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今回の豪雨については、先に予報などの話を紹介した。
→ 大雨注意報(史上1位?): Open ブログ
→ 河川水位情報: Open ブログ
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その結果は? 現時点での被害は、死者が百人を大幅に超える見込みとなっている。
81人が死亡、3人が重体、行方不明や連絡が取れない人は87人となり、被害者の数は増え続けている。
( → 西日本豪雨、増え続ける被害者 死者13府県81人に:朝日新聞 )
行方不明というのは、単に連絡が不通というよりは、土中または水中に埋もれていると見込まれているのが大半だ。つぶれた家を重機で掘り出したりするうちに、どんどん死者数が増えていく。(死者が判明していく。)
87人のうち、半数以上は死者と見込まれるので、死者は 120人を超えるだろう。最悪では 150人前後になるかも知れない。
これはとてつもない被害だ。死刑囚の数なんかとは桁違いだ。オウムのサリン事件の死者数よりもずっと多いぐらいだ。いかに大規模な事件であるか、よくわかる。
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では、この大量の死者の理由は、何か? 実は、かなりあっけない話だが、こうだ。
「高齢者が、大雨を甘く見積もっていたせいで、逃げ遅れただけ」
たとえば、娘夫婦から電話があって、「そろそろ避難しなくちゃね」なんて電話で話している最中に、洪水に襲われたりする。それ以外のほとんども、「高齢者が逃げ遅れた」ということが理由だ。
逃げ遅れた形はさまざまだ。
・ 自宅で逃げる準備をしていた
・ 自宅でのんびりしていた
・ 田畑や川などを観察していた
・ 自動車で道路を走っていた
いずれにせよ、洪水を甘く見積もっていて、逃げ遅れた。かろうじて間に合った人の言葉が興味深い。
「まだ大丈夫だと思っていた」
「まさかこんなことになるとは思わなかった」
「ここは安全だと思っていた」
いずれも似たり寄ったりだ。つまり、危険の警報ははっきりと理解していたのだが、あえて自己判断で警報を無視していたのである。
つまり、ここでは「警報を周知徹底すべきだった」というようなことは、成立しない。テレビや新聞や近所の話などを聞いて、危険性は誰もが知っていた。なのに、「自分のところは安全さ」と勝手に過信して、あえて警報を無視していたのである。
たとえば、最初のころに報道された土砂崩れ。山裾の土地が土砂崩れで埋もれた。
この現場。
左下の方に「戸の上中」という中学校があるが、ここが避難所に指定されている。土砂崩れのあった地点とは、目と鼻の先である。そこに避難することは、ごく簡単であったはずだ。なのに人々はあえてそこに避難することを拒んだ。かくて、土砂崩れに遭って、埋もれてしまった。
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このようなことはすべて一語で説明できる。「油断」だ。
これは、情報不足ではない。情報を聞いても、あえて情報を無視・軽視してしまうのである。
このようなことは、災害避難について一般的に成立する。先に詳しく説明した。グアテマラの火山噴火の例だ。
逃げる機会はたっぷりあったのに、「まだ大丈夫」と思って、逃げなかった。「油断」である。そして突発的に、火砕流が襲いかかった。
実は、東日本大震災の大津波のときでも、逃げる時間はあったのに、逃げずに見物していたら、津波に呑み込まれて死んでしまった……という人が多かった。
これと似たことが、今回の大噴火でも起こった。(あえてグズグズしていたせいで、逃げ遅れて、大量の死者)
とすれば、今後、日本でまた大地震か大噴火が起こったら、同様のことが起こるだろう、と推察できる。だから、震災関係者は、強固な避難勧告(または避難命令)を出すべきだ。火砕流が来てからでは遅いからだ。
( → 中米のグアテマラの噴火: Open ブログ )
では、どうすればいいか? それも、上記項目の最後に記してある。再掲しよう。
記事の核心はこうだ。
「避難訓練をしていた地域の住民は助かったが、そうでない地域の住民は助からなかった」
避難訓練をしていた地域の住民は、以前の訓練に従って、避難したので、助かった。ぐずぐずしていた老人たちは、説得されて、避難した。結果、全員が避難した。
避難訓練をしていなかった地域の住民は、警報を無視した。「火山のことはおれの方が良く知っている」と自惚れて避難勧告を無視したり、「まだまだ安全さ、噴火してから逃げれば十分さ」と楽観したりした。その後、噴火が起こると、ものすごく高速な火砕流に呑み込まれて、多数が死亡した。
( → 中米のグアテマラの噴火: Open ブログ )
話の後半には、「避難訓練をしていなかった地域の住民は、警報を無視した。そして死んだ」というふうに示してある。これが、今回の豪雨でも起こったことだ。
