──
今朝の朝日新聞では、特ダネの形で、奨学金破産という問題が大々的に取り上げられていた。主要記事については、全文を読める。
→ 奨学金破産、過去5年で1万5千人 親子連鎖広がる:朝日新聞 2018-02-12
一部抜粋しよう。
国の奨学金を返せず自己破産するケースが、借りた本人だけでなく親族にも広がっている。過去5年間の自己破産は延べ1万5千人で、半分近くが親や親戚ら保証人だった。無担保・無審査で借りた奨学金が重荷となり、破産の連鎖を招いている。
機構は大学などへの進学時に奨学金を貸与する。担保や審査はなく、卒業から20年以内に分割で返す。借りる人は連帯保証人(父母のどちらか)と保証人(4親等以内)を立てる「人的保証」か、保証機関に保証料を払う「機関保証」を選ぶ。
機構などによると、奨学金にからむ自己破産は16年度までの5年間で延べ1万5338人。内訳は本人が8108人(うち保証機関分が475人)で、連帯保証人と保証人が計7230人だった。
奨学金にからむ自己破産の背景には、学費の値上がりや非正規雇用の広がりに加え、機構が回収を強めた影響もある。本人らに返還を促すよう裁判所に申し立てた件数は、この5年間で約4万5千件。16年度は9106件と機構が発足した04年度の44倍になった。
奨学金をめぐっては、返還に苦しむ若者が続出したため、機構は14年度、
・ 延滞金の利率を10%から5%に下げる
・ 年収300万円以下の人に返還を猶予する制度の利用期間を5年から10年に延ばす
などの対策を採った。だが、その後も自己破産は後を絶たない。
では、どうすればいいか? 解決策は?
朝日の記者の個人的な見解も示されている。こうだ。
機構は17年度、所得に応じて返還額が変わる制度を導入した。現在、「新たに借りる人」に限っている対象を「すでに返している人」にも広げてはどうか。この制度は機関保証でしか利用できないため、保証人が苦しむこともなくなる。
( → 奨学金破産、延べ1.5万人 親族半数、連鎖招く 5年で:朝日新聞 2018-02-12 )
なるほど。「所得に応じて返還額が変わる制度」というのは有効だ。これなら、低所得者は返還を免れるので、被害者は激減するだろう。
しかし、問題もある。「その費用はどこから出すか?」ということだ。現状のように低所得者が多ければ、返還を免れる人も多数になるので、莫大な財源が必要となる。ま、それは、「無料教育のためにある消費税の一部を転用する」ということでも可能だが、それは「保育関連予算を削る」ということにも等しい。比べてみて、「奨学金が返済不可能になった大学卒業者」と、「保育される幼児」とでは、前者が後者よりも優先されるとは言いがたい。どちらかと言えば、優先されない方がいい。
──
ここで、物事の本質を考えてみよう。そもそも、奨学金を得て、大学を卒業すれば、まともに給料を得られるはずだ。つまり、「奨学金の返済ができない」という問題は、原則として、もともと生じるはずがないのだ。(病気などになった人など、一部の例外を除く。)
ではなぜ、本来生じるはずのない「奨学金の返済ができない」という問題が生じるのか?
ここで朝日の別記事を見ると、次の例が記されていた。
東京で一人暮らしをする息子(27)。
「父さん、迷惑かけることになってごめん」
大阪の実家から私立大の国際関係学部に通い、卒業して3年半。奨学金を返せず、自己破産するという。入学金30万円や毎年100万円の授業料、通学費などのため、計800万円余を借りた。
息子がいま働いているマーケティング会社の手取りは月20万円ほど。家賃などを除くと、奨学金を返す4万円が重い。
( → 奨学金800万円重荷「父さんごめん」 親子で自己破産:朝日新聞 2018-02-12 )
手取り月20万円というのは、ボーナス・残業込みで、税引き後の年収が 240万円だということか? (ボーナス込みならば、もうちょっとマシかもしれないが。)……これは、新卒ならばともかく、27歳にしては少なすぎる。
ちなみに、平均的なデータは、こうだ。(27歳で 376万円)
→ 年収 年齢 - Google 検索
376万円もあれば、まともに返済できるはずだ。なのに返済できないのは、よほどの低年収だからだろう。手取り 20万円というふうな。
しかし、このような低年収では、奨学金を得て大学に進学したことの意味がない、と言える。
そこで、次の疑いが浮かぶ。
「奨学金を返済できないで困っている人というのは、大学卒業後も低年収である人、つまり、Fランの大学を出た人ではないか?」
そう思って、ググってみる。
→ 奨学金 Fラン - Google 検索
すると、次のページがトップで見つかる。
→ 奨学金でFラン大学入る意味ってあるの?
