2018年03月10日

◆ 日産自動車の没落

 日産自動車が没落しつつある。下手をすると倒産しかねないほど、利益率が低下している。

 ──

 日産自動車は、昨年上半期の世界生産台数が、(ルノー・三菱を含めて)グループ全体で世界首位になった、と誇った。しかし台数は増えても、利益率は低迷している、と報道された。
 《 販売台数が世界首位の日産 利益率低迷で喜んでばかりいられない?》
 喜んでばかりはいられない。販売で世界一になっても、利益率は低迷しているからだ。国内大手乗用車メーカー7社のうち、2017年4〜6月期の売上高営業利益率トップはスバルの約14%。以下、スズキ、トヨタ、ホンダが9〜7%台で続く。これに対して日産は5.6%とかなり離されており、「病み上がり」の三菱は最下位の4.7%にとどまる。
 日産は2011年度に策定した経営計画「日産パワー88」で、計画の最終年度である2016年度に売上高営業利益率と世界シェアをともに8%とする目標を掲げたが、どちらも達成できなかった。
( → ライブドアニュース

 《 日産の、販売台数が5%増加するも営業利益率は1ポイント悪化 》
 売上高は2兆7604億円と4.0%増加した。しかし、営業利益は1533億円で12.8%も減少し、営業利益率は1ポイント悪化の5.6%になっている。それは日本以外が大きく減少しているためだ。日本が952億円(40.0%増)に対し、北米508億円(36.0%減)、アジア174億円(23.5%減)で、欧州に至っては27億円の営業赤字に転落している。
 その減益要因で大きな部分はマーケティング・販売費用で、前年同期に比べ508億円も増えている。言ってみれば、台数を確保するためにインセンティブ(販売奨励金)を積み増したわけだ。
( → レスポンス(Response.jp)

 これは昨年前半の話。その後、「日産は北米でシェアを維持しているが、多額の販売リベート(奨励金)で大幅値引き販売しているだけだ。台数は保っているが、利益率は激減している、と報道された。
 呆れて心配していたが、本日発売のベストカーでは、もっとひどい状況が記されていた。



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 日産で利益を出しているのは、国内市場ぐらい。国内分は、全体の1割未満の販売台数で、6割以上の利益を稼ぎ出している。換言すれば、それ以外の世界市場では、大量の販売台数を誇っても、利益がほとんど上がっていない。
 しかも、これは、大幅な円安という状況でのことだ。ここで、もうちょっと円高に振れたら、利益はすべて吹っ飛んでしまう。つまり、もうちょっと円高に振れたら、日産は大幅赤字を出して、倒産しかねないのだ。もう、顔真っ青である。

 どうしてこうなったか? 
 雑誌記事では、「モデルチェンジをしないから」と言っている。モデルチェンジをしないまま、7〜8年も前の古いモデルのまま売っている車が多い。これでは売れなくて当然だ、というわけ。
 なるほど。では、なぜ、モデルチェンジをしないのか? 金がないのか? いや、金ならば、空前の金余りのなかで、いくらでも貸してくれるだろう。となると、理由は、次のいずれかだ。
  ・ ゴーンが金をケチって、新車開発をしない。
  ・ 開発要員がいなくなって、開発できない。

 どっちであるかは知らないが、どっちにしても同様で、もはや生存能力をなくして瀕死のありさまだ。早晩、倒産しそうだ。

 もう一つ、根源的な理由もある。日産の車の品質評価が暴落している、ということだ。


ranking_brand.jpg


 この件は、前に別項で言及した。再掲しよう。
 見ればわかるように、日産・三菱・インフィニティが業界でも最低レベルのクラスだ。
 これは何を意味するかというと、日産の自動車技術の開発力の低さを意味するのではなくて、日産の使っている部品が粗悪品ばかりだということを意味する。要するに、部品を(低コストな)粗悪品ばかりにしている、ということだ。
 印象的に言えば、「日産の使っている部品は中国製の粗悪部品ばかりだ」という感じだ。実際に中国製ということはないのだが、韓国製の部品をかなり輸入しているし、粗悪品が多いのは事実であるようだ。

 まあ、輸入部品であっても、ちゃんとした品質のものであればいいのだが、日産の場合、タイ製のマーチを見てもわかるように、ひどい低品質の部品を多用している。粗悪品の塊という感じだ。それが、上のグラフにはっきりと出ている、と言えるだろう。
( → 日産が駄目になったわけ: Open ブログ

