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陸上イージスで巡航ミサイルを迎撃する、という方針が示された。
《 陸上イージスで巡航ミサイル防衛、小野寺防衛相が意欲 》
小野寺五典防衛相は10日午前(日本時間11日未明)、米ハワイ州にある陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の実験施設を初めて視察した。日本に導入する際、北朝鮮を念頭に置く弾道ミサイル防衛だけでなく、将来的により迎撃の難しい巡航ミサイルにも対応させたい考えを表明した。政府は導入を急ぐが、迎撃には技術的な課題が指摘されるうえ運用開始時期がずれ込む見通しもあり、課題は多い。
( → 朝日新聞 2018-01-12 )
→ 防衛相、巡航ミサイル迎撃に言及 地上イージス使途拡大:一面:中日新聞
→ 「イージス・アショア」巡航ミサイル迎撃にも(FNN)
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しかし、陸上イージスで巡航ミサイルを迎撃する、というのは、軍事的に最悪だ。軍事常識からして間違いだとも言える。なのに、こんな初歩的なミスを政府は犯そうとしている。
では、どこが問題か? それは、ことわざで言える。
「牛刀をもって鶏を割く」
小さな物事を処理するのに必要以上の大がかりな手段を用いることのたとえ。
( → コトバンク )
これは、次の二点で言える。
(1) 価格
巡航ミサイルのコストは、トマホークで1億5千万円。ハープーンで 120万ドル。
一方、陸上イージスは、装置1基が1千億円弱で、詰め替え用のミサイルが1発 30億円。
( ※ 以上は、ググればすぐにわかる。)
装置費を別にしても、 30億円のミサイルで 1.5億円のミサイルを撃墜することになる。あまりにも馬鹿げている。
「砂金を得るために、金塊を捨てる」
というのに似ている。あるいは、
「アルバイトで時給 1500円を稼ぐために、留守番の人に時給3万円を払う」
というのに似ている。(倍率がちょうどその倍率だ。)
こういうのは、自分が何をやっているかわかっていない状況だ。馬鹿丸出し。愚の骨頂。狂気の沙汰だ。
( ※ 訂正: 巡航ミサイル用に使うのは SM3 でなく SM6。価格は 400万ドル。この場合は、価格はべらぼうに高い(20倍)というほどではない。巡航ミサイルの4倍ぐらいで済む。……といっても、やはり高すぎることには変わりはないが。)
(2) 量不足
「コストは金の問題だから、あまり気にしなくていい。国防の方が重要だ」
と思う人もいるかもしれない。しかし、コストは重要だ。なぜなら、コストは量と反比例するからだ。コストが上がれば、量は減る。コストが 20倍になれば、量は 20分の1になる。結果は、量的に完敗する。
たとえば、同じ費用を使うとして、巡航ミサイルに比べて、陸上イージスの 20倍のコストがかかるから、20分の1の量しか配備できない。つまり、敵の巡航ミサイルが 20発飛来したとき、こちらが用意した陸上イージスは1発しか迎撃できない。もともとそれだけの数しかないからだ。
こうなると、「飽和攻撃」のせいで、迎撃はまったく不可能となる。
( ※ かける金が無尽蔵にあるなら別だが、現実には軍事費という制約がある。)
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さらに大きな問題がある。「本末転倒」ということだ。
たかが巡航ミサイルなんかのために、超高額な陸上イージスを撃つ。すべて撃ち尽くしたら、弾切れになる。
そこで、(本来の攻撃対象である)弾道ミサイルが来たら、もはや迎撃できなくなる。せっかくの超高額な兵器が、肝心のときには使えなくなるのだ。
こんな感じ。
「総理、大変です。敵の弾道ミサイルが発射されました。日本の都心部と、各地の原発を目指して、20発が発射されました。大変です!」
「大丈夫。20発なら、迎撃ミサイルで迎撃できる。この日のために1兆円以上をかけて、迎撃ミサイルを用意したんだ。いよいよ、その効果がわかるときが来た! 備えあれば、憂いなし! どうだ」
「いえ、迎撃ミサイルはありません」
「え? なぜだ!」
「先に巡航ミサイルが 200発も来たので、それを撃墜するために、迎撃ミサイルはすべて撃ち尽くしてしまいました。もはや1発も残っていません」
「何だと? で、巡航ミサイルを撃墜することで、何を守ったんだ?」
「ええと。尖閣諸島です。あと、本土の何か」
「何かって、何だよ」
