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米国と北朝鮮の交渉が進展した。
ポンペオ米国務長官は31日、ニューヨーク市内のホテルで記者会見し、6月12日にシンガポールでの開催を目指す米朝首脳会談の実現に向けて「過去72時間で実質的進展があった」と語った。
( → ポンペオ国務長官、米朝協議で「実質的進展」=トランプ氏「首脳会談2、3回も」:時事ドットコム )
《 米朝会談へ「真の進展」 正恩氏側近、米首都に 米長官 》
米朝両国が6月12日開催を目指す米朝首脳会談をめぐり、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の最側近、金英哲(キムヨンチョル)党副委員長と2日間にわたる協議をしたポンペオ米国務長官は5月31日午後、米ニューヨークで記者会見し、「(我々の会談には)真の進展があった」と語った。
( → 朝日新聞 )
“ We've made real progress in the last 72 hours in terms of setting the conditions” for a successful summit, Pompeo said.
( → Trump says talks with North Korea going 'very well' - CNNPolitics )
拙訳:「頂上会談の成功のための条件を設定するという点で、我々は過去72時間で真の進展を遂げた」とポンペオ氏は語った。
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一方、日本政府は、(北朝鮮のミサイルに対抗する)陸上イージスの大々的配備を進めている。同じ日の夕刊の記事。
陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備をめぐり、防衛省の福田達夫政務官が1日午前、秋田県庁を訪ね、陸上自衛隊の新屋演習場(秋田市)を候補地に決めたと正式に伝えた。
北朝鮮のミサイルから日本列島を守るため、2基を日本海側の北と西に配置することを説明。
( → 陸上イージス、防衛省が配備説明 候補地の秋田・山口へ:朝日新聞 )
米朝会談が進展しているというときに、何やっているんだか。
そもそも、米朝関係が改善して、和平条約が結ばれたりすれば、米国や韓国から北朝鮮へ援助金や援助物資が送られるはずだ。また、日本としても、国交回復と同時に、多額の援助金を出すことになりそうだ。(アメリカが「出せ」と言ったら、逆らえないはずだ。)
こういうふうに「敵に金を送る」ということをしながら、「ミサイル防衛網に莫大な金を投じる」というのは、矛盾しているだろう。アクセルとブレーキを同時に踏むようなものだ。馬鹿げている。
《 陸上イージス「1基1千億円弱」防衛省、試算を上方修正 》
防衛省は12日の自民党会合で、北朝鮮の弾道ミサイル発射に対応するため導入する陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の設置費用について、「1基1千億円弱」との見通しを示した。2基設置するため、計2千億円程度となる。
( → 朝日新聞 2017年12月12日 )
2千億円もの金を投じるが、そのすべてがほとんど無駄になりそうだ。
どうせなら、中国に対抗するために金をかけるとか、F-35 を買うとか、ユーロファイターを買うとか、そういうふうに「実質的に防衛力を高める」ために金を使う方がマシだろう。それならば、まだしも意味がある。
なのに、北朝鮮対策で、陸上イージス? これじゃ、金をドブに捨てるのも同然だろう。馬鹿げている。何やっているんだ?
どうも、頭が時流に追いつけないようだ。頭が1年前にタイム・ワープしているんだろうか? こんな政策を取る首相は、誰なんだ? 君の名は?