 このことは、世界的に定評となっている。「故障しない車がほしければ、トヨタ車がいい」とは言われるが、「日産車がいい」とは決して言われない。日産車は韓国車以下の粗悪品だ、というのが、世界的な定評だ。

 ただし、日本だけは違う。日本の人は、昔の「技術の日産」のことをよく覚えている人が多いので、日産車を「品質が高い」と今でも思い込んでいる。妄想を信じているわけだ。そのせいで、低品質のものを高額で買ってくれる。
 これはまあ、詐欺師にカモにされているのも同然だ。
 そこで、「詐欺師にだまされるな」というのをポリシーとしてる私が、難点を指摘しているわけだ。

 ──

 日産車は、自動ブレーキですら、5000円〜1万円ぐらいのコストを惜しんで、ミリ波レーダーを搭載しない。これほどにも安全性をないがしろにして、コストカットばかりに励む。
 そういう「コストカット体質」が、あらゆる部門に行き渡っている。だから、結果的に、「安かろう、悪かろう」という商品ばかりができる。そのせいで、高値で売れなくなって、利益率が激減する。まともに売れるのは、だまされている国内ユーザーを相手に高値販売しているときだけだ。(外国では、リベートで大幅値引きしているときだけだ。)
 もう、つぶれていいよ、と言いたいぐらいだ。

 ──

 では、どうすればいい? 困ったときの Openブログ……と言いたいところだが、私としても、画期的な名案があるわけじゃない。
 強いて言えば、「ゴーンを追放すること」だ。この人の「コストカット最優先」という方針が、諸悪の根源なのだから、ゴーンを追い出すことこそ、根本的な治療の条件となる。
 あと、もう一つ、大事なことがある。日産の統一デザイン(Vモーションと言われるもの)を、やめることだ。この統一デザインのせいで、日産車はみんな同じようなデザインで、魅力が低下している。これで成功しているのは、新型マイクラぐらいだろう。
( ※ フロントドアのウインドウのラインが低いので、ウェッジシェイプになっている。一方、ノートやリーフは、以前のドアを踏襲しているので、ウインドウのラインが高いままであり、ウェッジシェイプになれず、ずんぐりしたスタイルとなっている。悪くはないが、いまいちのデザインだ。)
 一方、Vモーションをやめて成功した例もある。セレナだ。セレナのデザインは好評だ。おかげで売れ行きも上々だ。仮に、セレナのデザインが Vモーションになっていたら、売上げは半減していただろう。
 逆に言えば、セレナ以外の日産車のほとんどは、 Vモーションのせいで、不評となり、販売台数が伸びず、利益率も低迷しているわけだ。要するに、日産の不振の理由の半分は、Vモーションのせいだと言える。(残りの半分は品質の低下。)

 なお、あともう一つ、根源的な問題がある。それは「社内の英語公用語化」だ。こいつのせいで、日産の開発能力は大幅に低下してしまった。この件は、前に論じた。
  → 日産が駄目になったわけ: Open ブログ

 この件も合わせて、ゴーンを追放することこそ、日産が再生するための条件となる。問題は、ゴーンが出ていく前に、日産が赤字倒産するかどうかだ。円安が続けばいいが、円高になれば、日産は一挙に倒産しかねない。



 【 関連項目 】

  → 日産のデザイン責任者の交替: Open ブログ

 日産のデザイン責任者が交替した。中村史郎から、外国人へ。
 しかし、この外国人が Vモーションを推進している。この方針は、なかなか撤回されないだろう。困ったことだ。
 こんな人物を選ぶ経営者が悪い、と言えばそれまでだが。

 ともあれ、日産は、瀕死の重病人、というありさまだ。環境が悪化したら一気に死亡してもおかしくない状態だ。



 [ 付記 ]
 なお、もっといろいろと詳しいことを知りたければ、上記のベストカーを買えばいいだろう。興味深い話がいろいろと書いてある。これを読むと、「日産って、ダメになったね」ということが、ひしひしと伝わってくる。あまりにも可哀想なので、同情して、「つぶれないように頑張って」と応援する批評家が多い。
 私としても、可哀想なので、応援したいんだけどね。いかんせん、ゴーンが……

  Gone with the wind ....

