2018年03月17日

◆ 自動ブレーキの認定制度

 政府が自動ブレーキ性能について、認定制度を導入するそうだ。
 
 ──

 記事を引用しよう。
 国土交通省は、4月から乗用車の「自動ブレーキ」の性能を認定する制度をスタートさせる。「時速50キロで走行時に20キロで走る前方車に衝突しない」などの条件を達成した車種に国としての「お墨付き」を与えることで、消費者が安全性を判断しやすくする狙いだ。
 自動ブレーキは2016年に生産された新車乗用車の 66.2%に搭載されるなど急速に普及しているが、性能について担保する公的な仕組みはなかった。各メーカーが示している性能はいわば「自称」で、消費者が商品を吟味しにくい状況にあった。
 国交省は認定にあたり、
  ・ 静止した前方車に50キロで接近した際の衝突速度が20キロ以下になる
  ・ 20キロの前方車に50キロで接近した際に衝突しない
  ・ 自動ブレーキが作動する 0.8秒前までに衝突の恐れを運転者に音などで警告する
 ――の3点の達成を求める。
( → 自動ブレーキ性能、認定制度導入へ 国交省、4月から:朝日新聞 2018-03-16

 一歩前進のようだが、退行したところもある。現行でも JNCAP|NASVA 独立行政法人 自動車事故対策機構 が実験データを提供しているのだが、それよりも大幅に甘い基準となっているからだ。「何やっているんだ」と呆れるばかり。

 (1) 速度

 現状では、「60km/h で静止物に衝突しない」というテストがなされている。それに合格する車種が多い。

 一方、新テストの調査の速度は、
  ・ 静止した前方車に50キロで接近した際の衝突速度が20キロ以下になる
  ・ 20キロの前方車に50キロで接近した際に衝突しない

 とのことだ。(上記記事による。)
 調査内容が大幅に後退している。(大甘になっている。)

 なお、私が提案するのは、「 100キロでの衝突安全性もテストする」ということだ。それに合格することは必須ではないが、将来目標として、合格することが望ましい。いち早く達成した企業には、それなりの「認証」を与えるべきだ。
 政府の方針は、「どの企業も合格できるように、試験内容を大甘にする」というものだ。これでは消費者にとっては何のメリットもない。
 政府が消費者よりも企業のために働いているということがよくわかる。こんな政府は必要ないし、認定制度も必要ない、と言える。
( ※ ベストカーあたりがテストした方がよほどマシだ。ただのテストなら、試験コースをちょっと借りるだけで済む。)


 (2) 歩行者衝突

 歩行者に衝突することを避けられるか、というテストも必要だ。
 どうしてかというと、ミリ波レーダーは、歩行者を検出する能力が低いからだ。(人は電波を反射しないからだ。)
 その意味で、対物だけでなく対人の衝突回避試験も実施する必要がある。

 ついでだが、記事中の方式では、
  ・ 静止した前方車に50キロで接近した際の衝突速度が20キロ以下になる

 とのことだから、これだと、歩行者には 20キロ以下で衝突することになる。たとえば、18キロで衝突する。当然、歩行者は撥ね飛ばされるし、その後に轢き殺される可能性もある。
 こんなものを「合格」とするんだから、呆れるしかない。


 (3) 黒・夜間

 夜間に黒い自動車に衝突しないことの確認も必要だ。つまり、そういう試験を実施するべきだ。
 これはどうしてかというと、単眼カメラ方式は、このような衝突回避の能力が弱いからだ。ミリ波レーダーならばあっさり回避できる場合でも、単眼カメラ方式では衝突してしまう。実際、衝突事故の事例もあった。
 なお、これは「闇夜のカラス」ではない。黒い自動車であっても、赤色の反射板は付いているから、自動車のヘッドライトの光を受けて、赤い反射光を出して、認識可能となる。その認識がちゃんとできているかどうかが問題だ。





 動画では、赤い三角板がよく見えるが、それ以外にも、自動車の尾灯のあたりの赤い反射板も少し見える。これをきちんと認識して、衝突回避できることが好ましい。速度は時速 60km/h でいいだろう。
( ※ 車道上に停まっているとしたら、一般道だ。高速道路ならば、停まるとしても路肩に停まっているはずだから、衝突の危険性は少ない。)

 
 (4) 雨天

 雨天や降雪時には、ミリ波レーダーならば大丈夫だが、ステレオカメラ方式だと性能が落ちるようだ。さすがに降雪時までは面倒を見なくてもいいだろうが、雨天のときの性能の低下も確認したい。



 [ 付記 ]
 「どの方式にも弱点があるようだが、いったいどの方式がお薦めなのか?」
 と言われたら、「併用」と答える。現状では、「ステレオカメラ + ミリ波レーダー」が最強だろう。コストはかかるが。
 一方で、コストをかけて性能を向上させた車種があれば、その車種にはきちんとお墨付きを与えるべきだ。それこそが政府のやるべきことだ。
 政府はやるべきことを間違えている、としか言いようがない。「低性能の粗悪品に高性能だというお墨付きを与えよう」というのが、政府の方針だが、そういうことは、中国に任せておけ。日本がそんなことをしたら、日本ブランド全体が不信を買う。まったく、政府が詐欺の片棒をかついで、どうするんだよ。呆れるしかない。
 
posted by 管理人 at 14:58| Comment(4) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
メーカーもあほじゃないから、輸出する車は米国なりEUのテストにクリアする高性能なもの作るでしょう。
外国で日本政府のお墨付きなんて持ち出したところで鼻で笑われますから。
日本国内で売る車はかつてあったみたいにダウングレードしたものを政府試験で合格したからと売るんじゃないでしょうか
Posted by RFT at 2018年03月17日 16:23
 (2) の「歩行者衝突」の箇所で、下記の文章を加筆しました。

 ──

 ついでだが、記事中の方式では、
  ・ 静止した前方車に50キロで接近した際の衝突速度が20キロ以下になる
 とのことだから、これだと、歩行者には 20キロ以下で衝突することになる。たとえば、18キロで衝突する。当然、歩行者は撥ね飛ばされるし、その後に轢き殺される可能性もある。
 こんなものを「合格」とするんだから、呆れるしかない。
Posted by 管理人 at 2018年03月17日 16:40
自動ブレーキ性能を抜き打ちで「現実に即した検査」をするとお達しすればいいだけだと思います
合格不合格は判定しないとし 結果だけ公表すればいいでしょう 
Posted by P助 at 2018年03月17日 20:28
 根本発想が「メーカーにお墨付きを与えること」という産業政策であって、「国民の生命を守る」ことは二の次( or どうでもいい)なんです。
 ここのところから変えないと。

 現状では「真実は隠す」ことが目的となっています。森友文書と同様だな。
Posted by 管理人 at 2018年03月17日 21:18
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