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山の土砂崩れ対策には、砂防ダムがある。それに似た治山ダムもある。その違いは下記で。
→ 治山ダムと砂防ダムの違いについて | 高知県庁
どちらにしても、土砂崩れを止める効果があるので、これができると、「一安心」と思う人が多いようだ。そして、そう思って安心したまま、逃げずにいたら、大量の土砂崩れが襲って、死んでしまったそうだ。「ダムで止めることのできる量には限界がある」とわきまえていなかったせい。
2014年、広島市内で77人が死亡した土砂災害を経て、同市安芸区に2月に完成した治山ダム。しかし、西日本豪雨で大量の土砂がダムを越え、団地の住民4人が亡くなった。ダム建設を要望してきた男性の18歳の孫も行方不明に。「ダムができて安心してしまったんよ」。
広島市安芸区矢野東7丁目の梅河(うめごう)団地。豪雨に見舞われた6日夜、約60棟の民家のうち約20棟が土砂にのまれ、倒壊した。
( → 悲願のダム、孫を守れなかった 広島 西日本豪雨:朝日新聞 )
ダムは、ある程度は土砂崩れを阻止する効果があるが、それ以上に、人を安心させて、避難行動を阻止する効果がある。物的な被害は減少するが、人的な被害はかえって増える。(尻を重くするので。)
4750万円でダムを建設して、このざまだ。
昨年8月、県は梅河団地の奥で土石流を未然に防ぐ「治山ダム」の建設に着手。予算4750万円。幅26メートル、高さ8メートルのダムが今年2月、完成した。
これで安心じゃね」と住民らが言葉を交わす中、県や市の職員が繰り返しこう訴えていたのを、神原さんは覚えている。
「これで安心できるわけではありません。何かあったら必ず逃げて下さい」
(しかし)「いくら役所の人に『安心しちゃいけん』と念押しされてもね、やっぱりダムができてうれしかったし、安心してしまったんよ」。そう振り返る。
( → 悲願のダム、孫を守れなかった 広島 西日本豪雨:朝日新聞 )
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似た例もある。
《 土砂に埋まった住宅地、1mもかさ上げされた 広島・呉 》
1階の窓の半分まで砂に埋まった民家。扉まで埋まった車。どこが道なのかわからない――。大規模な土砂災害に襲われた広島県呉市天応地区では大量の砂が残されていた。
たまった土砂で、1メートル程度はかさ上げされたようになっている場所もあった。
近くに住む 50代の女性は、「このあたりから山が崩れている場所は見えない。大量の土砂がどこから来たのか不思議。こんなことになるなんてまったく思わなかった」と話す。
安田教授によると、これまでの土石流対策は、砂防ダムで土砂をためて下流には流さない対策をとってきたが、土砂量が多くなると砂防ダムだけで防ぎきれない。「土砂を流す対策も考えたほうがいい」と指摘した。
( → 朝日新聞 2018-07-16 )
「このあたりから山が崩れている場所は見えない」というが、見えようが見えまいが、このあたりは山裾から遠くない場所にある。
こんなところにいて安心しきっている方がおかしい、と言える。
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結論。
津波でも、洪水でも、土砂崩れでもどれも同じだが、何よりも大切なのは、避難行動なのである。
なのに、「防潮堤ができたから安全だ」「堤防ができたから安全だ」「砂防ダムができたから安全だ」なんて思って、避難行動を取らずにいると、巨大な自然の力が押し寄せて、ダムを破壊して、人々に被害をもたらす。……毎度毎度、この繰り返しだ。
4750万円でダムを建設しても、人命を救う効果は弱かった。それよりも、「サイレンを設置して、避難行動を強力に促す」というふうにした方が、はるかに効果的だっただろう。ものすごい音量でサイレンを流せば、人は否応なく、避難行動を取らずにはいられなくなる。
しかも、サイレンの設置費用は、格安で済む。4750万円もかかるはずがない。
費用対効果の面で、砂防ダムや治山ダムは、著しく効率が低いのだ。
しかも、「1回使ったら、使い捨て」である。二度目の土砂には使えない。(すでにダムは埋もれているからだ。)
今回もそうだったようだ。証言によると、7日に観察したときには、治山ダムが埋まっていたらしい。
梅河団地奥の治山ダムを7日、確認した県によると、ダムは決壊しておらず、大量の土砂がたまっていたという。
( → 孫を守れなかった…長年の悲願、そのダムすら越えた土砂:朝日新聞 )
そしてそのあとで、土砂崩れの第二陣が襲った。そして土砂は治山ダムを乗り越えて、人家に襲いかかった。
[ 付記 ]
砂防・治山ダムよりも、サイレンの方が有効だ。
ただしサイレンにも弱点がある。「サイレンを鳴らしても、たいていの場合には、空振りになる」ということだ。実際に土砂崩れが起こることは、まずないだろう。100回鳴らしても、99回以上は土砂崩れは起こるまい。実際に土砂崩れが起こるのは、1000回にいっぺんぐらいの割合だろう。
それでも、そういう場所が 1000箇所あれば、どこかで1箇所ぐらいは土砂崩れが起こることになる。だから、「まったくの無駄」ではないのだ。
万一の危険を避けるために、豪雨のたびに避難所に逃げる必要がある。……そういう面倒がいやならば、山裾には住まないことだ。
そもそも広島のような危険な土地(まさ土の土地)で、山裾なんかに住むことが間違っているのだ。この件は、別項で述べた通り。
→ 広島で豪雨被害が多い理由: Open ブログ
