2018年05月09日

◆ 保育士の給料が安いわけ

 保育士の給料が安いのはなぜか? これを論じた記事があるが、ピンボケだ。では、真相は? 【 重要 】

 ──

 保育士の給料が安いのはなぜか? これを論じた記事がある。
  → なぜ低い?保育士の給料 「あと10万円は増えないと」:朝日新聞

 趣旨は次の通り。
  ・ 保育園不足が続いている。(保育園落ちた 日本死ね!)
  ・ 大きな要因は、保育士の給料が低いことだ。
  ・ 保育士の給与は、全産業平均より約10万円低い。
  ・ そのせいで、人々が保育士にならない。なっても辞める。
  ・ 例。朝6時半から夜8時まで働いて、手取りで約16万円。
  ・ 政府は「公定価格を月額3万円も改善した」という。
  ・ しかし公定価格そのものの水準がもともと低すぎる。
  ・ 公定価格に基づいて、保育園には委託費が支払われる。
  ・ その委託費は、保育士の給与以外に、勝手に流用される。
  ・ 複数の保育園を経営する経営者の例では年収 3000万円。
  ・ 詳しい調査によると、委託費のうち 280億円が流用された。


 こう述べた上で、最終的には、次のことが結論ふうに記されている。
 「対策は、委託費の流用禁止と、公定価格の増額だ」

 これは、もっともらしい話だ。はてなブックマークでも、そういうコメントを書く人が多い。
  → はてなブックマーク

 しかし、このような認識は誤りだ。

 第1に、「公定価格の増額」による「委託費の増額」は無効だ。なぜなら、現状でも赤字になっていないし、むしろ、大幅黒字であるからだ。保育士の給与が上がらないのは、金がないからではない。金ならばたっぷりと余っている。だから経営者にはたっぷりと金が回る。(年収 3000万円。)
 つまり、金はあっても、金が保育士に回らない。こういう状況で、委託費をさらに増額しても、増額した金は、保育士には回らず、経営者の懐に入るだけだ。
 結局、状況を改善しないまま、金だけを増やしても、金が無駄になるだけなのだ。

 第2に、これを防ぐために「委託費の流用禁止」を唱えても、そんなことは実現が不可能だ。
 国が個別企業の経営に介入するとしたら、それはもはや共産主義である。共産主義になったら、最悪の結果となる。予想されるのは、保育園が大幅赤字になって、赤字を埋めるために公金が莫大に投入されることだ。これは、いつか来た道ですね。(国鉄とか郵政省とか。)
 そもそも、「経営者が委託費を勝手に自分の懐に入れる」というのは、ちっとも悪いことではない。普通の企業ならば、そういうことはよくある。たとえば、中小企業で、会社の利益を食い物にして、社長の給料を大幅にアップすることは可能だ。ただし、そうすると、会社そのものが倒産してしまう。だから、そういうことはしない。逆に言えば、会社が倒産しない範囲で、経営者がいくら金を私物化しようと、それは経営者の自由なのである。これは資本主義の基礎原理であって、ここを制限するというのは現在の経済制度そのものを否定することだ。馬鹿げている。
    ( ※ もっと根源的な理由もある。金に色は付けられないから、経理上で操作できるのだ。つまり、公的な委託費の全額をコストに回すことができる。一方で、親から受け取る保育園料を、経営者の懐に入れることができる。こういうふうに経理的に操作することで、「流用していない」と言い張れる。)

 というわけで、「公定価格の増額」による「委託費の増額」も、「委託費の流用禁止」も、どちらも駄目なのだ。

 ──

 困った。では、どうすればいい? そこで、困ったときの Openブログ。名案を出そう。
 いや、出すまでもない。すでにこの件は、対策を提出済みだ。
  → 保育士の賃金に補助金?: Open ブログ
 ここの後半の 【 補説 】 の箇所に書いてある。そこを読めばわかる。
 一部抜粋しよう。
 「現状では、(父母の払う)保育料の規制という規制政策によって、市場原理が歪められている。そのせいで、(保育士の)需給が不均衡になっている。かくて保育士の不足が発生する」

 基本的には、(保育士の)需給が不均衡になれば、市場原理によって(賃金という)価格水準が上昇することで、需給が均衡する。

 要するに、「保育士の不足」というのは、需給のミスマッチの問題だ。そして、需給のミスマッチは、市場原理で自動的に解決する。
 なのに、現実には解決しないとしたら、それは、市場原理が働いていないからだ。特に、市場原理を阻害する要因があるからだ。そこで、その阻害要因を排除することで、需給のミスマッチは解決する。つまり、保育士不足はたちどころに解決する。

 では、阻害要因を排除するには、どうすればいいか? 上記項目では、こう書いた。
 市場原理を阻害している規制を撤廃すればいい。つまり、(父母の払う)保育料の規制という規制政策を撤廃すればいい。

 つまり、保育料を上げることで、保育園の収入を増やせば、保育士にはどんどん高給を払えるわけだ。

 そして、実際、「保育料を上げる」ということは、規制緩和された。
  → 保育所の料金引き上げ: Open ブログ(2015年10月12日)

 これで問題は解決するだろう……と期待された。ところが、この記事が書かれた 2015年10月12日 から2年半を経た現時点でも、問題は解決しない。では、どうしてか? 

