2018年02月21日

◆ 保育無料化と少子化対策

 政府は「保育無料化」を実施しようとしているが、これは少子化対策に有効か?

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 政府は「保育無料化」を実施しようとしているが、これについては前にも論じた。

 第1に、そんなこと(金銭的な負担減)をするより、保育園の量的な拡充の方が大事だ。そっちの方が必要性が高い。
  → 幼児教育の無償化?: Open ブログ

 第2に、そんなことをすると、需要が増えるので、保育園不足がますますひどくなる。つまり、逆効果だ。
  → 幼児教育無償化という地獄: Open ブログ

 ──

 一方、上記とは別に、「保育無料化」と「少子化対策」とをからめて考える。
 「保育無料化は少子化対策に有効か?」

 というのがテーマだ。

 これについては、直感的には、「有効だ」と思えるだろう。「親の保育負担(金銭的負担)を減らせば、そのことで出生率が上がるだろう」と推定されるからだ。

 ところが、意外なことに、それへの正解は「有効ではない」だ。このことは、フランスとドイツを対比することで判明する。
 詳しくは下記ページを参照。 
  → 研究会報告書等 No.12 フランスとドイツの家庭生活調査−フランスの出生率はなぜ高いのか−|内閣府 経済社会総合研究所

 政府の内閣府の公式調査がある。そこでは、次のことが判明している。
 フランスもドイツも、出産と育児の費用を援助している。(つまり金銭的負担を減らしている。今回の日本政府の方針と同様である。)
 しかるに、フランスでは出生率の向上に成功したが、ドイツでは出生率の向上に失敗した。
 フランスとドイツの違いは、金銭ではなく、保育サービスの有無だ。ドイツでは、保育サービスが不足しているせいで、母親のフルタイム就業は事実上困難だ。そのせいで、女性は就業か子育てかの二者択一を迫られる。

 ──

 政府報告では、上のように示されている。ただ、これを読むだけでは、「保育サービスが不足すると、少子化が解決できない」ということが、うまく理解できないだろう。そこで、私がさらにわかりやすく解説すると、こうだ。
 「ドイツでは、保育サービスが不足している。そのせいで、女性は就業か子育てかの二者択一を迫られる。そのせいで、就業を維持するならば子育て(≒ 妊娠・出産)を放棄することを迫られる」

 要するに、「保育サービスが不足する」ということは、「子育てできなること」を意味するから、妊娠・出産が実質上、不可能になってしまうのだ。これはどうしようもない物質的な制約だ。
 一方、「保育料の無償化」というのは、「出産意欲を増す」ということで、あくまで心の面での後押しだ。なるほど、それは、あればあったでいいだろう。しかし、絶対に必要不可欠というものではない。(そもそも、金があまりなくても、貧乏を甘受すれば、子育てはできる。子育てのために、金は絶対的に必要な条件ではない。特に、その金が、たかだか保育料程度の金額であれば。)

 結局、大事なのは、「子育ての意欲を増す」ための現金給付や無償化ではない。「職業のキャリアを捨てずに済む」という保育サービスの拡充なのだ。
 このことを理解するには、「子育てをするのは男性に限る」というふうにすればいいだろう。こうなったら、「子供を産んだ家庭では、男が数年間の子育てをする」ということになって、男は職業的なキャリアを失うことになる。
 では、そんなことを受け入れられるだろうか? もちろん、受け入れられない。そんなことになったら、男は「だったら子供を産まない」という選択肢をとるだろう。「子供よりは仕事が大事だ。仕事を失ってニートになるくらいなら、子供なしの方がマシだ」と思うだろう。……そして、それと同様のことが、女性についても起こっているわけだ。
 これこそが、少子化の正体である。

 では、その解決策は? それは、すでにわかっている。「保育サービスの拡充」だ。つまり、「保育園の量的拡大」だ。そのことで、「子供を産んでも職業キャリアを失わずに済む」というふうになる。万事解決となる。
 なのに、政府はそうしない。かわりに、「金をばらまけば票を取れる」と信じて、衆院選では「保育無料化」を公約した。

 もう、やっていることがメチャクチャである。何をなすべきかは、政府が自分で調査報告を出して、ネットで広報もしている。なのに、政府自身が、それを実施しないのである。
 では、どうしてこうなった? たぶん、安倍首相のせいだ。彼は何でもかんでも、正解とは逆の方の選択肢ばかりをとる。
  ・ 残業代ゼロ法案
  ・ 森友・加計学園の問題 
  ・ 保育園の問題

 あっちもこっちも、間違った選択肢ばかりをとる。これはまあ、北朝鮮の独裁者と同様だろう。どっちにしても、間違った選択肢ばかりをとるのだ。



 【 関連サイト 】
 → イギリスのテレビ局も驚愕した日本の「国難レベルの人口減少」



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posted by 管理人 at 23:43 | Comment(5) | 一般(雑学)4 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
安倍首相とそのお友達にとってはどれも正解でしょう。
残業代0にすれば安い値段で死ぬまでこき使えますし、森友加計も自分たちの財産が増えます。
保育はわかりませんが、まあなんか彼らの得になるのがあるんでしょう。
北朝鮮の独裁者だって、彼個人だけにとっては素晴らしい世界であれが彼個人にとっては正しい選択でしょう。
Posted by RFT at 2018年02月22日 00:19
人口バランスを回復するのが少子化対策の目的であるなら、子どもを増やすよりも老人を減らす方がよほどコスパが高いのです。
前者は数十年かかるが、後者はすぐにできる。

