2018年04月25日

◆ 日産と VW の EV 生産計画

 日産と VW は EV の量産をめざして、どちらも多くの車種の発売を計画している。

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 日産は EV のリーフが好調だ。テスラのモデル3が生産不良でグズグズしている間に、大量生産を進めている。
  → 日産の電気自動車「リーフ」 日本国内の累計販売10万台を達成 - ライブドアニュース

 また、日産は、今後の見通しを示した。2022年度までに新型電気自動車(EV)3車種を発売するという。
 日産自動車は4月20日、2022年度までに新型電気自動車(EV)3車種と「e-POWER」搭載車5車種を国内で発売する計画を発表した。
 日本事業担当のダニエレ・スキラッチ副社長は、「国内市場が最も進んだ市場となる」とコメントした。
( → 日産、新型EVを3車種、「e-POWER」5車種投入 22年度までに - ITmedia

 これは 4月20日の発表で、国内での発売の分。一方、中国市場では、もっと多くを発売するそうだ。こちらは3月23日の発表。
 22年度までに新型の電気自動車8種類を新しく投入する。特に中国市場に積極的に投入するとしており、8種類のうち2種類は合弁会社の中国独自のブランド「ヴェヌーシア」の車種に電気自動車を加えたものとなる。残りの6種類はSUVで「IMx」をモチーフにした電気自動車などを投入していく。
( → 日産、22年度までに年間販売100万台の電動車販売へ 新型8車種投入 | 財経新聞

 中国市場では新型車を積極的に投入するとし、CセグメントのEVを筆頭に、日産と東風汽車集団股イ分との合弁会社であるeGT New Energy Automotiveが開発する安価なAセグメントのSUVタイプを、さらにヴェヌーシアブランドから2車種をリリースする。グローバル市場には、2017年の東京モーターショーで公開したコンセプトカー「IMx」をモチーフとしたクロスオーバータイプのEVを投入。日本市場では、軽自動車のEVを発売する。
( → 日産、2022年までに新たなEVを8車種投入 【ニュース】 - webCG

 日産公式のニュースリリースもある。
  ・ 新型「日産リーフ」の成功を基盤に、EVを新たに8車種開発
  ・ 中国で各ブランドによるEVの積極投入
  ・ 日本に軽自動車のEVを投入
  ・ ニッサンIMxコンセプトカーから発想を得たグローバルなクロスオーバーEVを投入
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 電動化戦略の一環として、新型「日産リーフ」で培った技術を生かしたCセグメントのEVを始め、中国で積極的に商品を投入するとクランは述べています。 この計画には、アライアンスと東風汽車集団股イ分有限公司による合弁会社eGT New Energy Automotive社が開発し、AセグメントSUVプラットフォームをベースに手頃な価格で投入するEVも含まれています。さらにヴェヌーシアブランドから の2車種の派生型EVも計画されています。
( → 日産自動車、2022年度までに年間100万台の電動駆動車を販売 - 日産自動車

 また本日、北京国際モーターショーで、日産は新型の EV を発表した。「シルフィ ゼロ・エミッション」というもの。
  → 新エネルギー車、続々お披露目 北京モーターショー開幕:朝日新聞
  → 日産が4ドアセダンの電気自動車を世界初公開!【北京ショー2018】
  → 日産、新型「シルフィ」のEVを世界初公開 「リーフ」ベースで中国向けに開発

 写真から見て、ボディ(車体)はシルフィそのまんまであるようだ。ただしパワートレーンはリーフのものを流用しているようだ。セダン版のリーフというところか。
 一方、リーフ自体についても、発売計画がある。
  → 新型リーフは、中国市場においては、2018〜2019年の発売を計画
 つまり中国では、シルフィとリーフの2車種発売だ。2018〜2019年の段階では、中国市場ではトップを走っていると言えそうだ。(他に中国メーカーの EV も大量販売されているが。)

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 では、これで世界トップの座を確保したと言えるか? いや、そうでもない。VW があとから来て、猛烈に巻き返している。
  独フォルクスワーゲン(VW)のヘルベルト・ディース最高経営責任者(CEO)は24日、2020年までに中国市場に電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)を15車種投入すると発表した。25年には40車種に拡大し、中国の環境規制に対応する。
( → EVとPHV、中国に15車種 VW、投入を発表:朝日新聞

 フォルクスワーゲングループは北京モーターショー2018のプレビューイベントで、今後7〜8年以内に、中国で40車種のNEVを発売する計画を打ち出した。
 フォルクスワーゲングループはNEVの中でも、とくにEVを重視。中国では2021年までに、少なくとも6工場でEVの現地生産を開始すると発表している。
 フォルクスワーゲングループは、中国市場に新たな投資を行うと発表。2022年までに、フォルクスワーゲングループとその合弁パートナーは、eモビリティ、自動運転、デジタル化、新モビリティサービスなどに、約150億ユーロ(約2兆円)を投資する、としている。
( → VWが中国で電動車の新型車攻勢、40車種を発売へ (Response.jp)