そして、それを免れる方法は、前半に書いてある。「避難訓練をしていた地域の住民は、以前の訓練に従って、避難したので、助かった」ということだ。
つまり、生死を分けるのは、「警報を受けて避難するかどうか」ということだが、その判断を正しく与えるのは、事前の避難訓練なのである。
警報を無視して死んだのは、お年寄りが多い。お年寄りは、新たな行動をしにくい。「いざとなったら特別な行動をしろ」と教えても、そういうことができない。
だから、「避難する」という行動を、あらかじめ何度も練習させておくことが必要なのだ。それを「新たな行動」でなく、「慣れた行動」とするために。
このことは前も書いた。
人に死をもたらすものは油断だ、ということがよくわかる。
そしてまた、油断しがちな人々の意識を変えるのが避難訓練だ、とわかる。避難訓練の大切さは、避難するときの動作をスムーズにすることではない。避難を上手にすることではない。避難を拒否して日常性に留まろうとする人々の意識を根底から変えることだ。
人はいざというときに、これまでにやったことのないことをやることができにくい。高齢者ほど、そういうものだ。そこで、あらかじめ何度か経験させることで、避難を拒否したがる意識を解消するのだ。
( → 中米のグアテマラの噴火: Open ブログ )
事前の訓練こそが人を救う。そして、そのためには、莫大なコストなどは必要ない。単に「やる気」さえあれば足りるのだ。意思の有無だけで、人々の生死が変わるのだ。
今回、百人以上の大量の死者が出たが、その死者を減らす方法はある。そのためには莫大なコストなどは必要ない。たったひとつ、「知恵」さえあれば足りる。その「知恵」によって、人々の「やる気」を促すだけでいいのだ。
【 関連項目 】
ついでだが、洪水そのものを減らす方法もある。それは、
「ダムの事前放流」
だ。つまり、
「大雨が予想されたら、あらかじめダムの無図を大量に放流して、ダムを空っぽのようにしておくこと」
だ。
こうすれば、大雨が降っても、空っぽのようなダムに大量の水を溜めることができるので、洪水・氾濫は激減するだろう。
詳しくは、下記項目で説明した。
→ 豪雨時のダムの事前放流: Open ブログ
川沿い(河岸段丘の川に近いほう)に家があるとか、扇状地の上に家があり、土砂崩れが起ころうものなら一発で埋まる状況だった、とか。
この手の災害が起こるたび、日本人の地理(中学高校で習うレベル)の基礎知識が不足してるのが遠因なのでは?と思ってしまいます。つまり、自分の住んでいる国土のことがわかっていない。
他所の経験をどこまで自分の糧にできるか、適切にできていれば昨年の水道管凍結も対策を講じられたはずです。やはり一定程度の強制性は排除できないかもしれません。
ところで、警報、勧告、指示、命令とある中で今回行政からはどの時点でどのレベルの発令があったのか、検証も必要じゃないかと。
必ず居るのが何とも……。
心配して見に行っても、何ができるわけでもないのに。
それで自分が巻き込まれていたのでは目も当てられない。
そして、こんな状況でもクソ真面目に通勤・通学しなければならない、という強迫観念。
で、流されてしまったり。
NHKの放送で繰り返し訴えていますが「命を守る行動」とは具体的にどうすることなのか、管理人様が書かれたように「訓練」によって刷り込むしかなさそうです。
災害対策は専門家が判断し、市民はそれに従うのみにするのが分かりやすく確実
人は自分の人生という短いスパンで考えたがる
「今まで凍結なんて無かったんだから、今回も大丈夫なはずだ!」ってね
歴史を知る科学者が論理と証拠で判断するのが良い
重大な指摘ですね。
→ http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000131206.html
本日のニュース番組によると、すでに 2000ミリを突破したらしい。それでいて、死者はゼロだそうだ。すごい。
たぶん避難訓練をしっかりやっていたのだろう……と思ってググったら、まさしくそうだと判明した。下記。
→ http://www.skr.mlit.go.jp/sabo/press/h29/pre_17_11_02.pdf
国の主導で見本のような避難訓練がなされていたらしい。避難訓練の効果の大きさがよくわかる。
それにしても、昨秋の訓練で、今回の災害だから、ちょっと話がうますぎる感じもある。
揚げ足取りをしたいようですが、残念でした。私の住んでいる地域に避難勧告が出たことはありません。山裾でもないし、川のそばでもないので。
関東ではたいていの地域がそうですよ。
> 川沿い(河岸段丘の川に近いほう)に家があるとか、扇状地の上に家があり、土砂崩れが起ころうものなら一発で埋まる状況だった、とか。
山裾にまで人家があるようなところは、平地の狭い地域です。狭い平地に人家がみっしりと密集している。広島の土砂崩れもそうだし、今回の門司もそう。三陸のリアス海岸の地域もそういう傾向がある。
