2018年03月12日

◆ 森友文書の偽造は懲戒免職に? 

 森友文書の偽造については、懲戒免職処分が妥当だろうか?

 ──

 佐川・前国税庁長官は、減給の上で、辞任した。これは懲戒免職とは違う。
 この文書偽造の問題は、国への信頼をなくすもので、国の根幹を揺るがすほどの大問題だ。なのに、罪の大きさに比べて、あまりにも軽微な処分となっている。これはおかしい。
 そこで問題がどこにあるかを、考察してみる。

 偽造か、書き換えか


 マスコミ報道では、今回の文書の問題を「書き換え」というふうに表示することが多い。「改ざん」と記す例は、その1割もない。「偽造」と記すのは、1%もない。(Google のニュース検索の結果。例。 → 検索結果
 では、これはただの書き換えなのか? 

 実は、文書を書き換えるだけなら、ただのバージョンの問題であるにすぎない。似たようなことは、日常的にありそうだ。さすがに決裁後に書き換えるのは珍しいだろうが、あったとしても、それ自体は特に犯罪だというわけではない。特に、上司の命令で行なったのであれば、それは犯罪ではない。(職務である。)
 また、公務員が業務で正式に作成したのであれば、(民間人が対象の)公文書偽造にもならない。
 あるとすれば、虚偽公文書作成か公用文書毀棄かだ。詳細は下記。
  → 東京新聞:森友公文書 指示・了承も刑法抵触の可能性

 今回は特に次のことが問題となる。
 決裁済みの公文書に手を加えてうその内容にすれば虚偽公文書作成罪。

 では、これは成立するか? 
 そのポイントは、書き換えの有無ではなく、書き換えたあとの文書を「元の文書だ」と偽ったことだ。「Aだ」と言って、AではないBを示していることだ。……ここでは、嘘をついている。これによって、「嘘をつくこと」と「公文書の作成」の合わせ技で、虚偽公文書作成が成立することになる。
 つまり、単に書き換えをしただけならば何の罪にも問われないが、書き換えたものを「元の文書だ」と偽ったことで、虚偽公文書作成が成立することになる。
 これがつまり、佐川氏のやったことの罪だ。

 では、これは「偽造」と呼べるか?
 これは、(民間人がやったのではないので)公文書偽造罪における公文書偽造とは違う。だが、広い意味の「偽造」と見なしていいだろう。
 実は法的にも、これは「文書偽造の罪」と規定されている。それには多様な罪があるが、そのうちのひとつに、「公文書偽造」「虚偽公文書作成」などがあるのだ。(他にもいろいろとある。)
  → 文書偽造の罪 - Wikipedia

 というわけで、佐川氏のやったことは、刑法の「文書偽造の罪」に抵触する。その具体的な条文は、「虚偽公文書作成罪」だ。そして、それが成立する理由は、文書の書き換え(だけ)ではなくて、文書の書き換えをした上で、それを元の文書だと偽ったことだ。
 「元の文書です」と言って示したものが、元の文書ではなかったのだから、「虚偽公文書作成罪」に抵触するのは明らかだろう。

 懲戒免職? 


 公文書の偽造をしたなら、減給では済まず、懲戒免職が妥当であるはずだ。特に、小さなミスぐらいではなくて、意図的に大々的に犯罪を行なって、日本中を大混乱に陥れた(自分も辞任する羽目になった)のだから、その罪は大きい。当然、懲戒免職になっていいはずだ。
 では、誰が懲戒免職になるべきか? 
 佐川氏だけか? その部下である書き換えの実行犯もか? また、安倍首相はどうなのか? ……いろいろ考えると、次のように判断したい。

 まず、罪の構成要件が「書き換え」と「嘘つき」の双方なのだから、「書き換え」だけであれば、罪にはならない。
 また、部下の職員は、上司の命令でやっただけだから、罪には問われにくい。職務の権限の上から、免責になりやすい。

 では、佐川氏はどうか?
 「嘘つき」の点では、責任は免れない。
 一方、「書き換え」の点ではどうか? 自分の意思で自発的に決めたのなら、罪に問われる。一方、上からの命令に従っただけなら、罪には問われにくい。

 従って、次の二者択一だ。
 (1) 書き換えを自分の意思で行なったのであれば、懲戒免職にするべき。
 (2) 書き換えを上からの命令で行なったのであれば、懲戒免職にしない。ただし、上からの命令を証言することが必要だ。(明白な命令でなく示唆であっても同様だ。)

 では、上とは? 大臣または首相だ。今回では、大臣は関与していないので、首相となる。
 実際には、首相の関与があったはずだ。(あちこちで隠蔽工作をしていることからも自明だ。 → 森友文書の問題 : Open ブログ(3)
 だから、首相の関与があったことを証言することと引き替えに、懲戒免職を免れるようにするといいだろう。
 逆に、首相の関与があったことを証言しないのであれば、本人が責任をかぶることになるので、懲戒免職にするべきだ。
 これが妥当だろう。



 [ 付記1 ]
 「首相の関与があったことを証言することと引き替えに、懲戒免職を免れるようにする」 (
 と上に記した。これが本項の結論のキモだ。
 つまり、事件は「佐川辞任」で収束したわけではなく、この先に「安倍首相の責任問題」に波及することが可能となるわけだ。
 
 上の () は、一種の司法取引のようなものだと言える。(似て非なるものだが。)
 ついでに記しておくと、司法取引は、日本では長らく制度化されていないかったが、これを認めるような改正刑事訴訟法が 2016年5月に成立したことで、2018年6月に施行される見込みだ。
  → 刑事訴訟:司法取引、6月施行へ - 毎日新聞

