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オワコンだ……というと、ちょっと誤用っぽいが、とにかく、Wi-Fiスポットはもはや時代遅れであるようだ。
それというのも、格安回線が普及してきたからだ。mineo なら月1GBで 800円。なのに、公衆無線 LAN を有料で使う意義はろくにない。
( ※ よほどの大量ダウンロードならば別だが、そんなことはほとんどない。)
( ※ また、そういうことがあっても、スタバなどの無料 Wi-Fi スポットで足りる。ドリンク代だけで、有料の月料金を超えるけどね。)
Wi-Fiスポットが特に不便なのは、配置が限られていることだ。都会でもおおむね、駅周辺だけだ。駅から少しはずれると、もはや Wi-Fiスポット はほとんどない。これでは利用が限定される。実用性が非常に弱い。
だったら、格安回線で気兼ねなく使える方が便利だろう。移動中も使えるから、自動車内や電車内でも使える。これが大きい。
( ※ Wi-Fiスポットだと、駅では使えるが、電車内では使えないことが多い。例。東京の地下鉄メトロでは、少しずつ利用可能になりつつあるが、全線配備は 2020年まで実現しない。 → 出典 )
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また、有償でなく無償利用ができるとしても、セキュリティの問題から、情報漏洩が大きく懸念される。だから、「利用はやめた方がいい」という指摘もある。これは報道されて、話題になった。
《 孫社長「訪日外国人向けの無料Wi-Fiはなくすべき」 》
孫正義社長の答えは「やりましょう」でも「検討しましょう」でもなく、「無料Wi-Fiのサービスは、むしろなくすべきだと思っている」だった。
「オリンピックのたびに、無料Wi-Fiではさまざまな被害が起きている。具体的にはセキュリティの問題。Wi-Fiスポットのセキュリティの穴を突いた被害が大量に発生している。」
( → ITmedia Mobile )
外国人向けであろうとなかろうと、無料 Wi-Fi ではセキュリティの問題が発生している。だから、使わないのに越したことはない。
以前(3G時代)なら、キャリアの無線がとても高額だったので、 Wi-Fi の意義もあった。しかし、LTE の普及した今では時代が違う。格安回線の普及により、低価格で安全なネット利用が可能になったのだ。
ならば、よほど大量にデータの送受信をするのでない限り、 Wi-Fi よりも、普通の無線回線( LTE )を使うべきだろう。
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以前は Wi-Fi スポットは、有力な技術だと思えた。安価で大量のデータを送受信できるからだ。
とはいえ、技術の進展は早い。当時では思いも寄らぬほど、無線技術は進化しつつある。以前は困難だった高周波の高密度のデータ送信が安価に可能になった。 Wi-Fi による技術は、かくて、いつのまにか、時代遅れになってしまったのだ。
そして、そのことは、当時の人々は見通せなかった。(だからこそ各社は Wi-Fi スポットの配備に熱中した。)……人々が技術の発達を見抜けないということは、しばしばあるものなのだ。
( ※ なお、一応 4G である LTE の次に来る「真の4G」では、通信速度が 現状の 10倍になると見込まれている。[ 出典 ]2020年ごろの 5Gでは、通信速度が数十倍になると見込まれている。[ 出典 ]……あまりにも急激な技術的進歩だと言える。)
[ 付記1 ]
ではどうして、これほど急激な技術の進展があったのか? ざっと調べたところでは、HEMT という高周波トランジスタが近年急激に進展したせいらしい。
《 高電子移動度トランジスタ(HEMT) 》
2GHz帯……以上の周波数では、化合物半導体のHEMTやHBTが使用されることが多い。
( → - Wikipedia )
2GHz帯と記してある。近年の LTE は、ドコモが2GHz帯、1.7GHz帯、1.5GHz帯、800MHz帯 だから、800MHz帯 以外では、HEMT の貢献が大きかったようだ。(だから近年になって使えるようになった。)
また、その技術開発では、特に「高出力化」が大きなポイントだったようだ。それまでは出力不足だったのが、高出力化によって長距離伝送が可能となったようだ。
富士通株式会社……は、半径数キロメートル(km)規模をカバーする大容量無線ネットワークに適用可能な、窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)を利用した……送信用高出力増幅器を開発しました。
光ファイバーの敷設が困難な地域などにおいて、毎秒数ギガビット以上の高速無線通信を実現するには、広い周波数帯域を利用できる高周波数帯を使った無線通信が有望ですが、数km以上の遠距離伝送には、パワーアンプの出力電力をワット級まで高める必要があります。
