2017年08月12日

◆ 北朝鮮のグアム攻撃を阻止するな

 北朝鮮がグアムを攻撃した場合に、日本はこれを迎撃ミサイルで阻止するべきではない。

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 北朝鮮がグアムを攻撃した場合に、日本はこれを迎撃ミサイルで阻止するべきだ……という見解がある。防衛相がその可能性を示唆した。
 《 武力行使の可能性、異例の示唆 防衛相 》
 小野寺五典防衛相は10日、米軍基地のあるグアムが攻撃された場合、集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」にあたりうる、との考えを示した。米朝間の緊張が高まる中、一般論としつつも、自衛隊の参戦の可能性を示唆したのは異例で、専門家からは「拡大解釈」との懸念の声もあがる。
( → 朝日新聞 2017-08-10

 その後、「日本に墜落した場合」に限定して、迎撃ミサイルを発射する方針を示した。
 《 PAC3、広島など4県に展開へ 》
  北朝鮮による米領グアム島周辺への弾道ミサイル発射計画を受けて、防衛省は 11日夜、ミサイルを迎撃する航空自衛隊の地対空誘導弾「PAC3」を広島、島根、高知、愛媛各県に展開する準備を始めた。
 ミサイルが発射された場合、各県上空を通過するとみられ、同省は、ミサイルや破片が領土に落下するなどの万が一の事態に備える。
( → 読売新聞 2017-08-12

 後者は問題ない。日本に墜落したミサイルを撃破したとしても、防衛権の行使であり、誰も文句は言わないだろう。
 問題は、前者だ。グアムを防衛するために、日本が勝手に参戦することは妥当なのか? 政府は「集団的自衛権の行使」と言っているが、それで済むのか?
 問題をいくつか挙げよう。

 法的な問題


 法的には「集団的自衛権は合憲か?」という問題がある。国際法上は認められるが、日本の憲法9条では認められない……という意見が長年の通説だった。
 その後、安倍首相がこれをひっくり返した。私はそのことを批判した。(法的論理で)
  → 9条改憲の目的は?: Open ブログ

 法的な問題については、上記項目に任せる。本項では、特に論じないでおこう。

 軍事的な問題


 いっそう重要なのは、軍事的な問題だ。いくつかの問題がある。

 (1) 効果

 決定的に重要なのは、「迎撃ミサイルは無効だ」ということだ。北朝鮮が多数のミサイルを同時発射する飽和攻撃をすれば、迎撃ミサイルは無効化する。
 迎撃態勢への懸念は数的な面でも指摘されている。9月5日のノドンとみられる弾道ミサイルは、同時に発射された3発が日本海上のほぼ同地点に落下した。日本側の対処能力を超える大量の弾道ミサイルを発射する「飽和攻撃」を思わせる撃ち方だった。「3発なら撃ち落とせるが、それ以上連発されると不可能」と、別の自民党関係者は指摘する。
( → ロイター | 東洋経済オンライン

 北朝鮮は攻撃の際に大量のミサイルを同時発射するに決まっているので、日本の迎撃ミサイルは明らかに無効化する。

 (2) 規模

 仮に日本の迎撃ミサイルが「百発百中」だとしても、それでも日本の迎撃ミサイルは(全体としては)ほとんど無効化する。なぜなら、「撃墜漏れ」が大量に発生するからだ。これは、飽和攻撃の原理からも明らかだ。
 実際にどのくらいかを数字で示すと、こうだ。
 軍事情報を分析するIHSジェーンによると、北朝鮮は700─1000発の弾道ミサイルを保有し、うち日本のほぼ全域を射程に収めるノドンは45%。
 一方の自衛隊はSM3搭載イージス艦を4隻しか保有していない。複数の関係者によると、現在2隻が点検中のため、残り2隻を交代で弾道ミサイルの警戒任務に当てている。1隻が搭載するSM3は8発に過ぎない。
 自衛隊は弾道ミサイル防衛能力を備えたイージス艦について、現在の中期防衛力整備計画(中期防)が終わる2018年度に8隻まで増やす計画。それでも訓練や保守、他の任務を考慮すると、常時2─3隻程度しか展開できない。
( → ロイター | 東洋経済オンライン

 1隻に8発で、2〜3隻なら 16〜24発。北朝鮮のミサイルは700〜1000発。数字では
   16〜24 <<< 700〜1000

 であるから、ほとんどのミサイルに対処できない。飽和攻撃を受けたら、ひとたまりもない。迎撃ミサイル(SM3)が少しぐらいあってもなくても、大勢にはまったく影響しない。

