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タカタが倒産した。
ただしタカタのエアバッグの問題については、真相がろくに報道されていない。問題の原因について、タカタの経営者は「不明です」と言うばかりだ。新聞社も、それをそのまま報道する。
しかし、タカタの経営者は、知らんぷりをして、責任回避しているだけだ。なのにマスコミは、嘘つきの嘘を、そのまま垂れ流すだけだ。
そこで本サイトが真相を明かそう。
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まず、最近の報道を示そう。タカタの経営者は「不明です」と言うばかりで、それを新聞社もそのまま報道する。
「なぜこれ(エアバッグの異常破裂)が起きたんだ、と非常に不可解」「開発時は予見不可能だった」
高田重久会長兼社長(51)は、記者会見で納得のいかない思いをにじませた。
( → タカタ「ファミリー経営」迷走、保身の末に失墜:朝日新聞 )
「我々自身もなぜ(エアバッグの)問題が起きたのか不可解だ。再現性が全然ない。化学の専門部隊に解析を依頼したが、その方たちも再現していない。そういう意味で何が悪かったのかと。でも現実には問題が発生し、できる限りの情報提供をし、すべてに協力させていただいた。残念ながら、開発時には予見不可能だったという話だ」
( → 朝日新聞デジタル )
このように、タカタの経営者は自己正当化をするばかりだ。朝日はまともに批判していない。
もっとも、全然批判していないわけではなく、社説では態度を批判している。
負債の総額は1兆円を超えそうで、製造業では戦後最大の倒産になる。
高田氏らは経営責任や再建の方向について、公的な場で説明をほとんどしてこなかった。昨日の会見でも関係者らに「心より深くおわびする」と述べたものの、社内体制や経営判断のどこに問題があったのか、具体的な分析や教訓は示さなかった。
問題の根本も依然、不透明だ。
連邦検察官は「利益ほしさにデータを改ざんした」とまで批判した。だが、この際もタカタは簡単な声明を出しただけで、「米司法省との取り決め」を理由に、発表文以外の説明は拒否したままだ。
( → (社説)タカタ倒産 遅きに失したけじめ:朝日新聞 )
態度を批判しているが、原因については何も指摘していない。
以上のように、朝日の報道は指摘がまったく不足しているが、これは朝日に限ったことではない。マスコミの報道では、原因について報道したところは一つもない。そのことは下記検索でわかる。
→ Google ニュース検索
原因を示すキーワードは「インフレーター 硝酸グアニジン」だが、これについて報道したマスコミは(2017年には)一つも存在しない。
そこで真相について、私が示そう。
( ※ 実を言うと、本サイトが独自に指摘するわけではない。問題の真相は、数年前から、とっくにわかっている。ググるだけでも、すぐにわかる。マスコミが無知すぎるだけだ。)
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この真相は、2015年の時点で、すでに判明している。こうだ。
その構造はシンプルで、ハンドルの中央部に円盤状(助手席は筒状)のインフレーターと呼ばれる金属製ケースが配置されている。インフレーターの中には、プロペラントと呼ばれる火薬がペレット状(粉をプレスして固形化したもの)に加工されて複数組み込まれている。衝突を検知すると火薬が爆発し、ナイロン製のバッグが一気に膨らむ仕組みだ。
エアバッグに使われるプロペラントとしてはアジ化ナトリウムが使われていたが、発がん性や廃棄時の土壌汚染が懸念され、日本の厚生省(当時)も1990年代中頃に毒物指定にした。各国のエアバッグメーカーはアジ化ナトリウムの代替品を探したが、そこで登場したのが硝酸アンモニウムと硝酸グアニジンであった。
プロペラントとしての爆発力は硝酸アンモニウムが優れているが、不安定で扱いにくい特性をもっていた。タカタ以外のエアバッグメーカー(インフレーターだけを製造するメーカーも含めて)は硝酸アンモニウムを使うことを断念し、安定性が高い硝酸グアニジンを使用した。
( → タカタ製エアバッグ死亡事故の謎 原因の「多湿」評価項目は国際安全基準にも規定なし | ビジネスジャーナル )
上記は一部抜粋だが、話の全体をまとめると、こうだ。
・ エアバッグには「インフレーター」という金属ケースがある。
・ そのなかには火薬がある。
・ 火薬の材料はアジ化ナトリウムが使われていた。
・ アジ化ナトリウムに毒性が判明して、代替品が求められた。
・ 代替品には、硝酸アンモニウムと硝酸グアニジンがあった。
・ 硝酸アンモニウムは性能がいいが、不安定だった。
・ タカタ以外は、安定性のある硝酸グアニジンを使った。
・ タカタだけは、安定性のない硝酸アンモニウムを使った。
・ タカタは、性能の良さをアピールして、売上げを伸ばした。
・ 硝酸アンモニウムは、湿気を吸って、経年劣化していった。