積極的に老人を殺す必要はない。認知症老人への食事介助を止めればいい。
Posted by inoueakihiro at 2018年02月23日 03:14
> 認知症老人への食事介助を止めればいい

 そんなことをしても、高齢者の1割ぐらいしか減らせません。今の少子化は、本来必要な数の子供の6割ぐらいしか生まれていないので、これをほぼ倍増させる必要があります。
 それに相当する分、高齢者を減らすとしたら、65〜90歳までのうちの4割ぐらいに死んでもらう必要がある。
 となると、人生 80歳と限定して、それ以上の高齢者には医療も年金も停止するしかない。

 しかし、そんなことをしたら、中高年が怒り狂って、医療や年金の料金を支払わなくなり、制度は崩壊する。医者や看護婦や薬局職員は大量に失業する。国家まで崩壊する。
 そのあとに出てくるのは、ヒトラーみたいな独裁者かな。

 そもそも少子化を放置するのが国家の崩壊を招く。ここを改善するのが最優先。
 少子化対策にコストがかかるというが、別にコストはかからない。単に所得の再分配をするだけだ。無駄に消える金は少額の事務費だけだ。(保育園の建設費補助もあるが、これは父母負担の必要経費と考えればいい。)

 少子化対策が進まないのは、コストがかかって財源がないからではなくて、政府がやることを間違えているから。その一例が本項でも示される。巨額の金をかけて、保育料の無料化をしても、少子化対策にはならない。どれほど莫大な金をかけても、無駄なことをやっている限り、効果は出ない。そのことを本項は示している。
Posted by 管理人 at 2018年02月23日 07:19
>そんなことをしても、高齢者の1割ぐらいしか減らせません。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/seminar/dl/02_98-02_2.pdf

要介護老人のうち、4以上は食事介助されている人が多いので、ここがなくなると、120万人が消失します。嚥下性肺炎の治療も頻繁にやるので、特にコストがかかっている。3以上で施設入居が増えることから考えても、相当、財政負担は減ります。

>少子化対策が進まないのは、コストがかかって財源がないからではなくて、政府がやることを間違えているから。

先進国で、出生率が増加したケースはあるが、原因がよくわからない。当てずっぽうに対策を行って、時間を浪費したら、財政が破綻する。

老人減少政策は確実に効果が期待できます。

また、出生率増加で人口バランスを改善させるには、20年以上もかかるのです。とても高齢化に間に合わない。

財政破綻が発生した場合は、福祉を切り捨てて、低所得世帯を見殺しにするという、もっとひどいことが起きる。

世論の説得ができないというのは政治家が言う言い訳でしかない。物理的財政的に可能な政策は老人減少だけなんだから、実施するしかない。
Posted by inoueakihiro at 2018年02月23日 09:35
> 先進国で、出生率が増加したケースはあるが、原因がよくわからない。当てずっぽうに対策を行って、

 ちゃんと本文に書いてあるでしょ。本項のテーマと結論として、ちゃんと示しています。フランスが何をしたか書いてあるでしょ。本文を読まずに反応する阿呆と違って、井上さんは頭がいいんだから、ちゃんと本文を読みましょう。

> 出生率増加で人口バランスを改善させるには、20年以上もかかるのです。とても高齢化に間に合わない。

 間に合おうが間に合うまいが、とにかく少子化対策は必要です。「時間がかかるからやらなくていい」ということにはなりません。即効性のあることしかやらないと、国家百年の計ができない。

> 財政破綻が発生した場合は、福祉を切り捨てて、低所得世帯を見殺しにするという

 そうではなくて、強度のインフレが発生します。主たる損失を受けるのは金融の資産家。福祉は減るでしょうが、ゼロになるわけじゃない。

> 物理的財政的に可能な政策は老人減少だけ

 そんなことはありません。景気回復もできるし、所得の再配分もできる。現状では貧富の差が拡大して、富裕層の所得が急増する状況なので、ここを是正するだけでも大幅な改善が見込める。(企業の内部留保への課税。……現行政権が取っているのは、その逆で、法人税減税。)
 
> 嚥下性肺炎の治療も頻繁にやるので、特にコストがかかっている。

 誤嚥性肺炎になると、寿命は1年ぐらいしかなくなるので、たいした負担にはなりません。特定範囲の人々への終末期医療と見なせば、合理的支出の範囲内です。
 どうせなら、癌の延命のための巨額支出を減らす方がずっと効果的だ。オプジーボなんか数千万円もかかるし。他にも抗癌剤は巨額の費用がかかっている。しかも延命効果は小さい。ここをカットするのが最優先だろう。
 抗癌剤というのは、確実にコストとなるので、削減すれば、大幅な費用減少効果が出る。
   https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/59063/Default.aspx
 一方、誤嚥性肺炎の処置を止めれば、低所得の介護労働者の職がなくなり、失業者が増えかねない。介護費用の削減ができても、失業手当の支出が増えかねない。
 一般的には、低賃金労働者の職にかかる費用を削減するというのは、社会的にはコスト削減の効果が少ない。
 逆に、その分野の職を増やすと、コストは増えるが、その金は人件費となって、もらう人の所得となる。単に社会的な所得の再分配があるだけで、純然たるコストとは違う。その意味で、保育士を増やしたり、介護士を増やしたりするのは、有意義だ。それは「失業者を働かす」というような意味合いとなる。無駄ではない。むしろ無駄の削減だ。
 一方、高価な薬品を使うのは、純然たる無駄に近い。(それで得られるメリットは、癌の末期患者の寿命を少し延ばすことだけ。)
Posted by 管理人 at 2018年02月23日 12:22
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