ここにデータが掲載されている。見ればわかるように、奨学金の延滞率の高い大学は、Fランの大学ばかりだ。1位から20位までを調べたところ、Fランの大学ばかりだということだ。
1位から10位まで見事にFラン大学ばかり!
清々しいまでにFラン大学しかいません。
ついでに20位あたりまで調べてみましたが、まさに「名前が書ければ入れる大学」を体現したような学校のオンパレードでした。
偏差値は調べてないもののずーっと見ていき、「名前は見聞きしたことあるな」という大学が3割以上になるのは150位以下になってから。
1位から150位までの無名大学群に並ぶ学校の数%の卒業生は、奨学金も返せないほどの経済状況に追い込まれていることが分かります。
( → 奨学金でFラン大学入る意味ってあるの? )
逆に、延滞率の低い大学はどうかというと、
・ 最上位の 10ぐらいは、医療系大学ばかり。
・ それに次ぐグループは、国立大学が多い。
国立大学は、どこもかも 0.5% ぐらいの延滞率だ。これらは病気などになった、一部の例外的な人だけだろう。大学には関係なくて、個人的な事情に関係するようだ。
一方、私立の低位大学(日東駒専以下)は、就職も困難になるので、奨学金返済も困難になりがちだという。(上記記事による。)
※ ついでだが、上記のデータの元ネタは、下記だ。(大学別の延滞率のデータ)
→ 独自集計!全大学「奨学金延滞率」ランキング | 東洋経済オンライン
──
こうして物事の本質がわかった。まとめてみよう。
大学卒業者で「奨学金の返済ができずに破産する」という事例は、近年で大幅に増えている。
それは政府の対策が不十分だからだ、と朝日は指摘する。その上で、「政府は対策するべきだ。奨学金の免除を、低所得者向けに講じるべきだ」と提案する。しかしそこでは、財源の問題は解決されていない。(天からお金が降ってくれば、というような、お気楽すぎる提案だ。)
一方、私は物事の根源に着目する。すると、根源は、「大学に入ってもまともに就職できない」ということがあるからだ、とわかる。それはつまり、Fランの大学生が多い、ということだ。
つまり、本質は、政府の対策が不十分であることではなくて、大学に入っても意味のない人が無駄に大学に入っていることだ。穴をふさぐ制度が不十分なのではなく、もともと大きな穴があいていることなのだ。
だから、解決策は、「大きな穴をふさぐために大きなパッチを当てること(巨額の金を投入すること)」ではなくて、「もともと大きな穴が生じないようにすること」である。それはつまり、「Fランの大学生には奨学金を与えないこと」である。
──
こうして、物事の本質がわかった。そうなれば、なすべきこともわかる。こうだ。
「Fランの大学生には、奨学金を与えなければいい。つまり、奨学金の受給には、試験によって受給制限をすればいい。具体的には、センター試験で一定の点数以上を取ることを、受給資格とすればいい」
これによって、低学歴の人は奨学金を受け取れなくなる。そのことで、「奨学金破産」という問題は、一挙に解決する。
その解決策のためは、特に巨額の経費は必要ない。むしろ、奨学金をあまり出さなくなるので、経費が浮きそうだ。 (^^);
困ったときの Openブログ。ね?
