2017年12月16日

◆ 年功給と若年失業率

 年功給よりも職務給にすべきだ、という意見があるが、職務給は若者の失業率を増す。

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 年功給よりも職務給にすべきだ、という意見がある。
 「年功給は、中高年ばかりが報われて、若者は報われない。職務給にして、若者に報いるべきだ」
 というわけ。
 もっともらしい意見なので、若者には賛同者も多いようだ。
 しかし、意外なことに、職務給は若者には厳しい、という指摘がある。職務給は若者の失業率を増す、というのだ。朝日のコラムに掲載された。
 《 (経済気象台)日本は不幸せなのか 》
 働く場所がないことがどれほど不安でつらいことかは、改めて語ることはなかろう。若者の場合、親に寄生するにせよ、福祉に頼るにせよ、普通に健康であるなら、機会があって働かないのは、精神的に不健全であると思わざるを得ない。
 若者を社員(メンバーシップ型)として採用し、さまざまな社内の職務を経験させる日本の方法と、職務(ジョブ型)で採用する欧米とは歴史の成り立ちの違いによる。
 ただ、新卒には、職務経験はないのだから、特にジョブ型が強いフランスやイタリアの若者が仕事にあぶれるのは当然だ。
( → (経済気象台)日本は不幸せなのか:朝日新聞 2017/12/15

 職務給の場合、経験者が優先的に雇用される。そうなると、新卒には職務経験はないので、雇用されない。かくて、職務給を取る諸外国では、若者の失業率が高い。
 一方、日本では、未経験の新卒を安い給料で雇用して、数年間掛けて育成して、使い物になるようにする。ここでは、年功給のおかげで安い給料で採用できるから、新卒の若者も雇用されるわけだ。だから、若者の失業率が低い。
 一方、職務給の諸外国では、新卒の若者も最初から高給をもらえるが、そのかわり、未経験者に最初から高給を払おうとする雇用主はいないから、新卒の若者は職からあぶれる。
 
 結局、高給をほしいと欲張るせいで、何も得られなくなるわけだ。(それが諸外国の制度。)
 何だか、イソップ物語や、舌切り雀みたいな話だな。

 欲張りな経済評論家は、「欲張りはすべてを失う」という教訓を覚えた方がいいだろう。



 [ 付記 ]
 実は、年功給というのは、「年寄りほど得をする」のではなくて、「給料を後払いする」という、一種の先送り制度だ。最初は(ベンチャーが)若者をたくさん採用して、安い給料で会社を運営する。その後、会社が成長したころには、社員も年を食っているが、そのころになってようやく高い給料を払えるようになる。
 こうして、給料の「後払い制度」ができる。成長期の企業にとっては、好都合だろう。
 戦後の敗戦国家だった日本は、国全体が貧しかったが、成長は期待できた。だから、こういう「給料の後払い制度」が有効だったわけだ。
 これを羨む若者も多いかもしれないが、それは欲張りというものだ。今の若者たちは、日本を先進国だと思っているようだが、実は、戦後の日本は、ガレキの山しか残っていない敗戦国だった。東京は焼夷弾で焼き尽くされ、破壊尽くされ、橋も道路もまともに存在しなかった。
 そういうゼロの状態から、国民が努力して、日本を世界の先進国に作り上げた。それは、今の高齢者や、すでに死んでいった世代の人々のおかげなのだ。彼らがものすごい貧困状態で頑張ったおかげで、今日の豊かな社会を享受できる。
 今の若者がいくら貧しいといっても、敗戦直後の世代にとっては「超大金持ち」のような生活を享受できている。今の高齢者が多くの年金を得るとしても、それは一種の「後払い」であるにすぎない。
 そういうのを羨む若者たちは、あまりにも「欲張り」というものだ。「欲張りはすべてを失う」と思った方がいい。かわりに、「社会に貢献しよう」と思って努力する人々の方が、はるかに成功する。
 情けは人のためならず。(これも理解できていない若者が多いらしいが。)

posted by 管理人 at 08:28| Comment(19) | 一般(雑学)4 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
確かに、日本の今は、高齢者や、すでに死んでいった世代の人々によるものです。ただ、盲目的に”おかげ”と礼賛することには違和感を抱きます。”おかげ”である一方、こんな日本にしてしまった”所為”の部分も担ってきたわけですから。
Posted by 作業員 at 2017年12月16日 14:58
> こんな日本にしてしまった”所為”

