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たったの 1.2km の工事に 3000億円をかけるという。
《 日本橋の首都高地下化 区間決定 》
東京・日本橋の上を通る首都高速道路を地下に移す区間は、JR東京駅の北側付近と江戸橋ジャンクション付近の間の1.2キロとすることが決まりました。
地下に移すことが決まった区間は3つの地下鉄や上下水道、それに通信回線などが張りめぐらされているため工事が難しく、費用がかさむとされていますが、トンネルを掘る区間を短くするなどしてコストを抑える計画です。関係者によりますと、費用の総額は 3000億円程度になる見通し。
( → NHK 首都圏のニュース )
もうちょっと詳しい話は、下記にある。
→ 首都高の日本橋地下ルート案が決定…既存トンネル改良+新設=1.8km
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なぜこの地下化をするか? それは、日本橋の景観を守るためだという。日本橋は、本来の川のある景観が、高速道路のせいで台無しになっているので、景観を戻すために、高速道を地下化したい、というわけだ。得に、日本橋という地名にふさわしく、川を優先したいというわけだ。
実際、これを推進する政府の報告も出ている。
→ 目次 (下記の資料4)
→ 資料4(首都高日本橋地下化の検討経緯)(PDF)
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とはいえ、すでにわかっていることだが、これの実現は大変だ。あまりにも難工事なのだ。
地下には上下水道、電力、通信、ガスなどのインフラ施設が網の目のように張り巡らされ、半蔵門線、銀座線、浅草線といった地下鉄も走る。最も深くて地表から二十数メートルを、障害物を避けながら川沿いを掘り進める。難工事になり、事業費は数千億円に達するとみられる。
完成まで 20年前後かかる見込みだ。
( → 日本橋の上の首都高が地下へ 1.2キロのルート案決定:朝日新聞デジタル )
あまりにも難工事だ。しかも、金も時間もメチャクチャにかかる。それでいて、改善される区間は、たったの 1.2km だけだ。高速道路の建設史上でも、最大の無駄と言っていいだろう。
だから、この計画は、これまで2度も頓挫してきた。
→ 日本橋を覆う首都高の地下化 「3度目の正直」となるか
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にもかかわらず、このたび、建設に「ゴー」という方針が出た。なぜか? どうやら小池都知事が、この方針を推進しているせいらしい。実際、大いに乗り気である。
→ 日本橋の首都高、地下化へ 小池都知事は現状を「イケてないモデル」
しかし、豊洲市場のときと同様で、小池都知事は建設のことなんか何もわからずに、勝手に思いつきで行動する。豊洲市場のときは、無駄にストップを書けて、時間と金を多大に無駄にしただけだった。勝手なスタンドプレーで、都民に大損害を書けただけだった。
( ※ この件は、本サイトでも何度も述べた。カテゴリから記事一覧見つかる。)
今回も、それと似た事情にある。高速道路の地下化のことなんか何もわからないくせに、勝手に「ゴー」を決めた。しかし、そんなことはするべきではないのだ。
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ただ、これは、建設のことには詳しくない私の判断だから、もっと建設のことに詳しい人の意見を聞いた方がいいかもしれない。そこで、ググってみた。
まずは、大前研一の見解が見つかったが、これは、地下化に賛成している。
→ 【大前研一のニュース時評】首都高速の地下化 日本橋周辺だけでは中途半端 東京の景観が一変する構想を
これは、小池都知事よりももっと過激で、都のあちこちで地下化を進めようというものだ。何兆円をかけるつもりだろう? 日本の国家予算を全部突っ込む必要がありそうだな。狂気の沙汰だ。(ジオン公国でも作りたがっているのだろうか?)
