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トヨタとマツダが資本提携を決めた。
トヨタ自動車とマツダは4日、資本・業務提携で合意したと発表した。トヨタはマツダの第三者割当増資に応じ、マツダ株の 5.05%(総額500億円)を取得する。マツダはトヨタの自社株を取得する形で、トヨタ株の 0.25%を取得する。
具体的な提携内容は、@共同で米国に車両組み立て工場をつくるA電気自動車(EV)の共同開発B自動運転技術での連携C国内でトヨタがマツダに商用車を供給、としている。
両社は2010年、トヨタのハイブリッド技術をマツダに提供することで合意した。15年には環境・安全技術を中心にした提携で合意していた。
( → 朝日新聞 2017-08-04 )
この背景には、たぶん、次のニュースが影響したのだろう。
《 ルノー・日産連合、世界販売首位にルノー・日産連合、世界販売首位に 》
世界自動車大手の2017年1〜6月期の販売実績が28日、出そろった。16年10月に三菱自動車を傘下に収めた仏ルノー・日産自動車連合が前年同期比7%増の526万8079台となり、前年首位だった独フォルクスワーゲン(VW)を抜いて初のトップに立った。トヨタ自動車は過去最高を更新したが3位。
( → 日本経済新聞 )
日産グループは今年、年間 1052万台程度になって、一位となる。これを知って、トヨタは焦ったものと思われる。(2位じゃダメなんです。VW にも負けた3位だと、もっとダメなんです。)
しかし、である。朝日の記事には、次のグラフがある。

これを見て、両社は、年間 1000万台体制の一角を占めるという味方もある。
しかし、よく見よう。トヨタとマツダの合計は、1152万台( 2016年)となり、他のグループを圧している。
のみならず、トヨタのグループには、追加分がある。
・ スズキ 278万台
・ スバル 95万台
の合計 383万台だ。マツダの 150万台と合わせて、トヨタグループは 1535万台となる。
日本市場に至ってはもっとすごい。トヨタ単独で5割ぐらいのシェアがある。ここでさらに、他社の分も合わせると、大幅に高い値となる。トヨタ以外は、日産とホンダだけだ。その両社とも、シェアは少ない。
→ 自動車メーカーのシェア国内ランキング
こんな状況で、「スズキ・スバル・マツダ」のすべてをトヨタとくっつけるなんて、独禁法違反になりそうだ。
もっとも、合併ではないので、独禁法にただちに抵触するとは言えない。しかし、それでも、資本提携なんかしたら、競争は著しく制限される。
公取委は、ここで介入するべきだろう。次のいずれかにするべきだ。
・ 「スズキ・スバル・マツダ」をトヨタとくっつけた上で、新トヨタの全体を2社に会社分割する。
・ 「スズキ・スバル・マツダ・ダイハツ」を、トヨタから引っぱがす。
このくらいのことをやらないと、競争が制限されてしまう。
経済評論家は、「巨大企業にならないと、世界での競争に立ち遅れる」などと言って、巨大化を推進しようとしているが、それでは国内での競争がなくなり、独占状態になってしまう。
いくら何でも、「他を圧する 1500万台体制にならないと競争で負けてしまう」なんていうことはないのだ。トヨタが 1000万台体制を維持するのは構わないが、1500万台体制になることを認めるべきではない。
なお、記事では、「業務提携によって、電気自動車(EV)での技術開発を進める」というふうに述べている。しかし、トヨタグループが電気自動車の開発で立ち遅れたのは、経営の失敗ゆえだ。前項の最後で述べたとおり。
→ 欧州のディーゼル車規制
しかし、自分の経営ミスのせいで、電気自動車の開発に立ち遅れたからといって、「独禁法を歪めて、大甘にして、見逃してくれ」というのは、筋違いだ。
それはいわば、「株式投資で失敗して、大赤字を出したから、国は特別に補助金を出して穴埋めしてくれ」というようなものだ。自分の失敗を、国の措置で尻ぬぐいしてもらおうとする。とんでもないことだ。
トヨタは、電気自動車の開発で失敗したのなら、今から大金を投じて開発すればいい。あるいは、日産自動車やテスラと提携して、「金で技術を買う」というふうにすればいい。それなら公正だ。
