2017年06月12日

◆ 淫行を規制すべきか?

 未成年への淫行は、道徳的には好ましくないようだが、これは違法ではない。では、違法ではない淫行を、規制するべきか?

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 未成年への淫行をなした俳優(小出某)が話題になった。出演した映画やドラマや CM は放映中止となり、スポンサーなどへの賠償額は億円規模になるとも言われている。無期限活動停止となったが、芸能界引退も噂されている。


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 非常に重い措置が取られたのだが、そのことは世間ではあまり問題視されていない。むしろ、「罰されて当然だ」という風潮が強い。たとえば、下記。
  → はてなブックマーク…本人認め無期限活動停止

 これほどにも批判されるとしたら、彼がやったことは殺人罪にも等しい罪悪かとも思われそうだが、現実には、そうではない。彼のやったことは違法行為ですらない。なぜなら、ただの条例違反だからだ。条例違反は、法律違反とは違う。これは違法行為ではない。

 「違法行為ではなくとも悪いことだろ」
 と思う人もいるかもしれない。たしかに、悪いことかもしれないが、それは「道徳的に悪い」というだけだ。別に、人を傷つけたりしたわけじゃない。相手の同意を得ているのだから、誰も傷つけていない。単に社会の同等規範に反しているだけだ。
 だから、問題は、
 「道徳に反するというだけのことで、大々的に処罰するべきか?」
 ということになる。

 「道徳的に反するなら、処罰するべきだ」
 と思う人もいるかもしれない。しかし、道徳的に反するというだけなら、「不倫」だってそうだ。なのに、不倫は、今日では法律では処罰されない。昔は「姦通罪」という形で、女性だけが不倫で処罰されたが、今日では「姦通罪」は廃止された。つまり、「不倫」という道徳問題については、法的には処罰されなくなった。

 では、未成年との淫行はどうか? 「相手が未成年だから許されない」と思う人もいるかもしれない。しかし、未成年の性行為は、道徳的に悪いとは言えない。13歳以下は別として、次のことは許容されている。
  ・ 16歳以上の女子の結婚(および性行為)
  ・ 結婚を前提とした交際(および性行為)

 これらと比べて、冒頭の俳優の事例は、「結婚の意思がなかった」ということ、つまり、「快楽としての性行為があっただけだ」ということだ。
 しかし、これは、行為を処罰するのではなく、内心を処罰することに等しい。同じ行為をしても、内心しだいで、処罰されたりされなかったりする。
 こういう制度は、およそ近代的ではないし、封建的・前近代的だとも言える。「姦通罪」と同様の古臭いものなのだ。

 ──

 実は、このような主張は、私の独創ではない。法律関係者でも、進歩的・近代的な発想をする人々は、「姦通罪を廃止せよ」というのと同じ発想で、「淫行条例を廃止せよ」と主張している。Wikipedia にも記述がある。
福岡県青少年保護育成条例違反被告事件の最高裁判決においては、3名の裁判官(伊藤正己判事・谷口正孝判事・島谷六郎判事)が「福岡県の淫行処罰規定は違憲であり、被告人は無罪である」という趣旨の反対意見(少数意見)を述べている。

たとえば谷口正孝判事(当時)は、「青少年の中でもたとえば16歳以上である年長者(民法で女子は16歳以上で婚姻が認められている)について両者の自由意思に基づく性的行為の一切を罰則を以て禁止することは、公権力を以てこれらの者の性的自由に対し不当な干渉を加えるものであって、とうてい適正な規定とはいえない」としている。また女子の場合、婚姻可能年齢との矛盾も抱えている。

学説上は、個人のプライバシーを侵害しかねず恣意的に解釈される、罪刑法定主義に反するなどの批判的な意見や、政府・国会が立法を懈怠して、その責任を地方自治体に丸投げし、条例制定権に委ねた結果、法定刑や構成要件に不均衡が生じていることや、(以下略)

また、児童の権利と保護に関する世界的な流れや性交同意年齢に関する国際的な動向にも反し、それに反してもこうした規制を行う日本独自の理由もない、…(中略)… 親告罪になっていないなどといったという批判が主流である。

