2017年09月06日

◆ 新型リーフは成功するか?

 日産の電気自動車の新型リーフは、成功するだろうか?

 ──

 二つの面から考察しよう。

 単純な評価


 単純に評価すると、次の通り。
 (1) 航続距離 …… 400km もあるので、十分だ。
 (2) 出力  …… 出力も大幅に増加したので、十分だ。
 (3) 静粛性 …… 高級車並みの静粛性なので、十分だ。
 (4) 安全性 …… 日産公式によると、自動ブレーキは単眼カメラだけで、ミリ波レーダーはないらしい。これでは、不十分だろう。( → 理由
 (5)価格  …… 旧型より 10万円前後安いので、十分だ。
 (6) 補助金 …… (電池容量に比例して)前よりも増えているらしい。あるいは、補助金の基準が変更されて、前と同程度かも。あるいは、販売台数が多くなりすぎて、年度後半には補助金打ち切りかも。不明。
 (7) スタイル …… 旧型に比べれば、ずっとマシ。特に良くもないが、悪くもない。受容範囲。
 (8) 販売台数 …… メーカーの目標は、旧型(年間5万台)の2倍にあたる年間 10万台。これは十分に達成可能だろう。もっと売れるかも。

 以上をひっくるめて、「いちおう成功」と見なせそうだ。ただし、自動ブレーキだけは、いただけない。

 《 加筆 》

 自動ブレーキについての引用記事。
 良くないのは緊急自動ブレーキがセレナやエクストレイルから進化していないこと。車両に対してのエマージェンシーブレーキは時速80kmが上限となる。……少なくとも法定速度の時速100kmには対応して欲しい。
( → ベストカー

 参考項目。
  → 自動ブレーキの作動速度: Open ブログ

 テスラとの比較


 テスラのモデル3と比べると、評価は一変する。「大差で負け」となる。
 (1) 航続距離 …… 400km もあるというが、米国基準では 240km であり、これはテスラ・モデル3の約 354km に大差で負ける。 ( → 出典
 (2) 出力  …… 出力は大幅に増加したとはいえ、モデル3には大幅に負ける。モデル3の出力は非公表だが、0-100km の発進加速は公表されており、その数値は爆発的だ。重量の差も考えると、モデル3の出力はリーフの2倍近くありそうだ。
 (3) 静粛性 …… これは、リーフもモデル3も、高級車並みの静粛性なので、十分だ。たぶんリーフが小差で負けるだろうが、ガソリン車に比べれば圧勝できるので、気にしなくていい。(レクサスLS をしのぐとも言われる。→ 出典
 (4) 安全性 …… モデル3の自動ブレーキはミリ波レーダーを併用している。( → 出典 ) この点で、日産は大差で負ける。
 (5) 価格  …… リーフの方が 70万円ぐらい安いようだ。だが、そもそもクラスが違う。(モデル3は D クラスで、リーフは C クラスだ。ベンツの E クラスと Cクラスぐらい違う。)車格や装備も、モデル3の方がずっと上なので、70万円を越える差がある。120万円ぐらいの差がある感じだ。お買い得度から言って、モデル3の圧勝だ。(もしかしたら、電池代に大差が付くのかもしれない。モデル3の方が電池代で 50万円ぐらい安くできるのかも。そんな感じだ。)
 (6) 補助金 …… これは、国の制度なので、完全に対等だ。
 (7) スタイル …… 豚みたいなリーフに比べると、ハンサムなモデル3の圧勝だ。ブスと美人ぐらいの差がある。モデル3が新垣結衣なら、新型リーフは(かわいくなった後の)イモトかな。
  → イモト(最近)の画像
 (8) 販売台数 …… リーフは年間 10万台だが、モデル3は年間 50万台。圧倒的な大差が付く。実を言うと、この販売台数こそが、もっとも重要な数値だ。この数値こそが、勝敗を決定的に示す。ここで、5:1 という大差が付くのであれば、「モデル3の完勝」と言える。「リーフの完敗」である。リーフがいくら成功しているように見えても、モデル3の圧倒的な販売台数の前には、すべては吹っ飛んでしまう。

