2018年07月11日

◆ 堤防決壊による被害(岡山で)

 今回の豪雨では、広島で土砂崩れの被害が多かったが、岡山県では洪水の被害が多かった。では、どうして? 堤防の決壊があったからだ。

 ──

 死者が多いのは広島と岡山だ。広島では土砂崩れが多かった。この件については、前項で詳しく論じた。
 一方、岡山では、真備町の被害が甚大だった。では、その理由は? これについてはすでに報道されたとおりだ。「堤防の決壊」である。
 以下、具体的に見てみよう。

 被害の甚大さは、次の動画でもわかる。あたり一面が氾濫した洪水で水没している感じだ。




 こうなったのは、堤防の決壊があったからだ。決壊の場所は、下記だ。


kekkaiten.jpg
出典:時事ドットコム


 詳細な場所は、Google マップで示せる。(駅の南)
  ※ 橋の上から見える位置。





 決壊の現場の映像も得られる。







kekkai-ti.png


 見ればわかるように、堤防が完全崩壊している。
 この点では、鬼怒川と同じだ。
  → 鬼怒川の堤防の決壊地点の画像

 なお、次の報道もある。水害対策の工事を計画していたが、今秋から工事する予定だったので、今回は間に合わなかった、という話。
 1972年にも堤防が決壊して水害が起きた。その後も大雨で用水路や側溝などが氾濫する被害にたびたび見舞われてきた。
 こうした被害を防ごうと、国土交通省は合流地点を現在の場所から4.6キロ下流に移し、小田川の水位を下げる付け替え工事を2014年度に事業化した。今秋から川幅の拡大に向けた工事に着手し、来年度以降、整備を本格化させる計画だった。
 前野教授と河川事務所の関係者はともに、「事業が完了していれば、被害は軽減できたかもしれない」と指摘している。
( → 2河川合流、高い危険度=堤防決壊の岡山・真備町地区−過去に水害、改修予定:時事ドットコム


 ──

 以上で、事情が判明した。簡単に言えば、こうだ。
 「岡山では真備町の被害が甚大だった。その理由は、堤防の決壊が起こったからだ。そうなったのは、水害対策の工事が間に合わなかったからだ」

 逆に言えば、水害を防ぐにはどうすればいいかもわかる。こうだ。
 「豪雨で多数の死者が出るのは、堤防の決壊が理由である。たとえ豪雨があっても、堤防の決壊だけは絶対に防がなくてはならない」

 ここまではわかっている。問題は、その方法だ。そこが肝心だ。

 堤防の決壊を防ぐためには、堤防の工事が必要だ。しかし、真備町の例からもわかるように、堤防の工事には巨額の費用がかかることが多い。巨額の費用を用立てるのは困難だ。これでは工事が間に合わないことも多いだろう。
 困った。うまい方法はないか? 

 ──

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい方法はある。
 「堤防の決壊を防ぐには、堤防の全体を補強する必要はない。堤防の決壊する地点だけを補強すればいいのだ。長い河川の長い堤防のすべてを補強するのではなく、決壊する地点という少数の場所だけを補強すればいい。これによって、格安の費用で、堤防の決壊を防ぐことができる」


 ここで疑問が生じるだろう。
 「堤防の決壊が起こる場所を、あらかじめ予言できるのか?」
 と。
 もちろん、私は予言者ではないから、予言するようなことはできない。
 そこで、予言するかわりに、うまく指定すればいいのだ。つまり、決壊しやすい場所として、特定の場所を弱く作っておけばいいのだ。
 具体的には、特定の場所だけで、堤防の高さを低くする。下図のように。


 これは、「越流堤」という発想だ。
 このことで、特定の部分で川の水の氾濫が起こる。だから、その箇所でだけ、堤防を補強すればいいのだ。(コンクリで頑丈に。場所は数十箇所。)
 特定の箇所だけを補強すれば、河川の全体を安全にできる。だから、少ない費用で大きな効果を上げることができるわけだ。
 この件については、下記のリンク先(各項目)で詳しく論じた。そちらを参照。
  → 洪水防止の画期的な方法: Open ブログ
  → 洪水対策の越流堤: Open ブログ
  → 堤防決壊の原因と対策: Open ブログ



