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「セクハラ罪」という罪は存在しない、という閣議決定がなされた。
政府は 18日、「現行法令において『セクハラ罪』という罪は存在しない」との答弁書を閣議決定した。財務省の福田淳一前事務次官のセクハラ問題を巡り、麻生太郎副総理兼財務相が「『セクハラ罪』という罪はない」と繰り返し発言したことに批判が相次いでおり、逢坂誠二氏(立憲民主党)が質問主意書で見解をただした。
( → 政府:「セクハラ罪」存在せず 答弁書を閣議決定 - 毎日新聞 )
これについて、はてなブックマークでは「呆れた」という趣旨の批判が多く出た。
→ はてなブックマーク
そこで、私としては、法律面から解説しておこう。
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(1) 刑法か?
政府答弁の趣旨は、
「セクハラ罪というのは、刑法の罪としては存在しない」
ということだろう。
これは、文字通りの意味では、正しい。たしかに、刑法には「セクハラ罪」というのは存在しない。そういう条項はない。
ただしそれは、「刑罰で処罰されることはない」という意味であるにすぎない。「警察に逮捕されて、裁判所で有罪判決を受けて、懲役や罰金刑を科される」ということがないだけだ。
(2) 刑法以外
しかし、セクハラというのは、もともと刑法には馴染まない。民間の二者間の損得(など)の問題だから、民法などの問題であるにすぎない。
民法では、二者間で賠償金の支払いなどがなされることがあるが、これは社会的な制裁とは違う。
常識的には、「謝罪の上で、慰謝料などを払う」というのが妥当であろう。
また、国家公務員の場合には、「国家公務員法 第九十九条」違反で、懲戒処分を受けるのが妥当だろう。この件は、前に述べた。
→ セクハラ問題の混乱: Open ブログ
(3) 具体的な法律
慰謝料などを求めるとして、そのための典拠となる法律はあるか? ある。
具体的な法令は、すでに政府が示している。
→ 法務省の解説[PDF] ( 15〜16 ページ )
該当箇所を画像で引用しよう。


こういう法律があるのだから、それについて言及するのが、正解だっただろう。単に「セクハラ罪は存在しない」というのは、間違いではないが、ちょっと不誠実な感じだ。
[ 付記 ]
ただし、元の質問が、刑法違反に焦点を当てて質問しているので、ある意味、仕方ないかもしれない。
それでも、関連法規に言及するべきであったとは言える。そうしないから、私がいちいち紹介するわけだ。
→ 元の質問
【 関連サイト 】
(1)
セクハラの法律については、いろいろと典拠を知ることができる。
→ セクハラ 法律 - Google 検索
(2)
セクハラについて慰謝料を求めることができる。世間相場などもわかる。
→ セクハラ 慰謝料 - Google 検索