 《 加筆 》
 
 リーフの価格は実際にはもっと高いようだ。なぜなら、最低グレードではナビも付いていないし、標準グレードですら自動運転(プロパイロット)はオプションだ。これらを標準搭載するのは最高グレードだけだ。その価格は 399万円。モデル3よりも高くなってしまう。モデル3に唯一勝てるはずの価格で負けてしまっては、どうしようもない。勝負にならない。

 《 加筆 》
 
 リーフには航続距離の長いタイプも追加販売されるそうだ。これの航続距離が 480km (2割増)とのことだから、5割増のモデル3には大幅に負ける。つまり、この追加タイプだと、航続距離はまだ不足するのに、価格はモデル3を大幅に上回る。ざっと見て、航続距離で2割減で、価格は2割増。これでは完敗だ。

 《 加筆 》
 
 補助金の額は、制度上は対等だが、実際の額は異なる。日本では「航続距離1km あたり 1000円」なので、リーフは 400km で 40万円。モデル3は、(計算すると)58万円だ。その分、モデル3の方がお得である。

 《 加筆 》
 
 家庭用の充電器(200V)の設置費用は 10万円。これは本来、別途支払う必要があるのだが、旧型リーフの場合、日産が負担してくれた、という報告がある。(値引きみたいなものかも。)
  → 《日産リーフ》自宅充電器の工事が完了&費用は。。。
 この点では、日産が少し有利かもしれない。(ただし新型リーフで値引きがあるかどうかは不明。)

 大逆転


 公表された数値を見る限りは、モデル3の圧勝である。
 では、現実にそうなるのか? 実は、それがどうも、あやふやである。というか、現実を見ると、モデル3の成功はおぼつかない感じだ。
 なぜか? 次の二つの点がある。

 (1) 生産の信頼性

 テスラには生産の信頼性がない。年産 50万台(毎週1万台)を公約しているが、その数字が達成できる保証はまったくない。
 一般に、生産というものは、少しずつ増やすものだ。なのにテスラは一挙に大幅に増やそうとする。計画はいいが、物事は計画通りに進むとは限らないものだ。
 8月の生産台数は100台、9月は1500台、12月までには月2万台のペースになると想定している。6カ月の合計生産ペースはこれまでの2倍余り、来年末までには4倍になると見込む強気スケジュールだ。
( → テスラ、「モデル3」生産開始−記念すべき1号車オーナーはマスク氏 - Bloomberg

 8月の生産台数はたったの 100台だというのに、このあと短期間で年産 50万台というのは、あまりにも急激すぎる。
 このような急激な増加には、信頼性がない。

 (2) 電池生産の問題
 モデル3の電池をまかなうために、新たに電池工場(ギガファクトリー)を建設したが、これで電池が足りるという保証がない。
 ギガファクトリーにおけるリチウムイオン バッテリーセルの生産量は、2018年までに年間35 GWhに達します。これはギガファクトリーを除く全世界で生産されるバッテリーの総量とほぼ同量です。
( → テスラ公式

 これほどにも大量の電池を、いきなり生産開始できるのか? とうてい、おぼつかない。
 実際、最近でも例があった。
 2017年第2四半期の販売(納車)台数は、2万2000台以上。前年同期に対して、53%増と大幅な増加となった。それでも、第1四半期(1〜3月)の2万5000台以上には届いていない。テスラによると、新しいラインで生産される新開発の蓄電容量100kWhのバッテリーパックが、不足したためだという。
( → レスポンス(Response.jp)

 ほらほら。バッテリー不足が早くも発生している。今後もそうならないという保証はない。

 しかも、である。ここでは、懸念するべき点が二つある。
  ・ 生産設備における不調
  ・ リチウムの不足

 前者は、すでに述べた車体生産の場合と同様だ。
 後者は、説明を要する。
 電池の生産には、機械設備のほかに、原材料のリチウムが必要だ。だが、リチウムは稀少資源であり、いくらでも増産可能というわけではない。近年は、IT機器でリチウムイオン電池が普及しており、リチウムの需要が急増している。そのせいでリチウム不足が生じて、価格は3倍に高騰している。
  → リチウム電池、供給不足に 新エネ車好況 原材料価格、前年の3倍
 これは去年の記事だが、最近ではもっと逼迫していそうだ。
 さらに、次のことが続く。
  ・ テスラの需要増加だけで、前年の世界の全需要と同等。
  ・ さらに、日産の需要増加と、IT機器の需要増加が加わる。

