2017年12月21日

◆ 巡航ミサイルは無効

 巡航ミサイルの導入が正式決定された。しかし巡航ミサイルは無効だ。(日本にとっては、という限定が付くが。)

 ──

 巡航ミサイルの導入が正式決定された。
 小野寺五典防衛相は8日午前の記者会見で、戦闘機用の長距離巡航ミサイル導入に向けた関連予算を平成30年度予算案に計上する方針を正式に発表した
 「相手の探知範囲や射程の圏外から日本に侵攻する部隊に対処することで、より効果的かつ安全に作戦を行えるようになる」と導入理由を語り、弾道サイル防衛にあたっているイージス艦の防護にも「必要不可欠だ」と強調した。
 一方、「敵基地攻撃能力は米国に依存しており、今後も日米の基本的な役割分担の変更は考えていない」と敵基地攻撃能力との関連を否定し、長距離ミサイル導入は「専守防衛」に反しないと強調。夏の概算要求で計上しなかったのは「導入できるかどうか、相手側(製造国)の考えが固まってなかった。その後調整がついた」と説明した。
 導入するミサイルは3種類。ノルウェー製の「JSM(ジェイエスエム)」は射程500キロで、F35A最新鋭ステルス戦闘機への搭載を予定。米国製の「JASSM(ジャズム)」「LRASM(ロラズム)」は射程900キロ程度で、F15戦闘機を改修して搭載する。いずれも対地攻撃能力があり、JSMとLRASMは対艦攻撃もできる。
( → 巡航ミサイル導入を正式発表 「専守防衛に反しない」小野寺五典防衛相 - 産経 2017.12.8

 いかにももっともらしいことを言っているが、こんな主張は軍事的には無効だ。

1.敵侵攻部隊への対処


 第1目的は、(専守防衛に適うように)「敵侵攻部隊への対処」であるらしい。記事では、「相手の探知範囲や射程の圏外から日本に侵攻する部隊に対処する」というふうに記してある。
 これの意味するところは、次の二つだろう。
  ・ 樺太経由で陸上を進むロシアの戦車部隊
  ・ 海上を進む中国・北朝鮮・ロシアの艦船部隊

 しかし、そのどちらも、ほとんど意味がない。

 まず、ロシアの戦車部隊なんてものは、考慮する必要がない。日本に航空戦力があれば、あっさりカタが付く。また、日本の航空戦力がなければ(壊滅したのであれば)、さっさと降伏するしかない。そもそも、この時点ではとっくに巡航ミサイルは撃ち尽くされているはずだ。(敵基地に向けて。)……要するに、考えるだけ、ナンセンス。

 では、艦船部隊への攻撃はどうか? これも意味がない。そもそも北朝鮮には艦船部隊はない。ロシアや中国の艦船部隊は、日本の海上自衛隊よりも弱い。また、中国の空母が将来的に大規模になるとしても、そこでの主要戦力は航空機だ。巡航ミサイルを飛ばしても、ほとんど意味がない。というか、巡航ミサイルなんて、海上を進む限りは、あっさり撃墜されてしまうだろう。

 要するに、防衛兵器としての巡航ミサイルには、ほとんど効果がない。こんなものを配備するぐらいなら、戦闘機を配備する方が圧倒的に有効だ。

2.敵侵攻部隊への対処


 第2目的として、敵基地攻撃能力がある。これはどうか?
 「専守防衛に反する」ということで、防衛省はこれ否定している。しかし、敵国への都市攻撃はともかく、基地攻撃ならば、これは「正当防衛」の範囲に含まれると考えられる。(人間同士でも、敵の持つ武器を攻撃することは、正当防衛の一種である。)……ただし、敵の攻撃が先にある場合に限るが。(敵基地への先制攻撃は、自衛には含まれない。)
 というわけで、敵基地攻撃能力は、軍事的には有効だ。一般論としては、だが。
 一方、日本に限った話では、私は否定的に考える。

 (1) コスパ

 前にもこの問題を論じたことがある。そこでは、「巡航ミサイルはコスパが悪い」と論じた。
  → 巡航ミサイルを導入するべきか?: Open ブログ
 ここでは、「(北朝鮮のような)敵国を破壊するのであれば、巡航ミサイルで数カ所を破壊するよりも、安価な爆弾で全土を破壊するべきだ」というふうに述べた。
 なお、これは、「自衛」とは別の次元だ。「北朝鮮の全土を破壊する」というのは、日本にはできない。憲法違反になる。やるとしたら、米国だろう。
 その意味で、「コスパ」を考えるのは、日本による北朝鮮攻撃については、ちょっとナンセンスだ。

