2018年02月27日

◆ カーリングのストーンが曲がるわけ

 カーリングのストーンが曲がるのは、どういう理由でか? 

 ──

 この理由が不明だ、という記事が出た。
  → 物理学者もお手上げ、カーリングの原理 | ニューズウィーク

 この理由を解明した、という記事も出た。
  → 「カーリングのストーンはなぜ曲がるのか?」という何百年も続いた謎を研究者らが解明

 解明したというが、単にモデル化したというだけの話だ。しかも、よく読むと、話は不正確である。なぜなら、「氷が溶けて滑る」という核心的な要素が抜けているからだ。これでは、アンコのないアンパンみたいなもので、話にならない。

 ──

 そこで、私が合理的な説明をしておこう。こうだ。

 「まず、原理はスケートの刃と同じである。氷を圧迫すると、氷が溶ける。良く溶けると、良く滑る。
 また、カーリングのストーンの底は、平らな平面にはなっておらず、凸状の円環になっている。つまり、狭い円環だけが氷と接している。これがスケートの刃と同様で、圧力をかけて、氷を溶かす」

 以上の原理の下で、次のように説明する。
 「ストーンを投げると、氷の溶けるその量が、下部の円環の位置で、差が生じる。ストーンは全体として減速しつつあるので、全体として(負の)加速度を受けている。すると、自転車にブレーキがかかったのと同じで、前のめりになりがちである。つまり、全体の前側に下向きの圧力がかかる。したがって、前側では氷が良く溶けて、後ろ側では氷が良く溶けない」

 ここで、ストーンを回転させると、どうなるか? 特に、時計回り(右回転)させると、どうなるか? 
 「ストーンが ↑ 方向に進むとしよう。ストーンの前側では、右向き(→)の摩擦が発生するが、氷が溶けて滑るので、摩擦の効果は生じにくい。一方、ストーンの後ろ側では、左向き(←)の摩擦が発生するが、氷が溶けにくくて滑りにくいので、摩擦の効果は生じる。すると、その摩擦の反力を受けて、ストーンには右向き(→)の力が加わる」

 つまり、ストーンの前側では摩擦の力を受けず、ストーンの後ろ側では摩擦の力を受けるから、両者の差が生じて、全体としては、右向きの力を受けるわけだ。かくて、右回転させると、右向きの力を受けて、右に曲がっていく。

 そして、そのことの本質は、「氷の溶け方しだいでコースが曲がる」ということだ。


 ※ 基本的には、これは「スケートが滑る理由」と同じである。スケートでは、刃を薄くすると、強い圧力がかかるので、そこでは氷が溶けて、水になるので、滑りやすくなる。同様に、カーリングのストーンも、前側に圧力がかかるので、前側で氷が溶けて、滑りやすくなる。その分、摩擦が減る。



 [ 付記 ]
 すぐ上に述べたことは、カーリングでブラシを使うことの説明にもなっている。
 カーリングでは、ブラシでゴシゴシこするが、いったい何をしているのか? 表面を平らにしているのか? 違う。ブラシでこすることで、その摩擦熱によって表面を溶かしているのだ。
  ・ 良くこすると、氷が溶けて、滑りやすくなる。
  ・ こすらないと、氷が溶けず、滑りにくくなる。


 ここでは、摩擦熱によって氷の溶け方を制御しているわけだ。ストーンの進むコースの右半分と左半分で、滑る量を変えることで、ストーンを右に曲げたり左に曲げたりするわけだ。
 また、右と左の両方をこすれば、石の進む距離を伸ばすこともできる。右と左の両方をこすらなければ、石の進む距離を縮めることもできる。



 [ 補足 ]
 カーリングで曲がる量を考えるのは、物理学と言っても、力学とはちょっと違うようだ。
 むしろ、氷の物性を調べるような学問(固体物理学や、相の科学)がふさわしい。
 ただし、実を言うと、「スケートが滑る理由」は、現代科学では未解明であるそうだ。
  → 氷がなぜ滑るのか、実はまだわかっていない
  → 氷の上はなぜ滑る? 実は未解決の謎だった

 ここが未解明なので、「曲がる理由」は定性的にはわかっても、「曲がる量」を定量的に解明するには至っていないようだ。



 【 追記 】( 2022-02-20 )
 本項の主張(仮説)を、検証するための実験方法を示そう。

 カーリングのストーンにポールを立てて、ポールに重しを付ければいい。(下図)


curling2.png


 この重し(黒い部分)を、上下に移動させる。すると、どうなるか?

