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これは本日の朝日新聞で論争となっていた。
子ども医療費の無料化が広がっている。かつては富裕自治体のサービスが目立ったが、無料化は今や全自治体に広がっている。いま、通院費では「中学生まで」と「高校生まで」助成するケースが8割に達する。子育て世帯のつなぎとめ策だが、過剰医療の懸念もある。
( → 子ども医療費の無料化拡大、是か非か?:朝日新聞 2018-02-21 )
反対論は予想通りで、過剰医療によるコストアップを心配している。
無料であるがゆえに、一部の患者は過度に受診し、過剰な検査・投薬をしている医療者もいる。それが、公費負担の増大を招いている。
自己負担がないからと、健康のためには必ずしも必要とは思えない医療が野放図に行われる面があることです。たとえば、「念のため」のCT検査は1回でも放射線被曝(ひばく)の影響は無視できません。
まあ、(誰でもすぐにわかるような)当たり前のことが示されている。
一方、推進論もある。「住民サービスの向上になるので、住民が増える。それで税収も増える」という理屈。摂津市の市長が次のように主張する。
無料化の拡充は安易な受診を招くとの批判も聞きます。ただ、いまは子どもがどんどん減り、自治体が子育て世帯を奪い合っている状態です。すでに府内では摂津市以外に4市3町が 18歳までの無料化に踏み切っています。間髪入れず施策をうたなければ、後れをとります。
医療費無料化などの子育て支援で大切なのは、市民に定住してもらい、将来はお返ししたいと思ってもらうことです。助けられた人が、今度は税金を納めて別の人を助けてくれれば、投じられたお金も生きることになります。
しかしこれは、論理がおかしい。その論理上の難点を示す。
(1) 他都市に比べて住民サービスで上回りたい(そのことで住民を招きたい)、とのことだが、すべての自治体がそうすれば、もはや差別化することはできなくなる。「自分だけ良ければいい」という理屈は、全員が実施したときには成立しない。論理として破綻している。
(2) 自治体の負担はあまり多額にならない、とのことだが、それは、自治体が負担するのは「本人負担分」にあたる3割にすぎないからだ。残りの7割は国が負担している。つまり、他都市が負担している。……要するに、「子供の医療費の無料化」とは、自分の予算でやっているのではなく、他人の医療予算を食いつぶす形でやっている。一種の財源泥棒だ。
( ※ 3割と書いたが、未就学児の場合は2割だ。→ 出典 )
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特に、(2) が重要だ。無料化を実施している自治体は、「3割負担だからたいしたことはないさ」と思っているのだろうが、残りの7割は他都市の住民が負担する。他都市にしてみれば、自分の金を奪われるに等しい。その結果、赤字が増す。すると、保険料の値上げが必要となる。
実際、その懸念は早くも現実化した。
《 国保保険料、平均26%上昇 都が18年度算定 》
東京都は国民健康保険(国保)で市区町村別に算定した2018年度の標準保険料をまとめた。都内平均で1人当たり年間14万8916円と、16年度に比べ26%上昇。
( → 日本経済新聞 )
国保の保険料が大幅値上げになるということだが、ことは東京都だけではあるまい。どの県でも大幅値上げになりそうだ。
理由は「赤字の拡大」であるが、その一因は「子供の医療費の無料化」であるはずだ。つまり、「子供の医療費の無料化」のせいで国保の保険料が値上げする、ということが、まさしく実現しつつあるのだ。(部分的な理由ではあるが。)
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では、どうすればいいか? 「子供の医療費の無料化」を実施するのであれば、その財源は自己負担とすればいい。つまり、摂津市がそうするのであれば、摂津市がその財源を払えばいい。本人負担分の3割を払うだけでなく、残りの7割も摂津市が払えばいい。
ところが、現実は、逆になっている。過剰サービスをする自治体は、過剰サービスの分を自腹で払うどころか、本来払うべき分でさえ他の自治体にツケ回しをするようになった。というのは、制度が改革されたからだ。
国保はこれまで市区町村が運営し、医療費を保険料で賄えない赤字は一般会計からの繰り入れで補ってきた。
国は保険財政を健全化するため、18年度から国保の運営主体を市区町村から都道府県に移管。都道府県が市区町村に目安となる標準保険料などを示す仕組みに改めた。
過剰サービスの分を自腹で払うどころか、ツケ回しをいっそう拡大している。今までは自分で払っていた赤字を、道府県単位で他の自治体にツケ回しをするようになった。
かくて、赤字がどんどん拡大する。そして、その結果が、「保険料の値上げ」だ。
要するに、「自分だけ良ければいいさ」という方針を取ったあげく、日本全体で損するようになったわけだ。「過剰サービスの費用は他人にツケ回しすればいいさ」と思っていたら、過剰サービスの分を自分で払う羽目になった、というわけだ。
で、それを解決するには、「過剰サービスをやめる」という方策が必要だ。ただし、そんなことはわかっていても、実現はしにくい。かくて、「福祉の向上」競争をしたあげく、自治体の全員が赤字を増やして、そのツケは結局住民自身に跳ね返ってくる。かくて、「国保の保険料の値上げ」となる。自業自得。
馬鹿丸出しですね。舌切り雀の欲張り婆さんみたい。
( ※ もうちょっと頭があれば、こんな馬鹿げたことからは脱することができるのだが、なかなかそれが実現できない。困ったことだ。)
( ※ で、「馬鹿丸出しですね」なんて書くと、本サイトのコメント欄は「馬鹿と言うのはけしからん!」というふうな意見で荒れる。「馬鹿を是正しよう」という意見で一致するようなことはないようだ。現実の難点を指摘されたとき、その現実を改善しようとは思わないで、指摘する言葉について怒り狂うところが、◯◯ の ◯◯ たるゆえん。)
【 表現は自粛しました。】

しかしながらもっとも医療費削減に反発している活動をしているのは、医師・薬剤師の団体だと思われます。医療費タダで一番儲かるのは彼らですから。
金を払いたくない患者(有権者)、儲けたい医者薬屋、献金と票が欲しい政治家がセットになっているので、この自業自得のループから抜け出すのはなかなか難しそうです。
こんなに名案を思い付くぐらい頭が切れるわけだから言葉が乱暴でなければ有名評論家としてyahooなどにも記事としてどんどんアップされるような。たくさんの人に読まれるべきだと思います。
> 残りの7割は国が負担している。
> つまり、他都市が負担している。
ここは「他都市も」では?