2017年09月12日

◆ 列車の火災延焼の対策

 小田急で列車の火災延焼があった。これを避けるにはどうするべきだったか? 

 ──

 小田急で列車の火災延焼があった。
 理由は、火災を見た警官が、(列車を停めるよう促されて、)踏切の非常停止ボタンを押したところ、列車の停止した位置が、たまたま火災のあった場所になってしまったからだ。
 小田急によると、「消火活動をするため電車を止めてほしい」と消防から現場で依頼された警察官が、通報から5分後に近くの踏切にある非常停止ボタンを押した。列車に自動的にブレーキがかかる仕組みが作動し、新宿行き上り列車(8両編成)が「たまたま火災現場の目の前に止まった」(小田急)という。
 ジムの入るビルからわずか3メートル。ここで一時とどまっている間に2両目の屋根に延焼した。
 小田急では沿線で火災が起きた場合、「運転士や車掌が覚知したら電車を安全な場所で止める」のが原則だという。今回、運転士は白煙は確認したが、火災とは認識しておらず、踏切事故などで非常停止ボタンが押されたと考えた。安全確認のために電車を降りて初めて火災に気づいたという。
 運転士は手動で非常停止状態を解除し、運転指令に連絡して電車を動かす許可を取った。停止から8分後、火災から遠ざけるために電車を動かし始めたが、直後、現場にいた消防から屋根への延焼を知らされ、約120メートル前進したところで再び停車。乗客を避難させたという。
( → 自動停止し火災に横付け… 小田急延焼、想定外重なる:朝日新聞 2017-09-11

 下記の記事もある。
  → なぜ小田急線は火災の前で停止したのか?

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 「これは仕方ない」という意見もあるが、下手をすると何らかの人的被害も出たかもしれない事例だ。これを教訓として、対策も考えておくべきだろう。






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 そこで私としては、次のように提案しよう。
 「こういうときには、火災に気づいたら、すぐさま列車を動かすべきだ。記事のように、非常停止ボタンを解除したり、運転指令に連絡したりすれば、数分間が余計にかかる。その数分間の間に、列車は燃えてしまう。だから、迅速さを第1にして、ただちに避難するべきだ」


 では、避難するとしたら、どこへ? 
 前方は、非常停止ボタンで踏切が封鎖されているので、前へは進めない。
 ならば、後方に後退するしかない。つまり、一旦停止して、そこが危険だと判明したら、その時点ですぐさま後方へ後退するべきだったのだ。50メートルぐらい。

 このことが、制度的に許容されているかどうかは知らないが、技術的には可能であると思える。
 また、後退する距離がたったの 50メートルぐらいであれば、後続車の追突事故も起こるはずがない。
 だから、このような場合には、「危険地域を脱するために後退する」という基本を確立するといい。
 また、「いちいちお伺いを立てずに、迅速さを最優先する」という方針も確立するといい。

 ──

 実を言うと、今回の延焼は、「安全第一」ということが原因だったとも言える。「安全を第一にして、迅速さを第二にする」という基本方針が、「危機からの脱出」を遅らせてしまったのだ。
 この意味では、危機対策として、今回の火災はきわめて示唆に富む。「急激な危機の到来には、迅速さが大事だ」ということは、広く共有された知識ではないからだ。

 実際、東日本大震災でも、着替えなどでグズグズして、津波に呑み込まれてしまった被災者が多かった。そして、そのことは、あとで教訓として共有されていないようだ。こんなことを警告しているのは、本サイトぐらいであろうか。一部、再掲しよう。
 地震・津波のときには、着替えない方がいい。そのことで迅速な退避が可能となる。

 政府や気象庁は「津波警報を出せば事足れり」と思っている人が多い。しかし津波警報で事が済むわけではない。警報のあとで、人々が実際に行動する必要がある。そして、その行動は、あまりにも遅すぎたのである。
( → 地震・津波のとき着替えるな: Open ブログ

 かくて「安全第一」という方針が、迅速さを過小評価させて、人を安全から遠ざけた(危険に近づけた)わけだ。逆説的だが。



 [ 付記 ]
 実を言うと、列車が停止したとき、運転手は火災に気づいていなかったそうだ。
 電車の運転士は、発生当時、火災と認識せず、踏切の不具合と思って、安全確認をしていたことがわかった。
 運転士は、白い煙に気づいたものの、火災とは認識せず、踏切の不具合と思い、電車から降りて安全確認を行っていた。運転士は、運転再開後、消防士の指摘で火事だと気づいて電車を停車させ、避難誘導したという。
( → 電車停止時 運転士に火災認識なし(フジテレビ系(FNN))

