2017年08月26日

◆ タリウム少女の謎

 優秀な女子高校生が、殺人をしたり、タリウムを飲ませて失明させたり、……という事件があったが、そのわけは?

 ──

 この事件は異常な凶悪犯罪だった。
  ・ 斧で殴ってから絞殺した。
  ・ その前に同級生にタリウムを飲ませた。(中学・高校)
  ・ 放火事件。


 これをやったのが未成年の女子高校生というだけでも不思議だったが、この女子高校生がとても成績優秀であったということも不思議だった。
 あまりにも不思議なので、「どうしてなのだろう? 謎だ」と思っていた。

 ──

 今回、その判決が出て、いろいろと報道されたが、精神障害が理由だったようだ。
 《 <タリウム事件>精神鑑定 2医師分かれる 》
 第16回公判が22日、名古屋地裁で開かれ、精神鑑定をした医師2人が出廷した。犯行に与えた精神障害の程度について、検察側の医師は「重症ではない」、弁護側の医師は「重症」と真っ向から対立する見解を示した。
 2人は検察側が依頼した男性医師と、名古屋家裁・地裁が鑑定を依頼し、その結果を踏まえて弁護側が証人尋問を請求した男性医師。起訴前後に1回ずつそれぞれ2回の精神鑑定を実施した。
 2人はともに元名大生が発達障害と双極性障害(そううつ病)を抱えていると指摘。他人に共感できず、「死」や「人体の変化」に対する偏った興味が各犯行に結び付いた−との認識で一致したが、障害が与えた影響の度合いについて意見が分かれた。
 検察側の医師は「発達障害は重篤ではなく、そう状態は軽度。犯行に与えた影響は限定的で、自由な意思に基づく行動だった」と指摘。「犯行は計画的で、犯罪行為の影響や結果を認識していた」と強調し、逮捕後も殺人欲求を示すなど「他人に害を与える恐れは存在している」と述べた。
 弁護側の医師は「障害は重度で、善悪の判断基準がない」と指摘。気分の波を表したグラフを示し「犯行時は重度のそう状態で抑止力が効かず、突き抜けるように行動していた」と説明した。投薬などで治療効果があったとして「早急に専門治療を開始すべきだ」と結論付けた。
 2人はともに「発達障害は先天性のものであり、家庭での育て方の問題ではない」との認識を示した。元名大生の責任能力は最大の争点。検察側は「完全にあった」と主張し、弁護側は「なかった」と反論している。
( →  河北新報オンラインニュース

 責任能力がないのは、重度の統合失調症などだが、今回はそうではない。発達障害や、双極性障害(そううつ病)だと認定された。
 この場合には、判断力の有無にはあまり影響しないから、「責任能力あり」という判決が出たのは、法的には妥当だろう。

 ただ、発達障害や、双極性障害(そううつ病)は、犯罪を起こす気質を説明する。自分でもどうしようもないような殺人衝動が湧いたということは、それなりに理解できる。ひとことで言えば、「犯罪者気質であった」ということだ。脳が壊れたせいで異常性格になった、とも言える。
 要するに、普通の人間が残酷なことをしたのではない。判断力も十分にある、まともな人間であり、責任能力もある。とはいえ、自分のなかに異常性格の要素をもっていて、それを自分でも扱いかねていたのだ。

 こういう人間は、社会的には隔離するのが妥当だろう。その意味で、長期の懲役刑はやむを得ない。
 とはいえ、本人でもそれを扱いかねていた、という点では、同情の余地はある。精神医療で何とかならなかったのだろうか、という残念な思いもある。



 [ 付記1 ]
 双極性障害について、Wikipedia で調べた範囲では、こうだ。
  ・ 原因は不明。親から遺伝する遺伝病ではない。
  ・ 生活習慣やストレスが影響する。
  ・ 気分安定剤という薬物が有効。
  ・ 薬物で症状だけは治まるが、根治はしない。


 この少女も、うまく薬を飲んでいれば、これほどひどい事件を起こさずに済んだかもしれない。

 [ 付記2 ]
 原因については、次の情報を得た。
  → 双極性障害(躁うつ病)にデノボ点変異が関与 | 理化学研究所

 一部抜粋しよう。(精子・卵子の遺伝子エラーが原因だ、という趣旨。)
通常、子のゲノムは、精子に含まれる父親のゲノムの半分と卵子に含まれる母親のゲノムの半分を受け継ぎます。ところが、精子、卵子が作られる際にエラーが生じて、子のゲノムに両親が持たない変異が生じる場合があります。これを「デノボ変異」と呼んでおり、ヒトは平均して、ゲノムのうちタンパク質をコードしている部分である全エクソンに1個弱のデノボ変異を持っています。また、デノボ変異は父親が高齢になるほど増えることや、「自閉症スペクトラム症」や統合失調症では“タンパク質配列を変化させるデノボ変異”のなかでもタンパク質の機能を失わせる“機能喪失変異”が多いことが明らかになっています。

理研の研究者を中心とする共同研究グループは、双極性障害患者とその両親のトリオ79組において、全エクソン(ゲノムのうちタンパク質をコードしている部分)の塩基配列を解読し、その特徴について調べました。その結果、一般人口ではタンパク質配列を変化させるデノボ変異がほとんど起きない遺伝子に、双極性障害患者では、タンパク質配列を変化させるデノボ変異、タンパク質機能を喪失させるデノボ変異が多いことが分かりました(図参照)。


posted by 管理人 at 17:20| Comment(2) | 一般(雑学)4 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に [ 付記2 ] を加筆しました。
 精子・卵子の遺伝子エラーが原因だ、という話。

 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2017年08月27日 06:04
>発達障害や、双極性障害(そううつ病)は、犯罪を起こす気質を説明する。

”発達障害”とひと括りにまとめられないほど様々なタイプがあったかと。単に”定型ではない”ことを意味するに過ぎないはずです。犯罪を起こす発達障害とはどのような特性なのか気になるところです。或いは双極性障害との相乗の結果なのか。

この辺り、高校卒業まで本人のそういった特性に周囲は全く気づかなかったのか、気づいていたが何もできなかったのか、不明な部分が多すぎます。(気づかなかったから程度が軽度という意図はありません)

大学進学で一人暮らし等環境が変わって発症というか特性がより顕著になった、という可能性もありますし。

>「自閉症スペクトラム症」や統合失調症では“タンパク質配列を変化させるデノボ変異”のなかでもタンパク質の機能を失わせる“機能喪失変異”が多いことが明らかになっています。

>双極性障害患者では、タンパク質配列を変化させるデノボ変異、タンパク質機能を喪失させるデノボ変異が多いことが分かりました

自閉症スペクトラム症、統合失調症、双極性障害をもつ(=デノボ変異が多い)人の子はやはりこれらを発症する、即ち、”遺伝性がある”という見方になりつつあるのでしょうか。
Posted by 作業員 at 2017年08月27日 09:46
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