 [ 付記2 ]
 はてブにコメントがあった。
kagehiens  結論には同意できるが、書き換えだけなら罪ではないというのに若干違和感が。。内容の骨子をなすものを変更するような訂正を改版履歴なしに起案・承認した公務員は、その時点で罪に問われるべきなのでは。
( → はてなブックマーク

 これには、本文中のリンク先の記事が参考になる。そこでは、「虚偽公文書作成罪」「公用文書毀棄罪」「公文書偽造罪」のある刑法のほか、公文書管理法が掲げられている。
【 公文書管理法 】経緯や意思決定過程を検証できるよう文書を作成しなければならない(罰則規定なし)
 ──
 行政文書の適切な作成、保存、公表などについて定めた公文書管理法には罰則規定がありません。
( → 東京新聞:森友公文書 指示・了承も刑法抵触の可能性

 上記コメントの「内容の骨子をなすものを変更するような訂正を改版履歴なしに起案・承認した」というのは、刑法違反ではなくて、公文書管理法違反である。これは、犯罪(刑法違反)ではなくて、違法行為である。
 したがって、罰則規定がないことから、「罪に問われる」ことはないのだが、「責任がない」わけではない。行政上の不作為として、行政処分(訓戒など)がなされるのが妥当だろう。
posted by 管理人 at 23:59| Comment(7) | 一般(雑学)4 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
メディアは安倍さんの責任を迫ると倒閣運動と見られることを危惧してまずは財務大臣の麻生降ろしを目標に頑張ってますね。
Posted by jce at 2018年03月13日 07:00
> 「首相の関与があったことを証言することと引き替えに、懲戒免職を免れるようにする」

実際に首相の関与があろうがなかろうが、佐川氏はあったと証言した方が利益があるように思うのですが、このような証言に信用性はあるのでしょうか。もちろん嘘をつけば偽証になるのでしょうが、言った言わないで証拠はなさそうですし。
Posted by K.A at 2018年03月13日 10:37
> 佐川氏はあったと証言した方が利益があるように思うのですが、このような証言に信用性はあるのでしょうか。

 これは司法取引の難点として知られている問題です。
 一般的な(一律な)回答があるわけではなくて、おおむね次のように考えられます。
  ・ 嘘をつくのが平気で低知能な犯罪者ならば、偽証する。
  ・ まじめで知能の高い公務員タイプならば、偽証しない。

 東大卒のエリートとして、官僚の最高位まで上り詰めた佐川氏が、何かを語るとしたら、「人生の仕事を終えたあとで、晩節を汚したくない」ということでしょう。「妻や子供に向けて、犯罪者として歴史に名を残したくない」ということでしょう。
 ゆえに、上からの命令を受けたのであれば、正直に答える可能性が高い。
 一方、上からの命令を受けていなくて、自分の意思だけでやったのであれば、「首相への忠誠心だけで勝手に暴走しました」ということを、詳細な心理とともに告白するでしょう。
 なお、この心理を偽証する可能性もあるが、それは実際にはとても難しい。複雑な心理なので、偽証すれば、すぐにボロが出る。すると歴史上の大悪人として名を残す。そんなことはしないでしょう。
 一方、実際には自分の意思でやったのに、罪を首相に転嫁することはないでしょう。そんな嘘をつくと、周辺の状況証拠と矛盾することで、偽証がバレやすい。嘘をつけばバレる、ということを、痛いほど身にしみて感じているのに、さらに大きな嘘をつくことはしにくいでしょう。すでに罪を認めて辞職したのに、さらに嘘をつくという罪を重ねて、危険を冒す理由がない。元の文書偽造は、「立場上、やむを得なかった」といういう弁明も立つし、同情も買うが、「自己の保身のために、首相に責任転嫁する」なんていうことをしたら、バレたとき、歴史に残る大悪人となってしまう。そんな危険を冒すはずがない。頭の悪い人は「バレっこないさ」と楽観するが、頭のいい人は「バレたら大変だ」と心配するものだ。
 佐川氏は、現状ならば懲戒免職ぐらいで済むし、虚偽公文書作成罪になっても執行猶予ぐらいで済みそうだ。しかし「自分の罪を首相にかぶせた」という偽証をしたら、悪質性からして、懲役刑(実刑)は免れないだろう。そんな危険を冒すはずがない。
Posted by 管理人 at 2018年03月13日 12:14
>頭の悪い人は「バレっこないさ」と楽観するが、頭のいい人は「バレたら大変だ」と心配するものだ。

概ねそういう認識なんですが、結構例外もあるような。

"仮定の質問には答えられません"
ここ数日、書き換えを認める前までよく耳にした文言です。発覚することまで思いが及ばないのか、そもそも公になっても大事に至らないと考えているのか...
Posted by 作業員 at 2018年03月13日 13:33
今辞任すれば懲戒免職にしないし、天下り先も保障するし
証人喚問もしないと政権からあって辞任したのではないかな。
佐川氏に関しては今からでは取り引きはもう遅いのでは?
Posted by 7 at 2018年03月13日 14:26
官僚の頭の回転の早さには敵わない、ってことですかね
Posted by カレー at 2018年03月13日 16:55
> 佐川氏に関しては今からでは取り引きはもう遅いのでは?

 本項は、どうなるかという予想じゃなくて、どうするべきかという筋論です。現実の話とは違う。

 現実に手遅れかどうかは、別次元の話。野党と世論の頑張りしだい。未来は不明。
 ただし、実を言うと、佐川氏はすでに依願退官しているそうだ。(ネットにはないようだが、Wikipedia にそう書いてある。)懲戒免職への変更が、今から可能かどうかというと、可能であるそうだ。
  https://www.jiji.com/jc/article?k=2018030901403&g=eco
 とりあえずは手続きを留保する、というのが最善だが。
Posted by 管理人 at 2018年03月13日 18:19
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