2018年01月04日

◆ テスラの生産はどうなる?

 テスラのモデル3は、生産が難航しているが、この先、どうなるか? (詐欺の可能性も。)

 ──

 テスラのモデル3は、生産が難航している。前に述べたとおり。
 本項では「テスラは高性能だが、生産に問題があるので、生産が実現しそうにない」という趣旨で述べた。
 この予想がまさしくドンピシャリで当たった。10月3日の日経で、そのことが報道された。
( → 《 お知らせ 》: Open ブログ

 これは 2017年09月28日 の記事だ。
 その後、テスラは「問題は短期間で解決する」という見通しを示した。
 10月2日にテスラが投資家へ宛てた文書には「生産上のボトルネック」が生じているために、生産台数が伸びていないことが記されていたとのこと。テスラは文書のなかで「サプライチェーンを含め生産体制に根本的な問題はなく、何を修正すべきかもわかっているため、この問題は短期間で解消される」としつつも、修正すべきものが何なのか、年内または2018年の生産予測に修正が必要なのかは明らかにしていません。
( → Autoblog 日本版 - エキサイトニュース

 これから3カ月ほど立った現時点で、あらためて調べてみると、生産はまったく難航しているとわかった。
  → テスラ「モデル3」納入台数、キーバンクが予想引き下げ

 今後の見通しはどうかというと、「来年3月には週5千台に増やす」とのことだが、よく見ると、これは「予定」ではなくて「目標」である。
 「問題は改善されつつあるという感触を得ている」と語った。テスラは手作業を自動化し、車の生産スピードをあげようとしており、来年3月には週5千台に増やす目標を掲げている。
( → テスラ新車生産遅れ「改善の感触」 パナソニックCFO:朝日新聞デジタル

 自動化されているはずの生産が自動化されておらず、そのせいで、手作業になっているので、生産が進まない。その生産台数も、「9月までに260台にとどまった」という古い数値が出るばかりで、11月、12月の数値が出ていない。本来ならば「これだけ生産できるようになりました」という数値を出すはずなのに、それができていない。
 どうやら、9月の状態のままで、「手作業」の状態が続いているようだ。
 また、改善も「見込み・予定」ではなくて、改善の「感触」があるにすぎない。来年3月の数値も、あくまで「目標」であるにすぎない。(上記記事)

 ──

 では、どうしてこうなのか? 
 調べてみたら、この問題は何年も前のテスラ・モデルSの時点からずっと継続しているようだ。生産の問題が、各所であまりにもたくさんある。そういうひどい状態がずっと続いており、何年たっても、決の見通しが立たない。どこか一つを改善すればいいという問題ではなく、あちこちで慢性的に欠陥状態が続いている。
 人間で言えば、「満身創痍」とか「病気だらけ」とかいう状態だ。どこか1箇所を手術すればいいというような問題ではないのだ。
 詳しくは、下記の記事にある。そちらを読むといい。
  → 焦点:EV大手テスラ、ささやかれる「拙速な製造」のツケ

 一部抜粋しよう。
 組立後の品質検査で「モデルS」と「モデルX」の9割以上に欠陥が見つかることが当たり前となっているという。取材した現旧従業員の一部は、2012年には、すでにこの問題に気が付いていたと語る。
 新車発売に予想外のトラブルはつきものだ。とはいえ、既存車種の「モデルS」や「モデルX」につきまとう欠陥は、テスラがいまだ基本的な製造技術の獲得に苦労していることを示している、と現旧従業員は話す。
 欠陥の内容について、「ドアの閉まりの悪さ、バリ残り、部品欠落など、何でもありだ。ぐらついていたり、水漏れしたり、何もかもだ」と語るのは、また別の元スーパーバイザーだ。「『モデルS』は2012年から作っている。それなのに、なぜまだ水漏れが起きるのか」
 あるときはフロントガラス、あるときはバンパーといった具合に、在庫がないという理由で、部品が欠けたままの車が一斉に流れてくることもあった。
 たえず面倒を引き起こしていたのが「アライメント」の部分だという。シニアマネジャーの言葉を借りれば、車体部品をかなりの勢いで「むりやり押し込まなければ」ならなかった。
 こうした問題の一端は、同社のマスクCEOが、設計プロセスの短縮や一部の製造前試験の省略、現場レベルでの改善といった手法によって、業界標準よりも迅速に新車種を発売する方針を決定したことにある、と一部の従業員は考えている。こうした場当たり的なやり方が、修正発生率の高さにつながっている、と言うのだ。
( → 焦点:EV大手テスラ、ささやかれる「拙速な製造」のツケ