 この事例では、「後方に後退する」という方法も取れなかったようだ。
 とすると、「火災があった」という情報が、運転士にすぐさま伝わらなかったという情報システムの欠陥が、根本原因だった、とも言える。
 小田急電鉄によると、東京消防庁から同社の運輸司令所に火災の一報が入ったのは10日午後4時9分。発生場所を確認していた同11分、警視庁代々木署員が踏切の非常停止ボタンを押し、電車を停止させた。
( → 小田急電鉄で起きた火災は「異例」一歩間違えれば大惨事を招いた恐れも

 4時9分には、運輸司令所に火災の一報が入った。なのに、その情報が、同11分になってさえ、運転士に伝わらなかった。あまりにもひどい。
 迅速な通信システムを構築するべきだろう。たとえば、スマホ画面で危険情報を連絡するとか。
 今はスマホという汎用機器があるのだから、システムの開発はごく安価で済むはずだ。
( ※ パソコンからスマホに連絡するだけでいい。LINE でもいいし。)
( ※ ただし最善は、音声による通知だろう。いちいちスマホを見なくても、耳で聞いて、情報を得る。これが最速だ。)
( ※ ブザーによる通知と、スマホによる文字情報、という組み合わせもいい。)
posted by 管理人 at 23:45| Comment(9) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
簡単に火がつくものが電車に使用されているとは、驚きました。
火は少し電気を通すので、手すりを持っていた人は、ビリビリきたかもしれない.
Posted by senjyu at 2017年09月13日 11:02
日本国内で鉄道の安全は、信号と閉塞システムで一つの完成系となっています。ATS ATCも既存の信号系と矛盾しない形で拡張できました。このバランスを崩したのが、駅と踏切に設置された非常停止ボタンです。
ボタンで即座に列車が停止するため、デッドセクションで停止した電車が再起動でトラブったり、火事場の真横で列車が停止したりするのです。
非常停止ボタンは、列車を止めないと大災害や死者が出るときに限って使うものということを、警察官が知らなかったのが不幸でした。
管理人さんが主張する後退は、従来の信号システムをきっちり守っていても衝突の懸念があります。
もう少し、交通機関の安全確保の仕組みを勉強してください。
Posted by 名無しの通りすがり at 2017年09月14日 19:30
> 衝突の懸念

 それは考慮済み。文中で記述してある。再掲すると:

 「後退する距離がたったの 50メートルぐらいであれば、後続車の追突事故も起こるはずがない。

 50メートルの後退で追突するとしたら、後続車は異常接近していることになる。もともと接近禁止の範囲を超えて、前走車の領域に組み込んでいることになる。ATS システムがぶっ壊れていることになる。
 そういう場合には、この地点で追突が起こるよりは、「ATS システムが壊れたので全列車が危険だ」ということになる。
 その場合には、全電力の遮断が必要でしょう。50メートル後退を心配するより、全電力の遮断を優先するべきです。対処するべきことを間違えてはいけない。心配する箇所を間違えている。
 もう少し、交通機関の安全確保の仕組みを勉強してください。

 p.s.
 一般に、緊急事態において、普段の安全システムを完全に守ろうとすると、かえって危険発生になることがあります。
 例。
 普段は非常階段を使用禁止。
 火災のときにその原則を守ると、非常階段を使えないので、死者が多数発生する。
Posted by 管理人 at 2017年09月14日 22:31
> > 衝突の懸念
>
>  それは考慮済み。文中で記述してある。再掲すると:
>  「後退する距離がたったの 50メートルぐらいであれば、後続車の追突事故も起こるはずがない。
<<以下引用略>>

もう一度書きます。交通機関の安全確保の仕組みを勉強してください。

後退する距離が問題なのではなく、通り過ぎた
閉塞区間に戻るかどうかが問題です。同じ閉塞区間の中であれば、数km戻っても日本では問題ありません。(スイスの登山鉄道では、ひとつの閉塞区間に3列車が同時に侵入するのを見たことがあります)
逆に閉塞区間をまたいで戻ると、10mでも衝突の危険があります。車掌が見張れば良いと言うようなレベルではなく、鉄道の安全確保の大前提を無視するかどうかの話です。

