2018年01月28日

◆ 送電線の利用率

 再生エネの電力を送ろうとしても、「送電線の空き容量がゼロ」と言われるが、実際には2割しか使われていない。

 ──

 朝日新聞の記事を引用しよう。
 風力や太陽光発電などの導入のカギを握る基幹送電線の利用率が、大手電力 10社の平均で 19.4%にとどまると、京都大学再生可能エネルギー経済学講座の安田陽・特任教授が分析した。「空き容量ゼロ」として新たな再生エネ設備の接続を大手電力が認めない送電線が続出しているが、運用によっては導入の余地が大きいことが浮かび上がった。
大手電力がいう「空き容量ゼロ」は、運転停止中の原発や老朽火力も含め、既存の発電設備のフル稼働を前提としており、実際に発電して流れた量ははるかに少なく、大きな隔たりが出たとみられる。
 安田さんは「本来は利用率が高く余裕がないはずの『空き容量ゼロ』送電線が相対的に空いているのは不可解だ。『なぜ空き容量をゼロというのか』『なぜそれを理由に再生エネの接続が制限されるのか』について、合理的で透明性の高い説明が電力会社には求められる」と指摘する。
( → 基幹送電線、利用率2割 大手電力 10社の平均:朝日新聞 2018-01-28

 なぜか、という質問には、私が答えよう。こうだ。
 「再生エネの電力を送電すると、送電先で、電力需要を再生エネが食ってしまう。その分、大手電力会社は、電力の売上げが減ってしまう。その売上げ減少を防ぐために、ライバルとなる再生エネの電力を拒否する」


 要するに、「売上げを維持するため」であり、「利益を維持するため」である。ごく当たり前の方針だ。
 ただし、その方法が、「ライバルの事業の妨害」である。平等な条件で競争するのではなく、ライバルの条件を低下させることで、自社が比較的優位な立場に立とうとする。

 では、これは正当か? 営業妨害に当たらないか? 
 法的には、営業妨害には当たらない。自社の設備をライバル会社に使わせないというのは、どの業界でもなされている。

 しかしながら、この方針だと、平等な競争が不可能となって、大手電力会社が不当に優位な立場に立つことになる。
 ここで言う「不当に」というのは、法的違反というよりは、経済原理上での社会的損得の問題だ。

 ──

 ここまで問題を整理すれば、正しい解決策もわかる。
 「社会的な損得を考えて、公正な競争が起こるように、制度を変える」


 具体的には、こうだ。
 「発電と送電とを、事業分離する。発電会社は発電のみを扱い、送電会社は送電のみを扱う」


 こうすると、次のようになる。
 「送電会社は、すべての発電会社を平等に扱う。送電設備を度の会社が使うかは、料金で決める。すると、再生エネ会社は、料金を払って、送電線を使える。大手電力会社は、使わない送電線に無駄金を払うことはできないので、送電線を使う権利を手放す」


 こうして、問題は自動的に解決する。
 そして、その基本原理は、こうだ。
 「市場原理が働かないようになっていたので、市場原理が働くように、制度を改革する」

 これが根本的な解決策だ。

 物事の本質を理解すれば、何をどうすればいいかも、自動的にわかるものだ。



 【 追記 】
 この記事を「デマだ・間違いだ」と批判する声が、はてなブックマークに多い。
  → はてなブックマーク

 理由は、「電力需要は変動するから、平均値だけを見ても意味がない」というもの。
 国の反論もある。「電力需要は変動するから、空き容量をゼロにすることはできない」というもの。
 もっともらしいことを言っているが、間違いだ。
 なぜなら、ここにはひどい誤読があるからだ。

 朝日の記事で言う「利用率」とは、平均利用率ではなくて、最大値(ピーク時)の値である。それが2割だということだ。
  → urashimasanのコメント / はてなブックマーク
  → 京都大学教授の元記事

