが働かなかったのだ。それが死亡事故の真の理由だった。
 正確に言えば、こうだ。
  ・ ウーバーの自動運転車は、ボルボの車を使った。
  ・ ボルボには高度な自動ブレーキが搭載されていた。
  ・ ウーバーは自社の自動運転システムを搭載した。
  ・ そのときボルボの自動ブレーキを強制的に解除した。
  ・ ウーバーは実験走行をした。
  ・ 事故の直前、ウーバーの自動運転システムは、危険性を検知せず。
  ・ 一方、ボルボのシステムは危険性を検知して警告した。
  ・ しかしシステムが解除されたので、ブレーキは発動せず。
  ・ そのせいで、自動車が衝突して、歩行者は死亡。


 まるで落語か冗談みたいなデタラメだ。このデタラメのせいで、死亡事故が発生したわけだ。呆れるしかない。
 出典は下記だ。
 《 ウーバー自動運転車事故、制御下で緊急ブレーキが無効 》
 ウーバーが使用した2017年型ボルボ XC90の改修されたレーダーシステムは、事故の5秒前に歩行者を観察したが、「自動運転システムのソフトウエアは歩行者を当初、不明の物体と分類し、その後に自動車、それから自転車として分類した。その過程で、その後の交通経路の予想が定まっていなかった」という。
 事故の1.3秒前には自動運転システムが緊急ブレーキの作動が必要と判断した。ところが NSTB によると、ウーバーの説明では、ボルボ XC90は「自動車が誤った動作を起こす可能性を低減する」ためコンピューターの制御下にあった一方、緊急ブレーキシステムは無効にされていた。
( → ロイター

 同様の記事は、他にもいくつかある。たとえば、下記にも詳しい。




https://amzn.to/2Lz0c9b


 日産


 ウーバーの場合は、実験車だったから、まだマシだった。台数はきわめて限定的だったからだ。
 一方、日産はもっとひどい。大量の市販車を販売しているが、これが同様の問題をかかえているからだ。

 車名は、セレナだ。セレナには自動運転の「プロパイロット」という機能を搭載した車種がある。これは完全ではないにしろ、自動運転を実現するはずだ。
  → 高速道路で自動運転!日産「プロパイロット」は想像以上にすごかった | カーナリズム
 この記事で述べているように、高速道路で自動運転が実現する。つまり、時速 100km/h での自動運転が実現する。
プロパイロットのシステム作動時は、設定された車速(約30〜100km/h)の範囲内で、先行車両との車間距離を保つよう制御し、それに加え車線中央を走行するようにステアリング操作を支援します。
( → 高速道路で自動運転!日産「プロパイロット」は想像以上にすごかった | カーナリズム




 ところが、このプロパイロットというのは、自動運転の機能はあるが、自動ブレーキの機能は不完全なのだ。そのことは、日産自身が明示している。
 《 エマージェンシーブレーキについて 》
車速約10km/h〜80km/hの範囲で作動します。
(車速約60km/h以上では、歩行者に対しては作動しません。)
( → 日産:セレナ [ SERENA ] スペシャル 取扱説明書

 セレナの取扱説明書には、自動ブレーキの作動範囲が「 約10km/h〜80km/h 」と明示されているのだ。つまり、80km/h を超えた速度では、不作動である。
 つまり、81km/h 〜 100km/h という範囲では、「自動運転は作動するが、自動ブレーキは作動しない」という状態になっている。これはウーバーの状態にそっくりだ。
 冗談みたいなことになっている。しかもそれが、大量に販売されているのだ。危険な暴走機械を大量販売しているようなものだ。

( ※ 実は、正確に言うと、セレナの自動ブレーキは、高速域で、まったく作動しないのではなく、不完全に作動する。衝突を完全回避することはできないが、衝撃を弱める程度の衝突に減じることはできる。……その意味では、完全解除のウーバーよりは、マシだと言える。)
 
