2017年07月26日

◆ フリーゲージトレインの失敗 4

 長崎新幹線で、フリーゲージトレインを断念することが決まった。代案はフル規格らしい。

 ──

 朝日の記事から。
 《 長崎新幹線、フリーゲージトレイン断念 JR九州が表明 》
 九州新幹線長崎ルート(長崎新幹線)への新型車両フリーゲージトレイン(FGT)導入について、JR九州は25日、「FGTによる運営は困難」として断念する意向を正式に表明した。現状では採算面で成り立たず、安全面でも懸念が残るという。FGTに代わり、博多―長崎間の全線でフル規格での整備を求める考えも示した。
 青柳社長は委員会後、報道陣に対し、安全性も「まだ確立できていない状態」だと述べた。 FGTは開発が難航している
( → 朝日新聞 2017-07-26

 フリーゲージトレインの開発難航については、本サイトでも前に言及した。
  → フリーゲージ・トレインの失敗
  → フリーゲージ・トレインの失敗 2
  → フリーゲージ・トレインの失敗 3

 フリーゲージトレインというのか根本的に無理だから、さっさと開発を断念しろ、という趣旨。最初に述べたのは 2015年12月07日 だ。そこで述べたことが、1年半以上たった今週になって、ようやく決定されたわけだ。

 さて。代案はどうか? これについても、いろいろと述べたが、最終的には、私は次のことを結論した。
 「フル規格は高額なので、ミニ新幹線方式にすればいい」

 つまり、こうだ。
 「狭軌ではない標準軌の新幹線を、全線に通す。ただし在来線の区間では、標準軌の新幹線のまま、在来線の特急として走らせる」


 フル規格に比べると、車両は大差ないが、線路が異なる。新しい線路は限定的で、大半は従来の線路を(改修して)使う。改修は、狭軌を標準軌にすることだ。その部分では、ミニ新幹線の車両が、在来線の特急として走ることになる。
 これならば、コストは比較的低めで済む。

 一方、フル規格にする、というのは、次の趣旨だろう。
 「どうせ大幅赤字になるから、国費を莫大に投入して、国費で補填する」
 これは、自民党ならばありそうな発想だ。田舎に金を投入するために、国費をどんどん投入する、というわけ。
 馬鹿馬鹿しくて、是非を論議する気にもなれない。

( ※ ミニ新幹線だと、難点もあるそうだ。「在来線のネットワークとの寸断」という問題だ。……だが、田舎であれば、「在来線のネットワーク」なんてものは存在しない。在来線とは接続箇所がちょっとあるだけで、ネットワークなんてものじゃないし、今後もターミナル駅で乗り換えればいいだけだ。もともと列車の利用者も少ないし、気にすることはないだろう。)



 [ 付記 ]
 フリーゲージトレインは、スペインではすでに実用化されている。







 ではなぜ、日本では実用化されないのか? 
 調べたみたら、事情が判明した。
  ・ もともとスペインの会社から技術導入している。
  ・ スペインよりも高速( 270km/h 超)なので、技術的に困難。
  ・ スペインは広軌だが、日本は狭軌なので、スペースがない。

 日本のFGT開発においては、1993年にはタルゴ社からライセンスを受けたにもかかわらず、その技術は主に自動軌間変更装置にかかわる部分を生かすにとどまっているのが現状といえよう。日本では狭軌の車両限界寸法に合わせて、機器類を開発する必要があり、床下スペースの都合でタルゴと同一の仕組みを用いることができないためだ。
 さらに、車軸の重量問題や試作車の設計速度が山陽新幹線より遅いなどの理由で、長崎ルート用のFGTが関西方面まで足を延ばすのは容易なことではない。
( → フリーゲージ列車がスペインで成功したワケ | 東洋経済オンライン

 軌間可変台車を備えた列車としては、昔からスペインの「タルゴ」が有名である。すでに10年の実績がある中、なぜ日本では実現できないかという疑問がある。
 これは、実は日本の在来線が1067mm狭軌であることが大きな足枷となっている。すなわち、スペインは1668mmの広軌在来線と1435mm標準軌高速新線の直通運転であり、日本の場合に比して車輪間に大きなスペースがある。スペインの動力台車は車輪直接駆動・独立車輪方式を採用しており、軌間可変台車には同方式が有利なこともわかっている。
 しかし、狭軌の車輪の間に、その複雑な機構やブレーキ装置を収めることが非常に困難だった。このため1次車の段階から同方式を断念し、平行カルダン方式で開発が進められてきた。この日本の宿命的制約から、現在までの長期の研究開発期間が費やされているのである。
( → フリーゲージトレイン「試乗」で見えた問題点 | 東洋経済オンライン

 「狭軌なのでスペースがない」ということが決定的であるようだ。
 また、仮に実現しても、摩耗が大きいなどの点で、コストが非常に高くなることも問題であるようだ。
 軌間可変台車は可動部を有するため、定期的な点検箇所が増加し、部品交換も不可欠である。これらのため車両新造コストに加えて、メンテナンスコストも増大せざるをえない。技術評価委員会では今回の不具合を踏まえて車軸の定期的交換を想定し、一般の新幹線と経済性の比較を行った結果、車軸を240万kmごとに交換する場合で一般の新幹線の2.5倍程度、台車検査周期の60万kmで交換する場合は3倍程度になると試算された。
( → フリーゲージトレイン「試乗」で見えた問題点 |東洋経済オンライン

 フリーゲージトレインそのものは可能だとしても、超高速の新幹線に耐えるには、コストがかかりすぎる、ということらしい。
 
( ※ 比喩的に言うと、オスプレイみたいなものか。汎用性が高くて、高性能だが、やたらとコストがかかりすぎる。「技術的に可能だ」ということと、「実用になる」ということとでは、コストの点で大差があるわけだ。)

( ※ そもそも、田舎の人にとっては、多少の利便性よりは、料金の方が重要だろう。フリーゲージトレインやフル規格なんかを導入するより、ミニ新幹線にして、料金を引き下げる方が、田舎の人にとってはずっとありがたいはずだ。)

posted by 管理人 at 20:55| Comment(2) | 一般(雑学)4 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Posted by 管理人 at 2017年07月27日 07:00
 フル規格は佐賀県が大反対する(それゆえ地元負担金を払わない)ので、実現しない。だからミニ新幹線にするしかない……という見解がある。
  → http://blog.livedoor.jp/whomeoh/archives/50349140.html

 なるほど。ごもっとも。
 佐賀県としては、ミニ新幹線がベストだろう。そうすれば、ミニ新幹線が在来線の駅にいっぱい停車するので、好都合だ。しかも、佐賀県外では、新幹線となって、大幅に高速化する。
 これは、通勤電車で言えば、自分の地域だけに急行や特急を止めてしまうようなものだ。きわめて好都合である。
 しかも、払う負担金は最小限で済む。また、新大阪まで乗り換えなしで行ける。

 佐賀県にとっては、ミニ新幹線はいいことずくめ。フル規格に賛同するはずがないね。

 一方、長崎県にとっては、フル規格もミニ新幹線も、大差がない。あえてフル規格にこだわって、いつまでも建設できないと、かえって損をする。話が流れても、損をする。次善の策で、ミニ新幹線に同意するしかない……と思うようになるだろう。

Posted by 管理人 at 2017年07月27日 23:14
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