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今回の記事。
《 東大教授の論文に不正 実験結果など捏造、大学が公表 英ネイチャーなどに掲載 》
東京大は1日、分子細胞生物学研究所の渡辺嘉典教授ら2人が関わった平成20〜27年の論文5本に捏造と改竄の不正があったとする調査結果を公表した。
調査報告書によると、不正を行ったのは渡辺教授と研究室に所属していた丹野悠司助教(当時)。実験を行っていないにもかかわらず、実験を行ったかのような結果を示すグラフを作成したり、掲載した写真などで計6件の捏造があったと認定した。
また、比較した2つの画像のシグナルの強度について、意図的に一方の強度を操作するなど計10件の改竄があったとした。
不正と認定された論文は世界的に著名な英ネイチャーや米サイエンスなどの学術誌に掲載されており、渡辺教授は論文の訂正や取り下げについて学術誌側と相談を進めているとしていた。
( → 産経ニュース )
東京大学は27日、論文5本に研究不正があったと認定した、渡辺嘉典元教授を懲戒解雇相当の処分とし、発表した。処分は19日付。渡辺元教授は2月に退職しており、退職手当を支給しないことも決めた。
渡辺元教授は、生殖細胞ができるときに起こる減数分裂の際に大切な役割を果たすたんぱく質を見つけて「シュゴシン」と名付け、2004年に発表。減数分裂の研究で15年度の朝日賞を共同受賞した。
東京大が不正を認定したのは、シュゴシンの働きなどを調べた08〜15年の5本の論文。グラフや画像の捏造(ねつぞう)や改ざんがあったとした。5本のうち、1本は撤回、2本は訂正、残り2本も訂正の手続き中という。
( → 東大元教授、論文5本で捏造・改ざん 懲戒解雇相当処分:朝日新聞デジタル )
朝日賞の受賞時の本人コメント。
ヒトは、両親の遺伝物質である染色体を半分ずつ持ち寄って、受精卵から一人の人間になります。私たちは、その染色体を半分に減らす減数分裂のメカニズムのなかで、非常に重要なたんぱく質「シュゴシン」を見つけました。
それは生殖によって子孫を残す全ての生物が持っていることも分かりました。最近では高校の教科書にも載るようになりました。
( → 朝日新聞社 -朝日賞- The Asahi Prize - (2015年度) )
業績の解説。
生殖細胞ができるときに起こる減数分裂。親から半分ずつ遺伝情報を受け継ぐために、染色体の数を半減させる特別な細胞分裂だ。生命を受け継いでいくために重要なこの仕組みの解明に2人は挑んだ。
山本さんが目をつけたのは単細胞生物の分裂酵母。ふだんは自分のコピーを作る体細胞分裂で増えていくが、栄養が足りないと減数分裂に切り替わる。その過程を30年かけて一つひとつ探ってきた。
そして突き止めたのが、減数分裂が始まるときのスイッチだ。細胞内で「Mei2」というたんぱく質が特定のRNAとくっつくと、減数分裂を起こさないようにしているシステムが解除されることがわかった。
研究の過程では予想外の発見もあった。このRNAは、1990年代前半の当時の常識に反し、遺伝子を読み取ってたんぱく質を作る機能を持っていなかった。自分たちの見ているものは本当にRNAなのか。暗闇を手探りで進むような時間が流れた。
このころの山本研究室に、渡辺さんもいた。その後、自らの研究室を立ち上げた渡辺さんは、染色体が均等に分かれる仕組みに着目し、大切な役割を果たすたんぱく質を見つけ、「シュゴシン」と名付けた。
由来は守護神。対になる染色体同士をくっつけている接着剤のような分子を守っている。シュゴシンがないと、染色体ははがれすぎてバラバラになり、遺伝情報を正しく次世代に伝えられない。酵母から哺乳類まで共通に存在していることも突き止めた。
( → 朝日新聞社 -朝日賞- The Asahi Prize - (2015年度 受賞者) )
※ 本項は記事の紹介のみ。いずれも一部抜粋。
[ 付記 ]
高校の教科書にも掲載されたとなると、教科書の改訂が必要だろう。
さらに、ネイチャーやサイエンスもだまされたとなると、STAP細胞以上の大問題だ。世間ではこちらについては騒がないが、変だね。
なお、事件そのものは、昨年のうちに報道されている。
本サイトでは、過去に扱ったことはない。
ただし、東大の加藤茂明・元教授による不正は扱ったことがある。
→ STAP/東大の捏造: Open ブログ
今後も絶え間なく論文不正は続いていくのだろうと。
不正が報じた第一報から時間は経っていますが、ほとんど騒がれることなく今回の報道に至りました。東大加藤研のケースよりも静かに思えます。
モリ、カケ、スパ他、耳目を集めやすい事案が天こ盛りだった、というだけでは説明できないような不自然さを感じます。
研究者には高いモラルが必要ですね。
まあ日本の場合は、トップがウソつきなので、ますはそこから変える必要がありそうですが。