 [ 付記 ]
 次の参考記事もある。(あまり重要ではないが。)
  → 豪雨:倉敷・真備の堤防決壊、「バックウオーター現象」か



 【 補説 】
 「東京でも同規模の豪雨が襲ったら、大変な被害が出る」
 という話がある。
 《 豪雨が東京直撃だったら「死者7400人、被害総額64兆円」と専門家が試算 》
 中央防災会議の試算では、利根川や荒川などの堤防が決壊し、東京湾で大規模な高潮が発生した場合、最大約7600人の被害者が出ると想定されている。
( → (AERA dot.) - Yahoo!ニュース

 タイトルと本文が食い違っているので、この記事はかなりいい加減である。(数字は 7400 と 7600 で違う。対象も、死者と被害者で違う。)
 そもそも、この記事の仮定は、「堤防が決壊し、大規模な高潮が発生」だ。高潮はともかく、堤防の決壊さえ防げば、被害は大幅に減じることができる。
 その意味で、本項で述べた方法(越流堤など)で、堤防の決壊を防ぐことが、何よりも大切だと言える。上の方法をしっかりと理解してもらいたいものだ。それが東京都民の生死を左右する。

 一方、何も対策を取らないと、堤防の決壊によってとんでもない大被害が起こる危険がある。というのは、東京の「ゼロメートル地帯」というのは、ものすごく広いからだ。いわゆる東京の「下町地帯」がすっぽりと収まる。葛飾区や荒川区などだ。


tokyo-0meter.png
出典:東京都建設局から孫引き

   ※ 荒川の堤防決壊では、水深は最大で 10メートルになる。
     そういう地域では、2階にいる人も水没するね。


 ゼロメートル地帯に住む人口は 150万人。( → Wikipedia ) したがって、最悪では、150万人が死ぬかもしれない。
 実際には、そこまではひどくないだろうが、生命は奪われないまでも、住居などの財産の被害(床上浸水など)は、100万人ぐらいの影響があるかもしれない。死者だって、地下室にいて死ぬ人も出てくるかもしれない。(蟻の巣に水が入ったように。)
 この問題は、東京の「ハザードマップ」や「ゼロメートル地帯」などの用語で、いろいろと検索すると、多くの情報を得られる。

 ──

 なお、東京の水害対策については、別項で詳しく論じた。そちらを参照。
  → 東京の水害対策(荒川・江戸川): Open ブログ
  → 東京の水害対策の指針(まとめ): Open ブログ
  → サイト内 検索

 ※ 「遊水池が有効だ」というふうに示している。
 ※ 一方、八ツ場ダムもあるが、これは新潟に近いところにあるので、関東にはほとんど関係ない。
    → 八ツ場ダムの位置(地図)



 【 関連サイト 】
 広島県安芸区矢野東でも、氾濫で濁流に流された被害があったそうだ。二つの記事がある。

 (1)
 車が水没したそうだ。記事ではかろうじて助かった事例。
  → 車内に濁流、間一髪 県道1キロ流され 広島・安芸 - 毎日新聞

 (2)
 膝上までの水深で、動けなくなったが、ロープを持ってきてくれた人のおかげで、父と子が助かったという。残る母にもロープを渡そうとした。
 しかしその直後、濁流が押し寄せて、母は流されてしまったそうだ。希望をもって待っていたが、のちに、近くで遺体が発見されたという。
  → 命救いたい、私たちも 何度もボート往復/濁流にロープ 西日本豪雨:朝日新聞



 【 追記 】
 堤防の決壊の箇所は、8箇所もあったと判明した。


mabi-kekkai2.png
出典:毎日新聞


 ずいぶん多くの箇所でいっぺんに氾濫したことになる。だからこそあれほどの水害となったのか。
 なお、どうしてこういうことになったのか、理由はわかっていないようだ。(連鎖反応ふうに起こったのかもしれないが。)
 


