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「防災庁を設置せよ」
というふうに私はこれまで何度か提唱した。
→ 防災庁を設置せよ: Open ブログ
→ 防災庁を設置せよ 2: Open ブログ
→ 洪水も噴火も防災庁が必要: Open ブログ
→ 防災研究所の必要性: Open ブログ
理由は、いろいろと述べられているが、目的は共通している。「自然災害のときの被害を最小化すること」だ。自然災害そのものは避けられなくとも、被害を最小化することは可能だ。だから、そのための省庁をつくれ、というわけだ。なぜなら、現実には、そのための部門が、政府のどこにも存在しないからだ。
( ※ 一応、国交省の各部門[ダムや河川や山林など]が個別に対応しているようだが、統一的な部門は存在していない。また、目的は防災ではない。あくまでその部門の管理だけである。たとえば河川や山野の管理。防災は二の次だ。)
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こういう事情であるから、防災庁を作れ、という声は、民間にも上がっているらしい。政界にも要望が届いたようだ。しかるに、政府はその要望を拒否することを決めた。
《 防災省設置「必要ない」 菅官房長官 》
西日本を中心とした豪雨災害を受けて、防災対応に特化した「防災省(庁)」を設置すべきだとの意見があることについて、菅義偉官房長官は17日の記者会見で、設置の必要はないとの認識を示した。
菅氏は、2015年3月に取りまとめた危機管理のあり方に関する報告で、「初動対応は内閣官房が一元的に総合調整を行うなど省庁横断的な対応がなされており、平時から大きな組織を設ける積極的な必要性はただちに見いだしがたい」と結論付けていると指摘した。
( → 朝日新聞 2018-07-18 )
これを読んで、唖然としますね。あまりにも知識がないからだ。
第1に、「初動対応」を防災庁の目的だと思っているようだが、とんでもない勘違いだ。初動対応は、「被害が起こったあとの処理」であって、防災庁の目的とは違う。
比喩で言えば、防災庁の目的は、卵が割れないようにすることだ。一方、官房長官が言っているのは、割れた卵の処理だ。全然、意味が違う。
割れた卵の処理をするのは、それぞれの自治体(および政府や復興庁)の仕事だ。防災庁は関係ない。
第2に、平時にこそ、事前の準備をするべきだ。たとえば、ダムの管理の方法は、平時にこそ定めておくべきだ。ダムの操作を間違えて、洪水を起こしたあとでは、防災庁の出番はない。卵が割れたあとで、「卵を割らない工夫」なんて、やっても意味がないからだ。
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以上のことから、官房長官(つまり政府)は、防災庁の意味をまったく理解できていないことになる。勘違いして、妄想しているも同然だ。これは藁人形論法(ストローマン論法)でもある。
→ 宇多田ヒカルさんのツイート、ネットやツイッターでとてもよく見られる「ストローマン論法」
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人々は言う。
「被害をなるべく起こさないことが大切だ。あらかじめそのために働く組織がないので、ぜひとも必要だ」
政府は答える。
「被害が起こった後で働く組織は、特に必要ありません」
呆れる。これじゃ、問答になっていない。(被害の「前」の話をしているのに、被害の「後」の話で答えている。)
政府がコミュ障のような状態だ。(安倍首相の国会答弁の物真似か。)
→ Google 検索結果
【 関連項目 】
防災庁の必要性については、本項の初めに、いくつかの項目を列挙した。
他に、次の項目もある。( 前項 )
→ ダム管理を気象庁に移せ: Open ブログ
※ 「防災庁にいる、気象庁の出身者に、権限を渡せ」
と示している。ここでは、防災庁が必要となる。
防災庁がないと、この方針も実現しづらい。
Wikipedia によると、対象は東日本大震災だけらしくて、組織は「震災発生から10年となる2021年(平成33年)3月31日までに廃止されることとされている」そうだが、対象を拡張することで、組織を生き延びさせよう、という動きもありそうだ。
ただ、いずれにせよ、被災の発生後の話は、防災庁の対象外。
(国土強靭化計画?
省庁新設は政治的リスクがありますし。
僕の短い人生における経験則では、ストローマン論法はベテラン政治家なら真意を隠すために自然と出せる、という印象です。
防災減災災害対応を目的として国有資産を一元管理する防災庁、いいですね。
いつも勉強させて頂いており、ありがとうございます。
むしろ、東京大空襲や広島原爆を受けて大被害に遭ってから、零戦や戦艦大和を開発するようなものでしょう。
主たる目的ではないが、まったく見当違いというわけでもないと思います
起こった災害に対処するのも「防災」に含まれるのが一般的