 結論としては、こうだ。
 「北朝鮮の大量のミサイルという物量作戦の前には、日本が少数の迎撃ミサイル(SM3)で対処しても、まったく効果がない。戦艦大和1隻で、大量の米軍戦力に対抗するのも同然だ。馬鹿丸出し」
 思えば、第二次大戦中の日本軍も、「戦力の圧倒的な大差がある」という状況を理解できずに、無謀な戦いをして、莫大な犠牲を出した。その愚かな日本軍を、今の人々は笑う。しかし、自分自身が、それと同じことをやっている。
 「北朝鮮の圧倒的なミサイルの物量の前には、日本のごく少数の迎撃ミサイルなど、ひとたまりもない」
 という事実を、まったく理解できないのだ。「戦力の圧倒的な格差」を認識できずに、「日本は北朝鮮に対抗できるぞ。同じぐらいの戦力があるぞ」と自惚れているわけだ。馬鹿丸出し。

 (3) 弾切れ

 戦力に圧倒的な差があるのは仕方ないが、それでも「最善の方法を取る」という道もある。ところが、それと逆のことをするのが、「グアム防衛」だ。
 もともと虎の子の迎撃ミサイルなのだ。(イージス艦から使えるのは 16〜24発だ。)なのに、日本を守るために使わず、グアムを守るために使ったら、あとで日本を守るための迎撃ミサイルがなくなってしまう。つまり、弾切れだ。
 とすれば、グアム防衛なんかのために、虎の子の迎撃ミサイルを使うのは、自らの武器を捨てるのも同然と言える愚行だろう。

 比喩。
 自分はピストルを保有しているとする。弾丸は5発装填だ。敵が威嚇射撃して、そのたびに自分は応戦する。やがて、5発を撃ち尽くす。そこへ敵が来る。こちらは弾切れなので、売っても空砲だ。一方、敵は4発を売っただけであり、1発を残している。その1発を額に受けて、自分は死ぬ。

 一般に、銃を撃つときには、敵と自分の弾数を計算するべきだ。応戦中は、常に弾数を計算する。相手が5発の銃で、5発を撃ち尽くしたとわかったら、相手はもう撃てないとわかる。
 だから、プロならばきちんと弾数を計算する。なのに、それができないのが素人だ。
 そして、今の日本の軍事マニアは、素人も同然だ。迎撃ミサイルの弾数を数えられないからだ。もともとこちらの弾数が圧倒的に少ないということも理解しないで、グアムなんかを守るために迎撃ミサイルを撃ち尽くしてしまおうとする。そうなったら、あとは、東京や原発にミサイルを食らう羽目になる。
 馬鹿丸出し。

 (4) 基地の重要性

 そもそも基地の重要性を考えるべきだ。
 グアムというのは、米国にとっては前線であり、たとえ奪われても、米国本土にはほとんど影響しない。人口だって、比較的少ない。
 一方、日本にとって東京その他の各地は、日本の本土であって、圧倒的に重要だ。人口だって莫大だ。何千万人もいる。
 とすれば、日本政府がやることは、「前線のグアムを守るために、本土である日本を危険にさらす」ということだ。軍事的には、馬鹿丸出しと言える。
 もっとひどいのは、「グアムは日本の領土ではない」ということだ。日本以外の国の前線基地(それもごくちっぽけなもの)を守るために、日本自体の何千万人もの生命を危険にさらす。……これはもう、バカというだけでは済まないな。売国奴と言える。
 たかがグアムなんかを守るために、もともと日本を守るための虎の子の迎撃ミサイルを浪費しよう(日本を弾切れにしよう)なんて考えている奴は、売国奴も同然だ。北朝鮮の工作員も同然だ。

 (5) 反撃の根拠

 実を言うと、北朝鮮のグアム攻撃は、やらせた方がいい。途中で撃墜なんかしないで、見事に攻撃を成功させた方がいい。なぜか? それによって小さな被害を受けるが、かわりに、北朝鮮の全体を攻撃できるからだ。
 仮に、途中ですべて撃墜したら、米国の被害はない。何も被害を受けていないのだから、北朝鮮の攻撃意図を証明できない。とすれば、反撃もできない。
 むしろ、北朝鮮のグアム攻撃を、やらせた方がいい。その上で、「被害を受けたので、反撃する」というふうにして、北朝鮮全土に反撃すればいい。通常戦力では、米軍が圧倒的なので、1週間ぐらいで北朝鮮全土を制圧できる。その結果を選ぶべきだ。そのために、グアムで少しばかりの被害が出ることは、仕方がない。あえて受け入れるべきだ。
( ※ それがイヤだと思うような、グアム居住者は、さっさと引っ越せばいい。)