 それは他人のせい。
 本項が論じているのは、高度成長をなし遂げた時期の話で、それは超高齢者世代のおかげ。
 一方、「こんな日本にしてしまった」のは、もっと後の世代。
  ・ 高度成長期
  ・ 低成長期 (石油ショック以降)
  ・ バブル期
  ・ 長期不況

 「こんな日本にしてしまった」のは、高度成長期よりもずっと後の世代の責任。
 自分たちの責任も理解できないで、先代の責任になすりつけるのが、現代の壮年・中高年世代の精神構造かな。ゆとり世代と重なるかも。

 ──

 ただし、本当は、世代の責任じゃない。
 高度成長をなし遂げたのは、国民が働いたからだが、低成長時代が続いたのは、国民が働かなかったからじゃない。政府が経済政策を間違えたからだ。政治家のせい。
 ここでは、非対称性があるので、混同しないこと。
Posted by 管理人 at 2017年12月16日 20:35
 参考記事

 《 「アラフォー世代は一生貧困を宿命づけられている」クロ現のアラフォークライシス特集にネット阿鼻叫喚 「泣けた」「救いが無くてテレビ消した」 》
  https://news.careerconnection.jp/?p=45495
Posted by 管理人 at 2017年12月16日 20:57
>政府が経済政策を間違えたからだ。
おっしゃる通りだと思います。
付け加えますと、
政治家、官僚などの支配層の方々が、
情報リテラシーを欠いていたということができると思います。
将来のために、種をまくことを怠ってきたということです。
Posted by yomoyamapage at 2017年12月17日 10:17
日本とは労働法など雇用環境が違いますから、単純には比較できないと思います。
例えば米国では、「モノになれ、さもなきゃ放り出すぞ」と言われるように、無能な従業員は簡単に解雇できます。また、キャリアアップの機会には貪欲で、同じ会社に何十年もいるような労働者でもありません。
新卒の学生は自身を売り込むべく、大学での研究をベースにして具体的な提案を示すなどして入社試験に臨みますから、我が国の新卒学生とは根本的に質が異なります。
Posted by skier at 2017年12月17日 21:57
> 大学での研究をベースにして具体的な提案を示す

 ホントかなあ。学生レベルの研究なんて、企業にとっては児戯に等しいと思うんだが。
 新卒に期待するのは、未来の可能性だけであって、現在レベルの能力を重視するとはとうてい思えない。それはヒヨコに対して戦闘能力を期待するようなものだ。
Posted by 管理人 at 2017年12月17日 23:34
ほんとうに何にも知らないんですね。
日本の学生のレベルで考えるからそうなるんですよ。
例えば、「給料は○○○ドルでいい、その代り株をくれ」なんてことを平気で言いますからね。
実際にその提案を採用してコスト削減に成功した企業もあります。
こいつはモノになると思えば、副社長(日本での部長程度にあたる)に抜擢なんてこともあります。
日本の大学のように遊び呆けていても卒業できるなんて甘い教育ではありませんからね。
Posted by skier at 2017年12月18日 00:09
工科系に限定すれば…
学部卒なら日本の大学生の方が海外よりもおおむね優秀。
なぜならまがりなりにも日本の大学生は卒業研究をして未知の対象に対してアタックする経験がありますが、海外の大学では日本のような卒業研究をさせるところはあまりありません。(MITやCalTechでも)

大学院卒でも日本の大学院生の方が海外よりもおおむね優秀ですが、より実業の即戦力という観点でいうと海外の大学院生でしょうね。
即戦力云々という点は産学連携がどれだけ進んでいるか、ということですね。
Posted by とおりがかり at 2017年12月18日 01:09
> 実際にその提案を採用してコスト削減に成功した企業もあります。
> こいつはモノになると思えば、副社長(日本での部長程度にあたる)に抜擢なんてこともあります。

 私は「そういう企業がある」「〜こともある」というような一例の話をしているんじゃなくて、「一般的にどうか」という話をしているんですが。

> 我が国の新卒学生とは根本的に質が異なります。

 ということの真偽を問うている。
 全体の話をしているときに、一例の話を出しても、全体について実証したことにはならない。
 これもまた、日本人には論理力がない、といわれることの一例となるか。(この件は、一例だが。)