( → 富士通 )
ともあれ、高速無線通信には HEMT というトランジスタの急激な技術発展が必要だったが、それが近年になって実現したことで、LTE が近年になって利用可能となったのだ。
[ 付記2 ]
このような大きな社会的な影響をもたらしたのが理由だろうが、このたび、 HEMT を開発した人(日本人)が、京都賞を受賞した。
《 三村 志 | 第33回(2017年)受賞者 | 京都賞 》
三村 志
高電子移動度トランジスタの発明とその開発による情報通信技術の発展への貢献
「2種類の半導体を積層化した新構造の「高電子移動度トランジスタ(HEMT)」を発明し、伝導層内の電子移動度が高くなるため優れた高周波特性を持つことを示した。この発明により、情報通信技術の発展に大きく貢献するとともに、極薄伝導層内の電子の物性研究の進展にも寄与した」
( → 京都賞 公式サイト )
今回の京都賞については、世間ではあまり報道されていない。HEMT の重要性が良く理解されていないせいらしい。しかし、この半導体技術は、社会を一変させるほどの大きな影響があったのだ。
今日のネット文化は、スマホ用の回線という無線技術なしには成立しないが、その無線技術は、 HEMT ゆえに成立しているのだ。 HEMT があったからこそ、(格安回線のような)安価で大容量の無線回線は可能となったのだ。
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Wi-Fi の話(孫正義の見解)と、京都賞の話は、それぞれ別個に聞いた人は多いだろう。しかし、この両者を結びつけて考えた人は、ほとんどいないだろう。
本サイトの読者ならば、その両者を結びつけるものを、理解することができる。
[ 余談 ]
タイトルは「さらば Wi-Fi スポット」だが、これは、 Wi-Fi スポットが完全消滅する、という意味ではない。スタバなどの Wi-Fi スポットは、今後も残るだろう。ただし、その利用比率は、かつて想定されたほどには大きくなるまい。
今後は緩やかに衰退していく、と推定される。ちょうど、ISDN や ADSL のように。(いや、それほどひどくはないだろう。完全消滅ではないので。)
【 関連サイト 】
富士通による解説がある。
→ HEMT の原理(なぜ高速か?)
※ 従来のトランジスタとは根本的に異なる原理。IC,LSI といったシリコン系の集積回路とはまったく異なる。その意味で、画期的であり、ノーベル賞を受賞したトランジスタの発明に近い価値がある、とわかる。(ノーベル賞を受賞したエサキダイオードがあまり実用的でなかったのとは対照的だ。)
→ HEMT の応用(自動車用レーダー)
※ 自動車の自動ブレーキ用のミリ波レーダー(76GHz)は、近年、著しく発達しているが、ここにも HEMT が使われている、とわかる。
→ 富士通による改良
※ 原理は同じでも、新技術による改良があった。この新技術(など)のおかげで、近年急激に性能が向上していったようだ。
→ 三村氏は富士通
※ 現在の所属はともかく、開発当時では、三村氏は富士通研究所の研究員だった。(今でも名誉フェロー)
※ そういうわけだから、今でも富士通がトップクラスを走っているようだ。参考:
→ 「第26回地球環境大賞」の大賞を受賞 ,アダプタを年内にも商品化
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三村氏のインタビュー記事もある。一部抜粋しよう。
BS受信機用や携帯電話のスイッチとして 1個 100円,ワールドワイドでの使用量は年間およそ 10億個
( → インタビュー記事(PDF) )
これは 2009年の記事だ。すいぶん前から十分に量産化されているようだ。
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GaN (HEMTに使われるもの)の半導体は、次世代のハイブリッド車や電気自動車のパワー系半導体として有力であるようだ。下記に資料がある。(いずれも PDF)
→ 自動車用 GaN パワーデバイス(2010)
→ 車載応用に向けての次世代パワーデバイス GaN,SiC(2015)
トヨタのハイブリッドや日産の e-Power では、電気の利用効率が近年急激に向上した……と前に述べた。その理由はどうやら、HEMT の急激な技術発展であったようだ。
逆に言えば、HEMT の進歩が、社会を急激に変化させつつある。ほとんど革命的とも言えるほどだ。
( ※ HEMT は、高周波に強いだけでなく、効率が非常に高い、という点に注意。もしかしたら、現在のシリコン系の半導体は、そのうち一掃されてしまうかもしれない。ちなみに、青色 LED も GaN だ。何から何まで GaN になってしまうかもしれない。)


Wi-Fiチェック外して4gにしたほうがストレスフリーである