2018年03月12日

◆ アジアの人口増と米作

 アジアでは歴史的に、人口の増加があった。その理由は、米作だ。

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 中国とインドだけでなく、アジアでは一般に人口が多い。これは歴史的に人口増があったからだ。その理由は、米作だ。つまり、米作のおかげで十分な栄養を取れたから、人口増があったのだ。
 このことは、私の意見ではなく、世界史の常識だ。本項では、新しい見解を記すのではなく、既存の情報を整理して紹介する形で示そう。

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 ネット上を探すと、この件を説明している記述がいくつも見つかる。
 たとえば、下記。
世界史的には、アジア人の人口膨張は、米作によって支えられた、と認識されています。
( → 稲作について、米が小麦より優れている点は何ですか - Yahoo!知恵袋

稲作が人口増の原因というのは理由の一つです。米は麦よりエネルギー価の高い作物ですから多くの人口が養えるのも当然です。また米以外にも熱帯、亜熱帯が多いのでそれだけ日射が強く植物全体の生産量が高いのです。
ヨーロッパは本来農耕には適しません。少なくとも稲作は北限を越えています。
( → アジアの人口が多いのは米のおかげですか? - Yahoo!知恵袋

米ってのは夏にそれなりの暑さと雨がたくさん降る地域じゃないと作れない。ヨーロッパってのは北は西岸海洋性気候で、南は地中海性気候と雨が降りづらいから、作れないってじゃないけど米の栽培には向かない。
スペイン料理のパエリアみたいにお米を使う地方もあるけど、ヨーロッパ全体の主食としては向かないという意味です。
( → どうしてアジアは米主食になってヨーロッパはパン主食になったんでしょう? - Yahoo!知恵袋

 米は小麦よりも栄養価が高い。特に米はタンパク質が多めだ。小麦はタンパク質がまったく不足している。米だけで生きることはできなくもないが、小麦だけで生きることはできない。
 栽培法も違う。小麦は連作による痩せ・障害があるが、米は水田を使うことで、この問題を免れている。この点は重要だ。

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 また、栽培の安定性も重要だ。天候はときどき変化するが、天候不順のとき(日照りや干ばつ)には、作物が不順で、凶作になる。そうなると、食物不足の飢饉で、大量の餓死者が出かねない。
 その点、水田を使う米作は、比較的、安定性が高い。そのことで、凶作による飢饉を(いくらか)免れることもできる。

 凶作のせいで人口減が起こった、ということは、歴史上に、しばしば見られる。
 たとえば、アメリカインディアンは、広大な土地があるのに、あまり人口増がなかった。これは、その地にあるトウモロコシが、干ばつに弱いからだ。(トウモロコシだけが弱いのではなくて、水田を使わない畑作の作物は、みんな干ばつに弱い。)

 欧州でも、歴史的に何度も、小麦の凶作のせいで人口減が起こった。
 中世ヨーロッパを襲った飢饉がどれほどすさまじかったかを数字でみてみます。
 1314年はヨーロッパ、特に北西部で不作の年となり、収穫は人口を養うのに足りなかった。1315年の穫り入れは、それに輪をかけて壊滅的だった。翌1316年が少しはましだったかというとそうではなかった。英国では小麦の値段が4倍に撥ね上がった。1316年には6倍にも達した。人口3万人のイープルでは、1316年の5月から10月の間に2794人の死者が出た。ブリュージュでは、1316年5月7日から 10月1日までに2794人、人口の5%が死んだ。
( → 中世ヨーロッパを襲った飢饉|フランスの田舎暮らし

 上の事例は手始めで、このあと延々と、飢饉による死者の例がたくさん例示されている。数限りない、という感じだ。それほどにも、欧州では小麦の飢饉は日常的だった。
( ※ だからこそ、アジアに比べて、人口増がなかった。)

 凶作による人口減という点では、ジャガイモも同様だ。歴史的に名高いのは、アイルランドのジャガイモ飢饉だ。ジャガイモは、地中にあるので、天候の変異には比較的強いのだが、アイルランドではジャガイモの疫病のせいで、ひどい凶作が起こった。人口が大幅に減少した。
 飢饉の原因はじゃがいも疫病であり、全体的な天候不順ではなかったため、じゃがいも以外の作物は普通にとれており、実は飢饉の1845-52年の期間中に、イギリスへの畜産物や穀物の輸出はむしろ「増えていた」のだそうです。
( → ベイエリアの歴史(28)- やっぱり人災だったアイルランドのジャガイモ飢饉