 この最大値について、各地域ごとにいろいろある値の「平均値」を取る(地域平均を取る)こともあるが、それは、「各送電網ごとで調べた時間的な平均値」ではない。
 はてなーは、記事にある前者の「平均値」を、後者の「平均値だ」と誤読している。空間的な平均値を示しているだけなのに、時間的な平均値だと思い込んでいる。
 誤読がひどいね。

 ──

 ついでだが、仮に「時間的な平均」で考えるとしても、問題はない。電力需要を見ればわかるように、
 「平均値に比べて最大値は2倍以下だ」
 という現実があるからだ。
 たとえば、下記。(変動が最も大きい日。) 





 平均値に対して、最大値は 1.5倍程度にすぎない。また、瞬間値の電力変動は、無視できるぐらい小さい。(仮に需要が瞬間的に増えたとしても、発電量は変わらない。単に周波数が微小に変動するだけだ。電力よりも、周波数が変動する。)

 要するに、送電網の平均値が2割だとしたら、通常は3割の容量を確保しておけば間に合う。最大限でも、4割を確保しておけば間に合う。残りの6割は、まったくの無駄だ。残りの6割を確保しておく必要は、さらさらない。
 以上が、定量的な判断だ。
 定量的な判断ができないまま、定性的な判断ばかりすると、正確な認識ができない。



 【 関連項目 】
 (すぐ上で述べた)電力需要の変動について、詳しいデータを知りたければ、過去記事で詳細なデータを記してある。
  → 東電の電力状況(2011年): Open ブログ

 2011年夏の電力データのグラフ。160枚。

 冬のデータはないが、今日現在のデータなら、東電のサイトで見つかる。
  → 本日の電力使用状況グラフ

 見ればわかるように、冬場には、一日の変力変動が少ない。夏場には、最小値と最大値の比率が 1:2 ぐらいになったが、冬場には 1:1.5 ぐらいにまで縮小する。

 
posted by 管理人 at 13:59| Comment(10) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
2020年から法的分離による発送電分離が行われることになっていますが、(https://www.fepc.or.jp/enterprise/kaikaku/bunri2/index.html )
これは別の形態でしょうか。
Posted by 作業員 at 2018年01月28日 15:14
 ご紹介の記事と同様ですが、下記の情報が見つかります。

 「2015年6月に成立した改正電気事業法により、「法的分離」は、2020年に実施される予定で、これにより、送配電事業者は発電や小売事業を営むことを原則として禁じられます。」
 http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/denryokugaskaikaku/souhaidenbunshaka.html
 
 これが実現すれば、本項の問題は解決されるでしょう。それが私の見解。
 
 発送電分離があれば解決が付く、というのが本項の主張でしたが、発送電分離がいつ実現するかについては言及しませんでした。原理の話だけをしていて、現実の話をしていなかった。
 現実の話は、コメント欄で記述されました。
Posted by 管理人 at 2018年01月28日 16:35
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2018年01月28日 17:12
再生可能エネルギーの受け入れ量については、送電網の利用率よりも電圧(=周波数)変動の調整が可能な範囲で決まるのではないですか?
大容量レドックスフロー電池の利用などで、マイクロ秒レベルでの調整可能量が増えれば(実証実験などをやっていますよね)その分だけ受け入れ可能量も増えるのでしょう。
日照や風況いかんで急増・急減する再生エネ由来の電力は、「安定供給」という足枷がある以上、受け入れ量の設定は慎重にせざるを得ないと思いますが。たとい発送電が分離されたとしても。
Posted by けろ at 2018年01月29日 22:29
 今はピーク値で 20%ぐらいだから、実際の値は 10%〜20% ぐらいでしょう。
 で、今回話題になっているのは、残りの 80% の分。これが空いているから使えます、という話。

 一方、けろさんの話は、10%〜20% の間で変動する空き容量(10%の範囲内)を、無駄なく使い切れる、という話。

 これは、応用編ですね。無駄なく使えるかどうか。
 ただし、そのためには、送電線に入りきらなくなることがあるほど、大量の再生エネ発電が必要だ。その場合、入りきれなかった分は、無駄に捨ててしまうことになるから、売上げが望めず、資金回収ができなくなる。となると、それほどたくさんは、設備投資しないでしょう。
 そういう問題が起こるとしても、ずっと先の話になるので、今はまだ考えなくても良さそうです。
Posted by 管理人 at 2018年01月29日 22:56
Posted by 通りすがり at 2018年01月30日 18:53
 アゴラの池田信夫の意見は、たいていは嘘。今回も、おおむね嘘。