これらの地域では、もともと土地が少ない上に、山裾だと土地が安価なので、山裾に住む人が出てきます。
一方、関東平野は広大であり、田畑がやたらと余っている状況なので、山裾に住む人はごく例外的です。稀に、人工的に切り開かれた断崖の下みたいなところに住む人もいるが。
いずれにせよ、危険極まりないところだが、安いところに住まざるを得ない人は仕方ない。無理に追い出すわけにも行かない。愚行権はある。
実際、きちんと避難すれば、死なずに済むことが多い。(雨ならば、事前に予想が付くので、避難が可能だ。大地震だと、そうではないかもしれないが。)
雨の量に応じて被害が出るわけでも無いと思う
「これだけの土砂崩れ、洪水が発生したのに死者ゼロ」というデータがあるなら説得力あるけど
あと住民の数にもよる
ググると結構広い村のように見えるが、住民は800人程度
馬路村は死者不明重症軽症すべてゼロだけど、
住家の全壊半壊一部床上床下もすべてゼロとなっています
避難者も7/9(月)23:00時点でゼロ
避難訓練が有効なのは同意ですが、今回の馬路村とはあまり関係はないと思われます
もう現地で豪雨は終わっているし、避難警報もどんどん解除されています。上の数値は無意味。
私の情報の出典は、テレビの報道です。ネットではない。
ミスリードというか、今回でいえば、馬路村は本項と関係があるんだよなと等と思ってしまうので
その辺りの自分勝手さに正直感情的になってしまって、言い過ぎてしまいました
一晩寝て、やりすぎたなと思い直しました
すみませんでした
そもそも本当に避難したかも分からないと思いますけど。だってこの村では土砂災害実際にはおこってないですし。
こんな村年寄りばかりだと思いますが、豪雨の中実際に避難したんですかねぇ。
こちらでは山間部で河川の決壊があり、酷いところでは2m程浸水しましたが過去にこのような被害が出た事は無く、住民の方々にとって完全に想定外だった為被害は甚大でした。
一方で10年に1度くらい浸水する地域(遊水地)の方々は、避難指示が出る半日前くらいに自動車を高台に上げ、1階の大事なものは2階に移すなどの準備を完了したそうです。結果的に田畑の浸水だけで済みましたが、心構えの差はとても大きいですね。
なんで一読者がそんなところまで口出しするのかまったく理解できない
平成30年07月09日 21時00分 現在
人的被害
死者 0(1) 不明 0(2) 重傷 0(0) 軽傷 0(1)
住家被害
全壊 0(1) 半壊 0(2) 一部 0(7) 床上 0(96) 床下 0(338)
非住家被害
公共 0(0) その他 0(6)
http://kouhou.bousai.pref.kochi.lg.jp/KH706.html
被害が大きかったのは、宿毛(すくも)市と大月町といった県西部で、馬路村のある県東部ではなかった。
ブログとして公開し、不特定多数の読者がいるんだから、色んな意見が出て当たり前でしょう。
しかも管理人さんは個性が強く博識とくれば、意見が衝突することもある。(読者たちも一癖あり、博識の方が多い)
独り言のブログなら「コメント欄」は設けないですし。
正確にいうと、本項と無関係なことを読者にコメントしてほしくないなら、管理人自身もコメントで無関係な話題を上げなければいいんじゃないか、ということです
私の希望というより、そのほうが管理人の意思に沿うことになりやすいんじゃないかという提案です
私ではなく、管理人が困る困らないということです
ただの提案なので、私がこのサイトについてクレームを言ってるとかそういうことではありません
被害を抑えられたのは避難訓練を実施していたからではない。(避難訓練が不要という意味ではない。あくまでも今回の豪雨で被害を抑えられた要因として、避難訓練の実施有無は無関係だったという事実)
であるならば、馬路村で被害をゼロにできたのはどうしてかということについて、避難訓練という視点から離れて考察するべきでは。
馬路村の方々は警戒は続けたほうが良いと思います
豪雨は終わっていますが、広島県府中町で洪水は今日も起きました
避難指示は氾濫のあとに出されました
水は土中に溜まっているので、いつ土砂崩れなどが起きるか分かりません
避難警報がないから避難しなくていい、というのが正解とは限りません
いずれにせよ災害に備えて普段からドリルをしていないと実際の判断ができないという管理人の意見には反論はないのでは。
東京でも防災訓練にちゃんと参加していないと咄嗟の時にうろたえることになりますよ。
http://shumiyama.web.fc2.com/tikei-tisitu-kikou.html
★この山域の気象
によると、馬路村付近は、もともと降水量が多いので(年間3500mm)、避難訓練も含めて大雨への対策をしていたようだ。一方、宿毛市と大月町は、それほど降水量が多くないので(同2000mm未満)、対策がされてなかったのかもしれない。