 問題の根源は、テスラの生産方式そのものにある、とわかる。「高品質の製品を生産しよう」というシステムになっておらず、「とにかく早く生産する」という方針を取ったために、短期間で生産を立ち上げることができたのだが、できた製品は欠陥品ばかりとなり、その後の修正が大量に必要となった。かくて、「欠陥品が大量生産されたが、まともな品は少量しか生産されない」というふうになった。

 このことは、外部からの推察だけでなく、内部での証言すらある。意外なことに、日本人の新人がテスラの生産を任されていたそうだ。上田北斗という人。
 《 入社日に突然、「4カ月で工場を作れ」と言い渡された 》
上田: ハーバードビジネススクールを卒業して2011年5月末にテスラへ正式に入社したんですが、その初日にイーロンから「工場を作ってくれ。10月1日のオープンパーティの招待状を3000人に送ったから」と言い渡されたんです。
 でも工場で働いたこともないから、4カ月で工場を作るのが難しいのかどうかもよくわからなくて。
 休止していた元トヨタの工場を、4カ月で新たな工場に作り変えたんです。
 ただ、4カ月でできたのはあくまで工場の見てくれだけ。その後は内部の稼働準備に移りました。それから「モデルS」のプロトタイプの製作を一年くらい任されて、2012年6月にローンチしました。

入山: 2011年5月末にモデルSを作るための工場を作り始めたんですよね。たったの1年で製品をローンチ。すごいスケジュール感ですね。

( → イーロン・マスクの元部下が語る「テスラのハード・ワーキング」 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 ものすごいスピードで生産を立ち上げたことがわかる。これは、「早い」と言えそうだが、実は「拙速」であるにすぎない。素人が短期間でやれば、まともなものができるはずがない。

 実は、テスラの自動車の技術がすばらしいのは、テスラそのものに自社技術があったからではない。すごい高給で、世界中の高度技術者を招いたからだ。
 あのカッコいいデザインも、シャシー技術も、テスラが独自に開発したものではない。ヨーロッパの各所を出身とする高度な技術者が、テスラに入社したのだ。「高給で引っこ抜かれた」という感じだ。
 だからこそ、新興メーカーであるテスラが、ベンツやBMWを上回る人気を、高級自動車分野で確立した。(米国での高級自動車の販売台数で。)
 ここでは、「技術者を重視する」というイーロン・マスクの経営方針が素晴らしかった。
  → アップル辞めてテスラにいった150人があげる転職理由

 ところが、どういうわけか、生産に関してだけは、未経験の素人に任せた。「とにかく急げ」とだけ命じて、生産設備の内実については目も向けなかった。
 その結果は? デタラメな生産設備が突貫工事でつくられただけだ。できた生産物は、欠陥商品ばかりとなった。かくて、冒頭に述べたような状態となった。

