2018年01月08日

◆ イノシシ・熊の被害対策

 イノシシと熊が、人里にいっぱい出てきて、問題となっている。熊は「危険だ」とされて、大量に捕殺された。

 ──

 イノシシと熊は、事件としては別なので、別々に報道されている。

 イノシシは、こうだ。
 《 京都、イノシシ次々 東山や祇園、今年10頭 》
 京都市の市街地で、頻繁にイノシシが出没している。京都府警などは今年に入って計10頭を確認。うち8頭は10月以降に現れた。東山や祇園などの観光地を暴走し、けが人も出ている。
 11月27日正午ごろ、左京区の平安神宮に体長1メートルのイノシシが現れた。神宮前では工事作業中の男性が後ろから突進されて転び…
( → 朝日新聞 2017-12-30

 《 イノシシ:市街地に 京都市で出没相次ぐ 1年間で10頭 個体数増加、餌足りず? 》
 京都市で今年イノシシの出没が相次ぎ、市街地で10頭が確認された。6月には京都大の学生寮「熊野寮」に出現。11月には平安神宮近くで体当たりされた男性が腕の骨を折る重傷を負い、今月には紅葉の名所のライトアップが中止される事態に。市の担当者は生息域と市街地が近接する地理的要因を指摘する。
 4日、京都市左京区の東山中学・高校に2頭が乱入。中間試験真っ最中の校内は大騒ぎになった。いずれも捕獲され体長約1メートル、体重は60〜70キロ。成獣の体つきだった。
 個体数が増えている可能性を指摘するのは、京都市動物園の坂本英房副園長。「一般論として、イノシシの個体数そのものが増えている場合、餌が足りなくなって人間の生活圏に入ってきた可能性がある」と話す。
 相次ぐ出没を受け、市は防護柵や捕獲のためのおりを増やすなどの対策に追われている。
( → 毎日新聞

 後者の記事には、次の話もある。
 一方、京都市の担当者は「食料を求めてというより、街中に迷い込んでしまっただけかもしれない」と語る。目撃例が多い市街地は、山間部とほぼ隣接。イノシシと人間の生活圏の緩衝地帯となる農地が少なく、自分たちの生息域と勘違いして街中に現れやすいというのだ。

 しかしこれは、成立するまい。これは「イノシシが急に馬鹿になったから」ということに等しいが、急に馬鹿になるはずがないからだ。
 常識的には、里山の広葉樹の実(ドングリなど)が少なくなったせいだろう。
  ・ 広葉樹から針葉樹への転換が進んだ。
  ・ 里山が荒れたり、廃止されたりした。

 動物にとっては住みにくくなる状況が進んでいる。人家のいる領域がどんどん拡大して、動物のための領域はどんどん縮小している。だから、動物が人家の領域に紛れ込むのだ。特に、餌の少ない冬場はそうだ。
 このことがいっそう当てはまるのが、熊の場合だ。

 ──

 熊については、本日の朝日新聞の記事で報道されている。大量に捕殺されているのだ。
 《 秋田のクマ、推定生息数の6割捕殺 「前代未聞」 》
 秋田県内で今年度、ツキノワグマの捕殺数が前年度の 1.7倍に急増し、推定生息数の6割弱にあたる 817頭に上っている。
 ツキノワグマは、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで危急種に分類される。環境省によると、国内では九州で絶滅と考えられ、四国では絶滅の恐れがあるとされている
 秋田での捕殺数は全国で群を抜く。
 県によると、12月末までの捕獲数は 817頭に上り、すべて殺された。このうち、767頭は住宅地や農地への出没による「有害駆除」。増加は、住民の要請に応えた結果という。県警などによると、目撃頭数(12月末まで)も過去最多の延べ1500頭余。クマによる死者が1人、重傷者が5人出ており、死傷者数は計20人に上る。例年は山に食べ物が少ない夏に出没が多いが、ドングリ類が凶作で、昨年は秋も目撃が多かった。
( → 朝日新聞 2018-01-08

 「ドングリ類が凶作で」というが、凶作だけが原因ではない。広葉樹が減ったこと(やたらと針葉樹のスギ人工林ばかりを増やしたこと)が主な原因だ。
 人間が勝手に動物の生息圏を脅かしておきながら、餌不足なって出てきた動物を射殺するなんて、あまりにもひどい。イスラエルのパレスチナ人虐殺に似ているが、もっとひどいな。ほとんどナチスのユダヤ人虐殺に似ている。

