2018年03月07日

◆ フランスの出生率の低下は?

 本項の内容は不正確だと判明したので、取り消します。
 詳しくは最後の 【 後日記 】 で。



 フランスの出生率が低下している。その原因について、世間では誤解が広がっている。「出生率が高かったのは、移民の出生率が高かっただけだ。子育て支援などは無効だった」と。

 ──

 フランスでは出生率が高い。これについては「子育てについての社会支援が高いから」と説明されることが多い。

 ところが近年、フランスの出生率が低下している。
 フランスの国立統計経済研究所(Insee)によれば、2017年に生まれた新生児は76万7000人で、2016年から1万7000人減少した。出生率は、2014年の2.0、2016年の1.92から1.88まで低下している。
( → なぜフランスの出生率が低下? 充実した子育て支援も3年連続減 | NewSphere

 この記事では、原因について、いくつかの事柄が呈示されている。
  ・ 出産適齢期が上がった?出産年齢にある女性も減少
  ・ 緊縮財政のせい?理由の特定は困難


 はてなブックマークには、「移民規制のせいだ」という指摘がある。
何故も何も13年から移民規制始めたし、子育て支援にほぼ効果がないんだから。移民の母・父と移民同士の組み合わせによる引き上げで誤魔化していただけですもの。元が低出生率文化なのだから必然でしょう。
( → hiroajのコメント / はてなブックマーク

移民規制が始まったからでしょう。フランスネイティブの出生率は高くなかったですよ。母親一人当たり1.65人 http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/9020.html ノルウェーも移民の出生率高い。id:tick2tack ドイツも移民の影響が http://ur0.work/ITPT
( → mil10のコメント / はてなブックマーク

 上のリンク先には、こうある。
 グラフを見れば一目瞭然であるように移民あるいは外国籍女性の出生率は自国女性よりかなり高くなっている。

imin-born.gif

( → 図録▽ヨーロッパ諸国における自国女性と移民・外国籍女性の合計特殊出生率

 つまり、「フランスの出生率の高さは移民が理由であった」というわけだ。ここから、「子育てについての社会的支援などは効果がなかった」という結論になる。
 このような主張が、はてなブックマークでは多くの支持を得ている。

 しかし、本当にそうか? 

 ──

 最後の記事のはてなブックマークには、次のコメントがある。
 移民寄与分は少ないとのこと https://twitter.com/raurublock/status/638512386882670592
( → はてなブックマーク

 このリンク先には、こうある。
フランス全体の平均出生率の高さにおける移民/外国籍女性の寄与分は小さい。 http://d.hatena.ne.jp/fenestrae/20060128 あたりを参照のこと
( → ultravioletさんのツイート

 そのリンク先には、こうある。(かなり学術的な解説なので、信頼するに足りる。)
 フランス生まれの女性の出生率1.65に対し移民女性の出生率が2.50。しかし出生率上昇に対し0.07の違いしかもたらさない。これだけでもフランスの高出生率は移民による寄与が大きいという先入観を取り除くのに十分であろう。

 フランスに入る前にもうけた子の数を計算に入れると出生率が下がるというのはマジックのようだ。

フランス全体の出生率のその後の大きな上昇(1991-98年の1.72に対し2005年が1.94)と、一方、移民の出身国の出生率の低下傾向を考えると、フランス生まれの女性の出生率と移民女性の出生率の差、後者の全体の出生率に対する寄与の割合は、さらに小さくなると考えて安全だと思われる。
( → 2006-01-28 - fenestrae

 まとめると、次の通り。
  ・ 出生率の上昇に移民の寄与はあるが、それはあくまで限定的だ。
   (移民が国民全体に占める率は少ないから。)
   (実際に増分に寄与したのは社会的支援だった。)
  ・ 移民の出生率の高さは、統計のマジックだった。
   (フランスに入る前に子を生んだ分が多かった。)
  ・ 移民がフランスに入ってからは、出生率は低下する。