 ──

 こうして、テスラの内実が判明した。そして、この状態は、ろくに改善していないようだ。つまり、「満身創痍」という状態が、パッチを当てるような方針で、少しずつ改善しているだけであるようだ。ここでは「生産の問題を根本的に改善する」というような方針は取られていない。生産を経営の問題としては受け止められておらず、あくまで現場任せで、パッチを当てるように直そうとしているだけだ。
 これでは、「数カ月後に完全にする」という目標を掲げて、何度も何度も「数カ月後」という目標を更新し続けるしかない。「また数カ月後」「また数カ月後」「また数カ月後」……というふうに、延々と続くわけだ。それが、ここ数年のテスラの方針だったし、これからもずっと同じ方針が続くのだろう。
 では、正しくは? 「問題の抜本的な改善が必要だ」と理解した上で、「2〜3年後の正常化」をめざして、外部から招いた生産のプロに任せるべきだ。(今のように素人任せではなくて。)
 しかし、テスラはそうしない。生産のプロに任せるには、工員レベルの社員を高給で雇わなければならないが、テスラの給与は安いからだ。
 テスラも急成長中の企業です。しかし若手の年間報酬の中央値は$81,400で、テック系企業としては低い水準にとどまっています。中堅の年間報酬でも$118,500なので、他社と比べると見劣りするレベルです。
 米国版Autoblogによると、職場のストレスに関する調査において、テスラ社の従業員の70%が「(ストレスが)かなり多い」「非常に多い」と感じていることがわかりました。70%という数字は、テック系企業ではワースト2位です。
( → 車知楽

 また、長期的な展望すら立てることができていない。
 社内では無謀ともいえる目標を課し、達成できない社員や自分の気に入らない部下は次々と首を切る“超ワンマン”な一面も報じられている。
 「テスラ社の経営は、莫大な初期投資を回収できるようなビジネスモデルにはなっていません。クルマの量産により、ようやく単年度黒字になるかどうかのラインまで来ましたが、累積赤字を解消するメドも立っていないのが現状です。
( → テスラの危うい経営体質…日本でいえば立派なブラック企業? - ライブドアニュース

 結局、「技術開発は素晴らしいが、生産面では全然ダメだ」ということになる。そして、それは、私が最初に指摘していたとおりだ。
 テスラ・モデル3は、たしかに技術的には素晴らしいのだが、生産の面では、あまりにも博打を打ちすぎているのだ。
 テスラモデル3は、圧倒的な大成功を狙っているが、きわめてあやふやである。技術的には優れているが、生産面が不安だ。
 本項では「テスラは高性能だが、生産に問題があるので、生産が実現しそうにない」という趣旨で述べた。
( → 新型リーフは成功するか?: Open ブログ

 ──

 結論としては、「テスラはお先真っ暗だ」というふうになる。今後は「生産は数カ月後に正常化する」という目標を立てて、何度も目標を延期し続けるだろう。1〜2年で問題が解決するとは思えず、今後もずっと生産は遅延し続けるだろう。下手をすると、何年もこのまま量産が不可能の状態が続いて、やがては倒産の危機に瀕するかもしれない。
 今は赤字が続いているが、「受注して予約金を受け取る」という形の綱渡り商法に頼って、資金不足を免れている。しかし、生産が延期ということが世間で判明すると、予約の解消(キャンセル)が続出して、予約金を返還する必要が生じて、資金不足になりかねない。
 テスラの予約は 50万人。1人 1000ドルで、合計5億ドル(=600億円)。四半期の売上げが 3000億円で、四半期の赤字が700億円の会社に、これはきつい。
 現状が続けば、テスラは早晩、倒産しかねない。



 [ 付記 ]
 テスラは、「問題はごく一部だけでしかない」というふうに表明している。
 10月2日にテスラが投資家へ宛てた文書には「生産上のボトルネック」が生じているために、生産台数が伸びていないことが記されていたとのこと。テスラは文書のなかで「サプライチェーンを含め生産体制に根本的な問題はなく、何を修正すべきかもわかっているため、この問題は短期間で解消される」としつつも、修正すべきものが何なのか、年内または2018年の生産予測に修正が必要なのかは明らかにしていません。
( → Engadget 日本版