 (1) 「バックアップ回線がある」というのは事実だろうが、「バックアップ回線だから使ってはいけない」というのは嘘。優先順位を付けることはあってもいいが、バックアップ回線を使っても問題ないはず。
 ただし、使うと、電力会社の売上げが減るから、電力会社は損する。この件は、本項ですでに述べたとおり。

 (2) 最大電力の話は、不正確。最大供給力は 5700万kW ぐらいある。ただし日によって、用意する量を変動させているだけだ。(あえて休ませている。そのせいで供給可能量が日によって変動する。)
 1月26日は、寒かったので電力使用量が激増したが、その日の数値は例外的だ。他の日はずっと少ない。
 → http://www.tepco.co.jp/forecast/html/images/juyo-2018.csv

 池田信夫は、自分の都合のいいデータだけをつまみ食いして、一事が万事であるかのごとく語っている。詐欺的論理だね。ペテン。

 ──

 ただし、再生エネの供給には変動が大きすぎて、まともに使える安定的電力とはならない、という点は正しい。
 これは私が 15年ぐらい前から言っていて、池田信夫が 10年ぐらい前から言うようになったことだ。他の人々が同様のことを言うようになったのは、7年ぐらい前から。
 この点では、池田信夫も妥当だ。
Posted by 管理人 at 2018年01月31日 00:05
「無駄なく使えるかどうか」という話よりも、再生エネ発電では発電量が急激に増減してしまうため、電力系統の周波数維持がとても大変だということ。需要量もかなり変動しますが、再生エネの瞬時変動量は比較にならないくらい酷いのです。系統ごとの需給量をにらみつつ、火力、水力の既存発電所の出力調整を行いつつ、各発電所のタイムラグを勘案しながら……。
雲が来て、いきなり太陽光発電量が下がったからと言って、火力の発電量を瞬時に増やすことはできません。
各電力会社は、そういう調整が可能な範囲内でしか、再生エネを受け入れることができない。技術的に(もちろん、ある程度余裕は見ているでしょう)。
再生エネ受け入れ量に制限を設けるのは、「空き容量」の問題じゃないんです。
Posted by けろ at 2018年01月31日 12:14
 たしかに再生エネは変動量が大きくて、対処も大変なんだけど、現実には、欧州ではかなり高い比率で受け入れている。これは風力発電が比較的安定しているということと、欧州全体(?)で電力変動を吸収可能だということもある。

 太陽光への雲の問題は、局所的には成立するけれど、雲が刻々と移動するにつれて、陰になる場所が次々と変動するだけだから、全体としての発電量はあまり大きく変動しない。

 まあ、ある程度の周波数変動が起こるのを許容すれば、かろうじて何とか受け入れ可能ではないかな。全体の半分ぐらいまでは。

 ──

 あと、上記の話(受け入れ可能かどうか)は、本項とは別問題です。本項は、空き容量の話に絞って論じています。
 具体的に言うと、九州ではもはや比率が大きくなりすぎて、再生エネの受け入れは不可能。九州以外では、受け入れ可能だけど、送電線の容量がボトルネックとなっている。ここが本項の論点。
Posted by 管理人 at 2018年01月31日 12:34
発送電分離が実施されたとした場合、送電を担う会社は、実際に電線の2割しか利用していないとすると設備超過の状態といえるのかなぁ〜
そうすると、経営陣は余剰の設備滅却を行って経営状態の改善を考えるかもね。

その時、以前は送電線の空きは無いということでしたが・・・実は・・・・・
なんて株主に説明するのかな??
Posted by どら猫 at 2018年01月31日 16:45
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

過去ログ