 (2) 先制攻撃用

 実は、巡航ミサイルというのは、先制攻撃のためにある。相手に知られないうちに、こっそり先制攻撃するわけだ。こういう形でなら、意味がある。たとえば、開戦時にいきなり北朝鮮の各基地を同時に巡航ミサイルで破壊する。特に、レーダーを破壊する。これらは、十分に意味がある。
 とはいえ、そんな先制攻撃は、憲法違反なので、日本には無理だ。
 では、先制攻撃以外ではどうか? ここでは、(1) のコスパが重要となる。敵のレーダーを(巡航ミサイルや空爆で)破壊したあとで、大量の爆弾で空爆する。ここでは、高額の巡航ミサイルを少数だけ使うことは意味がない。安価な爆弾で大量に空爆することが有効だ。しかも、このような空爆は、日本では憲法違反となる。……結局、(1) の通り。

 (3) 評価

 以上の (1)(2) をまとめて、巡航ミサイルを評価すれば、こうなる。
 巡航ミサイルは、それ単独では、効果がない。あまりにも高額なので、発射できる弾頭数が限られており、その限られた数では、戦局を左右できないからだ。
 ただし、開戦時の先制攻撃に限っては、敵基地を叩く効果は大きい。敵のレーダーや航空基地を叩く効果は十分にある。
 とはいえ、それが有効なのは、その次に大規模空爆を行うからだ。大規模空爆の支援のために、巡航ミサイルは使われる。特に、米軍にとっては、巡航ミサイルは必要不可欠だろう。
 一方、大規模空爆ができない日本はどうか? 日本は、大規模空爆のための爆撃機もないし、そもそも敵への都市攻撃は憲法違反ですらある。とすれば、大規模攻撃ができないくせに、巡航ミサイルだけを使っても、何の意味もないことになる。……仮に、巡航ミサイルを(先制攻撃で)発射したとすれば、北朝鮮から報復としてテポドンが大量に発射されるだろう。これでは日本は被害を受けるばかりだ。馬鹿丸出し。

 結局、爆撃機もなければ敵都市攻撃の権利もない日本にとっては、巡航ミサイルは、「無用の長物」というしかない。
 一般に、兵器というものは、それ単体で使用するものではなく、さまざまな兵器と同時に使うものであり、そのなかで特定の役割をになう。巡航ミサイルは、特に、先制攻撃においては絶大な威力を放つ。しかし、先制攻撃そのものができない日本にとっては、巡航ミサイルは無用の兵器なのだ。
 巡航ミサイルを、戦力の体系の中で位置づけることもできないまま、単に「武器を増やせば戦力が増える」と思い込むようでは、軍事的な作戦能力が皆無だと言われても仕方ない。
 こんなことだから、何よりも大事な航空戦力の拡充がないがしろにされる。F-4 は老朽化して退役し、F-15 は時代遅れとなり、F-35 はプロトタイプがようやく試験飛行しているだけで実戦配備はずっと先だ。
 日本の防衛力は、何ともお寒い限りだ。

 現状の方針のまま、日本と中国が航空戦力で戦うとしたら、数年後には、日本が圧倒的に不利になるだろう。なぜなら、中国は圧倒的に強力な Su-35(スホイ35)を大量配備するからだ。日本に勝ち目はない。
  → 中国、ロシアから「最も警戒すべき兵器」Su-35を今年10機導入
 一部抜粋
 ロシアのイタルタス通信によると、ロシアの海外軍事技術協力に詳しい人物はこのほど、ロシアは今年、中国に対しSu-35を10機引き渡す予定だと明らかにした。この人物は「1巡目の4機は昨年末に引き渡されており、2巡目として10機が引き渡される」とし、「残りの10機は18年に引き渡される」としている。




 [ 付記1 ]
 ついでだが、陸上イージスというのも、まったくの無駄だ。なぜか? 敵の飽和攻撃の前には、まったくの無力となるからだ。
 イージスのミサイルは、超高額であるがゆえに、使えるミサイル数はごく限られている。これに対して、北朝鮮が(ダミーを含めて)大量にミサイルを発射したら、イージスのミサイルは完全に無力化する。敵のミサイル数が 10倍だとすれば、1発のイージスミサイルで敵の 10発を撃墜することはできないからだ。
 こんなことは、算数ができる小学生でもわかることなんだが、日本の自衛隊には、それだけの頭がない。数を数えるという能力はなく、単に質の優劣だけで片付くと思っている。
 かくて、まったく無効な陸上イージスをせっせと配備して、その分、戦闘機の配備はないがしろになる。
 馬鹿丸出しとはこのことだ。
( ※ 最新兵器のことばかりを考えている武器オタクなのかな。武器さえ面白ければそれで満足、というタイプ。戦争の勝敗なんか考えないわけだ。「勝つか負けるか」よりも、「面白いかどうか」だけを考えるわけ。)

