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太陽光発電の発電量は不安定だ。前にも示した画像を再掲しよう。

太陽光発電の時変化
これな時間的な変動だが、他に、季節や天候による変動もある。季節の変動は比較的小さいが、天候による変動は大きくて、晴天に比べて、曇天では5割、雨天では1〜2割の発電量となる。
→ 「曇り」と「晴れ」の日の発電量を比較してみた
このように発電量に変動がある。
そこで、この変動を吸収するために、「蓄電池が必要だ」と言われている。
しかしながら、蓄電池は、コストが非常にかかる。系統電力につなぐ太陽光発電の変動量全体を、蓄電池でまかなうとなると、途方もない量が必要で、投資費用も莫大になる。現実的に検討となるような額ではない。(巨額すぎる。)
これを何とか解決しようとして、「いったん熱にして保存してから、あとで熱を電力にして取り出す」という方式も開発されているが、どれにしても実現は容易ではないようだ。
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そこで改めて思い直したのだが、次のように考えられる。
「そもそも大規模な蓄電池は必要ない。太陽光発電の発電量の変動は、電気自動車の電力需要で吸収できる」
これはどうしてかというと、次のことによる。
「電気自動車が普及すると、大規模な電力需要が生じる。その量は、電力需要全体の2〜4割ぐらいにもなる。一方で、電気自動車に充電するタイミングは、融通が利く。毎日長距離を走る人ならば、毎日充電する必要があるが、たいていの人は、数日にいっぺん充電すればいい。その充電のタイミングを、太陽光発電の出力のピークにもっていけばいい」
※ このヒントは、前々項のコメント欄の議論から得た。
→ テスラと日産の新型 EV(コメント欄)
たとえば、天気が次のようになったとする。
晴 晴 曇 曇 雨 曇 晴 曇
この場合、次のように充電すればいい。
・ 晴 の日 …… いっぱい充電する。
・ 曇 の日 …… 少し充電する。
・ 雨 の日 …… 充電しない。
ここで、「いっぱい」とか「少し」とかは、充電する電力量でもあり、自動車の台数でもある。曇りの日には、少しの台数で、少しの量を充電すればいい。
このような調整は、次の二点で可能だ。
・ 需要の調整は、価格の上げ下げで促す。
・ 価格の上げ下げに応じて、自動的に充電の可否を決める。
(各人が自分で決めればいい。)
ここで「自動的に」という点は、そのような機器を開発すればいい。「自動充電器」というもの(スマートメーターの一種みたいなもの)を、自動車の充電器に組み込んでおく。そうすると、価格が下がったときに充電して、価格が上がったときには充電しないようになる。
こうして、「晴れの昼間には電力需要が多くなり、曇りの日や昼間以外は電力需要が少なくなる」というふうになる。かくて、昼間に発生する大量の太陽光発電の発電量を、電気自動車の電力需要が引き受けることができる。つまり、太陽光発電の出力変動は、うまく吸収される。
そして、そのためには、(電力価格に応じた)「自動充電器」というもの(スマートメーターの一種みたいなもの)を、開発するだけでいいのだ。これはごく簡単にできるだろう。
[ 付記1 ]
このような電力は、不安定な電力なので、普通の電力よりはずっと安値になる。現在では「夜間電力」には低料金が適用されるが、将来では(晴れの昼間にのみ出力される)「太陽光電力」に低料金が適用されるだろう。
この場合、普通の家庭や工場も、この低価格の電力を使えるか? 使えることは使えるが、実用にならない。なぜなら、ちょっと天気が悪くなると、いきなり電力が OFF になるからだ。そんなものは、使い物にならない。
・ テレビを見ていたら、テレビが急に切れる。
・ パソコンを使っていたら、パソコンが急に切れる。
・ 冷蔵庫を使っていたら、冷蔵庫が急に切れる。
・ 工場設備を動かしていたら、工場設備が急に止まる。