 生産性の非常に高いジャガイモの栽培を始めた。それによって、ジャガイモが貧農の唯一の食料となってゆき、飢饉直前には人口の3割がジャガイモに食料を依存する状態になっていた。しかし、1845年から1849年の4年間にわたってヨーロッパ全域でジャガイモの疫病が大発生し、壊滅的な被害を受けた。
 最終的には、人口の少なくとも20%が餓死および病死、10%から20%が国外へ脱出した。また、これにより婚姻や出産が激減し、最終的にはアイルランド島の総人口が最盛期の半分にまで落ち込んだ。さらにアイルランド語話者の激減を始め、民族文化も壊滅的な打撃を受けた。
( → ジャガイモ飢饉 - Wikipedia

画像は、アイルランドの人口の推移です。

potatofamine.gif

( → アイルランドとイギリスの深い溝を作ったジャガイモ

 1845年から1849年にかけてヨーロッパでジャガイモ疫病が大発生し、ジャガイモが壊滅状態になってしまいます。これは食料の多くをジャガイモに依存していたアイルランドの人々にとって餓死を意味することでした。
 アイルランドにおけるジャガイモ飢饉では、100万〜150万人が餓死もしくはそれに繋がることで死亡し、約150万〜400万人が北米大陸やオーストラリアなどに移民を余儀なくされました。
 当時の総人口が800万人以上いた当時のアイルランドの人口を考えるとこれがいかに異常なことであったかがわかるでしょう。
( → ジャガイモと飢饉の歴史 | おもしろコラム

 ただし興味深いことに、この飢饉の前には、ジャガイモのおかげで、大幅な人口増があった。上の記事には、次の文章もある。
 アイルランドでも、ジャガイモの恩恵を多く受けていて、ジャガイモが定着するとアイルランドの人口は急激に伸びて行きました。
 ジャガイモが定着していなかった17世紀のアイルランド人口は約100万人程度だったのですが、ジャガイモが入ってくると急速に人口爆発が起こり、19世紀半ばには800万人を越えるほどの人口となりました。

 ──

 なお、次の記事もある。欧州の農業の話。
 土地の大半が農耕可能かつ降水量が比較的豊富な気候に恵まれていたため、農業適地の広大なヨーロッパでは農業生産力を上げず、耕地を二つに分け半分を耕作し半分を休閑地とする、二圃式農業と呼ばれる粗雑な農業による広大な農地の使用を行い、休閑地は一年かけて降水を土壌中に保水して翌年の耕作に使用した。
 これによって、灌漑農業やギリシャ、北アフリカ、イラン、華北などで行われた乾地農業より遥かに低い単位当り収量だったものの、技術的制約から解き放たれ、農業技術の未熟なローマ人にも耕作可能な土地が増加、生産量が向上した。
( → 灌漑 - Wikipedia

 欧州では(山だらけのアジアと違って)平地だらけであり、農業適地が広大だった。だから、灌漑をするよりは、二圃式農業と呼ばれる粗雑な農業を取った。そのせいで、干ばつには弱くなった。
 つまり、条件が良すぎたことが、灌漑という努力を放棄させ、そのせいで、凶作が起こりやすくなったわけだ。ちょっとした皮肉ですね。



 【 関連項目 】
 
  → 日本人は人権意識が弱い。なぜか?: Open ブログ (前項)

 日本人は人権意識が弱いことの根源として、アジアにおける人口密度の高さを記している。
 そこで、アジアにおける人口増加を説明するために、本項では米作を示している。
( ※ 前項でも軽く言及したが、本項では詳しく説明している。)
posted by 管理人 at 20:18| Comment(1) | 一般(雑学)4 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 参考:
 水田では 連作障害が生じにくい理由。
  → http://www.tanbo-kubota.co.jp/env/scheme.html#sec3

 何で水田なんかにするか、わからない人が多いだろうが、その理由は ここにある。
Posted by 管理人 at 2018年03月13日 22:59
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