 ──

 なお、この問題は、根源的には、日産の技術が低いことによる。
 自動ブレーキの作動範囲が「 車速約10km/h〜80km/h 」とのことだが、こんなふうに高速域で不作動となるのは、(単眼カメラ方式を採用する)日産の自動ブレーキだけだ。
 ミリ波レーダーやステレオカメラを使う他社製の自動ブレーキなら、時速 120キロ以上でも正常に作動するのが普通だ。スバルもトヨタもマツダもそうだ。日産の自動ブレーキだけが駄目なのである。この件は、下記で詳しく述べた。
  → 自動ブレーキの作動速度: Open ブログ

 こういう問題を回避するために、国交省の自動ブレーキ試験では、高速での試験をするべきだ。なのに、そうせず、60km/h までしか試験しない。
  → 自動ブレーキ試験の欠陥/高速バス衝突事故: Open ブログ
  → 自動ブレーキ試験の欠陥 2: Open ブログ

 で、60km/h までの試験で合格したからという理屈で、日産車に満点評価を与えている。80km/h 以上ではまともに作動しない、とメーカーが明示しているのにもかかわらず、だ。
 呆れる。国交省の頭は、「日本には高速道路がある」ということをまったく理解できないようだ。田舎の狭い道路のことしか考えていないんだな。

 ま、国交省が馬鹿なのは仕方ないが、日産がその馬鹿さを真似しているのは問題だ。自動ブレーキの性能が低いのは仕方ないとしても、自動ブレーキの性能が低いまま高速の自動運転を実行するというのは、「気違いに刃物」「馬鹿に銃砲」みたいなものだ。危険極まりない。
 いったい何だって、そんな危険なことをするのか? 自動ブレーキが 80km/h までしか効かないのであれば、自動運転もまた 80km/h までに制限するのが当然だろう。その常識がないのだろうか? 

 かくて、「自動ブレーキが効かないのに、自動運転を実行する」という馬鹿の見本みたいな自動車が販売されている。「アクセルとハンドルはあるけれど、ブレーキはありません」というようなものだ。呆れるしかない。
 で、こんな欠陥商品を「自動運転車」として販売中だというのだから、日産にも呆れるし、国交省にも呆れる。まるで、そろって頭が熱中症だ。



 [ 付記 ]
 参考記事。国交省が自動運転について新基準を出すそうだ。自動車線変更について。
 《 車の自動車線変更、手放し運転防止へ 国が新性能基準 》
 車が自動で車線変更する機能が普及し始めたことを受け、国土交通省は安全性能についての基準を新たに設けて、メーカーに義務づけることを決めた。機能を過信した「手放し運転」を防ぐ機能を必須とするなど、国として安全性を担保する狙い。
 運転者による方向指示器の操作で作動し、車線をまたぎ始めてから5秒以内に完了するよう定める。運転者のとっさのハンドル操作が常に自動制御よりも優先される性能も必須とする。
 自動車線変更や自動ブレーキなど、現状で実用化されている自動運転技術はあくまで「運転支援」の段階。国交省の担当者は「先進機能を過信しないようルールを徹底しながら、新しい技術を安全なかたちで社会になじませていきたい」と話している。
( → 朝日新聞 2018年7月23日

 まあ、国交省がいろいろ考えているのはいい。ただ、その根本が、「自動車メーカーのため」であって、「消費者のため」になっていない。そのせいで、「アクセルとブレーキは自動化されるが、自動ブレーキは効かない」なんていう欠陥商品を容認することになる。
 進める方向が反対だろう。今なすべきことは、「アクセルとブレーキは自動化されるが、自動ブレーキは効かない」という自動車ではなく、「アクセルとブレーキは自動化されないが、自動ブレーキは効く」という自動車だ。そういうものを先に実現するべきだ。
 なのに、それとは逆のものを容認するというのでは、自動車は「走る凶器」になりかねない。
 そして、そのことは、ウーバーの事故で現実化しているのだ。このままだと、セレナによる衝突事故も、高速道路で起こりかねないし、死者も出かねない。やばいですね。

posted by 管理人 at 23:59| Comment(4) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
セレナe-POWERの3000q走行のユーザーとしての見解。
プロパイロットは自動運転でなく同一車線維持+オートクルーズ(指定速度維持 前車追随)というべき機能でメーカーもユーザーも
自動運転とまでは認識していない。それを承知での購入である。

