2017年09月20日

◆ AI の著作権

 AI の生み出した「作品」にも、著作権を認めるべきだろうか?

 ──

 AI にも著作権を認めるべきか? 
 AI が音楽などを生み出すことができるようになったので、この疑問も発生するようになった。

 AI 自体は人格を持たないので、AI の持主である人間がその著作権を得ることになるらしい。そこで、AI 研究者が「 AI にも著作権を認めよ」(そうすれば俺様が著作権を持ててウハウハだ)という主張が出てきた。

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 新聞でも話題になった。
 著作権法で守られるのは人間の創作物だが、「AIが生んだ作品の著作権はAIを開発した自分たちにあるというのが自然な感情」と沼尾教授。「AIはいわば子供。親である我々が代わりに権利を主張したい」と飛河社長もいう。
 AIが生んだ作品に著作権を与えるべきか。この問いは「AIは人間なのか」という問いに直結する。
( → AIの作品、著作権は? 「5年後にはヒット曲を」:朝日新聞 2017-09-19

 AI の開発者が「自然な感情」というのを持ち出しているが、こんなのは理屈にならない。理屈になるのは、法だけだ。そして、法はこう規定している。
 著作権法では、第2条第1項第1号で著作物についての定義がされており、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」となっています。
 これに該当するものが著作物となるのですが、逆に言うと、この定義に該当しなければ著作物ではありませんので、著作権法では保護されないもの、となります。
 絵や文章など、何かを作ったらどんなものにでも著作権がある、というのは語弊があるということですね。
( → 著作物とは? | 著作権のネタ帳

 AI には、感情はない。疑似的な意味でも、「ロボットの感情」みたいなものはない。なぜなら、肉体がないからだ。肉体がなければ、痛みもない。したがって、痛みと関連する苦しみや悲しみもない。その反対概念としての喜びもない。
 ソフトウェアの構造的にも、感情というものは組み込まれていない。したがって、疑似的な(バーチャルな)感情すらない。AI は感情とは徹底的に無関係である。それゆえ、「思想又は感情を創作的に表現したもの」という定義から外れるので、その創作物は著作物ではない。
 かくて法的には、あっさり結論が出る。

( ※ 人間の感情を表現することが大切なのであって、「著作権をほしい」と思うような感情はどうでもいいのだ。上記の記事中の人は、芸術的感情のかわりに、損得勘定という欲望だけがあるらしい。感情違いだね。感情よりも勘定がある。 (^^); )

 ──

 記事の後半には、次の話もある。
 知財本部の委員会の議論をとりまとめた松村将生(まさお)弁護士は「コンテンツの量は爆発的に増え、人間とAIのどちらの創作か区別ができなくなる」と指摘。その上で「そのすべてを著作権で保護するのは現実的ではない」と話す。
 過去の知財本部の議論では、登録した作品に限り著作権を与える「登録制」が話題になった。作り手やAI開発者が権利保護を希望する作品のみ、手数料などを払って登録すれば著作権を主張できるようにする案だ。
( → 同上 )

 これは妥当だろう。なぜか?
 実は、この件については、私の独自意見もある。それは、以下のことだ。
 「 AI に著作権を認めると、AI がやたらと大量の断片的な著作物を自動生成して、それが人間の創作活動を阻害する」

 このことは、音楽で顕著だ。音楽のメロディーは、かなり限定されているので、ときどき「偶然の一致」とか「よく似たメロディ」とかいうものが発生する。「あらゆるメロディはすでに過去の歴史のなかで生み出されてしまった」なんていう極論を言い出す人もいる始末だ。
 こういう状況で、AI に著作権を認めたら、AI がメロディを次々と大量に自動生成してしまう。そうなると、あとで楽曲を作った人が、AI の著作権に抵触することになってしまう。かくて人間の創作活動が阻害される。
 そうは言っても、AI が本当にまともな創作活動をするのならばいいのだが、AI にはそんな能力はない。単に大量の断片を自動生成するだけだ。断片(2〜4小節ぐらい)ならば、きれいなメロディを生み出すことはできるだろう。しかるに、1曲の長さになると、AI が自動生成したものには、あまり期待できない。たぶん素人の作曲並みだろう。
 AIが大量に自動生成すれば、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるという形で、いくらかはまともな断片もできるだろう。そして、こういうふうに「断片だけは大量にできる」という形で、断片に著作権が認められると、肝心の人間の創作活動が阻害される。それは困る。

