2017年10月20日

◆ 中性子星合体を重力波で検出

 中性子星合体を重力波で検出した、という報道が出た。わかりにくいので、その解説。

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 中性子星合体を重力波で検出した、という報道が出た。そのこと自体はわかやすいが、「中性子星合体で重金属が形成された」という話がわかりにくい。そこで、解説する。

 まず、概要。中性子星合体を重力波で検出した、という報道が出た。
 《 中性子星合体で重力波=米欧装置で初検出−重い元素、生成裏付け 》
 巨星が寿命を迎え超新星爆発を起こした後に残る中性子星が、別の中性子星と合体する際に発生した重力波を初めて検出したと、米国などの国際チームが16日発表した。
 発生場所は南半球で見えるうみへび座の方向に約1億3000万光年離れた銀河「NGC4993」と特定された。さらに、中性子星同士の合体によって金やプラチナなどの鉄より重い元素ができたとの説が、初めて観測で裏付けられた。
 重力波の検出は約 100秒間続いた。直後にはX線よりエネルギーの高いガンマ線の爆発的な放出現象「ガンマ線バースト」が、米フェルミ宇宙望遠鏡などにより観測された。続いて南米などの天文台や衛星が、目で見える光や赤外線、電波、X線で観測し、鉄より重い元素の放出が確認された。
( → 時事ドットコム

 重力波を使って検出した、というのが、今回の発見の意義だ。
 《 「中性子星」合体の現象 重力波で初観測 》
 観測チームのメンバーは「重力波の観測と従来の観測手法を組み合わせることで宇宙で起きる最も激しい現象を観測できた」と述べ、今後、これまで捉えるのが困難だった、宇宙で起きるさまざまな現象の解明が進むことが期待されています。
 国立天文台の田中雅臣助教は「中性子星の合体が直接観測できたのは、歴史的な出来事だ。重力波によって全く新しい天文学が可能になったという印象だ。これまでどのように生成されたのかわかっていなかった金やプラチナ、ウランなどの重い元素が中性子星の合体の過程で合成されるデータが観測されており元素の起源解明に向けてこれから非常におもしろくなっていくと思う」と話していました。
( → NHKニュース

 重力波の観測ができた、というのはわかる。では、それが重金属の形成に結びつくのは、どうしてか? 
 実は、これには、前もって理論的に予測する研究があった。理研の理論研究だ。
 《 金やウランなどの重い元素は中性子星の合体で作られた可能性が高い 》
 共同研究チームは、東京大学などのスーパーコンピューターを用いて、一般相対性理論とニュートリノの影響を考慮した場合の中性子星合体の数値シミュレーションを行いました。その結果、中性子の一部がニュートリノを吸収して陽子に変わるため、中性子の割合が60〜90%程度にまで減少することが分かりました。この数値シミュレーション結果をもとに元素合成の数値計算をしたところ、観測による太陽系の重元素分布とほぼ一致していました。これにより、今まで明らかにされていなかった金やウランなどの鉄より重い元素の起源が中性子星の合体である可能性が高いことが示されました。
 中性子星合体が重力波の発生源であることを確かめる最有力手段として、rプロセスによりつくられた放射性元素の崩壊熱により光り輝く「rプロセス新星」が注目されています。もし重力波源の方向にrプロセス新星が発見されれば、中性子星合体がその発生源であり、さらに金やウランなどの重い元素の起源であることも示す決定的な証拠となります。そのために、共同研究チームは、理研のスーパーコンピュータ「京」を用いて中性子星合体による重元素の合成量を正確に予測するための数値シミュレーションを現在行っています。
( → 理化学研究所

 コンピュータによるシミュレーションで、「中性子星合体による重元素の合成」の過程を推定することが可能となったわけだ。ここで、重力波の発生も予測されるので、逆に、重力波の発生から、「中性子星合体による重元素の合成」が検証できるわけだ。

 そこで、重力波の検出に努めてみたところ、今回、うまく重力波を検出した、というわけだ。かくて新しい天文学的な方法ができたことになる。
 《 中性子星合体の重力波を初観測、貴金属を大量放出 》
 重力波が存在するという証拠が初めて確認されたのは1974年のことだ。しかし実際に重力波を観測するまでには、それから数十年の時がかかった。なぜなら重力波が地球上で生じさせる時空のゆがみは、きわめて微小なものだからだ。
 宇宙におけるこうした恐ろしく小さな動きを感知するために建設されたのが「LIGO(レーザー干渉計重力波天文台)」だ。LIGOに設置された2基の検出器は、レーザーを用いて、重力波が地球を通り抜ける際、一対の鏡の間の距離に生じるごくわずかな変化を感じ取る。
 2016年初頭、LIGOはついに重力波をとらえた。それ以降、LIGOは3度にわたってブラックホールの合体によって生じる重力波を確認し、研究チームを率いてきた科学者たちは今年、ノーベル物理学賞を受賞した。
 しかし、8月17日早朝にもLIGOの検出器は、これまでとは違う何かを感じ取っていた。そこに記録されたデータには、この重力波がブラックホールではなく、死んだ星の合体によって生じたものであることを示す兆候が現れていた。
( → ナショナルジオグラフィック日本版サイト