こういうふうになる。だから、いくら価格が安くても、家庭や工場では、とても使い物にならない。
なお、このことが理由となって、太陽光発電の売電価格は低めとなるだろう。ソーラー事業者が「再生エネだから高価格で買ってくれ」と頼んでも、電力会社は「不安定な電力だから低価格でしか買えない」と言い張るだろう。そして、それが妥当なのだ。
そうして低価格になった不安定な電力を、電気自動車が引き受ければいい。そのことで、不安定さは吸収される。
かくて、新たに「蓄電池を投資するコスト」はゼロのまま、社会的に大量の蓄電池を設置したのと同等の効果が生じる。
社会的に大量の蓄電池を設置したのには、途方もない巨額がかかるが、電気自動車と自動充電器を組み合わせれば、ほとんどコストゼロで、電力の不安定さは吸収されるのだ。
[ 付記2 ]
さらには、発展させて、次の方法も取れる。
「電気自動車の蓄電池を、単に電気自動車のエネルギーとして利用するだけでなく、社会的な蓄電池としても利用する。つまり、電気自動車を使っていないときには、電気自動車から系統電力へ電力を戻す」
これによって、蓄電池の機能が増すので、社会的にはいっそう蓄電池の量が増えたのと同じことになる。
ただし、注意。この方法を使うと、蓄電池がひどく劣化する。毎日大量の電力を出したり入れたりすると、蓄電池がたちまち劣化する。それは、(初期のリーフのころの)リチウムイオン電池だと、あまりにもひどい弊害だ。
とはいえ、現在開発中の固体電池では、劣化が大幅に減るらしい。そうなると、「晴れの昼間には系統電力の余剰電力を引き受けて、電力不足のときに電力を吐き出す」ということも、可能となりそうだ。
今すぐそうするわけではないが、技術開発の進展によっては、それも可能となる。この場合、大量の蓄電池を新規に設置する必要もない。そう理解しておくと、「大量の蓄電池が必要だあ!」と騒ぐこともなくなるだろう。
したがって低価格というインセンティブをもってしても供給に需要を合わせていくことは困難でしょう。
もう一点、充電施設までの送電はどうしますか?基本的に現在想定されているシステムでは東電などの既存電力会社の送電網に接続することになっているはずです。自前で太陽光発電業者が送電網を構築することはほぼ不可能でしょう。
その前提では、発電電力が不規則に変動する電源を送電網に接続すれば、送電網全体の交流電源の電圧や周波数が変動しやすくなるので、東電など既存電力会社側は難色を示すでしょう。
なお付記2は「スマートグリッド」構想のなかに含まれていて2000年代後半からIEEEなどで標準化作業が進んでいますね。
乗用車以外のトラックについては、当面は電気自動車にならないはずなので、除外して考えています。
英仏の「ガソリン車・ディーゼル車は禁止」というのは 2040年なので、23年後。しかもどうやら大型トラックは禁止から除外されるらしい。
小型トラックやタクシーなどは? 夜間に充電するしかないでしょうね。それは仕方ない。低価格では無理でも、仕方ない。
なお、現状では、低価格なのは深夜です。
将来は、晴れの日の9時〜14時が安い。激安。
晴れの日の8時ごろや15時ごろは、少し安い。曇りの日の9時〜14時も少し安い。
深夜も、少し安い。したがって、業務用車は、深夜の「少し安い」時間帯に充電するでしょう。それで十分。
> 低価格というインセンティブをもってしても供給に需要を合わせていくことは困難でしょう。
別に、電気自動車だけが需要のすべてではありません。他の産業用や家庭用の需要があります。電気自動車が吸収するべきは、太陽光発電の変動の部分だけです。
それで吸収しきれない部分は、火力発電や水力発電の発電低下でまかなえばいい。別に、電力供給のすべてを再生エネでまかなうわけではありません。電力供給のすべてを再生エネでまかなうことは、目的となっていません。
本項はあくまで「大量の蓄電池を購入しなくても大丈夫」という話です。お間違えなく。
> 充電施設までの送電はどうしますか?
