2017年09月19日

◆ 廃棄食品の福祉利用

 賞味期限切れで廃棄される食品を、福祉に利用する……という一石二鳥のプランが、推進されているという。

 ──

 賞味期限切れ寸前の食品は、廃棄されるはずだが、それを福祉に利用する……という一石二鳥のプランが、10月から東京都文京区で実施されるという。
 区内の児童扶養手当、就学援助を受ける世帯のうち150世帯に、月に1〜2度、段ボール1箱分の食料を届ける「こども宅食」。前例のない支援策という。
 この事業は、文京区、食品会社、運送事業者、NPO、財団などが担い手になる。届け先の情報は区にしかわからないし、費用の一部にはふるさと納税の税収を充てる。食品会社は賞味期限が近くなった飲料などを提供する。運送事業者には本業のノウハウがある。
( → (波聞風問)子どもの貧困対策 企業ノウハウ、未来への投資 多賀谷克彦:朝日新聞 2017-09-19

 このこと自体は良いことだ。ただし、この記事は誤報なので、指摘しておく。

 このようなことは、「前例のない支援策」とは言えない。宅配業者を使うことが「前例のない」と言えるのかもしれないが、それならば、「前例のない配達方式」と言うべきだ。
 支援策自体は、前例はいくらでもある。それは「フードバンク」という名称で知られている。Wikipedia にもある。
 フードバンク(英: Food bank)とは、包装の傷みなどで、品質に問題がないにもかかわらず市場で流通出来なくなった食品を、企業から寄附を受け生活困窮者などに配給する活動およびその活動を行う団体。
 食品メーカーや外食産業などでは、品質には問題がないものの、包装不備などで市場での流通が困難になり、商品価値を失った食品が発生する。従来は廃棄されていたこうした食品の提供を原則として無償で受け、生活困窮者を支援しているNGO・NPO等の市民団体を通じて野外生活者や児童施設入居者などの生活困窮者に供給する。賞味期限切れなど品質に問題のある食品は対象としない。
( → フードバンク - Wikipedia

 賞味期限が切れたあとの食品は除外して、賞味期限が近くなった飲料などを対象とするわけだ。企業としては、どっちにしても大差ない。(どっちみち廃棄するしかない。)

 こういうことは、数年前から日本の各地で広く行われている。Wikipedia の項目(上記)の後半に、実例のリストがいっぱい記してある。

 また、世界ではいっそう広くなされている。Wikipedia によれば、アメリカでは 1960年代から。
 欧州でも広くなされている。その調査は下記。
  → 海外におけるフードバンク活動の実態及び歴史的・社会的背景等に関する調査(pdf)

 フランスでは、法律による措置も取られた。
 《 フランス、スーパーでの食料廃棄を法律で禁止 》
 昨年5月フランスでスーパーマーケットの賞味期限切れ食品の廃棄が法的に禁止されたが、今月5日から実施されることになった。廃棄されるはずだった食品はフードバンク(品質に問題がない食品を生活困窮者などに配給するシステム)などの援助機関に回され、必要とする人々に配られる。これによって、毎年数百万人に無料の食事を提供できるようになるという。
 また、延べ床面積400平方メートルを超える店舗には、売れ残り食品の受け入れを行っている慈善団体との契約を2016年7月までに結ぶことが義務付けられ、これを行わなければ、最高7万5000ユーロ(約975万円)の罰金が科されることになった。人の食用に適さなくなった売れ残り食品については、家畜の餌や堆肥として転用しなければならない。こうした法律は世界初となる。
( → huffingtonpost

 このように、フードバンクというシステムはすでにある。
 記事の結論は、「このような事業に、各企業も貢献せよ」ということだが、それなら、対象は、フードバンクであって、フードバンクの宅配事業ではあるまい。
 だったら、「前例のない支援策」なんて書くべきではない。それは明らかな誤報だ。朝日新聞は訂正すべし。



 【 関連動画 】
 フードバンクの活動は広くなされているので、動画も多い。





 他にもリンク。
  → 私の街のフードバンク〜地域で取り組む貧困対策



 【 関連項目 】

 フードバンクに、私は賛成するか?
 「一石二鳥のうまい案だから賛成する」と思う読者が多いだろうが、私は賛成しない。なぜなら、これは次善の策だからだ。
 「廃棄食品を有効利用する」よりも、「廃棄食品をなくす」ことの方が大事だ。無駄なものをなるべく有効に使うよりは、最初から無駄が発生しないようにするべきだ。私は、その方針を推奨する。
 具体的には、サイト内の各項目で。
  → 廃棄食品  - サイト内検索

 ※ 単純に言えば、「値引き販売や、従業員の利用で、無駄なく使い切ってしまえ」ということ。
 ※ フードバンクも、その一種ではあるが、フードバンクだと、(店によっては)利用しきれずに余ってしまうこともある。また、生鮮食品は、もともと扱えない。……フードバンクという方式には、いろいろと限界があるのだ。
 ※ 「一石二鳥のうまい案だ」なんて思って、鼻高々になる人もいるようだが、本サイトは「それは甘っちょろい」と指摘する。本サイトは厳しいんだよ。 
posted by 管理人 at 22:15| Comment(7) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>最初から無駄が発生しないようにするべきだ。

