2018年02月19日

◆ 裁量労働制のペテン

 裁量労働制の根拠となるデータが偽りであったことが判明したが、それとは別に、根源的な偽りがある。

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 裁量労働制の根拠となるデータが偽りであったことが判明した。大々的に報道されている。
 《 菅長官「極めて不適切」裁量労働制と異なる聞き方で調査 》
 一般労働者に「最長」の残業時間を聞く一方、裁量労働制で働く人には単に労働時間を尋ねていたと説明した。質問そのものが異なる調査の結果を比較しており、データを不適切に利用したことを認めた。
 政府はこの調査を元に、「平均的な人」の1日あたりの労働時間は、一般労働者より裁量労働制で働く人の方が平均20分前後短いと説明した。
( → 朝日新聞 2018-02-19

 《 「最長残業」根拠に首相答弁 残業データ、違う質問比較 》
 一般労働者の1日の労働時間は、残業時間に法定労働時間(8時間)を足して算出しており、裁量労働制で働く人の労働時間と単純比較できないこともすでに明らかになっている。
( → 朝日新聞 2018-02-19

  → 厚労相、裁量労働巡り謝罪 違う調査で労働時間比較:日本経済新聞
  → 厚労省:裁量労働 異なる前提で残業比較 首相答弁撤回 - 毎日新聞

 あちこちで批判されているので、私としては、特にコメントすることはない。

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 それとは別に、次の点を指摘しておきたい。
 そもそも「裁量労働制」とは何か? 
  裁量労働制は労働基準法の定めるみなし労働時間制のひとつとして位置づけられており、この制度が適用された場合、労働者は実際の労働時間とは関係なく、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなされる。
 業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務に適用できるとされる。適用業務の範囲は厚生労働省が定めた業務に限定されており、「専門業務型」と「企画業務型」とがある。
( → 裁量労働制 - Wikipedia

 前半の「実際の労働時間とは関係なく、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなされる」ということ、つまり、「賃金の定額制(残業手当なし)」ということばかりが、着目される。
 しかしそこでは、後半のことが条件だ。つまり、「業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる」ということだ。
 ところが、政府案では、ここがまったく、いい加減だ。現実的には、上司がいくらでも業務を押しつけることができるようになっている。本人が自分の裁量で「すばやく仕事を済ませて、定時前(午後3時)に帰宅する」という方針を取ったとしても、「そんなに早く帰宅するなら、もっと仕事をしろ」と言われて、余計な仕事を押しつけられる。

 要するに、「裁量労働制」では、「裁量」があることが必要なのに、現実には、「裁量」が与えられていないのだ。これでは「名ばかりの裁量労働制」であって、偽りのものであろう。裁量なしの「裁量労働制」とは、ただの「定額働かせ放題制」であるにすぎない。……そして、そのことが、今回は問題になっているわけだ。

 ──

 とすれば、正しい方策は、わかる。下記だ。
 (1) 「名ばかりの裁量労働制」は、裁量労働制ではないのだから、「裁量労働制」と呼ぶのはやめて、「定額働かせ放題制」と正しく呼ぶべきだ。その上で、法案を廃止にするべきだ。(今の法案がそうだ。)
 (2) 「真の裁量労働制」は、認めてもいい。ただしその場合、年俸制にして、業務の権限も完全に与えるべきだ。契約は年間契約ぐらいにしておいて、あとは年間を通じた達成度で評価するだけでいい。個別の命令をするべきではない。個別の「要請」はあってもいいが、それへの拒否権を認めるべきだ。(たとえば「本日はこの業務を追加でやってくれ」というような要請への拒否権。)……評価はあくまで年間を通じた達成度だけで評価するべきだ。
 具体的な例としては、下記がある。
  ・ 研究開発の場における、チームリーダーの達成度評価。
  ・ 営業職における、年間の販売台数による評価。
  ・ プロ野球における、年間成績の評価(試合ごとに)


 プロ野球の選手で言えば、あくまで試合における成績のみで評価され、練習時間において監督やコーチの指導を聞かなかったことは処罰の対象とならない。指導を聞こうが聞くまいが、とにかく試合で好成績を出せばいいのだ。たとえば、「今日は打撃練習をやれ」とか「ノックを受けろ」とかいう命令があっても、そんなことは聞かなくてもいいのだ。試合における成績だけが評価の対象となる。もちろん、練習に遅刻してもいい。(ただし少額の罰金を科してもいい。)
 こういうふうに「成績本位」であるのが、裁量労働制というものだ。

 ──

 政府の方針は、「定額働かせ放題」ということばかりを狙っている。なぜなら、財界の目的が、それであるからだ。
 口では「裁量があるので、いくらでも早く早退できますよ」と言っておいて、実際には「いくらでも遅く残業させますよ」というふうにする。これはまあ、ペテンであり、詐欺ですね。
 で、そのペテンという本質が、その手口を通じて、このたび暴露されてしまったわけだ。(冒頭の記事で示されたとおり。)

 ただ、その手口がバレたこととは別に、「この法案そのものの本質がペテンである」ということを、理解するべきだ。
 そしてまた、安倍首相がやろうとしていることも、その本質はペテンである(労働者をだますことである)ということも、理解するべきだ。

( ※ 詐欺師のペテンを明かす……というのは、本サイトの基本方針のひとつ。) 
( ※ 本項では、ペテンの問題点を明かすために、[ Wikipedia の]前半の概念と後半の概念とを区別するべきだ、と指摘した。)






posted by 管理人 at 23:42| Comment(2) | 一般(雑学)4 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「働き方改革」とは労働者の働き方に問題があるという含みがあります(労働者が勝手に長時間労働している)(だから過労死は労働者の責任で会社側は悪くない)本来「働かせ方改革」であるべきですね。
Posted by アラ還オヤジ at 2018年02月20日 07:04
「働き方改革」という言い方は、過労死等の長時間労働問題の責任を労働者に押し付ける含みがありますね(好きで残業しているのだから過労死は会社は悪くない)
Posted by アラ還オヤジ at 2018年02月20日 07:27
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