ま、大前研一は、建設の素人だから仕方ない。そこで、もうちょっと詳しい人の意見を見ると、反対意見が見つかる。
→ 首都高を「醜い景観」と呼ぶ残念な人たち
一部抜粋すると、下記。
数千億円かけて排除すべきものなのだろうか? それで手に入るのは、高層ビルに切り取られた空と、白日の下にさらされた繊細なデザインの橋だけなのである。
地元民の反対意見もある。
――地下化が唯一無二の方法でないとすれば、どうしたらいいと思いますか。
「そりゃあ、不要論ですよ。壊しちまうのが一番いい。(都心環状線の)日本橋あたりで乗り降りしている車なんてほとんどありません。全部、通過ですよ。東北道から東名高速に行くとかだけ。それに昔は日本橋の上でずいぶん渋滞していたけれど、いまは見ていたら、すうすう通っている」
( → 「日本橋に首都高いらない」 地元重鎮が地下化に異議 STYLE )
現状維持でもなく、地下化でもなく、一挙に廃止してしまえ、という過激な案。しかし、この過激な案も、結構道理が通っているようだ。
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さて。ここまで、いろいろと意見を見てきた。で、私としては、どう考えるか? 結論を言おう。次の3点だ。
(1) あまりにも金がかかるし、時間もかかるので、やめた方がいい。
(2) そもそも意味がない。
(3) かわりに、同じ金を使って、洪水対策をする方がいい。
順に述べよう。
(1) あまりにも金がかかるし、時間もかかるので、やめた方がいい。
金も時間もかかりすぎるので、無駄だ。……これはすでに述べたとおり。
(2) そもそも意味がない。
そもそも地下化することの意味がない。なぜなら、東京の川はすでにほとんどが暗渠(蓋をされた川)となってしまっているからだ。この件は、前にも述べた。
→ 首都高の地下化: Open ブログ
→ 東京の暗渠のガイド本: Open ブログ
こういう状況で、日本橋だけをまともにしようとしても、たいして意味がない。そもそも、たとえ首都高をはずしたところで、そのあとに昔ながらの自然豊かな川が回復するわけではないのだ。現状のようには、ただの運河みたいなものが残るだけなのだ。
つまり、たとえ川の上にある首都高を取り除いても、川そのものが自然豊かな川になるわけではない。そもそも、両岸はビルだらけなのだから、いくら金をかけても、自然豊かな川などはできない。
こんな都心で「自然回復」を求めるということが、狂気の沙汰なのだ。
この件は、先の専門家も述べている。
→ 首都高を「醜い景観」と呼ぶ残念な人たち(再掲)
むしろ、「この川を暗渠にしてしまうこと」を、私としては推奨したい。暗渠にしたなら、上に首都高があったとしても、何の問題もないからだ。
( ※ 自然回復は、こんな都心でやるより、どこか別のところでやるべきだ。もっと土地の安いところで。)
(3) かわりに、同じ金を使って、洪水対策をする方がいい。
これが私の代案だ。具体的には、「遊水池を作るべきだ」と考える。
遊水池ならば、洪水対策になる上に、そこで自然の回復が大幅に実現できる。
まず、洪水による大被害を防ぐ効果がある。その点では、上流に巨大ダムを造るよりも、ずっと費用対効果が高い。
( ※ そもそも、洪水時の雨量の大部分は、下流で降った雨だ。それへの対策は、上流のダムではできないのだ。)
( ※ 下流の川は、ちょっと遡ると、急に川幅が狭くなることがわかる。逆に言えば、川に流れ込む水の大部分は、上流から来たものではなくて、下流で新たに加わったものだ。)
次に、自然回復の効果がある。同じような費用をかけても、面積は非常に広大になるので、自然回復の費用対効果が素晴らしい。
過去の例では、渡良瀬遊水地がある。
第1調整池に設けられた谷中湖(面積・約4.5Ku、総貯水容量2,640万立法メートル)……の工事は1976年に始まり、1989年に概成しました(渡良瀬遊水池総合開発事業、総事業費 930億円)。
( → 渡良瀬遊水地・ラムサール条約登録へ )
遊水池については、前に本サイトでも詳しく論じた。
→ 堤防よりも遊水池: Open ブログ(渡良瀬遊水地の例)