・ 劣化すると、異常爆発することがある。(不発のこともある。)
・ 数年後に、タカタのエアバッグで、異常な大爆発が続発した。
・ 硝酸アンモニウムでなく硝酸グアニジンを使えと警告された。
・ タカタは警告を無視して、自己正当化を続けた。
・ 硝酸アンモニウムによる事故が続発した。米政府に批判された。
・ タカタは社会の批判を無視して、あくまで自己正当化を続けた。
・ あまりにも事故が続発して、訴訟でも負けた。
・ タカタは米国政府命令を受けて、ようやく自己の非を認めた。
・ 硝酸グアニジンを使う商品に無償交換すると決めた。
・ そのときには補償規模が1兆円となり、倒産不可避。
簡単にまとめると、こうだ。
「もともと安定性がなくて危険だとわかっている独自技術(硝酸アンモニウム方式)を開発した。それが良いと自惚れた。のちに、事故が続発して、その自惚れが間違いだと判明した。その時点で自己の非を認めれば、ただの普通のリコールで済んだ。しかるに、自己の非を認めなかった。欠陥商品をいつまでも売り続けた。そのせいで、欠陥商品の販売数が超巨額となって、あとになって補償できる規模を越えてしまった。かくて倒産」
要するに、こうだ。
「傷が小さかった時点で、自己の非を認めれば、小さな傷だけで済んだ。なのに、自己の非を認めて補償することを拒んだ。そのせいで、最終的には巨額の補償をすることになった」
その本質は、こうだ。
「小さな出費を拒んだせいで、巨額の出費を強いられた」
一般的に言えば、こうなる。
「自分の非を認めることができない人は、最終的にはとてつもない巨額の損失をこうむる」
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以上が本質だ。そして、その本質を具体的に知るには、
「インフレーター 硝酸アンモニウム 硝酸グアニジン」
という用語で、情報のあるページを検索すれば、情報が見つかるわけだ。
→ インフレーター 硝酸アンモニウム 硝酸グアニジン - Google 検索
たとえば、先に上で引用したページがあるが、他にも、下記ページがある。詳しい情報が見つかる。
→ 吸湿後の破裂は「分からなかった」 - 日経テクノロジーオンライン
→ タカタがエアバッグに使う火薬は安全なのか | 東洋経済オンライン
→ 米NHTSA、タカタに硝酸アンモニウムの使用禁止を命令
他にも情報はいろいろと見つかる。それらのページを見てもいいだろう。
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ともあれ、問題が大々的に騒がれた 2015年の時点で、真相は判明していた。
その後、タカタの経営者が「法的整理はイヤだ」とごね続けた。そうして2年間が空費されたあとで、「法的整理をする」と決まったわけだ。遅きに失したが。
[ 付記1 ]
なお、2年間もの時間が空費された原因は、経営者が株式の6割を握っていたことだ。詳細は下記。
タカタの立場が弱くなったのは、高田氏ら創業家が株の6割を持つ経営体質にもあった。
高田氏は公の場で説明せず、責任が問われる法的整理を避けようとした。車メーカー側からみれば、一刻も早い再建をはかるべき経営の立場を見失い、株主としての立場を優先したように映る。
( → タカタ「ファミリー経営」迷走、保身の末に失墜:朝日新聞 )
[ 付記2 ]
タカタが問題点に最初に気づいたのは 2004年だったらしい。なのに、気づいても、隠蔽した。
→ 「タカタ」はなぜ転落したのか。| Huffingtonpost
その後もずっと、隠蔽・否定し続けたが、問題に気づいたこと自体は、ずっと以前であったわけだ。
[ 付記3 ]
2008年ごろにも、問題は続発した。
2008年頃より重要部品である、膨張ガスを発生させるインフレーター関連の不具合が相次いで判明、米国とマレーシアでは破裂したインフレーターの金属片により死亡事故も起きている。2008年11月より断続的にリコールが行われているが、(以下略)
( → タカタ (企業) - Wikipedia )
他に、下記記事もある。
→ タカタ:エアバッグに吸湿材、08年以降不具合に歯止め−関係者
2008年以後はいくらか改善したようだが、完全解決には至らなかったようだ。
【 補説 】
被害続出の原因は判明してたのに、それを認めなかったせいで、原因が放置され、そのせいで被害が大幅に拡大した……という構造は、前にもあった。水俣病だ。(あのときは有機水銀が原因だと報道されていたのに、ずっとそれを否定し続けた。特に、自民党政府が否定し続けた。国家ぐるみ。)
翌年(1959年)7月、熊本大学水俣病研究班は、原因物質は有機水銀だという発表を行った。
公式見解として、メチル水銀化合物 と断定したのは、1968年9月26日であった。
この発表の前の同年5月に新日窒水俣工場はアセトアルデヒドの製造を終了している。このとき熊本水俣病が最初に報告されてからすでに12年が経過していた。