 (日産は風と共に去りぬ。ゴーンとともに死ぬ。)

 ──

 なお、ベストカーに書いてあるが、日産の品質レベルは、もはやスズキ(スイフト)以下だ。
 日産よりも上なのは、トヨタ・ホンダ・スバル・マツダ・スズキ。日産よりも下なのは、三菱だけ。……まったく、情けないありさまだ。スバル・マツダ・スズキの後塵を拝するのだから、企業経営としては大失敗の部類に入るだろう。
 コストカットのことばかり考えているから、こうなる。……一般的な日本企業の典型かもね。
posted by 管理人 at 18:48| Comment(8) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
まあ、無理でしょうな。
言わば、彼はルノーのエージェントですから。
乗っ取り成功です。
もはや、日産は食い尽くされて、捨てられる運命です。
顧客は騙せなかったということでしょうね。
Posted by 普通のおっさん at 2018年03月10日 21:17
だったら日産でルノーを売ればいいのだけれど
日本で売れるようなルノー車もない
ルノーもマツダスズキ以下だってこと
最近の話
日産ディラーの営業マンはひいき筋の老人のユーザのところにもまわらないことになったそうだ
ディラーに買いたいと言ってきた人にしか売らないらしい
日産とかいてヒサンと読む
Posted by ヒサン at 2018年03月11日 04:51
日本国の縮図の見せられている様な話ですね。
上は自分の懐を潤し、下には節約、粗悪、忍耐を押し付けるというのが……。
Posted by 無機名 at 2018年03月11日 06:10
このことでまたぞろ円安政策になったら嫌だなあ。
円安は国民全体の負担により(自民党に献金する自動車産業等の)輸出企業に帳簿上の利益をもたらすものと思っています。
安倍ちゃんは円安で株価が上がる(アベノミクス大成功)と言っているが、海外機関投資家が日本株を買う(このことで株価が上がる)と同時にリスクヘッジで円を売る(円安になる)行動をとっているもので原因と結果が逆でしょう。
Posted by アラ還オヤジ at 2018年03月11日 07:30
あいかわらず突っ込みどころが多いですね。
あなたは自分の都合の良いデータだけあつめて持ち出しているだけです。

>> 見ればわかるように、日産・三菱・インフィニティが業界でも最低レベルのクラスだ。

http://japan.jdpower.com/ja/press-release/2017%20US%20Initial%20Quality%20Study%20%28IQS%29/JP
http://www.jdpower.com/press-releases/jd-power-2018-us-vehicle-dependability-study?src=homepage

品質調査なんてこんなもんです。
所詮人間が採点するものですので、結果はころころ変わります。


>> 社内の英語公用語化」だ。こいつのせいで、日産の開発能力は大幅に低下してしまった。

日産の社内公用語は日本語ですね。
日本での開発は日本語です。
海外と会議をする際は当然英語となりますが、これは日本の会社はどこでもそうです。

>> モデルチェンジをしないまま、7〜8年も前の古いモデルのまま売っている車が多い。

これは日本に限った話ですね。
その他市場では他社と同程度の頻度でマイナーチェンジとモデルチェンジを繰り返してます。
別段国内外他社と違いはありませんね。

>> セレナのデザインは好評だ。おかげで売れ行きも上々だ。仮に、セレナのデザインが Vモーションになっていたら、売上げは半減していただろう。

セレナにもVモーショングリルは採用されてますね。
あとノートやエクストレイルの成功は無視ですか?

>> 日産のデザイン責任者が交替した。中村史郎から、外国人へ。
 しかし、この外国人が Vモーションを推進している。この方針は、なかなか撤回されないだろう。困ったことだ。
 こんな人物を選ぶ経営者が悪い、と言えばそれまでだが。

Vモーショングリルの生みの親が中村氏自身です。推進していたのもこの方。
新責任者は現在のインフィニティデザインの生みの親ですね。
Posted by きゅうとぴ at 2018年03月13日 21:15
> 結果はころころ変わります。

 残念でした。それは初期品質のデータ。本記事で示しているのは耐久性のデータ。全然、別のデータです。データがコロコロ変わるんじゃない。あなたの視点がコロコロ変わっているだけ。
 両方のデータを混同しているですね。

> 日産の社内公用語は日本語ですね。

 あなたは人の話を読まないで誤解しています。この件はちゃんとリンク先(およびそのまたリンク先)で詳しく説明してあります。人の説明を読んでから書きましょう。そうすれば事実誤認を避けられます。