 【 後日記 】( 2018-08-05 )
 水害から1カ月ほど立って、朝日新聞に検証記事が出た。
 「高馬(たかま)川が異常出水!」7日午前1時半ごろ、倉敷市災害対策本部に連絡が入る。
 須増国生(すますくにお)さん(57)はこの2時間前、高馬川の堤防からあふれる水を見た。あわてて自宅へ戻り、身支度を整えて避難しようとしたときには、水は腰の高さに。
 7日午前0時ごろには末政(すえまさ)川(同〈C〉)でも堤防が決壊し、家々が濁流に押し流されるのを複数の住民が目撃。
 中西部にある支流からの濁流は、そこから浸水域を広げ、災害時の拠点の真備支所にも押し寄せた。午前2時ごろ浸水が始まり、固定電話が使用不能に。三谷育男支所長は、迫る水を前に恐怖を感じた。午前3時40分に支所職員から「浸水で停電」と携帯電話で連絡が入る。支所は、機能を失っていた。
 浸水域は東部へと拡大。午前6時52分には、国土交通省が小田川北岸の決壊も確認した。このころ、東部の川辺地区の40代男性が自宅を出ると、くるぶしまで水につかった。男性は2階へ避難し、119番通報したがつながらない。水は昼すぎに2階まで上がってきたため、ベランダへと避難し、一面茶色となった街を見た。
 地域でみると、1級河川・小田川の支流で、3カ所が決壊した末政(すえまさ)川の近くに集中。末政川は7月7日午前0時ごろに決壊が始まったとみられており、近くに住む70代男性は「大きな音がして家がきしんだ。目の前で近所の家がえぐられ、一瞬で流された」と証言。周辺の家屋は大きく損傷しており、激しい濁流が突如襲ったとみられている。
( → あの日、真備に何が 西日本豪雨:朝日新聞デジタル

 午前0時の少し前に越水が始まり、それから30分ぐらいした午前0時のころにはあちこちで決壊が起こっている。上の  【 追記 】 の図でも示したように、あちこちで決壊が起こったようだ。

 では、対策は何か? 
 安倍首相は「川の浚渫(しゅんせつ)をせよ」というアイデアを開陳した。
 首相は西日本の豪雨災害への対応について、「全国的に川の浚渫(しゅんせつ)をしないといけない」などと語ったという。
( → 朝日新聞の転載

 しかしこれは、下手な考え休むに似たり。現場の川は川幅が狭いので、ちょっと浚渫したぐらいでは足りない。かといって、大幅に深く川底を掘っても、そういうのは無効だろう。(すぐに沈殿・堆積で、川底が埋まってしまう。)
 Google マップを見ればわかるが、その先で合流する川に比べて、小田川の川幅はあまりにも狭い。この川幅を拡幅することが、最善の策だろう。
 そう思って、念のために本項の引用記事を確認したところ、次の文句があった。(再掲)
 国土交通省は……今秋から川幅の拡大に向けた工事に着手し、来年度以降、整備を本格化させる計画だった。
 前野教授と河川事務所の関係者はともに、「事業が完了していれば、被害は軽減できたかもしれない」と指摘している。

 なるほど。事業が間に合わなかったんですね。タッチの差で、ひどい目に遭った。不運だったことになる。

 ただ、私としては、別の案をすでに示している。「越流堤」という案だ。本項でもすでに示している。(茶色い画像つき)
 このような越流堤の工事なら、安価で短期間で済むので、一挙に全国各地で完了することができる。それをやっておけば、真備町でも、決壊は避けることができたはずだ。床上浸水ぐらいはあっただろうが、決壊という最悪の事態だけは避けられたはずだ。その上で、何年間も掛けて、堤防の拡幅をすれば良かった。
( ※ 堤防の拡幅は、今ある堤防の外側に、別の堤防を新設する形でいい。堤防の二重構造化だ。)