 こうして調べていったすえ、今回の重力波の検出に結びついた。
 重金属の形成には、大量の中性子が必要だが、「超新星爆発」という説ではうまく説明できなかった。しかし中性子星の合体でなら、もともと中性子がたっぷりあるので、中性子の由来を含めて、うまく説明できるわけだ。
 
 とはいえ、まだ謎がある。中性子星の合体で重金属が形成されるとして、それは中性子星の内部に留まっているはずだ。それがどうして、中性子星の外部に出たのか?
 こうした重い元素を作るには、たくさんの中性子が必要だ。中性子とは原子核を構成する粒子のひとつで、その名前からも想像される通り、中性子星が破壊されたときに大量に放出される。
 今回の爆発を赤外線で観測したところ、放出された破片には少なくとも地球1万個分の貴金属が含まれていることがわかった。これは現在宇宙に存在が確認されている量を満たすのに十分な値だ。
( → ナショナルジオグラフィック日本版サイト

 赤外線で観測したら、「重金属が放出されている」ということがわかったそうだ。それは、「中性子星が破壊された」ことにともなうものだ。
 つまり、中性子星が破壊されて、爆発があって、そのとき重金属が大量に放出された、ということらしい。
 ということは、中性子星の合体にともなって、中性子星が破壊されて、爆発も生じているというわけだ。(このあたり、詳細は不明。)
 理研の解説を見ても、中性子星の合体の詳細までわかったわけではないようだ。まだいろいろとわかっていないこともあるらしい。

 とりあえずは、今回、ネットでわかる範囲内のことを調べて、ここにまとめておいた。情報があちこちに分散されているので、本項を読めば、話を体系的に理解できるだろう。



 【 追記 】
 私の読解が間違っていたようだ。
 上記の記事を読み直したところ、正誤は次の通り。

 (誤)中性子星の衝突の際、中性子星の破壊にともなって、中性子星の爆発が生じている。
 (正)中性子星の衝突の際、中性子星の破壊にともなって、中性子星の破片が飛び出している。

 間違いをお詫びして、修正します。
 なお、詳細はリンク先を参照。再掲すると、下記。
  → 重力波、中性子星の衝突で初観測 貴金属の起源に迫る

 ※ 「破片」という語を検索するといい。



 【 後日記 】
 次の指摘を得た。
 上位ブコメに重金属が飛散しないとあるがそれは違う。連星中性子星が合体→中性子星が破壊→破片が飛散→その中で重金属合成が起こる、が正解。国立天文台の公式プレスリリースを読むべし  http://www.cfca.nao.ac.jp/pr/20171016
( → NORITAのコメント / はてなブックマーク

 上記のリンク先には、こうある。
 2つの中性子星同士が合体すると、強い重力波が放射されるとともに、中性子星の一部が高速で宇宙空間に放り出されると考えられています。
 この放出物には中性子が豊富に含まれるため、速い中性子捕獲反応 「rプロセス」が起こり、鉄よりも重い金やプラチナ、レアアースなどの元素が合成されることが予想されていました。
( → 重力波源からの光のメッセージを読み解く ―重元素の誕生現場,中性子星合体― | CfCA - Center for Computational Astrophysics

 中性子星の破壊と一部放出にともなって、その途上で重金属が合成されるようだ。中性子星の内部で起こるというよりは、中性子星の外側で起こるようだ。



 【 関連動画 】


posted by 管理人 at 07:37| Comment(4) | 物理・天文 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
超超圧力で持ってしないと金ができないのか。
昔の錬金術師もどう頑張っても作れないの納得してくれるかな?

圧力で無理やり縮こまってたものが反発で破裂したかのように飛びだすんじゃない?
ポップコーンみたいにさ
Posted by かーくん at 2017年10月21日 09:47
 超超圧力が必要なのは、金に限らなくて、鉄やマンガンなども同様です。水素やヘリウムから、これらの思い元素を作り出すには、恒星や超新星爆発などが必要。
 ただし、鉄まではそれでできるが、もっと重い重元素は、中性子星が必要となる。

 錬金術の場合は、水素以外に、既存の重元素を利用できる。たとえば、金よりも重い 水銀や鉛やウランを利用できる。
Posted by 管理人 at 2017年10月21日 10:26
 最後のあたりに 【 追記 】 を加筆しました。
 間違いを修正しています。

 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2017年11月14日 22:39
 最後のあたりに 【 後日記 】 を加筆しました。

 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2018年02月09日 20:03
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