2018年05月09日

◆ 集団的自衛権は自衛か攻撃か?

 集団的自衛権は、自衛か攻撃か? この問題を詳しく論じる。

 ──

 前項 では、集団的自衛権について、次のように述べた。
 「集団的自衛権は、近隣集団の場合には成立するが、地理的に離れて一体化していない国同士では成立しない」


 その理由は、こうだった。
 「近隣集団の場合には、内部からの自衛ということが成立するが、遠く離れたところから反撃する場合には、(外部からの攻撃になるので)内部からの自衛ということが成立しない」


 このことは、イメージ的には、ドーナツ型で考えるといい。

      ◎

 ドーナツには、リング状の本体と、内側の空間と、外側の空間がある。
 ここで、次のように考えられる。
  ・ ドーナツの中心部は、同盟国である。
  ・ ドーナツのリングは、敵軍である。
  ・ ドーナツの外側のどこかに、米軍がいる。


 今、同盟国(ドーナツの内側)に対して、敵軍(ドーナツのリング)が攻撃している。
 ここで、米軍がもともとドーナツの内側にいれば、そこから敵軍を攻撃することは、(集団的な)「自衛」と言える。外から攻めてくる敵軍から、内側の同盟国を守ることになるからだ。
 一方、米軍がドーナツの外側にいれば、外側から敵軍を攻撃することは、(集団的な)「自衛」と言えない。なぜなら、それは「自衛」ではなく、(外側からの)「攻撃」だからだ。
 仮に、それが「自衛」であるとしたら、敵軍が、外側にいる米国に対して攻撃する場合だろう。しかし今はそうではなく、敵軍は内側の同盟国を攻撃している。この軍に向かって外側から武力行使することは、「自衛」ではなく「攻撃」である。

 ──

 以上のことからして、集団的自衛権の適用できる条件がわかる。
 一つは、もともと近隣集団で同盟を結んでいる場合だ。たとえば、西側欧州諸国が相互に軍事同盟を結んでいる場合。この外側から攻める敵国に対して、内側から自衛できる。
 もう一つは、もともと米軍基地が同盟国の領域内に設置されている場合だ。たとえば、欧州内に米軍基地があり、日本内に米軍基地がある。このような場合には、米軍は同盟国の国内にいて、同盟国の軍隊と一体的に活動して、同盟国を守るので、米軍の活動は自衛的な活動と見なしていい。
( ※ ドーナツの内側から敵軍に対抗する。) 

 ──

 一方、次の場合はどうか? 
  ・ 自衛隊がホルムズ海峡で活動する。
  ・ 自衛隊が朝鮮有事で、韓国近海で活動する。

 これらは上記の条件を満たしていない。つまり、自衛隊はドーナツの内側にはいない。ドーナツの外側にいる。

 さらにまた、次の条件も満たされていない。
  ・ 日本は、ホルムズ海峡や韓国と、同盟を結んでいる。

 これが満たされていない。つまり、日本は、ホルムズ海峡や韓国とは、他人も同然である。とすれば、集団的自衛権を行使する資格がない。(余計なおせっかいであるにすぎない。)

 ホルムズ海峡は公海であるから、ホルムズ海峡と同盟を結ぶことは原理的に不可能だ。
 韓国は独立国であるから、韓国と同盟を結ぶことは可能だ。ならば、韓国近辺で自衛隊が軍事活動をしたいのであれば、まずは韓国と同盟関係を結ぶことが先決だ。それなしに、「日本にとって死活的に重要だから」という理屈で自衛隊を派遣するとしたら、それはもう、「余計なおせっかい」を越えて、「違法な軍事活動」に近い。それはもはや盧溝橋事件みたいな侵略活動と紙一重である。
 自衛隊が米軍のために活動することが、たとえ韓国のために有益であるとしても、もともと韓国と同盟関係を結んでいないのであれば、日本は韓国のために軍事活動をしてはいけないのだ。同様に、韓国のために軍事活動をする米軍を支援してもいけけないのだ。なぜなら憲法において「交戦権」が否定されているからだ。

 安倍首相のようなタカ派が、どうしてもこのような形の軍事活動をしたいのであれば、憲法9条を丸ごと削除する必要がある。つまり、
 「日本は自国の自衛のために軍事力を行使するだけでなく、あらゆる目的のために軍事力を行使することができる」