 (1) 本項の仮説が正しいとしたら、次のようになるはずだ。
 「重しが高い位置にあると、前のめりになる度合いが高くなるので、前側の圧力が高まり、よく滑るようになる。だから、曲がる度合いも増えるはずだ。
 重しが低い位置にあると、その逆で、曲がる度合いは減るはずだ」

 (2) 本項の仮説が正しくないとしたら、次のようになるはずだ。
 「重しが高い位置にあっても、低い位置にあっても、曲がる度合いは変わらないはずだ」

 ――

 たとえば、次の仮説がある。
(仮説1)最初に提案された左右非対称性起源説。回転しながら前に進むので、左右で氷に対する相対速度が異なります。動摩擦係数は氷では速い方が小さい性質がある為、摩擦が左右で異なります。これが起源という説。
( → カーリングの石の曲がり方は、100年近くも論争が続いている「世紀の謎」だという話 - Togetter

 この仮説が正しければ、上の (2) に該当するので、「重しが高い位置にあっても、低い位置にあっても、曲がる度合いは変わらないはずだ」となる。

 したがって、(1) と (2) のどちらに該当するかを調べることで、本項の仮説が正しいか否かを(ほぼ)検証できる。

 ※ 少なくとも、すぐ上の Togetter の (仮説1)との比較で、どっちが正しいかは決着が付く。


posted by 管理人 at 19:00 | Comment(7) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
髪の毛一本でも落ちてるとそれが石の底について
曲がっちまうらしい
石1つづつ曲がりが違うので
本橋さんは夜中に1人でチェックしてた
平昌では中間日にストーンの底を競技委員会側で
サンドペーパーで擦ったそうだ

Posted by stranger at 2018年02月28日 10:16
ビリヤードはヒネリという技術がありますが、玉に反時計回りの回転を与えると右に曲がり、時計回りだと左に曲がります。

これも理由がよくわかってないようです。
Posted by BAK at 2018年03月03日 19:30
 ビリヤードとボーリングは同じ原理でしょう。回転軸が床に垂直ではなく、少し前側に傾いています。そのせいで、接地面に横方向への力が加わります。
Posted by 管理人 at 2018年03月03日 20:23
あなたの主張しているような定性的な評価は大昔からされていて、前後で摩擦係数が違うということはわかっています。
問題はその大きさがどのくらいで、それがストーンをあれだけ曲げるのに十分であるかです。

https://link.springer.com/article/10.1007/s12283-013-0129-8
Posted by きゅうとぴ at 2018年03月06日 23:15
> ということはわかっています。

 元記事には、こうありました。
 「科学者たちはまだ、ストーンがなぜ曲がるのかという単純な理屈ひとつわかっていない」

 そこで私が説明可能であると示したわけ。
 別に、私は独創性を主張しているわけじゃないから、先人がいたとしても構いません。

 元記事が間違いで、私の言っていることが妥当である、ということを補強してくださるようなので、感謝いたします。

> ストーンをあれだけ曲げるのに十分であるかです。

 溶けてない氷には、人が立つことができるぐらいの摩擦はあるから、十分でしょう。
 なお、摩擦係数の小ささは、石の巨大な重みで補っています。すごい重みがあるので、摩擦力も大きくなる。
Posted by 管理人 at 2018年03月06日 23:32
十分説明できないから「謎」なのです。
あなたの説明は定性的な説明に過ぎないのです。
科学者がわからないとしているのは定量的説明です。(多分記者は理解していませんが)

途中送信失礼しました。
Posted by きゅうとぴ at 2018年03月06日 23:42
 最後に  【 追記 】  を加筆しました。
 本項の話が正しいかどうかを、検証するための実験の仕方。
Posted by 管理人 at 2022年02月20日 23:06
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