それは勿論その通りなんですが手詰まり感のようなものを感じています。「値引き販売や、従業員の利用で、無駄なく使い切ってしまえ」で、従業員の利用分はわかりませんが、(販売店基準で)賞味期限が近づき半額表示があっても延々と売れ残っている、廃棄が見えている食品はざらにあります。

生産性向上と高齢化や人口減による需給ギャップが縮小しない限り「廃棄食品をなくす」方向へ向かうのはまだまだ難しいように感じます。
Posted by 作業員 at 2017年09月21日 11:16
> 半額表示があっても延々と売れ残っている、廃棄が見えている食品はざらにあります。

 あることはあるでしょうけど、たいていは売り切れてしまいます。売りきれなかったものは従業員がタダでもらえばいい。99.9%ぐらいはそれで大丈夫。0.1%ぐらいは廃棄されても仕方ない。0.1%があるぞ、と言って こだわっても仕方ない。

 それより、コンビニの値引き禁止のせいで、大量に廃棄される方が、ずっと問題だ。
Posted by 管理人 at 2017年09月21日 12:27
毎日、終日監視しているわけではありませんから実態は知りませんが、半額表示で延々と売れ残っている食品がある日忽然と消失している状況を幾度となく見ています。それが、廃棄なのか従業員が引き取ったのかは不明です。ただ無償譲渡されても困るような食品も並んでいましたからおそらく廃棄されたと推測しています。

>コンビニの値引き禁止のせいで、大量に廃棄される方が、ずっと問題だ。

コンビニの方は確かに問題ですが、これは賞味期限のある食品ではなく、消費期限のある食品が主の話であって、同一には扱えないのでは。

”賞味期限切れで廃棄される食品を、福祉に利用する”
という話からも逸れてしまいます。
Posted by 作業員 at 2017年09月21日 19:26
> 半額表示で延々と売れ残っている食品がある日忽然と消失している

 それは数量管理に失敗している店ですね。私の近辺では、たまに閉店間際に行くと、たいてい売場はほとんど空っぽになっています。少しだけ残っているが。……つまり、半額にして、ほとんど売り切れている。そういうふうに、ちゃんと数量管理している店が多いはずです。さもないと、大量廃棄で、採算が悪化する。

> コンビニの方は確かに問題ですが、これは賞味期限のある食品ではなく、消費期限のある食品

 コンビニなら、賞味期限ですよ。おにぎり、サンドイッチ、恵方巻き、弁当など。
 消費期限のある食品というのは、スーパーには多いが、コンビニには多くないはず。
 この件、本項の最後でも記述しています。
Posted by 管理人 at 2017年09月21日 21:42
>コンビニなら、賞味期限ですよ。おにぎり、サンドイッチ、恵方巻き、弁当など。

賞味期限と消費期限の認識が逆です。まずご確認下さい。

Posted by 作業員 at 2017年09月21日 23:50
> 賞味期限と消費期限の認識が逆

 認識が逆ってことはないんだけど、実際の分類例を正しく理解していませんでした。
 おにぎり、サンドイッチ、恵方巻きなどは、加工食品なので賞味期限かと思ったら、生もので消費期限扱いなんですね。知らなかった。コンビニでもスーパーでも、こういうものを買ったことがないから、例を間違えてしまいました。
 生肉や生魚みたいに菌が残っているのが消費期限かと思ったが、滅菌して保存料がたっぷり入ったコンビニの食品でさえ、消費期限になったいるんだ。ちょっと意外だった。

> ”賞味期限切れで廃棄される食品を、福祉に利用する”という話からも逸れてしまいます。

 この方針を推進しよう、ということではなく、「この方針では問題は解決しないからダメだ」という批判なので、問題ありません。
 生鮮食品はフードバンクでは解決しないから値引き販売すべし、ということだし、話の論理は通っています。
Posted by 管理人 at 2017年09月22日 05:31
消費期限のある食品の余剰をフードバンクで解決することは不可能ですから、値引き販売と数量管理以外方法が思いつきません。で、スーパー、デパート等はまだ効果的に運用されているとみています。

問題はフランチャイズ制が採用されていて、時折本部からの押し付けが問題となているコンビニです。加盟店への押し付け販売、欠品を許さず余剰が出ることを推奨する体質、値引き販売を抑制する圧力、といった営業姿勢が続く限り、廃棄食品が減るはずがありません。これはこれで問題ですが、足の早い食品に関わる話ですから本エントリの主旨から逸れてします。

賞味期限のある食品については
”最初から無駄が発生しないようにするべきだ。”
が理想であるのは勿論です。

ただ、その状態に近づいているとはとても思えません。缶詰、インスタント、レトルト食品等簡単な調理ですぐ食べられる食品の消費はまだ問題が少ないでしょう。ただこれが、削る必要がある鰹節、大豆、黒豆、パン用小麦粉のような調理に手間のかかる材料、馴染のないエスニック料理の調味料とか輸入食品になると長期にワゴンに放置されがちです。これらはフードバンクも引き取りたがらないでしょうし。

そういった部分で賞味期限のある食品に限っても廃棄を減らす施策の手詰まり感を覚えた次第です。
Posted by 作業員 at 2017年09月22日 11:28
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