 以上をあわせて、リチウムの年間需要は3倍ぐらいに増えそうだ。それでいて、リチウムの生産は、それほど増えない。(たぶんほとんど増えない。)……となると、リチウムの供給不足により、リチウムイオン電池の生産も不可能となる。

 以上をまとめれば、こうなる。
 「テスラ・モデル3の年産 50万台という数字は、絵に描いた餅にすぎない。とうてい、そんな生産台数は不可能だ」


 ここから、次の懸念が生じる。
 「下手をすると、工場設備だけは 50万台にしたあとで、リチウム不足に直面して、大半の設備が遊休する。かくて、莫大な赤字が発生して、テスラは倒産する」


 実際にそうなるかどうかは不明だ。とはいえ、テスラの描いた甘い夢が、およそ実現の可能性の少ない夢だということは、理解しておいた方がいい。

 テスラ・モデル3は、たしかに技術的には素晴らしいのだが、生産の面では、あまりにも博打を打ちすぎているのだ。
 販売前に予約金を受け取るという方式も、資金不足を補うためのようだが、いくら人気があっても、決算で赤字を出しているような会社は、あまりにも経営的に危ないのである。
  → 米EVテスラが赤字拡大、売上高は2.2倍 第2四半期決算

( ※ 規模が急拡大しているから、赤字は当然かもしれないが、健全な経営からは程遠いと言える。)

 ──

 まとめ。

 新型リーフは、堅実に成功するだろう。
 テスラモデル3は、圧倒的な大成功を狙っているが、きわめてあやふやである。技術的には優れているが、生産面が不安だ。
 


 [ 補足 ]
 リチウムは稀少資源である、という点について。
 リチウムは、軽い元素であり、量自体は地球上にふんだんに存在する。しかしその大部分はまばらに存在していて、純度が低い。
 現実的なコストでリチウムを採集するには、ウユニ塩湖のような塩湖(つまり海水を濃縮したもの)に含まれるリチウムを精製するしかない。そして、塩湖というものは存在量が限られているから、そこから得られるリチウムも限られている。
 この問題を解決するには、海水中のリチウムを低コストで採集する新技術を用いることだ。それは開発中だが、まだ実用化の段階にはない。しかも、それが実現したころには、もはやリチウム電池の時代は去ってしまうかもしれない。(固体電池やキャパシタの時代になるかも。)
 ともあれ、テスラの見込んでいる1〜2年後では、リチウム生産量が大幅に増大する見込みはない。なのにテスラは電池の生産量を3倍まで伸ばすことを見込んでいる。そんなの、ありえなーい。



 [ 付記 ]
 「電池の劣化」を心配する人も多いようだが、この点は、あまり問題視しなくていいようだ。
 なるほど、7年ほど前の初期リーフでは、電池の劣化がひどかった。しかしその後、劣化については、急激に技術が改善した。

 特に、テスラにおいては、電池の劣化の問題は完全に解決したようだ。これ以上の工場が必要ないほど、十分な耐久性がある。
  → Tesla、バッテリー寿命を20年以上とすることに成功か

 日産はどうかというと、これほど良くはなっていないようだが、近いうちにテスラと同程度にはなるだろう。たとえば、他社技術だが、次の技術もある。
  → リチウム電池の寿命が12倍向上。安永が正極板で新技術を確立
 日産は、電池を自社生産せず、他社から購入することにした。当面は、従来通りの会社(元は自社の子会社)から購入するのだが、将来は、他社から購入するかもしれない。劣化のない製品や技術を導入することも可能だろうから、世界レベルで大きく劣ることはないはずだ。つまり、日産のリーフの電池も、近いうちにテスラ並みになる。というか、すでに、テスラに近いレベルにあるはずだ。あまり心配しなくていい。昔とは事情は大きく変わっている。
( ※ 新型リーフは、電池の容量が大幅に増加したが、これは、寿命もまた同様の性能向上があったはずだ、と推定できる。リチウムイオン電池の技術向上はめざましい。)