 ──

 調べた範囲では……
 米国では学生はどんどん転職する。最初は小さいところに就職して、それからどんどんスキルアップしては、転職する。そうして大手のハイレベルな技術者を目指していく。
 学生が新卒の段階でもともと高い能力をもっているわけではありません。
 たいていは、インターン職で採用されて、そこで十分な実績を上げることが要件らしい。(ただしインターン職といっても、優秀な人向けでは、すごく高給だ。)

 それが一般論。

  http://hiroono.com/ja/2016/03/22/mit-job-hunting/

 参考事例
   http://fushiroyama.hatenablog.com/entry/2017/12/17/225544


 日本との違いで最も大きいのは、学歴が非常に重要だということ。ほとんどは学歴で決まるようだ。この点、採用時の面接(人柄を見る)が最重要である日本とは、まったく違うね。
Posted by 管理人 at 2017年12月18日 07:41
残念ですね。
一例じゃございませんから。
日本では会社が学生(労働者)を不採用(クビ)にしますが、米国では学生(労働者)が会社を不採用(クビ)にするなんてことが普通にありますから。
インターネットよりも対面のネットワークが大切ですね。
Posted by skier at 2017年12月18日 08:28
アメリカは他国と比較してもちょっと特殊だと思います。
ヨーロッパは日本以上に労働者の保護が厚くて、一度雇用したらよほどのことがない限り解雇はできません。
若者の失業率が高いのもそれが原因のひとつかもしれません。
Posted by とおりがかり at 2017年12月18日 13:21
〉今の若者がいくら貧しいといっても、敗戦直後の世代にとっては「超大金持ち」のような生活を享受できている。

それを言ったら、敗戦直後の人たちも、縄文時代とか氷河期に比べればましと言えてしまいますけどね。
その思想は生活保護切り下げにつながる思想なので看過できません。
「生活保護者だって云々」と言えてしまうわけですから。

なので、批判すべきは若者ではなく、そのような政策を行っている政府こそです。

>skierさん

ミクロとマクロをごっちゃにしてはいけません。管理人さんが言ってるのはあくまでもマクロ。あなたが話してるのはミクロ。

>とおりがかりさん

加えて、ヨーロッパは各国政府の生活保護や社会保障が日本より充実しているようですね。
日本の場合、政府の代わりに企業が社会保障を担ってきて、その裏付けは好景気だったわけですが、不景気になって企業がその社会保障をやらなくなって、そして社会制度が充実してない日本ではそのまま転落する事例が増えてるのが今ですね。
Posted by tomo at 2017年12月18日 19:13
管理人さんの言うとおりで、ヨーロッパでは若者の失業率が恐ろしく高いですが、ドイツだけは例外。
そしてこれも管理人さんの言うとおりで、ついこの前まで最低賃金がなく、安く雇用できたのと、職業訓練制度が充実してることにあります。
Posted by RFT at 2017年12月18日 20:48
> それを言ったら、敗戦直後の人たちも、縄文時代とか氷河期に比べればましと言えてしまいますけどね。

 その関係では富のやりとりがありません。
 現代の若者は、「高齢者の年金を削って、おれたちに寄越せ」と言っているんです。理由は「高齢者の方がおれたちよりも豊かな生活をしているから」というもの。
 それに対して、私は「高齢者の方が豊かな生活をしているというのは誤りだ」と指摘している。彼らの若いころと、今の若者の現状とを比較している。
 なお、今の若者が高齢者となったときには、どうか? それも同様で、いずれにしても、若いとき同士で生活水準を比較すればいい。
 一般的には、同じ年齢で比較すれば、後の時代ほど豊かになる。また、若者から高齢者へと、仕送りをするので、若者は常に損をする。ただし自分たちが年を取れば、得をする。
 年金制度というのは、そういうもの。その原理を理解しない人が多いので、私はここで原理を解説しているわけです。「世代間の仕送りだよ」というふうに。
 原始人は、この制度とは関係ありません。