「さあ。巡航ミサイルは、到達地がわからないので、どこを狙っていたのかわかりません。もしかしたら、ディズニーランドかも。あるいは、伊勢神宮かな。それとも、靖国神社か」
「そんなものを迎撃するために、陸上イージスを使い果たしたのか?」
「そうです」
「いったい何で、そんな無駄なことをしたんだ?」
「すでに書いてありますよ。Openブログの、この項目に」
「その最後には、何て書いてあるんだ?」
「馬鹿は死ななきゃ治らない、と」
「何で馬鹿なんだよ!」
「算数の計算ができないからです。小学生以下ですな」
[ 付記1 ]
同じ記事には、興味深い話もある。
イージス・アショアには現在の迎撃ミサイル「SM3ブロック1A」より防護範囲が広い改良型の「SM3ブロック2A」を搭載する予定。だが北朝鮮は多数の移動式発射台から一斉に多数のミサイルを撃つ「飽和攻撃」ができるとされ、「完全な迎撃は困難」(防衛省幹部)との見方が一般的だ。
( → 朝日新聞 2018-01-12 )
飽和攻撃で迎撃ミサイルシステムが(ほぼ)無効化することが指摘されている。
この件は、私が何年も前からずっと言ってきたことだ。
→ サイト内検索
最初に述べたのは、2009年の記事。(泉の波立ちのページ。)
→ ニュースと感想 (3月28日)
それがようやく朝日新聞にも掲載されるようになった。「飽和攻撃」という軍事用語付きで。
ともあれ、「迎撃ミサイルは有効だ」という政府の嘘を、ようやくマスコミも理解するようになったらしい。私の記事から9年を経たあとで、ようやく追いついて、真実を書けるようになったわけだ。
( ※ 巡航ミサイルの真実に気づくには何年かかるか? やはり、本記事から9年かかるかもしれない。)
[ 付記2 ]
迎撃ミサイルで撃ち落とすのが駄目だとすれば、代わりにどうすればいいか? それには、標準的な方法が知られている。
「巡航ミサイルを撃ち落とすには、戦闘機の対空ミサイルを使う」
解説例は → 知恵袋
まあ、軍事常識ですね。巡航ミサイルは遅いので、かなり古い戦闘機と対空ミサイルでも、容易に撃ち落とせる。
実例もある。(訓練だが。)
これはロシアの例。ロシアはまともな頭があるので、巡航ミサイルを対空ミサイルで撃墜する。
日本の自衛隊は頭がないので、巡航ミサイルを迎撃ミサイルで撃墜しようとする。こんなに空っぽの頭だとすると、ミサイルの頭(つまり弾頭)も空っぽかもしれないよ。
では、戦闘機で巡航ミサイルを撃墜することにすれば、それで片付くか? いや、片付かない。
なぜなら、その肝心の戦闘機が、日本には不足しているからだ。F-4 は退役したし、F-15 は老朽化して稼働率が低下している。その上、F-35 はいまだにプロトタイプしか生産されていない。量産化はずっと先だし、日本に大量配備されるのがいつになるかは見通しも立たない。今後5年間以上、日本の防空体制はとても貧弱だ。巡航ミサイルをきちんと撃墜する能力など、まったくない。
それというのも、オスプレイや F-35 プロトタイプ みたいな役立たずの兵器ばかりに巨額の金を投入して、まともな戦闘機を買う金がなくなったからだ。馬鹿丸出し。
【 関連項目 】
日本自身も巡航ミサイルを配備しようとしている。だが、(こと日本に関する限りは、巡航ミサイルを配備しても無意味である。なぜなら海外の他国を侵略することはないからだ。この件は、下記に書いてある。
→ 巡航ミサイルを導入するべきか?: Open ブログ
→ 巡航ミサイルは無効: Open ブログ
【 追記 】
「 2018-01-12 の記事を持ち出すとは、ずいぶん古い話だな」
と思う人が多いだろう。その通り。この記事を書いたのは、2018-01-12 の当日のことだった。ところが、公開するのを忘れたまま、放置していた。(間抜けでした。)
話の内容は間違っていないし、今日でも成立するので、このまま公開することにした。
ただし、陸上イージスはすでに配備中止が決まっている。その意味では、本記事は「証文の出し遅れ」みたいになってしまった。
タイムスタンプは 下記 ↓
当たり前ですが、航空自衛隊に供給されている空対空ミサイルとレーダーは巡航ミサイル迎撃を想定しています。
また、地上配備の地対空ミサイルも巡航ミサイル迎撃に対応しています。
巡航ミサイル迎撃に地上の地対空ミサイルも使用するってだけで、その中の一つに陸上イージスが加わるだけですが。
あなた、本当に日本語が読めないんですね。識字障害か?
安価な(大量の)巡航ミサイル迎撃に陸上イージスを使ったら、弾切れになって、高価な弾道ミサイルを迎撃できなくなるでしょうが。
本文を読んでから書きなさい。本文を理解できないのなら、書くべからず。