なのに、「マツダ・スバル・スズキと提携して、各社の金をもらって、電気自動車の開発費にあてよう」とする。そしてそのために、独禁法違反になるのを、特別にお目こぼしをいただこうとする。ひどいね。
だが、それよりもっとひどいのは、これを放置する公取委だよ。何やっているんだ。(いや、何もやっていない。)
【 関連サイト 】
トヨタとスズキの司法提携の報道。
→ 【トヨタ・スズキ会見(2)】豊田社長「資本提携も含めこれから」SankeiBiz
独禁法抵触とは別の話です。
記事の見出しは「トヨタが開発」だけど、東工大その他との共同開発で、国家資金が入っているので、独占は無理です。せいぜい特許料収入を得るだけ。
ソニーや村田、太陽誘電など、全固体電池の開発例相次ぐhttp://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/15/121000021/121000004/?SS=imgview&FD=974849182
電子部品、化学メーカーや大学等様々な機関からの開発例があるようです。
ただ、今回注目されている東工大-トヨタ開発の新規超イオン伝導体を利用した電池には自動車部品、化学、電池専業といった他のメーカが関与していないように見受けられます。基本特許におけるトヨタの寄与分の程度、先行による周辺特許取得を勘案すればトヨタ独占、或いは莫大な特許料収入もあり得るのではないでしょうか。
そんな条件で研究する研究者はいないでしょうし、いたら日本中から罵倒されるでしょう。「泥棒の下僕!」
一方、莫大な特許料収入は、別に問題ない。研究開発においては当然の権利。ただの成功報酬です。
ギャンブルで勝ち馬を当てたようなものだが、それよりはもっと正当ですね。
小野薬品工業によるオプジーボの独占に似た状況は起り得るのでは?
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/071308349/
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/032201193/
東工大の研究室にいる研究員がトヨタに所属している、という関係。
http://www.huffingtonpost.jp/nature-publishing-group/electric-battery_b_11076660.html
これを見た感じだと、東工大の研究室がやっているので、権利のすべては東工大が独占していそうだ。トヨタは実施の利用権があるぐらいでしょう。
実用化時のトヨタ所属の研究者の寄与をどう見積もるかによりますが、半永久的でなくとも実施の独占利用権が認められれば実質的独占ではないでしょうか?
トヨタの寄与分が全くなければ東工大が自由に実施権を付与できるわけですが、東工大のプレスリリース
超イオン伝導体を発見し全固体セラミックス電池を開発―高出力・大容量で次世代蓄電デバイスの最有力候補に―http://www.titech.ac.jp/news/2016/033800.html
にもトヨタ所属の加藤祐樹博士の名がありますからこれを一定程度トヨタも寄与しているとみるのは妥当な処ではないかと。
また、トヨタ自体が、独占よりは特許料の売上げを望む。ハイブリッド技術だって、独占したがっているわけじゃないんだし。むしろ、有償供与したがっている。
そう言えないことは既に書いています。
>世界環境に悪化するような不道徳を、国が認めるわけがない。
日本は法治国家ですから規制する法令ができれば、或いは、依頼されればそれに従うでしょう。人治国家ではないので不道徳という理由だけでは従う根拠に欠けます。不道徳が根拠になるならトヨタ以前に内閣やら議員やら批判されるべきはいくらでもあるような。
当初独占で進めて技術的優位性を確立、自身の立場を強固にして特許の価値を高めた上で技術供与に進むというのが妥当なシナリオかと。
多額の政治献金をするトヨタは安倍自民党の「お友達」でしょうね。円安政策で(輸入品高コストアップインフレの裏で)大きな為替利益をだしているし。
もうトヨタグループ解体するべきですね。
それ、今日書く予定だったのに。…… 先に言われてしまった。