 最後の点については、別記事でもデータが得られている。
  → 図録▽ヨーロッパ諸国における自国女性と移民・外国籍女性の合計特殊出生率
 この記事の後半では、移民の出生率が急激に低下しつつあることがわかる。

 要するに、こうだ。
 「フランスの出生率が高いのは移民のせいだ。社会支援などには意味がない。近年の出生率の低下は、移民規制のせいだ」という主張があるが、それは誤りだったわけだ。
 出生率の高さについては、移民の寄与はあったが、限定的だった。比率でも限定的だったし、国内に入ったあとの影響も限定的だった。実際に寄与したのは、移民ではなく、社会的支援だったのだ。社会的支援こそが出生率向上の決め手なのだ。

 ──
 
 ここで、最初の問題に戻る。
 フランスでは近年、出生率が低下している。では、その原因は? 移民規制が理由でないとしたら、出生率が低下していることの原因は何か? 真相はどうなのか?

 私なりに結論すれば、こうだ。
 「フランスでは近年、出生率が低下しているのは、移民規制のせいではない。移民の効果が減少しつつあるのだ。
 その意味は二つ。
  ・ 移民規制によって、統計マジックの効果が減った。
   (フランスに来る前に多くの子を生んだ効果が減った。)
  ・ フランスに来たあとの移民の出生率が低下していく。

 フランスに来る前の分と、フランスに来たあとの分で、出生率低下の影響が出ている。一方、移民の数が減少していくこと自体は、あまり影響がない。(もともと移民の占める率はあまり多くない。)」

 冒頭の記事でもわかるが、フランスの出生率が低下していると言っても、たいした量ではない。微減と言える程度だ。そして、その低下は、移民の数が減少することによってもたらされるのではなく、もっと別の統計的な効果からもたらされる。そこでは移民はたしかに影響しているのだが、移民の減少ではなく、他の要因(統計的要因や社会・文化的な要因)が影響している。
 「移民が減少しているから出生率が減少するんだ」
 というような短絡的な理解は誤りだ、とわかる。

 


 [ 付記 ]
 そもそも、フランスの出生率は、ほとんど低下してない。


france-born.png
出典:世界経済のネタ帳


 ずっと 2.0 ぐらいの高い数値を維持してきたのだから、短期的に3年間ぐらい、数値が低下しても、統計のブレと言うことぐらいで無視してもいいぐらいだ。特に、ずっと低い数値が続いている日本と比べれば、なおさらだ。
 移民の効果は、あるにはあるが、限定的だ。フランスの出生率の高さを移民のせいだと思って、社会的支援の効果を無視することは、真実に目を閉じることも同然だ。




 【 関連項目 】

  → 保育無料化と少子化対策: Open ブログ
 要旨:
 出生率の増加に、社会的支援が重要であることは、フランスとドイツの比較でわかる。
 大事なのは、育児への金銭的負担ではなく、女性への就業支援である。つまり、保育園の拡充だ。これがあると、女性は就業しながら子育てができるので、出生率が上昇する。



 【 関連サイト 】
 実は、「子育て支援で出生率が向上する」ということの効果は、日本でも見られる。
 すぐ上のグラフでも、日本でも近年は出生率が少しずつ向上しているとわかる。
 もっと詳しくは、下記にグラフがある。
  → 日本の出生率と出生数をグラフ化してみる(最新) - ガベージニュース
  → グラフ




 【 後日記 】
 本項の内容は不正確だと判明したので、上記の文章の全体を取り消します。

 すでに書いてあった内容が間違いだというわけではないのですが、「移民/フランス人」という二項対立の分析そのものが不正確でした。
 実際には、その中間である「片方が移民で、片方がフランス人」という場合の寄与が非常に大きくて、この分だけでフランスの出生率の上昇の大部分を占めています。
  → フランスの出生数回復の分解 - KYの雑記ログ
 また、このページによると、移民が故国から呼び寄せた異性と結婚して子供を産む例が多い、とわかります。