 《 加筆 》

 あとで気づいたが、耐久性についてはメーカー保証が付いている。
 「8年160,000km」保証。
 * 本保証は、「40kWh駆動用バッテリー搭載車」の場合。正常な使用条件下において新車登録から8年間または160,000kmまでのどちらか早い方において、アドバンスドドライブアシストディスプレイのリチウムイオンバッテリー容量計が9セグメントを割り込んだ(=8セグメントになった)場合に、修理や部品交換を行い9セグメント以上へ復帰することを保証しています。
( → メーカーサイト



 【 関連項目 】

 前回記事はこれ。
  → テスラと日産の新型 EV



 【 関連動画 】












 【 追記 】
 日産の旧型リーフは、価格が暴落している。だから、旧型リーフは、お買い得だと言える。
 価格が下がっても性能が悪ければ無意味だが、ユーザーの評価を聞くと、旧型リーフの性能は、(一般の自動車に比べて)はるかに優れているそうだ。特に、加速・静粛性・燃費の三点で、非常に優れているそうだ。
 下記にユーザー評がある。
  → http://www.carsensor.net/catalog/nissan/leaf/review/000116077/
  → http://www.carsensor.net/catalog/nissan/leaf/review/

 ただし、航続距離の点だけは、不十分だ。逆に言えば、この問題があるからこそ、高性能の車が格安で買える。
 したがって、「街乗り専用」と割り切れば、中古のリーフは非常にお買い得だと言える。
( ※ 高速道路を使う長距離移動のときは、レンタカーを借りればいい。)

 ついでだが、過疎地では、「ガソリンスタンドが閉鎖される」という問題が生じている。こういう地域では、リーフのような電気自動車が有力な選択肢となる。なぜなら、家庭で充電すれば済むからだ。
 電気自動車にとって、ガソリンスタンドはもともと不要なのである。このことゆえ、過疎地では、電気自動車が主力となっていくだろう。

posted by 管理人 at 19:33| Comment(6) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に動画を追加しました。(三つ目の動画。)
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2017年09月07日 22:08
 面白い意見があったので転載する。日産ディーラーで充電する間に買い物する、という話。

 ──

 都会に行くと、駐車場代が非常に高いところでもリーフを充電している間に用事を済ませることが出来るので、駐車場代が浮き、充電も出来、日産でジュースも貰えるという一石三鳥も経験することが出来ます。
 → http://review.kakaku.com/review/K0000099959/#tab
Posted by 管理人 at 2017年09月08日 05:37
 テスラの生産には問題があるそうだ。
 塗装が不十分だったり、Aピラーに亀裂が入っていたり。下記に英文記事がある。( Google 翻訳も見つかる。)
  http://j.mp/2eU9SwD
  http://j.mp/2gShn4i
Posted by 管理人 at 2017年09月09日 21:52
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2017年09月09日 22:01
旧型リーフは街乗りだといいでしょうね。ノートから導入されたワンペダル機能はないのでエンブレを使いたい方には不満があるでしょう。
Posted by 京都の人 at 2017年09月10日 16:06
 本項では「テスラは高性能だが、生産に問題があるので、生産が実現しそうにない」という趣旨で述べた。
 この予想がまさしくドンピシャリで当たった。10月3日の日経で、そのことが報道された。以下、転載。

 ──

 テスラが2日公表した7〜9月期の電気自動車(EV)の生産・出荷状況で、量産型の新車種「モデル3」の生産立ち上げが難航していることが明らかになった。生産は260台で、計画していた1500台の2割以下のペースだった。
 テスラは「生産停滞を解決する道は見えており、モデル3の生産や部品調達に深刻な問題はない」とのコメントを出した。だが、取引のある部品メーカーなど関係者によれば、蓄電池などの生産が軌道に乗っていないほか、部品や車体のコスト引き下げも想定通りにいかないなど問題が山積している。

 ──

 → https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21817340T01C17A0EAF000/
Posted by 管理人 at 2017年10月04日 00:11
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