2018年02月05日

◆ カバ焼きは海を泳ぐか?

 ウナギの絶滅を防ぐために、ウナギを買うのを止めるべきだ、という意見がある。では、カバ焼きを買うのを止めれば、カバ焼きは海に戻って泳ぎ始めるのか? 

 ──

 何を馬鹿げたことを言っているんだ……と思うかもしれないが、馬鹿げているのは、私じゃない。世間の方だ。
 「ウナギの絶滅を防ぐために、ウナギを買うのを止めるべきだ」
 というのは、
 「ウナギを買うのを止めれば、店頭にあるウナギが海に戻って泳ぎ始める」
 ということを意味するはずだ。(馬鹿げていることだが。)
 
 しかしながら、もちろん、
 「ウナギを買うのを止めれば、店頭にあるウナギが海に戻って泳ぎ始める」
 ということはない。したがって、
 「ウナギを買うのを止めれば、ウナギの絶滅が防げる」
 ということもない。つまり、
 「ウナギの絶滅を防ぐためには、ウナギを買うのを止めよう」
 という主張は成立しない。にもかわらず、
 「ウナギの絶滅を防ぐためには、ウナギを買うのを止めよう」
 あるいは
 「ウナギの絶滅を防ぐためには、(店が)ウナギを売るのを止めよう」
  という主張が世間には溢れているのだ。(馬鹿げているこっとだが。)

 ※ 実例は、下記に見られる。
    → はてなブックマーク - ウナギを食べたい人たちの言い訳
   はてブ では「ウナギの購入・販売を規制せよ」という声が多い。
 
 ──

 では、ウナギの絶滅を防ぐには、どうすればいいか? 買うのを止めるのも、売るのを止めるのも、どちらも効果がないとしたら、どうすればいいのか? 
 答えは簡単だ。すでにカバ焼きになっているものの量を変えても意味がない。すでに捕獲されたものの量を変えても意味がない。
 かわりに、捕獲されていないものを、捕獲しなければいい。捕獲しなければ、そのウナギは、海を泳ぐからだ。
 つまり、「ウナギの捕獲量を削減すること」が、唯一の策だ。
 この件は、前に詳しく述べた。(カバ焼きの需要を減らしても無意味であり、カバ焼きの供給[= ウナギの捕獲量]を減らすことが大切だ、という趣旨。)
  → ウナギを食べると減るか?: Open ブログ

 ──

 さらに新たな情報として、次のことがある。
 「ウナギの捕獲量の大半は、密漁によるものだ」


 何で密漁が多いかというと、暴力団の資金源になるからだ。ウナギが高騰すればするほど、違法に密漁しようとする暴力団が増える。これは、ググればわかる。
  → ウナギ 密猟 暴力団 - Google 検索

 記事を紹介しよう。
 シラスウナギの密漁を防ぎ、暴力団関係者の介入を排除するため、高知県は漁師や仲買人らの身元確認に乗り出した。高値で取引されるシラスウナギが暴力団の資金源になっているとみられるため。
( → シラスウナギが暴力団資金源に…高知県、排除へ身元照会:朝日新聞 2018年1月10日

 国産ウナギの半分は密漁によるもの暴力団の資金源になっていると判明する。中央大学法学部・海部健三助教の試算結果だ。
( → 億ったー

 養殖業者が入手したウナギの量と、国内の正規の採捕量を比較して、後者が前者の 46%しかない。54%は出所不明だ。その分は密漁によるものだと推定される。……それが上の試算だ。(細かく言えば輸入ウナギもあるので、それも含んで計算している。)

 つまり、世間に出回るウナギの半分以上は、密漁ものである。こんなに密漁が多いのだから、正規の採捕量だけを減らしても意味がないのだ。何よりも、密漁を取り締まるべきなのだ。
 ここを取り締まらないで、他のところばかりを規制しても、そんなのはまったくの尻抜け(ザル規制)なのだ。

 ──

 あと、もう一つ、大事なことがある。
 ウナギというものは、海で取れるものではない。ウナギは、産卵は海でやるが、普段は川で生息するのだ。
降河回遊
 普段は川で生活しているが、海に降って産卵し、誕生したこどもが川をさかのぼるものを降河回遊(こうかかいゆう)という。代表的なのはウナギだが、ウナギの場合は川に上らず沿岸域で過ごす個体もいるので完全には当てはまらない。
( → 回遊 - Wikipedia