 というふうに憲法を改正する必要がある。そして、ベトナムでもイラクでもシリアでも盧溝橋でも、どこでも好き勝手に軍事活動ができるようにする必要がある。
 それが実現したあとであれば(改憲後であれば)、いくらでも好き勝手に海外で軍事活動をすればいいだろう。その場合には、合法となる。
 なのに、そういうことをしないで(改憲しないで)、「集団的自衛権」の名の下で米軍の活動を支援するとしたら、それはもはや、違憲となる。
 そしてまたそれは、ドーナツの内側と外側とを区別できないのも同様だ。そいつはもはや、トポロジーという数学原理に反するのも同然である。メチャクチャの極み。
 
 ※ ここで「ニヤリ」と笑った人は、数学ジョークを理解できる人です。頭いい。 (^^);




 【 追記 】
 前項では、次のように述べた。
 というわけで、「集団的自衛権は国連憲章で認められている」という認識は、誤りであるわけだ。単に「邪魔されていない」だけである。(「容認」されてはいるが、「認可」されてはいない。)

 このことから、「国連憲章で認められているから、日本には集団的自衛権がある」という理屈は成立しないことになる。
 なぜか? 国連憲章は、単に「邪魔しない」だけであるから、その前にあらかじめ、各国が「集団的自衛権をもつ」ことを自ら宣言する必要があるからだ。各国が自らそう宣言した場合に、国連はそれを阻害しないというだけだ。(国連が集団的自衛権を与えてくれるわけではないのだ。)

 では、自ら宣言するとは? 日本で言えば、「集団的自衛権をもつ」ことを、憲法または法律で規定することだ。
 第1に、憲法の点では、普通の解釈では、憲法9条に違反する。したがって、まずは憲法9条を改正することが必要となる。
 第2に、法律の点では、安倍首相の安保法がそれを規定している。引用しよう。
 安保関連法は、既存の10法をまとめて改正した「平和安全法制整備法」と、新法の「国際平和支援法」で構成される。
 施行後は、日本と密接に関係する他国への攻撃によって日本の存立が脅かされる「存立危機事態」では、集団的自衛権として必要最小限度の武力を行使できるようになる。
 米軍など他国軍への後方支援は地理的制約がなくなり、弾薬の提供や発進準備中の戦闘機への給油など支援内容が広がった。
( → 安保法:29日施行 集団的自衛権行使が可能に - 毎日新聞

 仮にこれが成立するとしても、これを実行するためには、集団的自衛権が成立するための同盟関係をあらかじめ結んでおくことが必要だ、と私は考える。上記で言えば、「いざというときに日本は一定の範囲で米国を軍事支援する」という内容の同盟関係を結んでおくことが必要だ。つまり、安保条約の改定が必要だ。
 また、米国の軍事活動で救われる相手国(湾岸戦争の場合であればクウェート)とも、何らかの事前協定(同盟関係に似たもの)が必要だ。
 それらなしに、上記のような軍事活動を許容するのであれば、日本はベトナムでもシリアでもイラクでも、どこでも勝手に軍事活動ができることになる。これでは憲法の規定に明白に反する。

 というわけで、
 「集団的自衛権を行使するためには、あらかじめ相手国と同盟関係を結ぶことが必要だ」

 という点を、ここで指摘しておきたい。

 ちなみに、米国と欧州諸国は NATO という同盟関係を結んでいるが、ここではちゃんと同盟関係が明文化されている。
 一方、安倍首相がやっていることは、こういう明文化なしに、世界中のどこにでも自衛隊を派遣できるようにすることだ。そのことは明白におかしい。……このことを説明するのに、本項の内容は役立つだろう。
( ※ 「集団的自衛権の適用できる条件」というのを、本文中で示した。)

 ──

 具体的に言えば、こうなる。
 安倍首相の安保法は、このままでは憲法違反となるので、全面削除することが妥当だ。
 この法律を成立させるためには、集団的自衛権を合憲にするように、憲法を改正することが先決となる。
 その上で、「同盟関係を結んだ場合には……できる」というふうに、前提条件を付ける形で、安保法を改定する必要がある。
 その上で、日本が軍事的義務を果たせるように、日米安保自体を改定する必要がある。
 以上のすべてが成立されて初めて、安倍首相の安保法は有効となる。
posted by 管理人 at 19:41| Comment(1) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 後半に 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2018年05月10日 08:00
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