2004年10月の水俣病関西訴訟における最高裁判所判決は、国や熊本県は1959年の終わりまでには水俣病の原因物質およびその発生源について認識できたとし、1960年以降の患者の発生について、国および熊本県に不作為違法責任があることを認定している。
( → 水俣病 - Wikipedia )
1959年の時点で、「原因の詳細は不明だが、工場廃液が原因だ」と認定しておけば、「工場の操業禁止」という形で、原因を止めることができた。なのに、政府が原因を認定したのは、工場が操業を停止したあとだ。これでは無為無策も同然だろう。
なお、今日では信じられないかもしれないが、この当時は汚い工場廃液が未処理のまま大量に放出されていた。そのせいで、各地の河川は、工場廃液の色に染まっていたものだ。
工場は触媒の反応過程で副生されたアルキル水銀化合物(主として塩化メチル水銀)を排水とし、特に1950年代から60年代にかけて水俣湾(八代海)にほぼ未処理のまま多量に廃棄した。
そのため、魚にメチル水銀の生体濃縮が起こり、これを日常的に多量に摂取した沿岸部住民等への被害が発生した。
( → 水俣病 - Wikipedia )
ウルトラ級の汚染水を河川に排出する、というのは、この会社だけがやっていたわけではない。日本中でやっていたのだ。
そして、その悪影響が健康被害をもたらすことが、水俣病で確認されたことで、以後、急激に、排水の水質基準が設定されることになった。
( ※ 一方で、今日でも、やたらと「規制緩和こそ最善だ」と語る人も多い。自民党などで。そのせいで、あちこちで安全性の問題が続出しているのだが。)
【 追記1 】
原因としては、硝酸アンモニウムのほかに、湿気の存在と、湿気対策の不十分さが重要だったそうだ。
調査結果によると、エアバッグ異常破裂の根本原因は、湿気にさらされる状況、設計・製造上の問題、プロペラント(ガス発生剤)としての硝酸アンモニウム使用と判明したという。
乾燥剤を使用していない硝酸アンモニウムのプロペラント、湿気を含む高温の環境下に長期間さらされた状況、インフレーター(ガス発生装置)の組み立てで湿気防止対策が不十分であったことが組み合わさり、破裂を引き起こしたとしている。
( → タカタ欠陥エアバッグの根本原因特定、主要自動車メーカーの調査で | ロイター )
湿気および湿気対策というのは、付随要因みたいなものだ。根本的な原因は、タカタだけが使っている硝酸アンモニウムだろう。
部品を交換するという補修も、硝酸アンモニウムでなく硝酸グアニジンを使った部品に交換することでなされている。(自社だけでは生産がまかなえないので他社製品を購入しているという報道もある。)
【 追記2 】
タカタはどうするべきだったか?
2008年に吸湿剤を入れて、爆発事故は激減したらしい。
→ タカタ:エアバッグに吸湿材、08年以降不具合に歯止め−関係者
ならば、2008年以前のエアバッグについては、単に「エアバッグの取り外し」をするべきだった。「交換」は無理でも「取り外し」ならば簡単だろう。2013年ぐらいにその対処をして、「保証期間の5年間は過ぎました。交換は有償で受け付けます」と言っておけば、それで済んだと思える。
ただし、「当初の予定よりも期間が短くなった」ということなので、「交換費用の3割はタカタが負担」とでもしておけばよかった。
( ※ 中古品を新品に交換するのだから、ユーザーにとっても不満は少ない。タイヤだって、一定期間を経たあとは、自腹で交換する。ガソリンだって同様だ。だったら、エアバッグだって、「5年で交換」にしてもおかしくあるまい。)
( ※ 「5年で交換」なら、5年間は利用した、ということだ。ユーザーとしても、5年間も利用したあとなのだから、あまり文句は言えまい。火薬類はタイヤと同様の消耗品なのである。)
( ※ なお、硝酸グアニジンにした場合、異常爆発は起こらなくても、不発の可能性はある。火薬類に長期の安定性を求めるべきではあるまい。)
会社上層部の責任は重い。
過ちて改めずこれを過ちという。
過ちては改むるに憚ることなかれ。
ただ、未然に防止された場合は報道されないのかも。何故改めることができたのかが重要なのは明らかなんですけど。
人間は間違える動物なので、そういう事例なら、毎日の行為のすべてがそうです。私だって日常活動のほとんどが「修正行為」です。初めから一発で完成するなんてことはほとんどない。
ちなみに将棋だって、その行為のほとんどが「読みの修正」です。
稀れに、そういうことをやめて、「おれは最初から正しい。ゆえに修正しない」と言い張る馬鹿がいるから、大問題となる。タカタとか、安倍首相とか。
タイムスタンプは 下記 ↓
稀とするには結構の割合で過ちが改められず、遅きに失した案件が見聞される気がします。
過ちを認めて是正する、事実を直視せず正当性を主張し続ける、何がこの違いを生むのか、もう少し明らかにされるべきかと。体面、自己保身、組織防衛、無謬であるとの思い込み、といったところでしょうか。
最終的にそれを採用したのはタカタ自身であり、責任は免れないですが。
→ http://j.mp/2siyk0i