 なお、堤防の拡幅は、地権などの関係で、手間取って進まない恐れもある。その場合は、特定の土地を使って遊水池にするといいだろう。似た例は、すでに別項で示した。
  → 越流堤と遊水池(佐賀県): Open ブログ

 なお、朝日の記事では、次の指摘も重要だ。
 倉敷市真備町で亡くなった51人のうち、8割以上の42人が住宅1階部分で遺体となって発見されていたことが、関係者への取材や朝日新聞の調査でわかった。42人のうち36人が65歳以上の高齢者。足が不自由だったり杖を使ったりする人らが多かったといい、避難が困難だったために自宅で亡くなるケースが大部分を占めていたことが浮き彫りとなった。

 ここで亡くなった人々は、避難できなかったせいで死んだわけだ。避難できていれば、死なずに済んだ。
 この点では、「避難訓練をしていた地域では死者ゼロ」という例が参考となる。別項(広島の被害と対策(西日本豪雨))で引用した新聞記事を、再掲しよう。
 《 土石流でもけが人ゼロの団地 結実した訓練と担当者制度 》
 広島県東広島市黒瀬町の洋国(ようこく)団地では、一戸建て49戸のうち約10戸が大破し、ほかの約10戸にも土砂が流れ込んだ。しかし、犠牲者やけが人はゼロ。
 団地では3年前から年2回、土砂災害を想定した避難訓練を続けてきた。毎回、住民の約4分の1が参加し、近くの老人集会所に実際に避難した。
 歩くのが難しい高齢者や障害のある住民が団地にいることも把握していた。避難を助ける「担当者制度」を考案し、民生委員ら5人を「担当者」に決めた。実際に介助ベルトを使って背負って運ぶ訓練もした。
 「英会話と同じで、繰り返していたらいつか覚えてくれると信じていた」
( → 朝日新聞 2018年7月19日

 こういうふうに「避難訓練」や「避難補助(担当者制度)」を十分に用意しておけば、真備町でのように大量の死者が出ることもなかっただろう。
 国交省の堤防整備がなかったせいで、氾濫は起こったわけだが、それはそれとして、真備町がきちんと避難訓練などの制度を整備しておけば、これほど大量の死者は出なかったはずなのだ。
 実際、真備町のうちの一部地区では、自主的に避難訓練をしていたので、死者ゼロで済んだという。
 真備町内のうち尾崎地区で、高台(標高約40メートル)にある地区内の熊野神社に、付近の住民約200人が自主的に避難、命をつないだ。神社の麓にある黒宮団地では、2011年の東日本大震災の後、年1回、神社に逃げる訓練を住民主体で行ってきた積み重ねが奏功したという。
 黒宮団地(約60世帯)は毎秋、水害を想定して熊野神社に逃げる訓練をしている。
( → 高台の神社へ―200人命つなぐ 訓練奏功の倉敷・真備町尾崎地区: 山陽新聞

 避難訓練というものがいかに重要かがわかる。この件は、前にも述べたとおり。
  → 豪雨で死者 百人以上: Open ブログ
posted by 管理人 at 23:59 | Comment(3) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ちなみに広島県府中町の決壊って防げますか?
木が流れをせき止めたのが原因って言われてる

Posted by カレー at 2018年07月12日 12:09
 これですね。
  https://www.fnn.jp/posts/2018071000000007TSS

 決壊を防ぐこと自体は、原理的に可能です。その箇所をコンクリ護岸で補強しておけばいい。

 問題は、その場所をあらかじめ予想しておくこと。流木によるせき止めがある橋のそばを、予想すること。
Posted by 管理人 at 2018年07月12日 12:36
川底より低い土地では排水システムが機能しなければ
雨水は自然に放流されないから
堤防決壊がおきなくても
大雨による浸水はたびたび起こるだろう
そういう土地では移転してもらったほうがいい

広島の決壊は流木とともにコアストーン(風化してない花崗岩)でせき止められたケースもあるようです
このばあい数トンもあるので簡単には取り除けない
使えない橋なんだから橋から先に取り除く方法もありです
Posted by 老人 at 2018年07月13日 07:51
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