 (6) 本質

 先に「北朝鮮のミサイル能力は圧倒的で、日本の迎撃ミサイルはまったく対応できない」と述べた。
 これを読んで、不思議に思う人も多いだろう。
 「世界最貧国の北朝鮮が、世界有数の先進国である日本に、どうして圧倒的に優位でいられるのか?」
 と。そう思うのも不思議ではない。
 しかしこれは、国力の差ではなく、次の差による。
 「そもそも迎撃ミサイルというのは、もともと無効な兵器である。莫大な金がかかる割には、相手の飽和攻撃に対して、あっさり無力になる」
 つまり、「日本の迎撃ミサイルだけが無力」なのではなく、「迎撃ミサイルそのものが無力」なのである。こんなものに1兆数千億円もかけた日本がバカなだけだ。
 似たことは、オスプレイにも言える。F-35 と同程度の莫大な金をかけて導入しつつあるが、オスプレイなんてものは、中国の戦闘機と対抗したら、あっさり撃墜される。
  → オスプレイ導入の愚: Open ブログ
 それゆえオスプレイは、実際の戦争中には、ほとんど活躍する場面がない。せいぜい、戦争の終了後か、災害救助目的で、いくらか役に立つという程度だろう。その場合も、同じ価格で多数のヘリコプターを使った場合と比較すると、圧倒的にコスパで劣るだろう。

 オスプレイというのは、軍事的には「金をドブに捨てる」ようなものであるにすぎない。(ほんの少しは効果はあるが。)
 迎撃ミサイルも同様だ。軍事的には「金をドブに捨てる」ようなものであるにすぎない。(ほんの少しは効果はあるが。)
 というわけで、日本の迎撃ミサイルが、北朝鮮のミサイルの飽和攻撃の前では、まったく無効化するのは、ごく当たり前のことなのである。
 しかも、それは最初から警告されていた。
  → 迎撃ミサイルは有効か?: Open ブログ(2012年04月16日)
  → ニュースと感想  (3月28日)「飽和攻撃」  ( 2009年 )

 そういう警告を理解しないで、「迎撃ミサイルで北朝鮮のミサイルを撃墜しよう」なんて考えていた人々が、軍事的に無知だっただけだ。

 では、正しくは? 
 ミサイルに対しては、正面から防御で対抗するべきではない。北朝鮮のミサイルは放置して、「肉を斬らせて骨を断つ」というふうに反撃すればいい。
 具体的には、北朝鮮から攻撃があったあとで、通常戦力で北朝鮮に侵攻すればいい。先にも述べたように、通常戦力では、米軍が圧倒的なので、1週間ぐらいで北朝鮮全土を制圧できる。

( ※ なお、日本がここで貢献したければ、迎撃ミサイルを使うのではなく、敵基地攻撃能力をもつ方がいい。敵の領土でなく基地に限定した侵攻は、正当防衛の範囲内に入るからだ。比喩で言えば、敵がピストルやナイフを持って攻撃しているときには、そのピストルやナイフを撃破することは、正当防衛の範囲に入る。武器を握る手を打撃することも同様。)

 (7) 核ミサイル

 先に、「グアムで少しばかりの被害が出ることは、仕方がない。あえて受け入れるべきだ」と述べた。
 これはどうしてかというと、通常ミサイルである限り、ミサイルの攻撃力は大きくないからだ。人々が大きなビルに入っていて、地下などに避難している限り、人的な被害はごく限定される。特別な例外を除けば、死者はゼロ同然になると推定される。
 ミサイルというのは、爆薬の搭載量も少なくて、空爆に比べれば圧倒的に被害は小さいのだ。ほとんど無視していいレベルだ。(被害量については。)

 ただし、核ミサイルとなると、話は違う。こうなったら、「グアムに落ちるのも仕方ない」とは言えない。
 では、北朝鮮が核ミサイルを発射したら? そうなったら、日本の迎撃ミサイルを使うべきか? 
 いや。そうではない。北朝鮮が核ミサイルを発射すると警告した場合には、日本や米国に残された道はただ一つ。「全面降伏」だ。なぜなら、それを避ければ、「双方がともに破壊される」というふうになるからだ。北朝鮮の狂人はそれを選ぶ。とすれば、日本や米国に残された道はただ一つ。「全面降伏」しかない。前にも述べたとおり。
  → 北朝鮮に全面降伏せよ: Open ブログ
 