 ウナギは、海で生まれたあと、シラスウナギとなって、河口部にやって来て、そこでごっそり捕獲される。捕獲されなかったものが、川で育って、成体となる。成体となってから、川を下って、海に出て、産卵する。
 とすれば、海や河口でのシラスウナギ採取を規制しても、それだけでは有効ではないのだ。ウナギが生体にまで育つために、河川の環境を保持することも大切だ。ところが、それができていない。日本の河川は、コンクリ護岸などで、次々と環境破壊が進んでいる。そのせいで、ウナギが成育できにくくなっている。
 こういう環境問題を解決しないと、ウナギ絶滅を防げないのだ。だから、この問題は、「ウナギを買うのをやめればいい」というような単純な問題ではないのだ。
 人々はそこのところを、よく理解できていない。そのあげく、「ウナギを買うのを止めれば、ウナギが増える」と思い込んでいる。つまり、「カバ焼きを買うのを止めれば、カバ焼きが海を泳ぐようになる」と思い込んでいる。
 呆れた話だ。



 【 関連項目 】

 似た趣旨の話は、前にも何度か書いたことがある。
  → ウナギを食べると減るか?: Open ブログ
  → ウナギの減少と環境悪化: Open ブログ
  → ウナギ絶滅を避けるには?: Open ブログ
  → ウナギ絶滅は政府の方針だ: Open ブログ
  → 環境省がウナギ絶滅回避へ: Open ブログ

posted by 管理人 at 23:59| Comment(4) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
やはり、親ウナギとなる天然ウナギの漁獲規制は必須と考えます。しかしながら、未だに天然ウナギを提供する料理屋とそれを撮影してネットに投稿する人々が存在しています。このあたりの意識が変わらない限り難しい話です。”自分が食べられれば絶滅しても構わない”のか、”絶滅に思いが及ばない”のか興味のある処です。

シラスウナギの売買に反社会勢力が関係しているのは周知の事実です。トレーサビリティを明確にすることが必要ですが、海外のブローカーや養鰻業者、大手流通、外食チェーンも絡む話ですから実効性あるシステムの構築の難しさを感じます。

禁輸や、配給制による一人あたりの年間消費量規制ができれば効果的なんでしょうけど...
Posted by 作業員 at 2018年02月06日 10:22
キャンペーンコピーは
カムバックSalmonから
カムバックEelになるんですね
楽しみです
Posted by 先生 at 2018年02月06日 11:04
某巨大市場に勤める業者さんの本を読んだのですが、日本の水産業は、先進国の中で一番衰退してるそうです。(漁獲高が目に見えて減ってきてる)
北欧諸国(特にノルウェー)は、政府と協力して、漁獲高の制限や資源の保全に上手く取り組み、漁師は花形職業だそうです。(年収2〜3千万くらい)
日本は世界屈指の水産資源(海域)を持ってるのに、政府の怠慢や乱獲などで資源が枯渇。
丸3年海を休ませれば魚介は戻ってくると言ってるのに、相変わらず政府や漁業は変わろうとしない。
改革しようとしたら猛反発が起きると。(アメリカも改革の際に猛反発が起きたが断行に踏み切り、漁業が復活傾向にある)
暫く魚介を食べるのをストップして、養殖物や輸入物で補えばいいのですが…。
それでも、外国人観光客に人気のある寿司屋(特に回転寿司)や和食店が困るし、無理でしょうかね…。
そういえば、この前の恵方巻も、スーパーなどが大量に作りすぎて、貴重な魚介が無駄になったと聞きます。
Posted by 名無し at 2018年02月06日 14:27
連投失礼致します。
作業員様の仰られる通りですね。
某食べ○グや、インスタ映えなどの影響も結構大きいと思います。
珍しい物・希少性のあるものほどインパクトがあるから、それに群がる人もいますね。
ジビエも、数年前までは一部の人しか食べなかったのに、今や多くの人が食すようになって価格高騰中。
先日、某シェフから、10年前と今のウサギの仕入れ値の差を聞いてビックリしました。
Posted by 名無し at 2018年02月06日 14:33
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