高速道路上で人間を避けるべくブレーキ操作や回避行動は約40万qの走行歴からは経験したことはない(小動物はある)

プロパイの盲点はある。高速道で左から合流する車両があるとき、前車が追い越し車線へ回避することがあるが
走行車線上のセレナは前方に空きが生じたので車間距離を詰めるべく加速してしまう 現状維持がいいのだが杓子定規に詰める。

流入する車からは、セレナは入れさせないよう意地悪しているように見えるだろう。
つまり流入車両との関係は判断できていない。これはカメラの優劣ではなくソフトの問題である。

同様のことが路上の人間にも当てはまる。例えば工事の人間が車両を認識していながら、少し車線側にはみ出たとする。
これを回避すべく若干進路を変えるのが人間の判断だが、現状の画像認識はその工事人の意思まで判別はできない。飛び出す予兆と判断するかもしれない。
そこで急ブレーキをかけると危険だ。後続車からは車高の高いセレナが視界を邪魔し工事人が見えてないので意味も無く急減速したと思うだろう。

このように人間や流入車両の挙動や意思をソフトが判断するには高次なソフトが必要で過渡期である現状では無理だろう。
かといって実走行でデータを集めないとどこに力点を置くのが最適かも分からない。

本サイトのような問題提起は改善につながるのは歓迎すべきで異論はないが、セレナのオーナーとして高速域で人間を察知し
急ブレーキをかける必要性は感じてなく、誤判定や過剰な反応の方を懸念している。

体感的にはプロバイは高速道の疲労軽減と安心感の増加はある。最悪運転中気を失っても大事故にはならない。ブラッシュアップの必要性は多々感じるが
よくぞアタマの固いお役人が半自動運転を認可したとは思う。
Posted by 検証家 at 2018年07月26日 03:20
> 高速域で人間を察知し急ブレーキをかける必要性は感じてなく、

 対人じゃなくて対物が問題なんです。
 韓国だったと思うけど、トンネルで事故があって自動車が数珠つなぎになっているところへ、後方からやってきた大型トラックがぶつかって、尻を突かれた自動車が炎上して大惨事……という事例があった。これは大型トラックに自動ブレーキがあれば起こらなかった惨事。
 高速道の運転で、道路上に自動車や鹿や障害物が止まっていて、ぶつかることは考えられる。特に夜間や雨天だと危険。
Posted by 管理人 at 2018年07月26日 06:29
下記のサイトでテスラの完全自動運転の動画が見れます。8台のサラウンドカメラと12個の超音波センサー搭載のようですがこれくらいは必要なのでしょう。

オートパイロット
https://www.tesla.com/jp/autopilot

先日、前の車に追従して、右折しようとしたら、赤信号で横断歩道を渡る自転車にあと少しで衝突するところでした。こんな状況では自動ブレーキは作動しないだろうと感じました。
Posted by skyblue at 2018年07月28日 15:59
 情報ありがとうございました。さらに調べると、次の情報を得ました。

 ──

Model 3は自動運転に必要なハードウェア機器を搭載しており、ソフトウェアを更新するだけで完全自動運転車 (Level 5) になる。

最新モデルのModel SやModel 3には必要な機器が搭載されている。センサーとしてはカメラをクルマの周囲に8台搭載している。また、レーダーはフロントに1台、超音波センサーは12台搭載している。このようにTeslaはLidar (レーザーセンサー) は使わないでカメラがクルマの眼となる。センサーのデータは車載スパコン「Nvidia Drive PX2」 で処理される。

 → http://ventureclef.com/blog2/?p=3369
Posted by 管理人 at 2018年07月28日 16:07
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