[ 補足 ]
返済できなくなった場合に、機関保証というのもある。(冒頭の記事)
保証機関に保証料を払う「機関保証」を選ぶ。機関保証の場合、保証料が奨学金から差し引かれる。
この場合、保証料がかかる。率は 3.6%程度。
→ 保証料 - JASSO 日本学生支援機
この率はかなり高い。というのも、破産する人がかなり多いからだ。
一方、Fランの大学を排除すれば、破産する人は激減する。国立大に限れば、0.5%ぐらいが破産するだけだ。ならば保証料も 0.5%ぐらいで済むはずだ。
つまり、Fランの大学を排除することで、機関保証が安価になるから、連帯保証人の問題は自動的に解決するわけだ。
( ※ もっとうまくやるには、試験の成績に応じて、機関保証の保証料を変動させるといい。上位は 0.5% で、下位になると保証料を上げる、というふうに。)
[ 付記 ]
朝日新聞の今回の記事は、「困った若者を救おう」という善意から来ているのだろう。その善意はいい。しかし、善意のあまり、目が曇っている。「そもそも低学力の人は、わざわざ低位大学に行くべきではない」という本質を見失っている。
この本質については、下記項目も参照となる。
→ 底辺大学をつぶせ: Open ブログ

【 関連項目 】
そもそも日本では高等教育にかける政府支出が少なすぎる(他の先進国の半分ぐらいしかない)……という基本的な問題点がある。

この図を含めて、詳しい解説は、下記項目で述べた。そちらを参照。
→ 正しい教育政策とは?: Open ブログ
( ※ 高等教育にかける政府支出が少なすぎるのだから、奨学金をどうこうするよりも、かかる費用を下げるべきだ、とわかる。たとえば、国立大学の授業料の値下げ。)
( ※ 民主党政権のときには、高校の無料化が実現した。この方向が維持されていればよかったのだが、国民は民主党政権を見放した。)
【 関連サイト 】
Fランの大学と奨学金の関係についての情報。
→ 奨学金が支える「Fランク大学」の葛藤と不安 東洋経済オンライン
大学はATMが設置されたパチンコホール?
「日本の大学経営が、奨学金という名の借金で支えられていることは、まぎれもない真実。パチンコホールにサラ金のATMが設置されて批判を浴びましたが、今の大学はこの状況と重なる部分がある。大学に進学したかったら奨学金を借りてこい、というのですから。何とも気が重いことです」
──
大学進学と高卒就職の差は、1300万円
大学に進学すれば、4年間で約500万円の学費がかかること。高校を卒業して働けば、年間約200万円、4年間で800万円稼げること。大学卒業の22歳の時点で、実に1300万円の差が生じることになること。
では、どうすればいいか? 「低位大学なんかに進学せず、手に職を付ければいい」というのが常識だろう。実は、日本学生支援機構の理事長が、その口で言っている。
手に職をつけて生きていく道もある
――大学進学だけが進む道ではない、と。
人生の選択肢はいろいろありますよ、と言いたい。手に職をつけて、料理人になる、職人になるという選択肢だってある。
( → 奨学金「貧困問題」、最大の責任者は誰なのか | 東洋経済オンライン )
現実には、Fランの大学でも奨学金を受給できる。
→ Fランク大学生でも奨学金をもらうことは可能か?利用できる奨学金や借りる際の注意点は?
批判する声は、もちろん多い。
→ 奨学金を借りてまでFランに通う奴って・・・(掲示板)
→ 奨学金借りてまでFラン大学行くやつって馬鹿ですか? - 知恵袋

タイムスタンプは 下記 ↓
大学は中高収入人間養成所ではないと思います
本項が問題にしているのは、「低所得ではダメ」ではなくて、「破産してはダメ」です。破産すると、借金を返済できなくり、他人に大迷惑をかける。社会の金を奪うことに等しい。
「泥棒して、自分も不幸になる」
というのを否定しているだけです。
あなたのレベルで言えば、他人が貧しくても自分には関係ないけど、あなた自身の金を奪われたらイヤでしょう? そういう問題。
「中高収入人間養成所にしろ」と言っているのではなく、「泥棒の養成所にしてはいけない」と言っているだけです。お間違えなく。
私はそもそも無審査無担保で金を貸すのが社会常識的におかしいと思いますね
(ていうか本当に無審査無担保なのか??)
審査としてセンター試験の点数を見るのもいいと思いますが、それだけを基準にするのでなく、多様な基準でもって、試験では測れない価値のある学生を応援するのもアリだと思いました
けっきょく卒業後に稼げる見込みがあればいいので、机上のセンター試験よりは意欲とか総合的な人間力とかでみたほうがいいかな、と
その話題は[ 付記 ] に記したリンク先で。 知力はないが(自称)気力はある Fランの人向け。
ま、Fランの大学を見ればわかるけど、無気力学生の集団です。気力のある人なら高校時代に勉強をいっぱいやっていたので、Fランの大学に入るはずがない。 Fラン = 無気力、という等式も成立する。
http://j.mp/2nTewfK
なのにそれを自覚できないのも、Fランの大学生の特徴かな。
等式の意味がわかっていないようですね
根本は、管理人サンもいってるように、自己破産をよしとしないことでしょう。
お金を借りる以上、責任が生じます。
借りたお金で学問をしているのだ、という自覚がないから、学問や就職活動、将来設計がおろそかになるのでは?