 AI に著作権を認めるというのは、特許ゴロ(パテント・トロール)に近いことだ。実際には役立たずであっても、とにかく大量に特許を取得して、他人の特許を妨害することで、金をせしめる。……まあ、こういうことをしたがるのも、「自然な感情だ」と思う人もいるのだろう。しかし、人類全体にとっては、有益なことではない。それはいわば、「人類全体の利益を犠牲にすることで、自分一人の利益を求める」ということに等しい。(市場原理やパレート最適とは、対極の原理。泥棒の原理。)

 ──

 というわけで、「AI にも著作権を認める」というのは、法的にも、経済的にも、社会的にも、いろいろと問題があるとわかる。それらの問題を、本項では示した。



 [ 付記 ]
 ただし、「AI を利用して、人が創作をしたなら、その創作物に著作権を認める」ということは、あってもいいだろう。
 では、その境界をどうするかについては、どうするか?

 記事中にあったように、「著作権に登録料を設ける」というのも一案だ。
 ただ、それで片付くとも思えない。実際、特許ゴロというのは存在するからだ。
 とはいえ、特許ゴロは、特許から得られる金額が巨額であるのに比し、特許の登録料はごく安価であることが原因だ。著作権の場合には、著作権から得られる金額が巨額になることは稀なので、登録料を設けることも、ある程度は有効かもしれない。

 とはいえ、断片としての著作物なんて、実際に発売されたわけでもないので、それがあったと証明することも難しい。もともと認めにくいものだ。
 だったら、最初から、その手のものは排除するように決めておくのもいいかもしれない。
 一方で、現行の法律でも「思考または感情を〜」というふうに規定してあるので、現行の法律で済むとも言える。

 まあ、細かいことは、話が面倒になるので、法律家に任せればいいだろう。
 本項では、基本的な「考え方」について整理した。(独自意見を含む。)



 【 関連サイト 】

 ネット上で情報を探すと、次のような記述が見つかる。
 著作権法は、保護の対象となる「著作物」を「思想または感情を創作的に表現したもの」と定義。
 AIが生んだ音楽や小説などは「著作物」とはいえないため、それを無断複製しても違法にならない、というのが定説。
( → AIの著作権とは - コトバンク

 人工知能に関する技術によりもたらされる各種問題は、あまりに多数であるのみならず、さまざまな分野や方面に及んでおり、しかも一気に噴出してきた感もあるため、政府による検討も手探りの状態で始まったばかりであるが、我々の経済や文化に重大な影響をもたらす問題であるため、社会内における人工知能技術や産業の今後の展開等や世界各国の対処状況等にも配慮しつつ、慎重できめの細かい検討を加えていくことが求められる。
( → 人工知能(AI)による創作物と知的財産権 pdf

 AIが創作した物は誰が権利を持つのか、という点はビジネス的にも法律的にも非常に興味深い論点でして、この点について言及した「知的財産推進計画2016」が、内閣の知的財産戦略本部で昨年5月に決定されました。

  ・ AI創作物に関わる全てのプレーヤーに権利が発生するわけではない
  ・ 全てのAI創作物に権利が発生するのではなく、「登録されたAI創作物」や「流通の結果、周知性や著名性を獲得したAI創作物」に限定して権利が発生する可能性が高い

 何も法律をいじらなかったらAI創作物に権利は発生しない。
( → 人工知能が作った創作物、現行の法律ではどうなる? (1/2) - ITmedia NEWS

posted by 管理人 at 23:07| Comment(2) | コンピュータ_04 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この問題は、そもそも AI=人工知能 とはなんぞや?というところの定義が必要だと思います。
音楽についていえば、現状はほぼほぼ AI -> ソフトウェアの1つ と言えるのではないでしょうか。
そうすると、既に書かれていますが [付記] が現実的な内容になるのかな、と思います。
正当にソフトウェアを使用して作られたものであれば、著作権はそのソフトウェアを使用した人に認められますよね。
これがそのまま適用されて然るべきだと思います。

Posted by K2 at 2017年09月21日 11:09
AIがタンパク質からできた人工細胞を使った生物の脳に近い人工装置から生じているのでもない限り、
そもそもAI自体が心や意識を持つことはありえないことです。
そのことは「中国語の部屋」や「中国脳」の思考実験により明らかです。

↓中国語の部屋
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E8%AA%9E%E3%81%AE%E9%83%A8%E5%B1%8B
↓中国脳
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E8%84%B3

つまり、肉体があるかに関係なく、現行コンピュータのAIには思想も感情もないことは明らかとなり、
法的に著作権はないと容易に結論づけられると思いますね。
Posted by 亜留守 at 2017年10月30日 01:58
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