 改めて調べ直すと、次のことが理由であるらしい。
 「保育園には、入園者を決定する権利がない。本来ならば、高い保育料を払う人を優先入居させることで、保育園の収入を増やすことができるはずだ。ところが、現実には、行政が介入して、保育の必要度の高い人から優先入居となる。また、保育料も行政が介入して、自由に高値を設定することができない」


 つまり、保育園には、価格決定権がないのだ。比喩的に言えば、こうだ。
 本来なら、自動車会社は、自社製品を販売するときに、「高い値段で買ってくれる人」(値引きしないで買ってくれる人)を優先して販売したい。そうすれば、高値で販売できるし、利益も増す。そうして利益を得たら、利益の一部を労働者に回す。そのことで、労働者は高給取りになる。おかげで労働者の不足もなくなる。
 ところが自治体が介入して、自動車販売を規制する。「自動車の必要度の高い人から」という順で、優先順位を決める。また、販売価格は、「金持ちには高い価格で、貧乏人には低い価格で」というふうに、価格を公的に指定する。公定価格である。しかも、その公定価格がもともと低いので、いくら売っても自動車会社は利益が出ない。それどころか、大幅赤字になる。
 そこで自動車会社は、やむなく、労働者の賃金を大幅に引き下げた。これによって自動車会社は、自社の利益を確保した。そのかわり、薄給に耐えかねた労働者は、続々と辞職した。そのせいで、慢性的な労働者不足となって、自動車の生産は慢性的に不足するようになった。かくて日本中で自動車不足となって、あちこちで大問題が発生した。それでも自動車会社は、労働者の賃金を大幅に引き下げたので、かろうじて利益を出すことはできた。

 ──

 結局、「商品の価格を統制する」とか、「商品の販売先を統制する」とか、そういう統制経済をやっている限りは、「価格は引き下げられるが、商品不足が発生する」というふうになるのは避けがたいのだ。(キューバみたいな共産主義国家ではそういうことが起こる。昔のソ連もそうだった。そして、今の日本の保育産業もそうだ。)

 だから、この問題を解決する方策は、簡単だ。
 「統制経済をやめて、市場経済に任せること」
 だ。具体的には、次の二点だ。
  ・ 保育料の統制をやめて、完全に自由化する。
  ・ 保育園の入園の優先順位は、完全に自由化する。
   (先着順でもいいし、高い金を払う順でもいい。)


 ──

 これに対しては、次の反対論が出るだろう。
 「そんなことをしたら、金持ちばかりが入園できることになって、貧乏人は排除されてしまう」

 しかし、その懸念は不要だ。なぜなら、次の対策を取れるからだ。
 「補助金を、(入園する)個人に払う。高所得者には低額を払い、低所得者には高額を払う。そうして得た補助金を、保育料として支払えばいい」


 これはつまり、「保育園への補助金を廃止して、かわりに入園する個人に払う」ということだ。このことは、前に提案した。
  → 保育園への補助金を廃止せよ: Open ブログ

 この話は、前に大々的に話題になったし、はてなブックマークやツイッターでも話題になったので、覚えている人も多いだろう。
  → はてなブックマーク - 保育園への補助金を廃止せよ

 ともあれ、このようにすれば、保育園の需給は市場原理で調整される。すると、需給のミスマッチという問題は、たちどころに解決される。つまり、「保育士の不足」という問題は、あっという間に解決するわけだ。

 ──

 具体的には、次のようになるだろう。
  ・ 保育園の料金は大幅に引き上げられる。
  ・ 保育園の収入は大幅アップとなる。
  ・ 保育士の給与も大幅アップとなる。
  ・ 給与アップが起こるので、保育士は大幅増加する。
  ・ 保育士不足はほぼ解消する。
  ・ 入園者数は大幅増加する。入園できない人は激減する。
  ・ 高所得者は、保育料の支払額が大幅に増えるが、必ず入園できる。
  ・ 中所得者も、支払額がいくらか増えるが、入園できる。
  ・ 低所得者は、多額の補助金をもらえるが、選択は2通り。
     ・ その補助金を払って、保育園に入る。
     ・ その補助金をもらって、自宅保育する。

  ・ 低所得者の多くは、自宅保育するようになる。
   (その分、保育園の需要は減る。)


