2018年05月17日

◆ パワー半導体と EV・HV【 誤報 】

 パワー半導体に革命が起こることで、電気自動車やハイブリッド車にも革命が生じそうだ。

  ※ 最後に 【 追記・訂正 】 があり、全面否定しています。

 ──

 パワー半導体に革命が起こるようだ。
 名古屋大学の天野浩教授は16日、東京都内で記者会見し、青色発光ダイオード(LED)の素材で省エネルギー効果に優れた半導体の実用化にめどをつけたことを明らかにした。
 窒化ガリウムはパワー半導体などに応用すると、従来の半導体に比べて10%以上の省エネ化を実現できる。
( → 名古屋大・天野教授 青色LEDで省エネ半導体 :日本経済新聞

 実は、これと似たことは、前にも言及した。
  → 日産ノートのハイブリッド: Open ブログ

 ここでは次の趣旨で述べた。
  ・ 日産は e-POWER という新しいハイブリッド方式で成功した。
  ・ このハイブリッド方式は、シリーズ方式である。
  ・ シリーズ方式は、発電ロスが大きいので、実用的でなかった。
  ・ しかし近年、パワー半導体に大幅な効率アップがあった。
  ・ それは SiC(シリコンカーバイド)による半導体だ。


 歴史的に言えば、これまではシリコン半導体だった。これは、普通の情報処理には十分だが、電力の発電などのためのパワー半導体の用途としては、効率が低かった。ところが近年、 SiC(シリコンカーバイド)によるパワー半導体ができた。これで、効率が 10%もアップした。かくて、発電ロスが大幅に低下した。こうして、シリーズ方式のハイブリッドが成立するようになった。


  *** 以後は 誤報です ***



 ──

 ところで、今回の発明では、窒化ガリウムを使うことで、さらに効率が 10%以上もアップするようだ。
 こうなると、普通のハイブリッド(パラレルまたはシリアルパラレル)よりも、効率が上回ることになりそうだ。なぜなら、発電ロスが低下するとしても、伝達ロスはもともと圧倒的に低いからだ。

( ※ 一方、パラレルまたはシリアルパラレルでは、変速機があるので、変速機における伝達ロスが発生する。特に、トルコン AT や、CVT では、伝達ロスが 10%以上も発生するようだ。機械的な多段変速式の変速機[ HV用デュアルクラッチ式自動変速機(DCT)]だと、伝達ロスは低めだが、高温多湿で渋滞の多い日本では、故障が多発するらしい。フィット HV の DCT は、故障多発で、ひどい状況になったそうだ。 → 参考サイトクチコミ

 日産の e-POWERは、ただでさえ(価格の安さなどで)圧倒的な好評を得ている。また、高速燃費も、けっこういい。(パラレルには少し負けるが、ガソリン車よりは圧倒的にいい。)
  → e-POWER の高速燃費: Open ブログ

 この上、さらに窒化ガリウムによるパワー半導体の効率向上があれば、性能は大幅に向上しそうだ。数年後(5年後?)には、圧倒的なシェアを得るかもしれない。(日産に限らず、他社のシリアル方式 HV を含む。)

 さらに、EV への波及もある。EV でも効率が 10%以上も向上して、航続距離や燃費が 10%以上も向上しそうだ。しかもこれは、電池の性能とは独立して発生する効率向上だ。(電池でなくモーターの側で効率が向上する。)

 窒化ガリウムによる新しいパワー半導体は、将来の EV や HV の状況を、劇的に変えるかもしれない。それだけの大きな影響力を秘めている。

( ※ ちなみに、青色 LED の開発は、夜の世界を一変させた。自動車・自転車の前照灯は、大幅に変化した。自転車では、足踏み式でなく電池式で照明をつける事例も多い。)
( ※ 街路灯も大幅に変わった が、こちらはどちらかというと、改悪かもね。)
 


 【 追記・訂正 】
 調べ直したら、事実はまったく異なるようだ。
 「従来の半導体に比べて10%以上の省エネ化を実現できる」
 という冒頭の発表は、誇大宣伝もいいところだった。
 ここでいう「従来の半導体」というのは、SiC ではなく、Si であるようだ。「Si に比べて10%以上の省エネ化を実現できる」ということであるから、「 SiC と大差ない」ことになる。

 冒頭の発表は、誇大宣伝であって、正しくは、
 「以前の Si 半導体に比べて10%以上の省エネ化を実現できるが、すでに普及しつつある SiC 半導体に比べると同程度(若干上回る程度)」
 というのが事実であるようだ。
 ノーベル賞科学者も、誇大宣伝するわけだ! 私もすっかりだまされた! (一晩だけだけど。)
 でも、朝日や日経の記者もだまされたんだから、仕方ないな。

 ──

 SiC パワー半導体は、すでに普及しつつある。
  → 車載用SiCパワーデバイスの採用拡大が見えてきた、積極的な欧米自動車メーカー
 とはいえ、これは最近になってのことだ。ノート e-POWER が出たのも、1年前のことであるにすぎない。冒頭のノーベル賞学者は、それを知らなかったのかもしれない。
 不十分な情報を鵜呑みにした朝日と日経の罪も大きいね。
( ※ ただし、朝日の記事には「Si 半導体に比べて向上」という情報は出ている。その点では、間違いではない。とはいえ、「SiC と同程度だ」という情報はなかった。)
( ※ 「SiC よりも 10%も向上している」というのは、私の早とちりだったかもしれない。その意味では、私の勘違いの要素も大きかった。訂正して、お詫びします。)
posted by 管理人 at 23:47 | Comment(3) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
早急な訂正を頂き、おかげで、
より深く学べることになりました!
Posted by yomoyamapage at 2018年05月18日 14:20
どこかの新聞社は日本の電気の使用料が10%も節約できるって報道してましたよ
日本はガリウムの最大の需要国なんだけど
ガリウムの生産量が需要に追いつけますかね
Posted by 老人 at 2018年05月18日 17:36
 ガリウムの生産量はほぼ一定で、特に増やすことができない(限界がある)ので、需要急増には追いつかないでしょう。白色 LED の需要増もあるし。
 将来的には、ガリウムは資源不足になりそうです。ただしそれは、かなり遠い先のことになりそうです。(当面は不足しないので。)
 資源が無尽蔵の SiC があるので、これが、今も将来も、主流になりそうです。
Posted by 管理人 at 2018年05月18日 20:02
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