 ──

 では、どうしたらいいか? 
 これに対して、「飢えた熊にドングリを与えよう」という運動がある。「こうすれば熊は人里に出てこなくなるので、問題は解消する」というわけ。
 これを推進している民間団体がある。「日本熊森(くまもり)協会」というもの。( ※ 上記の記事でも紹介されている。)
 ホームページは下記だ。
  → 実践自然保護団体:日本熊森協会

 ──

 一方、これを批判する人もいる。主に環境主義論者。批判の理由は、「餌付けになるので良くない」というもの。
 また、「ドングリといっしょに外来生物を侵入させる危険もある」という。
 また、「ドングリを人家のそばに置けば、熊を人家のそばに招きやすいので危険だ」ともいう。
 詳しくは下記。
  → 熊森関東支部の「春にもドングリをまく」案に反対します - 紺色のひと

 この批判は、妥当な点も多い。したがって、はてなブックマークでは人気があるし、はてなブックマークを読んだ人の間では、日本熊森協会に批判的なコメントがいっぱい見られる。
  → はてなブックマーク - :日本熊森協会
 
 しかし、だからといって何もしなければ、熊は餌不足で人家の領域にやって来るし、そのせいで熊はどんどん捕殺されてしまう。
 「熊にドングリを与えるな」という方針は、事実上、「熊を大量虐殺して、熊を絶滅させよ」と言っているのに等しい。
 ここでは「環境保護を推進する」という方針のせいで、「熊が大量虐殺される」という逆説が生じているのだ。

 ──

 では、どうすればいいか? 
 私としては、次の二点に留意するべきだと思う。
  ・ 熊を大量虐殺するのは、罪である。
  ・ 熊の生息圏を奪うのも、罪である。


 この問題を根源的に解決するには、次のことが妥当だ。
  ・ 人家の領域を狭める。人は山間から撤退する。
  ・ 里山を整備して、ドングリのある広葉樹を増やす。
  ・ 奥地の杉人工林を廃止して、広葉樹林に戻す。


 本来ならば、そうするべきだ。人間が動物のための土地や樹木を奪ったのがいけないのだから、奪ったものを動物に返還するべきだ。

 しかし、である。本来ならばそうするべきなのだが、現実には困難だ。山間から撤退するのは、高齢者ならば可能だろうが、中年ぐらいでは無理だ。
 また、里山や針葉樹林を大幅に改造するのは、(経済的観点から)とうてい無理なことだ。

 となると、対策は、ひとつしかあるまい。
 「人間が環境を奪って、動物を餓死させようとしている。ならば、動物を餓死させないように、人間が食物を与える」


 つまり、本来ならば「食物のできる環境」を与える(奪ったものを返す)べきなのだが、強欲な人間のわがままのせいで、動物から奪ったものを返せない。
 ならば、せめて、最低限の生存の条件として、食物ぐらいは与えよう、ということだ。(さもなくば餌不足になって、本来の生息領域の外に出て行く。それが現状だ。)

 ただし、単に食物を与えようとすると、素人の思量不足のせいで、いろいろと問題が生じる。
  ・ 動物に餌付けの癖を付けやすい。
  ・ 人家の近くに置くと、動物が招き寄せられる。
  ・ 外来生物を混入させやすい。

 などだ。
 ただし、このような点は、専門家が十分に考慮をすれば、対処が可能だ。
  ・ 餌付けの癖ができないように、時期を限定する。
  ・ 人家の近くには置かない。(山奥に置く。)
  ・ 外来生物を混入させないように加熱殺菌する。


 要するに、熊森協会のような素人に任せるのは不適切だから、環境省などの専門家がきちんと対処すればいい、ということだ。環境省に金と人手が足りないのであれば、実務は市町村とボランティアに任せて、環境省は指針作りに専念するのでもいい。

 ──

 なお、私としては、さらに次のことを提案したい。
 ドングリのかわりに、バターやマーガリンの塊を与える。これなら外来生物の危険性もないし、費用も安価だからだ。また、山奥までドローンで運ぶことも可能だろう。
 バターやマーガリンというのが、うまく行くかどうかはわからないが、熊は雑食性なので、結構うまく行くかもしれない。とりあえずは一案として示しておく。
( ※ ドングリというのは、脂肪が多い。熊がドングリを食べるのは、冬場に備えて脂肪を体内に溜め込むため。)

 ──

 ともあれ、現状では、「熊には餌付けしない」という方針の下で、「熊が大量虐殺される」という結果になっている。これではひどすぎる。
 そこで、「人間が熊の領域を浸食して、熊の環境を奪ったことが、本来の根源だ」というふうに示して、人間の罪深さを指摘した。それが本項の趣旨だ。
 と同時に、熊の命を救いたい。