 上のようになる。
 そのことの社会的な影響は、次の通り。
  ・ 高所得者は、保育料に多額を払うが、必ず保育園に預けることができる。たとえ多額の保育料を払っても、それを圧倒的に上回る所得を得ることができるので、問題ない。(仮に働くのをやめたら、所得を失うので、大損だ。)
  ・ 中所得者は、現状よりも支払額が増えるが、「保育園に入れない」という問題がなくなるので、差し引きしては、特に不満はないだろう。
  ・ 低所得者は、働いて低所得を得るよりは、自宅保育で補助金だけをもらう方が得なので、自宅保育をするようになる。
  ・ 以上のように所得別に分かれるので、自動的に最適配分ができる。つまり、「高所得者の人は働いて、低所得者の人は自宅保育をする」というふうになることで、一国全体の人員配分が最適配分される。
  ・ 自治体としても、保育のために1人あたり 40万円のコストをかけるかわりに、自宅保育をしてもらうために1人あたり 15万円ぐらいの補助金を払うだけで済むので、差し引きして、1人あたり 25万円も費用を節約できる。
  ・ 補助金を払う対象者は、現状よりも増える。(現状では自宅保育の人には補助金を払っていないので。)……とはいえ、1人あたり 25万円も費用を節約できることの効果で、その分をまかなえるから、差し引きすれば、損はしないだろう。
  ※ この件の損得計算は、別項で計算した。

    → 保育給付金の財源: Open ブログ
    → 保育給付金の財源: Open ブログ
    → 自宅保育を優遇せよ: Open ブログ

 こういう結果になるわけだ。
 ここでは、何もかもうまく行くわけではない。特に、高所得者と中所得者では、現状よりも支払額がかなり増える。
 しかし、それは、やむを得ないことだ。共産主義国家では配給品が格安で買えるが、配給品を買うためには行列に延々と並ばなくてはならない。また、必ず買えるとも限らない。そういう不便さと引き替えに、低価格になっている。
 一方、自由経済の国では、価格は高めだが、いつでも店頭の商品を買うことができる。それは、本来の適正価格だ。
 ここで、適正価格をいやがって、「原価割れになる赤字価格で販売してくれ」と言い出せば、たちまち共産主義みたいな統制経済となる。そこでは「行列並び」や「品切れ」が日常茶飯となる。……そして、それが、現在の日本の保育制度だ。

 この本質を理解しないまま、やたらと低価格の統制経済を取り続けるから、日本では、保育に限っては「供給不足」が慢性的に生じるのである。
 ひとことで言えば、「日本で保育所不足が発生する理由は、配給制度を取っているからだ」と言える。
 この核心を理解しない限りは、問題はいつまでたっても解決しないだろう。
 特に、朝日新聞みたいに、「公定価格を適正にしよう」なんていう発想をする限りは、統制経済からは脱しえないので、物不足(保育園不足・保育士不足)はいつまでたっても解消するはずがないのだ。

 ※ この結論は、下記項目でも説明した。
    → 保育士不足の解決策: Open ブログ
    → 保育士の給与を上げるな: Open ブログ



 [ 付記 ]
 保育士不足なのに、保育士の給与が上がらないのは、なぜか?
 それは、統制経済のせいで、保育所の増設がままならないからだ。そのせいで、市場原理がまともに機能しない。
 本来ならば、保育士不足ならば、保育士を採用するために、保育士の給与を上げる。しかし統制経済では、保育士の給与を上げて、保育士を採用しても、そのことで増収になる保証がない。保育料を自由に決めることができない(保育料を上げられない)からだ。どうせ収入がたいして伸びないのであれば、労働費用を下げる方が、保育園の利幅は増える。だから、売上げ増加よりは、労賃引き下げの方が優先されるわけだ。
 この件は、前にもどこかで述べたのだが、検索してもちょっと見つからなかったので、ここで再び記述しておいた。



 【 関連項目 】
 朝日の記事では「経営者が年収 3000万円」という話があったが、同様に、「経営者が私腹を肥やしている」という話は、本サイトでも前に述べた。
 → 保育士の賃金に補助金?: Open ブログ
   ここでは、 BMW に乗っている人の話がある。

 → 保育園への補助金:補足: Open ブログ
 → 保育所の補助金の闇 1: Open ブログ
 → 保育所の補助金の闇 2: Open ブログ
   ここでは、私腹を肥やす話が、もっと細かく説明済み。
 
posted by 管理人 at 23:58| Comment(1) | 一般(雑学)4 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>保育園の経営者が私服を肥やす

私個人的にはそういう事例は知らないのですが、とある家族経営の保育所では、都内に大きな居を構え、高級車を何台も持っているにもかかわらず、家族以外の保育士を低賃金で雇っています。

その保育士さん曰く、給料が安いので実家から通うしかなく、一人暮らしは家賃が払えないので出来ないです。とのこと。

まあ、保育所に限らず、日本の経営者は労働者に還元するなんてことはカケラも考えないですね。冷酷な社会になってしまっています。
Posted by 反財務省 at 2018年05月14日 00:42
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