2018年01月03日

◆ EV を蓄電に利用する事業化

 EV を蓄電に利用する、というのが事業化されるそうだ。しかしこれは詐欺同然だ。

 ──

 EV を蓄電に利用する、ということは、案としては何度も言われてきた。ところがこのたび、事業化に向けて、その実証試験をするそうだ。
 《 EVに蓄電の役割、電力需給に新技術 豊田通商、米企業に出資 》
 豊田通商は、電気自動車(EV)に蓄えておいた電気を送配電網に送ることで、電力需給を安定化させる新たな取り組みを手がける。EVに蓄電池の役割を担わせることで、普及すれば発電所を新設しなくても電力需給のバランス調整ができるという。EVが普及する欧州の一部で実用化されており、日本での早期の普及をめざす。
 豊田通商は今後、国内での実証実験を始める考えだ。
( → 朝日新聞 2018-01-03

 《 豊田通商、米VBに出資 電力需給調整にEV電池 》
 ヌービー社はEVの蓄電性能を電力網の運用に生かす「V2G(ヴィークル・トゥー・グリッド)」と呼ばれるシステムを手掛ける。具体的には、充電ステーションに接続されたEVの電池から電力系統に対し、電力の需給バランスに応じて電気を充放電する内容だ。デンマークでは商業運転に成功している。
 電力会社などが所有者に利用料を払うことも想定しており、EVの維持費の負担軽減につなげる。
 豊通は4月設立のコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)を通じて出資する。
( → 日本経済新聞

 こうするとして、自分の自動車を使う限りは、(自分が損するだけなので)問題ない。しかし、一般国民の自動車を使うのであれば、それは(国民に損をさせるので)詐欺となる。
 では、なぜ損するのか? 「電池が劣化する」という問題があるからだ。
 この「劣化」という問題は、テスラの電池であれば、特に問題とならない。しかし、日産のリーフであれば、大きな問題となる。日産のリーフの蓄電池は、(冷却システムがないので)劣化がひどいからだ。前にも述べたとおり。
  → 新型リーフの電池の劣化: Open ブログ

 EVの所有者は、電力会社などから利用料を払ってもらえて、その分、「得した」と思うかもしれない。しかしその一方で、「電池の劣化」という大幅な損失をこうむる。下手をすると、もらえる金額より、損する金額の方が、多くなりそうだ。これでは馬鹿げている。
 なのに、その「劣化による損失」という問題を隠して、会社側は利用者の EV を利用しようとする。これでは、詐欺同然だろう。

 ──

 なるほど、「EVで蓄電」というのは、将来的には有効かもしれない。しかし、現時点では、テスラ3 というモデルは量産されていないし、日本で大量販売されているのは日産リーフだけだ。
  → 新型リーフ 3ヶ月で受注台数が1万2000台
 ついでだが、欧州でも同様だ。
  → 日産 リーフ 新型、欧州で受注が1万台突破…発売2か月

 こういうふうに「リーフしかない」という状況で、「EVで蓄電」という事業または実証試験を始めれば、そこでは必ず「電池の劣化」という問題が生じる。これでは、利用された人(モルモットになった人)が、かわいそうだ。
 だから、「これは詐欺だ。引っかかるな」と警告する必要がある。
 
 一般に、普及期に入らない段階での実証試験というのは、いろいろと問題があるものだ。そういう実証試験を、自腹でやるのは構わないが、国民をそこに巻き込むべきではない。ろくに情報を与えず、デメリットを隠して、「先端的な事業にご協力ください」というのは、詐欺も同然である。
 そのことを、事業者も自覚するべきだ。



 【 関連項目 】

 本項と同趣旨のことは、前にも述べた。そちらを参照。
  → EV に太陽光発電を蓄電する?: Open ブログ
  → 新型リーフの電池の劣化: Open ブログ

 劣化の話は、ずっと前にもしたことがある。
  → EV 電池の劣化(実証): Open ブログ

 もっと原理的な話もある。
 「EVで蓄電」というのは、そもそも根本的に難点があるのだ。これまで何度か言及した通り。

 まず、蓄電せずに、発電した電力をそのまま系統電力に流し込むのがベストだ。これならば、蓄電池のコストなしに(コストゼロで)実現できる。
  → EV蓄電と太陽光発電: Open ブログ
  → 太陽光に蓄電池は不要: Open ブログ

 どうせやるにしても、新品の蓄電池ではなく、EVで劣化した中古の蓄電池を使う、という案がある。こっちの方が、まだマシだ。
  → EV用の電池の再利用: Open ブログ

 ただ、その方法も、お薦めできない。理由は、二つ上の項目(↑)にある通り。

 さらに、効果の問題もある。EVに蓄電できる量など、日本の発電量全体から見ると、あまりにも小さいのだ。
  → EV 電池の劣化(実証): Open ブログ の [ 付記 ]
 だから、たとえ事業が全部成功したとしても、その効果はたかが知れている。もちろん、太陽光発電や風力発電の変動量を吸収する、なんていうことは、とうてい不可能だ。日本の自動車がすべて電気自動車になったと仮定して、その自動車をすべてストップさせて蓄電専用に利用することにしたとしても、太陽光発電や風力発電の変動量を吸収することはできない。(キャパが小さすぎる。)
 現実には、「日本の自動車がすべて電気自動車になる」ということもないし、「自動車をすべてストップさせて蓄電専用に利用する」ということもできない。とすれば、それで蓄電に回せる量は、原子力発電所の1箇所分にもなるまい。ハナから無効で無意味なことなのである。

 [ 余談 ]
 仮にこれが成功するとしたら、太陽光発電のコストが大幅に安くなって、EVが大幅に普及したあとのことだ。それは 10年ぐらい先のことだ。
 今の時点でそんなことをやっても、コスト的に成立しない。また、先行して事業化することのメリットもない。特に難しい技術を使うわけでもないからだ。(どちらかと言えば、資本力で差が付く。)
 たとえ先行して事業化しても、あとでガリバーみたいな巨大企業が参入したら、あっという間に蹴散らかされるだけだ。先行者の利点など、何もないのだ。(どちらかと言えば、古い技術の設備を持つことで、高コスト体質になり、減価償却ができないまま、倒産する可能性が高い。それを避ける唯一の方法は、太陽光パネルと同様で、国から莫大な補助金を得ることだけだ。補助金を得ないまま自己資本でやれば、あとは悲惨な運命が待ち受けている。)

posted by 管理人 at 21:11| Comment(6) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
《 このコメントは 削除しました 》
Posted by 通りすがり at 2018年01月03日 20:16
嫌なら、見なきゃ良いのに。
南堂さんのご意見、
とても参考になるんですけどね。
Posted by けろ at 2018年01月03日 21:13
豊田通商が、日産のリーフを想定して、システムを構築、実証実験するとはちょっと考え難いのですが...
Posted by 作業員 at 2018年01月03日 22:15
> 豊田通商が、日産のリーフを想定して

 本項の結論は、
 「そのことを、事業者も自覚するべきだ。」
 です。
Posted by 管理人 at 2018年01月04日 00:01
電池問題以前に、トヨタ(系企業)が日産の商品を活用した事業を計画するだろうか、ということです。
Posted by 作業員 at 2018年01月04日 09:57
全個体電池を見越してはるのでは?
Posted by 京都の人 at 2018年01月04日 16:11
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