( ※ 本項は、「二つの別の出来事の矛盾関係を示す」という形で、話題にした。この二つを結びつけて考える人は少ないだろう。)
[ 付記1 ]
陸上イージスは、正確には、「完全な無駄」というわけでもない。有効となる範囲が広く、国土の広域をカバーできるからだ。
→ 政府:「陸上イージス」閣議決定 2基でほぼ全土カバー
その意味で、中国やロシアからのミサイルにも対抗できそうだ。
とはいえ、中国やロシアからのミサイルなら、中距離ミサイルではなく、ICBM が来るだろう。ICBM はマッハ 20 ぐらいの高速なので、(中距離向けの)迎撃ミサイルでは対抗できない。
その意味で、「中国やロシアからのミサイルに対抗できる」という意味は、ほとんどない。
また、仮に対抗できたとしても、そもそも陸上イージスという兵器そのものが、ほとんど無意味である。なぜなら、(高額なせいで数があまりにも少なくて)すぐに弾切れになってしまうからだ。敵が大量のミサイルで飽和攻撃を仕掛けたら、迎撃ミサイルはたちまち無効になる。これは原理的な問題だ。どうしようもない。
この件は、前に別項でも述べた。
→ 地上型イージスシステム: Open ブログ
→ 迎撃ミサイルは有効か?: Open ブログ
[ 付記2 ]
ミサイル防衛網が無効だとしたら、北朝鮮のミサイルに対して、日本はなすすべがないのか? 白旗を揚げるしかないのか? いや、決定的に有効な方法がある。しかも、コストは1円もかからない。
それは、「ノーガード戦法」である。つまり、何もしないことだ。何もしないことが、最も有効なのだ。では、なぜか?
(1) 北朝鮮ミサイルの攻撃目標は、政府が安全訓練をしている秋田のような田舎の僻地ではない。(そんなところを攻撃しても、意味がない。)かといって、東京の高層ビルでもない。(そんなところを攻撃しても、イヤガラセにしかならない。)
北朝鮮の攻撃目標はただ一つ。米軍基地だ。敵基地を叩くことこそが、自国への攻撃を減らすので、最も有効なのだ。これは古今東西の軍事常識である。(第二次大戦だって、本土攻撃を実施したのは、日本軍をほぼ壊滅させたあとのことだ。それまでは日本軍の基地を叩くことに全力をかけた。たとえば硫黄島攻撃。)
したがって、日本がミサイル防衛網を構築するとしても、それで守るものは、米軍基地だけである。逆に言えば、米軍基地への攻撃を放置するならば、ミサイル防衛網を構築する必要はない。ミサイル防衛網は、日本を守るためにあるのではなく、米軍基地(北朝鮮への爆撃の拠点)を守るためにあるのだ。ミサイル防衛網がなくなっても、日本の被害が出るわけではない。(わずかな例外を除く。)
(2) 日本の一部にも、わずかな被害が出るかもしれない。その場合も、「何もしないこと」が最善である。なぜなら、敵のミサイルが 10発ぐらい到来しても、それによる被害はたかが知れているからだ。1箇所3億円とみて、10発で 30億円だ。人的被害があるとしても、せいぜい、死者0〜五人、ケガ人数十人ぐらいだろう。(交通事故の死者に比べれば、圧倒的に少ない。)
一方、ミサイル防衛網の費用は、これまでに1兆円以上で、さらに今後は 2000億円が追加される。あまりにも巨額だ。馬鹿げている。だったら、何もしないのが最善だ、と言える。どうせなら、1000億円ぐらいの金をかけて、交通事故対策をすればいい。たとえば、自動ブレーキを普及させる。そうすれば、同じ金をかけても、圧倒的に多くの人命を救うことができる。しかも、その数は、「仮定の数」ではなく、「現実の数」だ。(一方、迎撃ミサイルで救える数は、「戦争が起こったら」当場合の、仮定の数だ。現実には戦争が起こらないので、その数はゼロである。)
というわけで、北朝鮮のミサイルに対する最も有効な方法は、「何もしないこと」なのである。
逆に言えば、迎撃ミサイルを整備すると、北朝鮮は大喜びするだろう。
「ただの無駄のために大金を費やさせてやったぞ。日本に大損害を与えたぞ。ミサイルを一発も撃たずに、ミサイルを数百発も撃ったのと同程度の被害を与えることができた」
と。
これに気づかずに、ミサイル防衛網を整備するとしたら、日本は「自分で自分の首を絞める」というふうにしていることになる。愚の骨頂。