 ここに示した通り、北朝鮮が核ミサイルを発射すると警告した場合には、日本や米国は全面降伏するしかない。北朝鮮の独裁者に屈服するしかない。
 これに反発して、「迎撃ミサイルがあるから大丈夫さ」なんて言っていれば、核ミサイルが日本や米国に落ちる。迎撃ミサイルの出番なんか、ないのだ。
( ※ たとえ迎撃ミサイルを撃ったとしても、大量のダミーミサイルを撃墜するのが関の山で、あっという間に弾切れになる。その前にも、撃墜漏れが多数発生する。)

 だから、全面降伏がイヤなら、北朝鮮が核ミサイルを配備するに、核ミサイルの配備を止めるしかないのだ。
 それは、たぶん、経済制裁か、武力行使しかない。もし経済制裁が中国によって妨害されたなら、残された道は武力行使しかない。(さもなくば、全面降伏するしかない。)
 ともあれ、「北朝鮮が核ミサイルを配備する前に、何とかしろ」というのが、私の警告だ。核ミサイルを配備した後では、手遅れなのだ。



 [ 付記1 ]
 武力行使がイヤなら、別案もある。「北朝鮮の土地を部分占拠する」という方法だ。
  → 北朝鮮のミサイルを止めるには?: Open ブログ

 私としては、これがお薦めだ。血を一滴も流さず、お金も使わず、武力を見せつけるだけで、敵を屈服させる。
 比喩で言えば、ゲンコツでぶんなぐるかわりに、体格の良さを利用して、胸で押し出す。誰もケガをしないで、決着が付く。

 [ 付記2 ]
 迎撃ミサイルには、本文で述べた SM3 のほかに、PAC3 もある。PAC3 の数も含めれば、かなり多数の迎撃ミサイルがあることになる。
  → 日本にはPAC3は何個ありますか? 576発です。

 しかしながら、これはあまり意味がない。
 第1に、PAC3 は、低空で迎撃するもので、対応エリアもごく狭い。一方、イージス艦から発射する SM3 は、高空で迎撃するもので、対応エリアも広い。



 グアム攻撃のミサイルは、日本のはるか上空を飛ぶので、SM3 でしか迎撃できない。従って、本項のテーマでは、SM3 だけが意味を持ち、PAC3 は関係ない。

 第2に、PAC3 は半径 20〜25km ぐらいの狭いエリアしか防御できない。これでは、東京で言えば 23区を防衛するのが関の山だ。かといって、あちこちに分散して配備すれば、一箇所あたりの配備数が減る。配備数が減ったところに、北朝鮮が集中して多数のミサイルを発射したら(飽和攻撃をかけたら)、大被害は必然となる。

 第3に、守るべき箇所は、東京だけでなく、各地の自衛隊基地・米軍基地もあるし、原発もある。それらに PAC3 を配備したら、すぐに数が足りなくなる。

 第4に、北朝鮮はダミー弾頭の安物ミサイルをいっしょに撃つかもしれない。そうなったら、相手の数はどんどん増えるので、こちらの弾切れはいっそう早くなる。

 というわけで、PAC3 が日本全体で 576発もあるとしても、それは、安心感を抱かせるには程遠いわけだ。



 【 関連項目 】
 北朝鮮のミサイルの話は、他にもある。サイト内検索で。
   → サイト内検索



 【 関連サイト 】
 動画




posted by 管理人 at 13:50| Comment(4) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に [ 付記 ] を加筆しました。PAC3 の話。
 ( ※ 一部は、本文中にあった語句を移転したもの。)

 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2017年08月12日 18:39
 実は、SM3 で撃墜することは、本質的に不可能である。ミサイルが到着するグアムから発射するのならともかく、途中にある日本から発射するのでは、コースがうまく重ならないので、日本からでは迎撃できない。
 このことは政府が公式に認めている。以下、引用。

 ──

 我が国が今般導入する迎撃ミサイルであるSM−三については、射程約千キロメートル級の弾道ミサイルに対処し得るよう設計されており、我が国から遠距離にある他国へ向かうような弾道ミサイルは、高々度を高速度で飛翔するため、このような弾道ミサイルを撃墜することは技術的に極めて困難である。
 
 → http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b166479.htm
Posted by 管理人 at 2017年08月14日 07:45
迎撃ミサイルが本質的に無効であるのは、そのとおりですね。(SLBMなどの)反撃能力を持つことの方が、相手の攻撃意図をくじくことに効果的なので日本でも導入を検討してほしいです。
Posted by 大学生 at 2017年08月17日 11:51
地上型イージスシステムを導入する方向らしいですよ
Posted by 田舎者 at 2017年08月18日 15:47
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