学生諸君には、奨学金申請時に、そこを考えてほしいですね。
頭のいい人はほど、大学いらない気もします。
エリート教育の重要性については、前に別項で述べました。
http://openblog.seesaa.net/article/453014984.html
http://openblog.seesaa.net/article/456673122.html
一方、頭の悪い人は、教育が必要ですが、どれほど教育を受けても、伸びる量は限定的です。Fランの学生に大学教育を施すと、小学校卒業ぐらいの国語力を備えることはできるようになるかも。しかし中学校卒業レベルの英語力や数学力は、まず無理でしょう。
『馬鹿にカネを貸すな』
ってことですね。
タイムスタンプは 下記 ↓
ただ、”正しい教育政策とは?: Open ブログ”によれば、教育に対する低い国費負担を国家が”了”としているように見受けられます。であれば、この”了”としている理由がもう少し明らかにされるべきかと。現状が周知されるだけでは状況の改善は期待できません。
ある保育士のケース
http://www.sankei.com/west/news/160601/wst1606010005-n1.html
「就職前は保育士が奨学金も返せないほど低賃金だとは知らなかった」
とりっぱぐれたくなければ、「この職は絶対ダメ」等の指導があってもよい。お互いのために。
それは、何度も言っているとおりで、自民党政権だから。自民党の目的は、国民の知的水準を高めることではなくて、国民の富を奪って企業や富裕層に奉仕すること。一貫して、そうでしょ。残業手当ゼロ法案を見てもわかる。
国民を虐待することが目的なんだから、その目的に従って国民を虐待しているわけ。「それで何も問題ない」という立場。
なぜ? それで税金を浮かせて、減税すれば、富裕層は浮いた大金(減税分)で、私立学校に子弟を通わせるから。ね? 合理的でしょ。
教育経費を減らして、法人税を減税すれば、富裕層はどんどん幸福になるんです。自分たちの幸福を目指しているんだから、当然のことでしょう。実に賢明だ。
賢明でないのは、富裕層でもないのに自民党に投票する人たち。自爆ですな。
> 状況の改善
改善じゃないです。教育費を増やすことは、富裕層にとっては、増税を意味するので、改悪です。何としても阻止せねば。
たとえば、北朝鮮の危機をあおって、国民をだますとか。
たしかにそうだが、「学費を上げても奨学金を上げれば通えるだろ」という方針で、それはそれで間違いとは言えない。実際、Fランの大学以外では、それでうまく行っている。ちゃんと通学できて、ちゃんと返済できている。その意味では失敗していない。
難点は、意外なところにあった。教育費が上昇したので、子供を一人しか産まなくなったことだ。「子供を大学に通わせる」という点では問題がなかったが、「子供の数が減ってしまう」というふうになったのだ。想定外の問題が生じた。
まともな頭があれば、「高等教育に金をかけなければ国は衰退する」とわかるのだが、そこまで頭が働かなかったのが、これまでの日本政府。
かわりに法人税減税と憲法改正に夢中になっている。そっちにしか関心がない。
首相が成蹊大卒というC〜Dランクなんだから、仕方ない。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14138126894
http://f-ran.com/each/f2-1/
法人税減税(=目前の利益重視)、教育投資(=将来への投資)の削減は果実の先食いと負担の将来世代への押し付けに他ならないわけです。民主主義に則った意思決定には、未来世代の意志は決して反映されません。関与できませんから。必然的に今の意思決定は将来世代に負担と責任を押し付けるものになりがちです。民主主義の避け得ない本質です。
社会の高齢化が近視眼的な目先利益の追求と負担の先送りに拍車をかけているようにもみえます。
教育が国を豊かにするのは間違いない処ですが、国を豊かにする手段は教育一択なんだろうかとも思います。他の手段が思い当たるわけではありませんけど。
別記事にあるが、奨学金給付の機構が、未返済者からの回収を強めたせいです。それまでは延滞を認めていたのだが、延滞を認めず、回収するか破産させるか、という方針に転じた。そのせいで破綻者が増えた。一方で、回収率は大幅に上昇した。(未回収率が半減した。)
機構の方針変更が理由。
ならそれが破産者が増えた一番の原因ですね。
試験を導入するのは、将来的な対策であり、現在の破産者もしくは破産者予備軍には何の対策にもならない。