※ この件は、下記でも詳しく論じた。
→ 迎撃ミサイルは有効か?: Open ブログ
【 関連動画 】
【 追記 】
続報。
《 トランプ大統領 米朝首脳会談6月12日シンガポールで開催へ 》
トランプ大統領は1日、ホワイトハウスで北朝鮮のキム・ヨンチョル朝鮮労働党副委員長と面会し、キム・ジョンウン委員長からの書簡を受け取ったあと、記者団に対し、史上初となる米朝首脳会談を当初の予定どおり、今月12日にシンガポールで開催すると明らかにしました。
ただ、「会談で何かに署名するようなことはないだろう」とも述べて、12日の首脳会談で合意文書の署名には至らない可能性を示唆し、首脳会談は1回にとどまらず、複数回にわたることもあり得るという考えを示しました。
また、トランプ大統領は、キム副委員長とは制裁や朝鮮戦争の終結をめぐって意見を交わしたと明らかにし、首脳会談でも戦争終結が議題になる可能性があると指摘しました。
そして、「われわれは仲よくなりつつあるので、もう最大限の圧力ということばは使いたくない。対話が破綻するまで新たな制裁はかけない。北朝鮮が非核化に応じないかぎり、制裁は解除しないが、解除できる日が来ることを楽しみにしている」と述べました。
( → NHKニュース )
これでもまだ、北朝鮮との戦争のことを考えて、2000億円を出そうとするのが、日本政府。
これを機にこちらが実装をやめたら、シメシメと思うんじゃないかな。
そしてまた恫喝外交を始めることが懸念されます。
さらに敵愾心が旺盛な統一国家ができるかもしれない。
そうなると張り子のトラのこういう装備でも、抑止力になると思います。
(元寇の様に)強襲揚陸艦で襲いかかるんじゃなく、まずミサイルをぶっこんで指揮系統を混乱に陥れることから始めるでしょう。
こちらにはそれを防ぐシステムがある。それを試す火遊びは高い代償を払うことになる。
と思わせることが大事だと思います。
いやいや。爆撃能力の方がはるかに有効。
日本が爆撃能力をもたなくても、米軍が爆撃能力をもって、「日本がその戦費を全額負担」というふうに公約するだけでもいい。この場合、公約は費用ゼロで、口先だけでも済む。
現状では、北朝鮮が一番恐れているのは、米軍の爆撃能力。それだけで足りている。これに北朝鮮は屈した。
私の想像では、ステルス機でこっそり模擬爆弾を北朝鮮のどこかに落としている。武力の誇示。(模擬爆弾は援助物資でもいい。)
北朝鮮はそれを知っても(恥ずかしくて)口に出せないまま、ぶるっている。だから、核廃止の交渉に応じた。
> こちらにはそれを防ぐシステムがある。
ないです。こちらはすぐに弾切れになる。弾の数に大差がある。北朝鮮がダミーミサイルを数十発、発射した時点で、すぐに弾切れ。
別に問題ないです。
北朝鮮が国際社会に回帰すれば、戦争をすること自体が自分の首を絞めることになるので、危険性はなくなります。(もしやれば経済制裁で国家崩壊。)
危険ではなくなるので、通常戦力は問題ないです。どちらかと言えば、韓国の方が問題だ。竹島を占拠しているし。
今後、日本の最大の敵対国家は、韓国となります。そもそも日本に敵意丸出しの国民は、韓国民だけ。
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※ ミサイル防衛網にかわる、もっと有益な方法。圧倒的にコスパのいい方法。
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現状では策源地攻撃能力はF-2の爆弾ぐらい。警戒、護衛の支援も含めると高価なパイロットを失うリスクは大きい。一方で、巡航ミサイルならパイロットのリスクはゼロ。もちろん管理人さんの言うとおり、爆撃機の方が効果大ですが、ローリスク&ローリターンのオプションも持っておきたいのでは?と勝手に思ってます。米様が守ってくれるとも限らないので。
だとしたら、正々堂々とその必要性を議論できない日本の社会風潮がむなしいです。
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