また、本来淫行条例は条文の構成要件としては限定されなかったケースがほとんどであるものの、主に児童買春を処罰する目的で制定されたのであって、児童買春法が制定された以上は不要であるという意見 …(中略)…もある。

なお、日本弁護士連合会は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案」及び「刑法の一部を改定する法律案に対する意見書」(1998年5月1日)において、「親・教師などによる対償を伴わない性的虐待」を処罰するための法整備をすみやかに行い、淫行処罰規定は全面的に廃止する必要があるとしている。
( → 淫行条例 - Wikipedia

 ──

 以上をかんがみれば、淫行を処罰するということは、あったとしても、せいぜい罰金刑ぐらいがふさわしいと思える。

 ※ ちなみに、大量の人命を失わせる危険のあるスピード違反では、懲役刑になることは、まずない。(まれに)あるとしても、執行猶予が付いて、実際には実刑を免れる。
  → 速度違反で懲役刑って、実際にあるのでしょうか?| 教えて!goo

 にもかかわらず、未成年との淫行には、罰金刑では済まず、厳しい処罰が下されるようだ。特に、社会的制裁が重い。

 このことを逆手にとって、女性の側が美人局(つつもたせ)みたいなことをやることもあるようだ。実際、今回はそれに該当する。
  → 小出恵介 ハニートラップ - Google 検索
  → 小出恵介 美人局 - Google 検索

 ここでは、女性の側は、喜んで性行為をした上で、事後では 500万円を要求していたようだ。
  → 小出恵介 500万円 200万円 - Google 検索

 結果的には、淫行条例は、弊害の方が大きいようだ。今回の事例で言えば、次の弊害があった。
  ・ 女性の側の、美人局ふうの犯罪行為
  ・ 男性の側の、さまざまな損害発生 (本項冒頭)
  ・ 映画会社や CM スポンサーなどの巨額損失


 特に、最後の点が問題だ。映画会社や CM スポンサーなどは、自分では何も悪いことをしていないのに、千万円ないし億円規模の、巨額損失が発生した。これほどの巨額損失を、第三者にもたらしてまで、違法でもない行為を処罰するべきなのか?

 ──

 いろいろ考えるに、「淫行」の規制に関しては、今の日本の制度は、あまりにも前近代的であり、かつ、社会的な弊害が大きい。それは「姦通罪」という前近代的な法律と同様だ。今日ではあまりにも時代遅れなのだ。
 そして、そういう状態が続くのは、人々が妙な「正義感」にとらわれているからだろう。だからこそ、自分たちの誤りや自己矛盾に気づかないのだ。「小さな悪を処罰するために、自分たち自身が大きな悪をなしてしまう」という自己矛盾に。

 こういう馬鹿馬鹿しさの点では、「姦通罪」を廃止しなかったのと同様かもしれない。
( ※ 「姦通罪」が廃止されたのは、GHQ の指示のもとで刑法が改正された 1947年だ。つまり、外国から指示されることなしに、自力で「姦通罪」を廃止することはなかった。)
 


 [ 付記 ]
 本項のテーマは、淫行の是非そのものではない。また、淫行の規制の是非そのものでもない。
 どちらかと言えば、(淫行の規制の是非そのものを話題としながら)、正義感という観念にとらわれて、発想が固定的になること(思考が縛られること)を問題視している。
 人々は、観念的な思い込みによって、現実レベルの損得を離れた倫理基準で判断を下しがちだ。そのせいで、小さな悪を阻止しようとして、大きな悪をなすようになる。
 そういう倒錯が、本項のテーマとなる。
 「人はおのれの思い込みゆえに、目を曇らされる。そのせいで、自己や他者を救おうとしながら、かえって大きく傷つけてしまう。しかも、そのことに気づかない」
posted by 管理人 at 22:50| Comment(1) | 一般(雑学)4 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>自力で「姦通罪」を廃止することはなかった。

にあるように、自らが正しいと思い込んでいる限り是正は不可能です。それこそGHQに匹敵するような強力な外圧が必要ですが、条例程度では外圧の生まれようがありません。

国連から報道の自由、人権、共謀罪について勧告を受けているはずですがそんな程度の力では微動だにしていないように見受けられます。
Posted by 作業員 at 2017年06月13日 09:56
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