> 一般に、緊急事態において、普段の安全システムを完全に守ろうとすると、かえって危険発生になることがあります。

一般論はこの際不適切でしょう。鉄道の近隣火災からくる2次災害を避けるために、列車衝突の危険を招いて良いのかという話です。
Posted by 名無しの通りすがり at 2017年09月19日 14:35
>  50メートルの後退で追突するとしたら、後続車は異常接近していることになる。もともと接近禁止の範囲を超えて、前走車の領域に組み込んでいることになる。ATS システムがぶっ壊れていることになる。
>  そういう場合には、この地点で追突が起こるよりは、「ATS システムが壊れたので全列車が危険だ」ということになる。

管理人さんは、閉塞区間をまたいで戻ってもATSで衝突回避できると勘違いしているので、「交通機関の安全確保の仕組みを勉強してください」と言っているのです。
Posted by 名無しの通りすがり at 2017年09月20日 07:46
> 閉塞区間をまたいで戻っても

 閉塞区間をまたいで戻れるわけがないでしょうが。ATS が働いているのに。

 仮に、またいで戻ったら、その時点で、後続車は自動的に緊急停止です。
Posted by 管理人 at 2017年09月20日 08:00
> > 閉塞区間をまたいで戻っても
>
>  閉塞区間をまたいで戻れるわけがないでしょうが。

閉塞区間が何なのか、ようやく勉強していただけたようですね。「50mもどればよい」という意見は撤回していただけるのでしょうか。
ちなみに小田急の1車両は約20mなので、50mは2.5両分です。

> ATS が働いているのに。
>
>  仮に、またいで戻ったら、その時点で、後続車は自動的に緊急停止です。

ATSの仕組みについては未だ誤解されているようなので、続けて勉強をおねがいします。
Posted by 名無しの通りすがり at 2017年09月21日 07:53
> 閉塞区間が何なのか、ようやく勉強していただけたようですね。

 私は最初からわかっているが、あなたがわかっていないだけです。だから 「閉塞区間をまたいで戻っても」なんて言っている。

> 「50mもどればよい」という意見は撤回していただけるのでしょうか。

 50メートル戻ることは、たいていは可能です。例外的にできないことが、ごく稀にあるかもしれない、というだけ。
 戻れない場合には戻れない。それだけのこと。本項は特別な例外に付いてまでいちいち言及しません。

> 50mは2.5両分です。

 現在位置から動く距離ではなくて、火災発生現場から遠ざかっている距離だ、とご理解ください。
 ちょっと舌足らずでしたね。記述不足はお詫びします。50メートル戻るという表現は、数字的には良くなかったです。
Posted by 管理人 at 2017年09月21日 08:00
> > 閉塞区間が何なのか、ようやく勉強していただけたようですね。
>
>  私は最初からわかっているが、あなたがわかっていないだけです。だから 「閉塞区間をまたいで戻っても」なんて言っている。

私は最初から「もどってはいけない」と主張していますので、「わかっていない」と指摘される根拠が理解できません。管理人さん自身の主張については、私相手に言い訳する必要はありません。二人のやりとりを読んでいる読者がどう判断するかですね。

> > 「50mもどればよい」という意見は撤回していただけるのでしょうか。
>
>  50メートル戻ることは、たいていは可能です。
> 例外的にできないことが、ごく稀にあるかもしれ> ない、というだけ。
>  戻れない場合には戻れない。それだけのこと。

大勢の人命が関わるメカニズムで、ごく稀のケースを無視してはいけません。「原発が100年に一度の地震に備える必要があるのか?」と政治家が発言した後、1000年に1度の地震で大災害が発生したことはありませんか。

> 本項は特別な例外に付いてまでいちいち言及しません。

交通機関の安全確保は、「特別な例外」についてまで配慮しなければならないのに、管理人さんが理解していないことを白状してしまいましたね。

管理人さんがATSについて勉強した後、どんな記述が追加されるか楽しみに待っております。
Posted by 名無しの通りすがり at 2017年09月21日 22:30
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