> その思想は生活保護切り下げにつながる思想

 全然関係ないと思いますけど。年金制度と生活保護費の制度とは、無関係。

 ただ、生活保護費の切り下げ自体は、私は妥当だと思う。東京都みたいな都会に暮らす人の生活保護費を下げるのは妥当だ。地方に移住するように推進するべき。
 23区内に暮らすぜいたくを税金でまかなうなんて、「健康で文化的な、最低限の生活」をはるかに上回る。23区内以外で住む人は、生活保護世帯以下の生活しかしていないことになるな。
 これは「生活保護貴族」という言葉で、前に解説したことがある。
  → http://openblog.seesaa.net/article/435851011.html
 
Posted by 管理人 at 2017年12月18日 22:24
隣りの国韓国も年功給なのですが。
20〜30歳代の75%が最低賃金、1日14時間労働の非正規雇用、リタイアは45歳。
労働争議が過激すぎるからか、雇用契約を結んでもらえないそうです(請負?)。
そりゃあの価格で輸出できるわけです。

経済事情、移民流入、労働法規、教育制度など各国が直面している状況は異なりますから、単純には比較できないと思いますよ。
Posted by skier at 2017年12月18日 22:25
 本項のテーマは、国別の比較や対比・優劣ではなくて、年功給と職務給のメリット・デメリットです。
 特に、人々の気づきにくい一面がある、と記している。また、それは私の意見ではなくて、他人の意見。本項は情報の紹介です。
Posted by 管理人 at 2017年12月18日 23:33
> 最初は(ベンチャーが)若者をたくさん採用して、安い給料で会社を運営する。その後、会社が成長したころには、社員も年を食っているが、そのころになってようやく高い給料を払えるようになる。

ベンチャー経営が軌道に乗ると、高給取りは雇い止めにあって、安い労働力に置き換えられます。企画力も開発力もガタ落ちですが、上場で株を売り抜けた経営者だけがウハウハになります。

1980年代だと思いますが、TV番組で孫正義が経営拡大を自慢していた時に、「起業時の労働者は何人残っていますか?」と田原総一朗に突っ込まれて絶句していました。
Posted by 名無しの通りすがり at 2017年12月19日 19:39
 孫正義さんが絶句したのは当然でしょう。起業時の会社と、今のソフトバンクは、まったく別のものですから。質問がナンセンスすぎる。

 比喩:人類の遺伝子に、原核生物の遺伝子はどれだけ残っていますか? 

 あ、失礼。今でなくて、1980年代でしたね。そのころだと、バブル期ですから、誰もが高給を取っていたはず。あるいは、外部に引き抜かれたり、独立したり。

> 高給取りは雇い止めにあって、

 雇い止めって、(有期契約の)契約社員の話ですから、正社員は関係ないでしょう。話がゴッチャになっていますよ。
Posted by 管理人 at 2017年12月19日 22:33
>  孫正義さんが絶句したのは当然でしょう。起業時の会社と、今のソフトバンクは、まったく別のものですから。質問がナンセンスすぎる。

日本ソフトバンク社は、3代目 Japan Soft Bankになったとかいう話ですか?

>  比喩:人類の遺伝子に、原核生物の遺伝子はどれだけ残っていますか? 

孫正義氏は、将来パラサイト・イヴになるミディ・クロリアンだという比喩でしょうか?もうイヴになっているのかな?

>  あ、失礼。今でなくて、1980年代でしたね。そのころだと、バブル期ですから、誰もが高給を取っていたはず。あるいは、外部に引き抜かれたり、独立したり。

バブル期でも、コンピューター関係(当時ITなんていう言葉はなかった)の職業は安月給でハードワークした。四番町のマンション地下で机を並べていたソフトバンク出版部の社員も、1990年代にはOh!PC元編集長を除いてみな辞めてしまいました。Oh!PC元編集長だけは、最初から一人高給取りでした。

> > 高給取りは雇い止めにあって、

>  雇い止めって、(有期契約の)契約社員の話ですから、正社員は関係ないでしょう。話がゴッチャになっていますよ。

1980年代から、コンピューター関係のベンチャー正社員の多くは、プロ野球選手のように1年契約で毎年給与交渉していました。話をごっちゃにしてはいませんよ。
Posted by 名無しの通りすがり at 2017年12月20日 15:54
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