それは本項の話題とは別の話題。本項はあくまで国全体の総需要・総供給のバランスという話だけです。地域別の遍在は別の話。
なお、地域の偏在があれば、太陽光発電の発電量は抑制されます。そうなれば、その分、発電の供給量が制限されるので、発電量の変動は少なくなります。地域の偏在があればあるほど、本項の問題(電力変動の問題)は、解決が容易になるので、かえって好都合です。 (この問題に関する限りは。)
この問題は、自動的に解決されるでしょう。
現状では、北海道のや九州の田舎に太陽光パネルや風力発電設備があるが、それは、そのあたりしかコスト的に成立しないから。こういうのは、発電は安くとも、送電費用がかかるので、もともと無理。やめるしかない。
将来は、太陽光発電のコストが激減するので、そうなったら、関東の郊外の平野部の耕作放棄地にでも大量設置すればいい。高コストの農業生産をやめれば、農業補助金を減らす効果もあるので、一石二鳥。日本で米を作る意義は少ないので、水田を太陽光発電に転換すれば、問題はすべて解決。
困るのは、農家の票を当てにしている自民党だけでしょう。太陽光発電が増えて、農家が減ると、自民党政権がつぶれるかもね。
> 発電電力が不規則に変動する電源
これは特に心配ない。太陽光発電の発電量は比較的安定している。長い時間を見れば変動するが、1分単位でならあまり変動しない。一つの地域で見ると、雲がかかったりかからなかったりして、変動があるが、雲が移動して変動するだけだから、地域全体の日照量は変わらないし、電力の変動も少ない。
多少の変動は、火力発電で十分に対処できます。別にすべてを太陽光でまかなうわけじゃない。変動を吸収する主力は、火力発電でしょう。
実際、この問題はドイツやデンマークあたりですでに解決済み。現実に対応ができている。
ただ、本項で言うスマートメーターみたいなものがあれば、細かな変動にも対応できるので、これもまた有効だ。
水力をアテにしたほうがベターなように思います。
自動車などの蓄電池を、乾電池のように規格化して
カートリッジ式で交換できるようにしたらいいのに、と思うのですけど、各社いろいろあるので難しいのでしょうか。
電力変動は、高周波のものは小さく、低周波のものは大きい。高周波のものは、水力でまかない、低周波のものは、火力でまかなう。……というふうに、現状で、そうなっています。
もっと高周波の変動は、50Hzか 60Hz の周波数を変動させることで対応しています。(というか、自動的にそうなる。発電モーターの性質で。)
カートリッジ式の蓄電池は、すでに開発中です(でした)。ただし、ワイヤレス方式の方が有望なので、現在はこちらの方が技術開発の主流のようです。先に述べたとおり。
電力会社の配電網における高周波の電力変動、低周波の電力変動とはそれぞれどんな現象を示しているのですか?
>高周波の変動は、50Hzか 60Hz の周波数を変動させることで対応
商用周波数の変動のこと?電力変動とどんな関係があるのですか?
一般的な概念ではないので意味を教えて?
この周波数は、電力の周波数(50/60Hz = 一定)のことではなく、変動の周波数(0〜1万以上)のことです。小刻みに変動するのが、高周波の変動。ゆっくり変動するのが、低周波の変動。
詳しくは「1/f揺らぎ」などの用語を参照。
人間で言えば、指の動きの変動(揺れ)は高周波で、体全体の動きの変動(揺れ)は低周波。
>変動の周波数(0〜1万以上)のことです。
つまりは高周波の電力変動とは例えば0.0001秒(=1万Hz)の時間がかかるような電力変動であり、これは水力発電で吸収する。低周波の電力変動とは例えば1000秒(≒0.001Hz)の時間がかかるようなもので、これは火力発電で吸収する。さらには火力発電では原理的にこのような何百秒もかかるような低周波の電力変動を吸収する機能が備わっている。ということですね。了解しました。
上記はwebでは見つけられない貴重な情報ですね。