2018年03月09日

◆ 5年で雇い止めという問題

 有期雇用の労働者が5年で雇い止めになる、という問題がある。これを批判する人が多いが、そこには誤解がある。

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 有期雇用の労働者が5年で雇い止めになる、という問題がある。
 日本の科学技術研究をリードする理化学研究所で、大規模な雇い止めが迫る。研究アシスタント、事務業務員ら365人が雇い止めの対象となる。
 2013年4月に施行される改正労働契約法の影響で、同法では、有期雇用が5年を超えれば労働者が無期雇用に転換できる「5年ルール」が適用されるのだ。
 不当労働行為の救済を申し立てたが、契約満了には間に合いそうにない。対象者の怒りの矛先は、使用者だけではなく、法律にも向かった。
( → 理研で365人が雇い止め 〈AERA〉 - Yahoo!ニュース(AERA dot.)

 記事には、「彼らは必要だからやめさせないでくれ」と訴える正規職員の声も紹介されていた。
 「アシスタントは研究室を支える仕事で業務は多岐にわたる。外部との連絡調整もあり、蓄積された経験や人脈は大切で、簡単に代替えがきくものではない。人事部に辞めさせられると困ると伝えたが、駄目だった」

   ( 【 注 】「代替え」は「代替」の誤用。)

 さらに、次のようなことも起こっている。(同じ記事から。)
 13年の改正労働契約法には抜け道がある。有期労働契約の間に6カ月の空白があれば、その前後の契約期間は通算しない。
「4月に一気にいなくなると現場が混乱するのは目に見えている。先に何人かの秘書が順番に退職し、6カ月空けて戻って、誰かは残るようにしている」

 こういうことから、この制度を作った民主党政権を批判する声が多い。「労働者にしわ寄せが行く(解雇される)ような制度を作った方が悪い」と。
  → はてなブックマーク

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 だが、多くの人は勘違いしている。五年後に起こることは、正規雇用になることではなく、無期雇用になることだけだ。この場合、期間が無期になるだけである。給与の上昇はないし、雇用側のコストアップもない。したがって、雇用する側は、たいして負担増にはならないのだ。

 雇用する側がなすことのは、通常、次のいずれかの選択だ。
  ・ 給与は変えずに、雇用期間を有期から無期に変えるだけ。
  ・ 有能な経験者をクビにして、無能な未経験者を新規採用する。


 そのどちらかを選ぶとなると、たいていは、次のようになるだろう。
  ・ 高技能な熟練専門家ならば、(かけがえが利かないので)前者。
  ・ 低技能な単純労働者ならば、(かけがえが利くので)後者。


 どちらにしても問題ないはずだ。
 高技能な熟練専門家ならば、無期雇用になる。労働者は職業の安定性を得られる。雇用する側は、熟練労働者を従来と同じ給与で雇用できる。その後、将来的に解雇するときには、応分の退職金の支払いが必要となるが、おおむね7年以上も雇用したのであれば、応分の退職金を払うのもやむを得まい。(無期雇用の契約だからと言って、ずっと雇用義務があるわけではない。応分の退職金の支払いが必要になるだけだ。)
 低技能な単純労働者ならば、雇い止めになる。労働者はあっさり解雇されるが、どうせ単純労働者なのだから、同じような働き場所はいくらでもある。さっさと辞めて、さっさと転職すればいいだけだ。(特に最近では、ピンハネ率の低い派遣業者 も出てきたから、ついでに派遣業者も変えれば、職場転換にともなって、ピンハネ率が下がって、手取り収入が増える。)

 前者の例は、下記にある。
  → 派遣で5年働いてこれから正社員になる話
 これは、有期から無期になるだけでなく、派遣から正社員になった例だ。この人も、(派遣のころから)高技能な熟練専門家と見なされたからこそ、派遣から正社員になったわけだ。制度改正の効果が大きく出た例、と見なされるだろう。

 というわけで、高技能な熟練専門家にしても、低技能な単純労働者にしても、別に損はしないのだ。制度改正は、おおざっぱに言えば、「好ましい」と判断できるだろう。
 また、一般的には、「有期から無期に」というふうになる例が多いだろうから、好ましい例が多いと言える。
 一方、単純に「雇い止め」になるのは、低技能な単純労働者だろうから、クビになったからと言って、いちいち嘆く必要はない。どうせどこだって似たような賃金なのだから、さっさと別の職場で働けばいいだけだ。

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 ただし……
 例外的な事情もある。次の二つだ。
  ・ 高技能と低技能の中間的な労働者
  ・ 研究機関の熟練労働者


 前者は、どっちつかずの境遇なので、はみ出し扱いとなり、ちょっと困った状態になるようだ。例は、大学の非常勤講師。ただ、これは、「高技能な熟練専門家を、低〜中ぐらいの賃金で雇用する」という根源的な問題がある。事情は特殊であるようだ。

 後者は、今回も話題になった理研などが当てはまる。この問題は、理研のような研究機関に特有の問題であるが、より根源的な問題を含む。そこで、別項で独立して扱う。
  → 研究機関の雇い止め : Openブログ (次項)
posted by 管理人 at 19:55| Comment(2) | 一般(雑学)4 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 雇い止めの問題は、実はすでに一応解決していたそうだ。理研が雇い止めを撤回したという。つまり、雇い止めのかわりに無期雇用にする。
 ただし、範囲は、2105年以前に雇用されていた人だけだという。残りは未解決。
 詳細は下記。
  https://www.huffingtonpost.jp/2018/02/26/riken2_a_23370981/
Posted by 管理人 at 2018年04月07日 06:37
 研究者については、無期雇用を大幅に増やす……という方針を理研は示した。
 以下、引用。

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 理化学研究所が今年度から7年間の中長期計画を発表しました。この中で、研究者の雇用形態について、現在15%程度の無期雇用の割合を、40%にまで引き上げる方針を明らかにしました。

 http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/newsl/post_152763

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 下記の記事も。

 https://www.asahi.com/articles/ASL46240RL46UBQU001.html
 https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2018/04/20180406_01.html


 ※ 本項のテーマである補助要員については、何とも言っていないようだ。
Posted by 管理人 at 2018年04月07日 06:41
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