 「ボトルネック」という言葉は、「そこだけが問題だから、そこさえ解決すればすべては解決する」ということを含意している。
 しかし、すでに先に述べたように、テスラの生産の問題は「満身創痍」だ。そのことに気づいていないとすると、テスラは問題のありかがどこにあるかすら気づいていないことになる。あくまで現場レベルで解決させようとしており、自社の根本体質を改善しようとはしていない。
 自分の病気にすら気づいていないのだとすると、お先は真っ暗だというしかない。
( ※ あるいは、気づいていながら、投資家をだまそうとしている、詐欺師なのかもしれない。その可能性も十分にある。)



 【 関連サイト 】
 テスラの経営難については、下記記事も参照。

  → 米電気自動車テスラ、過去最大の赤字に 7〜9月期、700億円
  → 1台売って4000ドル赤字を出すテスラの苦悩
  → テスラ、毎分90万円のペースで現金燃焼−「モデル3」大規模投資で
  → 米テスラ、赤字幅が拡大 株価「過大評価」の声も
  → 迷走テスラに冷める投資家
  → 株主を「欺く」テスラ、その逃れられぬ現実
  → テスラの社債、誰が買いたがるのか ジャンク級
posted by 管理人 at 08:11| Comment(2) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
プロセス技術、生産技術をなめてますね。
モジュール化された部品をパコパコはめてボルトで留めたら完成すると思っていたのでしょう。
各部品のアライメントが狂っているということは寸法精度も推して然るべき状態です。おそらくはラバー等をスペーサーにはめたりしているでしょう。そのうち右コーナーでアンダー、左コーナーでオーバーとかが生じてもおかしくないです。
本来、少数試作(ビーカーワーク)→量的試作(バケツ〜ドラム缶)→小規模量産(タンク)→大規模量産(プラント)と拡大していくものです。
Appleは部品メーカーと納期、数量、生産計画の調整を司る調達のプロが既にいましたし、生産のプロとなるOEMもいました。
新興メーカーであるテスラがAppleの真似をしてガソリン車と共通な足回りやシャーシの部材を手配しようにも生産台数の桁が違うから調達交渉はほぼ失敗するでしょう。
社内工場でボディや各種組み立て、溶接を担っていると思いますが、スポット溶接が位置と数と順番でボディの歪みや剛性不良を引き起こすことを知らない方が処理能力重視の生産管理をしていると、恐ろしいことになりそうです。
この辺はプロセス技術の経験則と試験部隊との連携がかなり重要なんですが、雇っていないでしょうね。

なおスループット重視にすると、部品を加工時間を要する鍛造や削り出しではなく、板金を採用する様になります。精度は下がりますし、アライメント不良の部品も無理やり取り付けやすくなります。ただ、残留内部応力が形状変更を引き起こしますので、考えるだけで嫌なことが起こりそうです。
2017モデルXの衝突安全性評価も「エンジンを積んでいないにも関わらず」あまりよくないのはその辺にあるのかもしれませんね。
Posted by 京都の人 at 2018年01月04日 16:02
 参考記事
   → テスラ「モデル3」量産に失敗 工場に欠陥で生産遅延
   http://www.thutmosev.com/archives/74278063.html

 一部抜粋

 ──

「地上で最も優れた製造工場」と自画自賛していた工場では、実際には工作精度などが極めて低く、多くの部品が噛み合わないという。
ほとんど全ての製造車両を修正するために、工場労働者は毎日13時間の勤務を強いられ、「奴隷労働」だと告訴されている。
元シニアマネジャーなどテスラを退職した労働者9人がロイターに語ったところでは、「ドアの閉まりの悪さ、バリ残り、部品欠落、水漏れ」などが頻発している。
「調べれば調べるほど、10も20も問題が見つかった」が生産ラインを止めるな、つまり問題があっても生産しろという圧力があったという。
テスラは不具合を訴える客に「無償修理する代わりにトラブルを口外しない」という誓約書を書かせ、違反すると数千万円の違約金を払わせると報道されている。
Posted by 管理人 at 2018年01月30日 06:58
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

過去ログ