2017年07月23日

◆ 鳥と恐竜の謎

 鳥と恐竜との関係を探ると、謎が生じる。しかしこの謎は、人々の錯覚がもたらしたものだ。人々は「鳥とは何か」を根本的に誤解している。

 ──

 NHK で次の番組があった。

  「生命進化の謎 鳥は恐竜の子孫なのか」
   7月22日、Eテレ ( → ウェブページ

 内容は普通の話だが、CG の動画が興味深かった。
 また、「翼竜がこの時代の、空の王者だった。ムササビのように滑空する小型恐竜は、翼竜の餌食になるだけだった」という話も興味深かった。

 ──

 それは別として、肝心の話に戻ると、次のことが要点だった。
 「鳥類は空を飛ぶが、そのための羽毛は、鳥類以前の恐竜でもすでに備わっていた。肉食恐竜と、植物食恐竜は、系統が別なのだが、どちらも羽毛を備えていた。こうして羽毛は、かなり古い時点に起点を持つことがわかった。だが、鳥類と恐竜の関係はまだ不明なところが多く、謎が残る」

 しかし、これは根本的勘違いだ。その理由については、すでに示した通りなので、以下で解説しよう。

 ──

 上記のような通説では、鳥類の本質を「空を飛ぶこと」と見なして、「羽毛が大切だ」と考える。しかし、そのいずれも間違いだ。

 (1) 空を飛ぶこと

 空を飛ぶことは、鳥類の特性(本質)ではない。空を飛ぶだけなら、翼竜も同様だし、哺乳類のコウモリやムササビも同様だ。つまり、空を飛ぶことは、別に珍しくも何ともないのだ。それは鳥の特性(本質)ではない。
 これは、魚類の特性(本質)を「水中を泳ぐこと」と見なすのと同様だ。実際には、水中を泳ぐことだけなら、魚竜も同様だし、哺乳類の鯨も同様だ。つまり、水中を泳ぐことは、別に珍しくも何ともないのだ。それは魚の特性(本質)ではない。
 こういう話は、前にも述べたことがある。
 だいたい、「翼を持つ生物が鳥だ」というのであれば、翼竜も、ムササビも、コウモリも、鳥だということになってしまう。ひょっとしたら、トビウオも。……その一方で、ダチョウやペンギンは、鳥ではなくなってし
( → 恐竜の鳥盤類に羽毛: Open ブログ
 

 (2) 羽毛

 羽毛をもつことは、鳥類の特性(本質)ではない。なぜなら、羽毛というものは、個体発生の最終段階で形成されるものであって、個体発生において突然変異が致死的な影響を持たない。ゆえに、遺伝子の突然変異という試行錯誤が容易になされて、羽毛を持つ生物が出現することは容易に起こるからだ。
 この件は、前にも述べた。
 最後にできる皮膚については、遺伝子が働くのは個体発生の最後の段階だから、比較的容易に変異が起こる。(それ以前の基本的な部分で変異が起こると、以後の部分が全部影響を受けるので、簡単には変異が起こらない。しかし、皮膚ならば、たとえ体毛の遺伝子が全部消失しても、体毛がなくなること以外には影響がないから、変異が比較的容易に起こる。「容易」とは言い切れないが、二度起こることはある。)
( → 鳥の翼と羽毛: Open ブログ

 「毛・鱗・羽などは、個体形成の最後の段階でなされる。ゆえに、変異があっても致死的ではない。だから、さまざまな変異が生じても、そのまま誕生した。かくて多様な形状が生じた(多様な遺伝子変異が許容された。)」
 こういうことは、他の肉体器官ではありえなかった。多少の変異があれば、それはたいてい致死的となるがゆえに、誕生不可能となるからだ。
 一方、毛・鱗・羽などは、変異が致死的ではないがゆえに、多様な変異が可能となった。つまり、多様な「進化の実験」が可能となった。それゆえ、遺伝子に多様性が生じて、形態に多様性が生じた。
( → 鳥の羽の進化: Open ブログ

 (A) 皮膚が羽毛になるか角質になるかは、かなり少数の遺伝子の変異だけで決まる。(皮膚の形成に関与する遺伝子のうちの少数の変異だけで足りる。)
 (B) 皮膚が形成されるのは、個体発生のうちの最終期のころである。つまり、内臓や四肢や手指などがほぼ完成したあとのことである。この段階で、皮膚の遺伝子に変異があったとしても、その個体は致死的になることはない。たとえば、もともとは角質の遺伝子をもつ親から、突発的に羽毛の遺伝子をもつ子が出現したとしても、その子は、流産することなく、まともに誕生する。(その種においては奇形のような扱いになるだろうが、とにかくその個体は流産することもなく誕生する。)

 というわけで、「羽毛の出現」という突然変異は、他の突然変異と違って、容易に起こる。その意味で、「別々の系統に同様の突然変異が起こる」としても、ちっとも不思議ではないのである。
( → 恐竜の鳥盤類に羽毛: Open ブログ


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 結論。

 「空を飛ぶこと」や「羽毛」を鳥類の特性(本質)と見なすと、どんどん起源が遡るし、また、あとになって別の生物種で再発することがある。
  ・ 空を飛ぶ生物は、鳥類以外に何度もあった。
  ・ 羽毛をもつ生物は、鳥類以外に何度もあった。

 こうして、鳥類と他の静物との境界が曖昧になり、矛盾に陥る。かくて「謎だ」というふうに感じて、混迷に陥る。

 これは、背理法で言えば、最初の前提に間違いがあったことを意味する。つまり、「空を飛ぶこと」や「羽毛」を鳥類の特性(本質)と見なすことが、誤りだったのだ。
 つまり、「空を飛ぶこと」や「羽毛」は鳥類の特性(本質)ではない。したがって、「空を飛ぶこと」や「羽毛」を化石のなかでいくら調べても、それは恐竜と鳥類の関係を示すことにはならないのだ。
 ここが、現在の「鳥と恐竜」の研究の陥っている、根本的な泥沼だ。

( ※ 現代の鳥とは、空を飛ぶという性質をもつ生物ではなくて、進化上の系統樹における一群のことだ。詳しくは下記。)



 [ 付記 ]
 では、正しくは? 
 鳥類と恐竜の関係を知るには、最初の鳥類の発生以前を調べても無意味だ。それは古鳥類という絶滅種の起源を調べることになるので、現在の鳥類である新鳥類の起源を調べることにはならないからだ。
 鳥類の起源を知りたければ、現在の鳥類である新鳥類の起源を調べるべきだ。そのためには、次の二点が重要だ。
  ・ 新鳥類の最古のものは、走鳥類である。
  ・ 走鳥類よりも古いものは、恐鳥類である。

 つまり、次の関係を知ることが大事だ。

   恐竜 → 恐鳥類 → 走鳥類 → 一般の鳥類


 この関係を知ることこそ、鳥類と恐竜の関係を知る真実の道に至る。その真実は、すでに解明済みだ。別項で述べた通り。
  → 恐竜と鳥の系統図
  → 走鳥類の進化

  → サイト内検索 「鳥類 進化」
  → サイト内検索 「鳥類 恐竜」
  → サイト内検索 「恐鳥類」

posted by 管理人 at 09:30| Comment(0) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
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