 記事では「2020年までに中国市場に電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)を15車種」ということで、15車種という数字だけを見れば日産を上回るが、これには PHV が含まれている。日産も e-Power を含めると数が増えるだろうから、この勝負は、どっこいということか。
 現状では日産の方が先んじていることからすると、VW がいっそう意欲的であると思える。だが、これは無謀なホラとも言えない。というのは、日産の EV は「電池に冷却システムがないせいで、電池の劣化がひどい」という致命的な弱点をかかえているからだ。
 電池が劣化すると、交換が必要となる。その交換のために、中古品を再利用する、という制度ができたそうだ。
 リーフの再生バッテリーを使った有償交換プログラムをスタート。24kWhの再生バッテリーを新品の半額以下となる30万円で提供する。今後は30kWhや40kWhなど、再生バッテリーのラインアップ拡充を図っていく。
( → 日産 リーフ、再生バッテリーを使った有償交換プログラム開始 新品の半額以下(Response.jp)

 24kWhというのは、初代リーフの後期版。現行の2台目リーフでは、40kWhとなる。24kWhで 30万円なら、40kWhで 50万円となる。これは中古品を使った場合。新品のバッテリーを使う場合には、2倍以上の 100万円以上となる。
 つまり、2台目リーフは、電池が劣化したあとでは、これだけの余計な出費を強いられるのだ。一応、無償交換する補償制度もあるのだが、それには条件があるので、必ず無償交換してもらえる保証はない。「劣化がひどくないので、無償交換はできません」と断られる可能性もある。
 ま、まともなユーザーなら、わざわざ欠陥品(冷却システムのない低品質製品)を買うとは思えない。当面はともかく、劣化がひどいと判明したころには、日産 EV の評判はがくんと落ちるだろう。となったら、VW に追い越されるとしても、不思議ではない。
( ※ VW が冷却システムを採用しているかどうかは不明。ただ、VW が駄目でも、テスラの方は必ず冷却システムを採用するから、テスラに負けることは確実だ。……テスラの生産能力さえ高まれば、の話だが。)

 ともあれ、以上が現状だ。先がどうなるか、おおよその見通しは立つが、日産が勝つか負けるかは、判明しがたい。
 「冷却客システムを採用すれば勝つだろう」とは思うが、日産はやたらと低コスト体質だ。自動ブレーキさえ、「安かろう悪かろう」の単眼カメラ方式を、業界でただ一社、採用するという愚かさだ。(他者は、単眼カメラとミリ波レーダーの併用が多い。)こんなことでは、冷却システムを採用するとは思えない。お先の見通しは、かなり暗い。

 とはいえ、「戦わずして負ける」という、トヨタやホンダやマツダに比べれば、ずっとマシだろう。トヨタやホンダは、いまだに燃料電池車にこだわっていて、EV に軸足を移すことができていない。VW などのドイツ勢には大きく差を付けられている。マツダも、スカイアクティブに熱中していたせいで、EV はおろそかとなり、共同開発するトヨタ頼みだ。とはいえ、これは弱者連合にすぎない。

 本サイトでは何年も前から、「燃料電池の死」と称して、「燃料電池車はお先が真っ暗だ。EV が本命だ」と述べてきた。
 その警告を受けておけば良かったのに、その警告を受けないから、トヨタとホンダは、このざまだ。
 そして日産も似た状況だ。単眼カメラでもそうだし、冷却システム(なし)でもそうだが、本サイトの警告をまともに受けない。こんなことでは、日産もお先は暗い。



 [ 付記 ]
 実は、トヨタは電気自動車を無視しているわけではなく、今になって大あわてで、量産に努めている。
 今回の「チャレンジ」で特徴的なのは欧米勢と比べて距離を置いてきたEVシフトを加速する方針を示したことだ。この日、EVについて2020年以降の中国を皮切りに、日本やインド、米国、欧州でも順次導入し、2020年代前半にグローバルで10車種以上に拡大すると発表。トヨタはこれまでEVを近距離移動に用いる超小型車程度に位置づけてきたが、この日会見した寺師茂樹副社長は「社会が変化し商品ニーズが多様化している。従来の枠組みにとらわれずにやることが大事」と指摘。EVでも小型車から大型車まで含めて品ぞろえする方針を説明し、実質的に方針転換する。
( → HV王者のトヨタがEVにアクセル踏み込む理由 | 東洋経済

 しかし、この時点で方針転換するのでは、あまりにも遅すぎる。VW などのドイツ勢に比べて、何年も遅れている。しかも、EV の開発体制も、いまだに貧弱であるようだ。(別記事の報道による。)
 口先だけで目標を定めても、肝心の開発の人員が足りなければ、目標は達成できないのだが、これまでのトヨタの発表を見る限りでは、開発体制はお寒い限りだ。まさか、「少ない人員で残業で済ませる」というつもりではないだろうか?
 燃料電池車の開発人員を減らせば、何とかなるだろうに、そうすることもできず、EV に軸足を移せない。現状では VW などのドイツ勢に、大きく後れを取ることになりそうだ。(いくら口先だけで掛け声を上げたとしても。)



 【 関連項目 】

 → 燃料電池の死 ── サイト内 検索
posted by 管理人 at 19:55 | Comment(1) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 朝日新聞宛に、下記ツイートを送信したが、反応なし。正誤訂正なし。
 
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@asahi 本日の経済記事に 誤報 があるのでお知らせします。日産自動車のEVについて、22年までに20車種のEVを出すとありましたが、正しくは EV ではなく、電動車です。EVは8車種で、e-Power が12車種。合計20車種。
https://www.zaikei.co.jp/article/20180325/433653.html
https://response.jp/article/2018/04/25/308992.html
Posted by 管理人 at 2018年04月27日 18:07
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