 [ 付記2 ]
 似た話で、「オスプレイによる離島奪回」という話もある。これもまた無効だ。
 なぜか? オスプレイが離島奪回のために向かっても、敵の戦闘機にあっさり撃墜されてしまうからだ。飛んで火に入る夏の虫。
 オスプレイを使えるのは、敵の戦闘機をすべて撃墜したあとのことだ。つまり、制空権を確保したあとのことだ。
 一方、緒戦でオスプレイを出せば、敵の戦闘機によってあっさり撃墜される。にもかかわらず、「オスプレイによる離島奪回」なんていう方針を立てる自衛隊幹部は、何を考えているんだ? オスプレイに搭乗する多大な自衛隊員をみんな死なせるつもりか? 死ぬことになるとわかっていて、あえて自衛隊員を莫大に死なせるわけだ。狂気の沙汰としか思えない。
 現代のインパール作戦だな。まったく。
  → 自衛隊の離島奪回の演習: Open ブログ



 【 関連項目 】

 → 巡航ミサイルを導入するべきか?: Open ブログ
posted by 管理人 at 22:39| Comment(3) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今回の決定で最も重要な効果は、「日本は本気だ」というシグナルを送ることです。
これで米国が動くようになり、中国も北朝鮮へ影響力を行使するようになります。

第1目的
長期的にはロシアは問題になりません。
中国がこのまま成長拡大路線を続けて脅威になれば、どこかの時点で日米の側につかざるを得ないからです。
中国は艦隊という軍事力は持っていても、有効な同盟国を持たないため海洋支配力を欠いており、日米同盟の前には無力です。

第2目的
(1) なぜか北朝鮮全土の無差別絨毯爆撃を主張する人たちがいますが、そんな悠長なことをしている時間はありません。
もちろん、1発でもミサイルが日本に発射されれば、米軍による大規模な攻撃が始まり、金王朝はジ・エンドです。

(2) 急迫性と均衡性の要件を満たせば、自衛権の行使が可能です。
左翼が主張する無抵抗主義に、日本国民1億2千6百万人と外国人居留者が殉教する義理はありません。

(3) 北朝鮮の弾道ミサイルが在日・在韓米軍若しくはソウル、日本の都市に発射されるときは金王朝が自殺する時です。まず、そういう決断はしない。
そもそも核保有の目的は、金王朝の存続ですからね。

付記1
もはやイージス艦を建造する時間的余裕はありません。
日本の新聞を読んだだけのあなたよりも、自衛官の方が安全保障に関する教養はあると思いますよ。

付記2
中国が制空権を維持できると思ってるんですが?
この地球上に沖縄県を攻め落とせる国は存在しません(米国除く)。
オスプレイには別の使い道があります。
Posted by skier at 2017年12月23日 23:59
> もはやイージス艦を建造する時間的余裕はありません。
> 中国が制空権を維持できると思ってるんですが?

 勝手に自分の妄想を書いて批判しないでください。あなたの藁人形論法。

> 日本の新聞を読んだだけのあなたよりも、自衛官の方が安全保障に関する教養はあると思いますよ。

 いちいち相手委を人格攻撃しないと、コメントを書けないの? 

 あなた、コメントを書くための最低限のネチケットさえ理解できていない。
 あなたの方針は、まず相手を馬鹿だと決めつけて、その上で、自説を論証するために、相手の馬鹿な言説というものを捏造する。
 
 もう来ないでください。


Posted by 管理人 at 2017年12月24日 07:58
> もはやイージス艦を建造する時間的余裕はありません。
> 中国が制空権を維持できると思ってるんですが?

 勝手に自分の妄想を書いて批判しないでください。あなたの藁人形論法。

> 日本の新聞を読んだだけのあなたよりも、自衛官の方が安全保障に関する教養はあると思いますよ。

 いちいち相手委人格攻撃しないと、コメントを書けないの? 

 あなた、コメントを書くための最低限のネチケットさえ理解できていない。
 あなたの方針は、まず相手を愚かだと決めつけて、その上で、自説を論証するために、相手の愚かな言説というものを捏造する。
 
 もう来ないでください。
Posted by 管理人 at 2017年12月24日 07:59
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