 《 巨大なクマの縫いぐるみ 》

    ※ あまりにもの巨大さに、口あんぐり。


http://amzn.to/2mcZGjl



http://amzn.to/2AF9M0L


posted by 管理人 at 23:44| Comment(7) | 一般(雑学)4 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
少し前に秋田県の人口減少についての報道がありました。高齢化と若年層の都会への流出により、人口減少率は4年連続全国トップとのこと。”大潟村を除く24市町村は「消滅可能性都市」”との指摘もあるようです。この過疎化の流れは今後も進むでしょうから、自ずと、
人家の領域を狭める。人は山間から撤退する。
に向かうのではないでしょうか。あくまで長期的にはです。この動きに行政の支援が加われば熊の生息域拡大がもう少し加速するかも。(県外流出の支援ではありません)
尤も、青森のコンパクトシティ政策は上手くいっていないようですけど。
Posted by 作業員 at 2018年01月09日 09:44
絶滅するものは絶滅して仕方ないと思います
人間だって自然の産物ですし
大きな時間で見れば変わらないことのほうが不自然です
Posted by らるふ at 2018年01月09日 17:41
> 絶滅するものは絶滅して仕方ない

 環境の変化が理由なら仕方がないけど、今回は人間による大量虐殺(猟銃や罠による捕殺)が絶滅の理由ですよ。動物が絶滅するんじゃなくて、人間が人為的に絶滅させるわけ。
 あなたの主張はヒトラーの大虐殺を正当化するのも同然。
Posted by 管理人 at 2018年01月09日 18:18
人間はいままでたくさん絶滅や駆逐をしてきて、
そのおかげで今の住居なり暮らしなりがあると思うんです
もちろん絶滅させないに越したことはないのは同意ですが
人間は人間のことを第一に考えたほうがいいんじゃないかとも思います

あとヒトラーの比喩はあんまりよろしくないのではと感じました
まるでユダヤの方々が熊や猪と同じであるかのようで
嫌な気持ちになる人も出てくるような気がします
Posted by らるふ at 2018年01月10日 06:53
> 人間はいままでたくさん絶滅や駆逐をしてきて、

 それは食糧として肉を食べるためです。単に「殺害」だけを目的として殺すのとは違います。
Posted by 管理人 at 2018年01月10日 07:46
熊を殺しているのは、単なる殺害目的なんですか
そうだとしても、それなら絶滅しないんじゃないですか
絶滅させたら、殺せなくなるんですから

また、殺害目的が悪で、食事目的が必要悪だとすれば、
じゃあきちんと食べればどんどん殺していいんですか
絶滅させていいんですか

熊のことを考えるなら、熊やその環境に手を加えるよりも、猟師の側に手を入れるほうが良くないですか
つまり簡単には殺せないようにする

そのためには、大義名分を無くす必要がある
すなわち、山から人間を離すことです

熊のテリトリーのそばにいるからいけないのであって、より暮らしやすい所に移動すればいいんです
それは簡単なことではないでしょうが、そこまで困難なことでもないだろうし、
筋を通すという意味では、それが正論だと思います

もっとも、私はこれにはあまり乗り気ではありません
そもそもテリトリーというのは、神様が決めているわけではありません
山に熊がいるのは、そこが過ごしやすいからです
そして熊がいることで山にいられなくなったり、絶滅した生物だって(おそらく)いるはずです
テリトリーとは、奪い合うもの
ここは絶対的に誰かのテリトリーである、なんていうのはないし、それは傲慢すぎると思います
Posted by らるふ at 2018年01月10日 12:46
地方の過疎化はドンドン進みますす、そのうち熊も過ごしやすくなるでしょうね。

しかし、熊肉はジビエの中で一番美味だと思います。
あの冬眠前の豊潤でコクの深い脂は素晴らしい。
でも、私は熊肉を食べなくなりました。
生態を見てると可愛いし(絶対に近づきませんが)捕殺すべきものではないと思うからです。
食料が豊富な現代で、わざわざ熊のテリトリーまで入っていって山菜を獲らなくていいし、まして、ジビエを愛好する人たちがわざわざ熊肉を食べなくても良いかなと。(デミ・ソバージュはあるし、素晴らしい家畜もありますし)
里山の再生は無理でしょうね。(政府はそんなことしないでしょう)
人口減で無駄な宅地開発は無くなっていくでしょうし、自然の摂理(?)として、熊は増えてき、捕殺も無くなると思います。
Posted by 名無し at 2018年01月10日 13:03
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

過去ログ