> これは日本に限った話ですね。

 そんなわけがないでしょ。キューブ、フェアレディ、ジューク、アルティマ、エルグランド。ま、国内専用車だと、他にも多いが。

> セレナにもVモーショングリルは採用されてますね

 あれはVモーショングリルじゃないですよ。ちょっと似た感じがあるだけで、全然別物。特に、豚の鼻がないし、V の銀棒もない。

> ノートやエクストレイルの成功

 ノートは古くて売れなくなっている。成功しているのは e-power だけ。あと、ベストカーにも書いてあるが、日産の他の小型車が全部売れなくなっているので、日産ファンがせいぜいノートぐらいを買うようになっているだけ。ノートは売れていても、日産の小型車全体では大幅減少。
 エクストレイルも先代の成功に比べて落ちている。先代は業界トップだったのに、今ではライバル比でトヨタやマツダに負けてしまった。1位から3位に落ちてしまった。もしかしたら CRV にも負けて4位かも。大失敗ではないが、小失敗の部類。まともに成功しているのはローグだけ。ただ、ローグも台数は出ているが、利益は出ていないので、単に安売りしているだけだ。利益を出している他社とは比べものにならない。

> Vモーショングリルの生みの親が中村氏自身です。推進していたのもこの方。

 それはそうだけど、わかっているから、いちいち書かなくてもいいです。本記事ではそのあとのことを書いています。話題が別。

> 新責任者は現在のインフィニティデザインの生みの親ですね。

 そんなことは関係ない。この人は Vモーション2 という新デザインの推進者。それが話題となっている。
 中村史郎の Vモーションのゴリ押しがなくなって、これで改善されそうだと喜んでいたら、かわりに Vモーション2 を推進している。がっかり。そういう話。
Posted by 管理人 at 2018年03月13日 21:51
技術はごっそり盗んで、分断統治ってことなんでしょうな
ゴーン氏、価値を生む仕事には向いていない人ですね
Posted by 普通のおっさん at 2018年03月14日 22:57
>> 残念でした。それは初期品質のデータ。本記事で示しているのは耐久性のデータ。全然、別のデータです。データがコロコロ変わるんじゃない。あなたの視点がコロコロ変わっているだけ。
 両方のデータを混同しているですね。

その点は勘違いでしたが、JDパワーのデータを見てれば毎年コロコロ変わるのはどのデータも同じですね。

>>あなたは人の話を読まないで誤解しています。この件はちゃんとリンク先(およびそのまたリンク先)で詳しく説明してあります。人の説明を読んでから書きましょう。そうすれば事実誤認を避けられます。

いやだから日産の社内公用語は日本語ですってば。

>>そんなわけがないでしょ。キューブ、フェアレディ、ジューク、アルティマ、エルグランド。ま、国内専用車だと、他にも多いが。

意図的にモデルチェンジしていない車種を抜き出しているだけですね。

>>あれはVモーショングリルじゃないですよ。ちょっと似た感じがあるだけで、全然別物。特に、豚の鼻がないし、V の銀棒もない。

それはあなたの主観ですね。

>> ノートは古くて売れなくなっている。成功しているのは e-power だけ。あと、ベストカーにも書いてあるが、日産の他の小型車が全部売れなくなっているので、日産ファンがせいぜいノートぐらいを買うようになっているだけ。
ノートは売れていても、日産の小型車全体では大幅減少。

多くの顧客は「車なんて乗れりゃいい」と考えている人が大半ですよ。


>>エクストレイルも先代の成功に比べて落ちている。先代は業界トップだったのに、今ではライバル比でトヨタやマツダに負けてしまった。1位から3位に落ちてしまった。もしかしたら CRV にも負けて4位かも。

CX-5は新車効果で盛り上がっただけで、以降
は落ち着いてますね。
CRVは国内だと惨敗。

>>大失敗ではないが、小失敗の部類。まともに成功しているのはローグだけ。ただ、ローグも台数は出ているが、利益は出ていないので、単に安売りしているだけだ。利益を出している他社とは比べものにならない。

日産でもっとも利益を出している車はローグ、キャシュカイ、エクストレイルといわれています。
このぐらいの値段の車が台数と利益率が高いからです。

>>そんなことは関係ない。この人は Vモーション2 という新デザインの推進者。それが話題となっている。




Posted by きゅうとぴ at 2018年11月23日 13:12
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