→ サイト内 検索(各項)
画像を 360度スクロール可能
非常に広大な面積の自然回復が、当時の費用で 1000億円弱で実現できた。
自然回復としては、水量を少なめにして、湿原や干潟にすると、最近減ってきた湿原や干潟を回復することができるので、環境にとって非常に大きな意義がある。たとえば、渡り鳥の餌を提供できる。
日本の海岸から干潟が減少するなか、残された干潟は渡り鳥にとってますます重要な場所になってきている。
干潟は渡り鳥に、貝や底生生物、魚などの豊富なエサを提供する重要なエネルギー補給地点なのだ。渡りをする水鳥の拠点となる湿地環境を地球規模で守ることを目的に国際条約<ラムサール条約>が結ばれるなど、地球規模で湿原や沼、湖、干潟の保全のネットワーク化が進んでる。
( → 干潟と渡り鳥 )
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というわけで、同じような金をかけるにしても、日本橋の景観対策に金をかけるよりは、郊外のどこかで遊水池を作る方がずっといいのだ。景観対策などをしても一人の命も救わないが、洪水対策をすれば確実に人の命を救える。東京都にとって喫緊の課題は、そちらだろう。
景観のことばかりを考えて、人命損失をもたらす洪水のことを忘れるなんて、都知事としては危機管理能力が足りない、というしかない。
本人は「景観のことを考える私って、文化的で、素敵。さすがにインテリよね」と思っているのだろうが、無為徒食の三流文化人みたいな発想だ。ごくつぶし。
多額の金を使うのならば、まずは危機対策に金を回すべきだろう。それは同時に、自然回復にもなっているのだ。
【 関連項目 】
(1)
東京で洪水対策の必要性があることについては、前に何度も詳しく述べた。
→ サイト内 検索
(2)
日本橋の高速道の地下化については、前にも軽く論じたことがある。
→ 首都高の地下化: Open ブログ
ここでは、次のように述べた。
「どうせ川の下を掘るのだから、地下にトンネルを掘るのではなく、露天掘りにすればいい。そうすれば工事費は格安で済みそうだ」
これは、工法の改善案。
一方、本項では、「工事そのものをやめてしまえ」と提案している。
【 関連動画 】
【 追記 】
「遊水池を作るとして、どこに作ればいいのか? 東京都の内部に、そんな場所はあるのか?」
という疑問が生じるだろう。それには、こう答えておく。
「それについては、すでに下記項目で述べた。
→ 東京の水害対策(荒川・江戸川): Open ブログ」
ここでは、次の二地点を示している。[地図あり]
(1) 荒川の川沿い(さいたま市)
(2) 江戸川の川沿い(利根川との分流点)
前者は、埼玉県。後者は、茨城県。いずれも、東京都の外にある。その意味で、東京都の管轄権は及ばない。
しかし、別に問題はない。東京都の事業を東京都内で済ませる必要はない。東京都がなすべきことは、金を払うことだけだ。その一部は、地元の自治体(埼玉県・茨城県)にも、相応に負担してもらってもいいが、1割ぐらいにしかならないだろう。9割ぐらいは東京都が払うことになる。
当然だが、国からも補助金が得られるだろう。地元自治体が施工主体となって実施して、国から補助金をもらったあとで、東京都が相応部分を寄付することにすれば、国から多額の補助金を得ることもできそうだ。(東京都は富裕なので、補助金をもらいにくいが。)
国としても、広域で洪水被害を防げるのであれば、補助金を出す意義はある。「景観のため」なんていう高速道・地下化に比べれば、圧倒的に有意義だ。
「遊水池を作るとして、どこに作ればいいのか?」
という話題。
行政は大胆な規制緩和(あるいは規制)だけをすればよい。
そもそも、公共事業は税金で賄うものという考え方はもう古い。税の機能の一つが富の再分配
であるなら、必然と金が集まってくる東京は税金で賄う必要性はない。
地下化はやめて、
例えば、連続するビルの中層階に通す。
一つ駐車場タワーにして、首都高と直結、周辺ビル事業者の社用車、納品車等のスペースとする。
→集まらなければ計画がとん挫するだけ。クラウドファンディングのような考え方。