 一方で、社会福祉の充実しているフィンランドでも出生率は大幅に低下しており、社会福祉の向上が出生率の向上に寄与するとは言えないようです。
  → 子育て支援が手厚いフィンランドの出生率低下
 ここでは、女性の高学歴化が、晩婚化や非婚化をもたらして、出生率低下につながる、とも示されています。

 結局、いろいろと分析するべきことが多いようで、元の本項の内容は、考察が不十分だったようです。あらためて正確に考察するべきなのでしょうが、問題が複雑で大きすぎるので、とりあえずは「結論は出さない」ということにしておきます。
 元の本項の内容を否定したからといって、かわりに別の正解が出るわけではないのですが、とりあえずは、元の本項の内容が「不不正確」だと見なされるので、元の本項については取り消すことにします。(取り消し線を入れた箇所。)

( ※ 修正については、コメント[Posted by 虫 at 2018年08月08日 ]で指摘を受けました。そちらにあるリンクも参照するといいでしょう。)

posted by 管理人 at 07:46| Comment(5) | 一般(雑学)4 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
子育て支援、じわじわ成果が上がってるようで良かったです。どんどん推進してほしいですね。

こういう記事もありました。
自分の周りでも子供持ちたくないという人が増えてて何だかなぁと思ってるのですが、頑なな個人主義には走ってほしくない気がします。(勿論、人それぞれ。自由ですが)

「子どもがいない方が幸せ」が過半数を超える
https://otonasalone.jp/26521/
Posted by 名無し at 2018年03月08日 13:38
2000年代以前の古いデータをもってして「移民の出生率への寄与は少ない」 などと言っても説得力に欠ける。
フランス人女性の平均出生率自体は横這いなのに、全体の平均出生率が1990年代の1.72から2超へと上がったのは移民と外国籍の影響以外には有り得ない。
Posted by dd at 2018年07月12日 22:04
> 2000年代以前の古いデータをもってして

 上昇に転じたのは 2000年以降のデータも含まれているので、2000年以降のデータだけ見ても同じですよ。

> フランス人女性の平均出生率自体は横這い

 そうなの? そんなデータはないと思うけど。計算すれば、上のことは否定される。

> 移民と外国籍の影響

 それもあるけど、移民は人口の1割以下なので、影響は限定的だ、というのが、本項の趣旨。
Posted by 管理人 at 2018年07月12日 22:23
http://crossacross.org/ky/Parents+of+newborns+in+France
>以上の議論では、2000年以降のフランスの出生数増加において「フランス国籍の片親とEU外から来た配偶者」の間にできた子供の増加の寄与度が高いことをデータとして示した。また、少なくともフランスの結婚政策の出生率回復への寄与は棄却される。
>すなわち出生率向上には夫婦成立率の上昇が寄与するとは考えらるが、フランスのデータもそれを支持するものと言える。
【引用終了】
 
http://www.thutmosev.com/archives/75229752.html
>秘密はフランスの移民にあり、同じ「フランス女性」でも移民女性は5人以上も子供を産むのに対し、「原住民」の白人女性は生涯に1人しか産まない。
>移民も定住して二世や三世になるとフランス化して子供を6人も産まなくなり、出生率は下がります。
>出生率は数十年間の長期的な傾向なので、フランスの出生率は今後も下がり続けると予想できる。
>社会進出した女性ほど子供をたくさん産むというのも、貧しいアフリカ出身女性などの傾向であり、誤解を生んでいた。
【引用終了】
 
この二つもご覧下さい
ジェンダーフリーも社会福祉も少子化対策すなわち出生率回復への寄与は少ないと言えますね
http://totb.hatenablog.com/entry/2018/07/29/230507
http://totb.hatenablog.com/entry/2018/03/07/220552
Posted by 虫 at 2018年08月08日 01:38
> Posted by 虫

 情報ありがとうございました。
 たしかにご指摘の通りなので、本文を取り消しました。
 また、最後に 【 後日記 】 を書いて、説明を加えておきました。

Posted by 管理人 at 2018年08月08日 21:42
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